児童文学・幼年童話の原稿




絵本用に、15場面の絵の展開で考えたお話しです。
版権が出版社に決まり次第、出版社の意向に従い削除しますが、
それまで皆さんに、読んでいただけるように載せました。
子どもたちにも、読んであげて下さい。
感想等をお寄せいただければ幸いです。
mcltomo@gmail.com


 
目次
1:「チャチャとホタルさんとカエルとり」  2:「あなたの考えは、とってもいいわね」 3:「青い山の妖精さんたち」 4:「巨人とイノシシ」 5:「お父さんが撃たれた」 6:「ほんとうのおままごと」
 
 

  「チャチャとホタルさんとカエルとり」

 ミンダナオのマノボ族の村では、 夜にたいまつをもってカエルを捕って、つぎの日に、ココナッツミルクで煮込んで食べます。
 おいしいよ!
 ここはキアタウという名の村。泊まった方もいらっしゃるのでは?
 皆さんも泊まれるし、カエル採りも体験できますよ。


 

 
チャチャのまえを、数ひきのホタルが飛んで、チャチャが手をのばすと、そのなかの一ぴきの小さなホタルが、チャチャの手にとまった。
「かわいいね、ホタルさん。」
 ほかのホタルたちは、チャチャのあたまのうえで飛び回っている。
「しんぱいしているのね、おとうさん、おかあさんたち。」
 チャチャは、ホタルさんのあたまをなぜるといった。
「さあ、とんでいって!幸せにね!」
 その夜、兄ちゃんのともだちたちがきて、いった。
「さあ、これからカエルをとりに、いこう。」
 お兄ちゃんは、家のうらから、竹カゴとたきぎをとってきた。
「わたしも、つれてって!」
 チャチャが、いうと、お兄ちゃんの友だちたちがいった。 
「女の子も、いっしょにくるなんて、だいじょうぶかなあ。」
「夜のジャングルはまっくらだよ。」
「お化けや妖精もいるよ!」
 すると、お兄ちゃんがいった。
「チャチャだったら、だいじょうぶだよ。山菜とりも、てつだってくれるし、山歩きもなれているし。
 そうだチャチャ、とれたカエルをいれるカゴを、しょってくれる?」
「ばんざい!」
「しゅっぱーつ!」
 お兄ちゃんが、たいまつをもって先頭にたった。
 わたしは、竹のカゴを、あたまからぶらさげて、お兄ちゃんの後についていった。
 靴なんて、だれももってないから、みんな、はだし。
 子どもたちは、村から出ると、ふみあと道をとおって、急な斜面を、はだしで谷へとおりていった。
 夜空には、満天のお星さま。虫の声も、聞こえてくる。
 すべりそうな所にくると、兄ちゃんのともだちが、いった。
「チャチャ、ぼくの手をつかんで!」
「ありがとう!」
 ジャングルのなかに流れている、ちいさな川にでると、お兄ちゃんたちは、水のなかにはいっていった。
「ぼくたち、カエルをさがすから。チャチャ、たいまつもって、ここにいて。」
「わかった。」
 お水が、岩のあいだを、楽しそうにながれている。
男の子たちは、あちらこちらで、カエルをさがした。けれど、なかなかカエルが見つからない。
「カエルの声が、しないなあ。」
「ぜんぜん、見つからない、がっかりだね。」
 岸から、チャチャがさけんだ。
「お兄ちゃん、たいまつ、もえつきちゃうよ!」
 するとふしぎなことに、とつぜんチャチャのまわりを、ホタルがとびはじめた。
「あっ、ホタルさんだ。」
 チャチャの目の前を、一ぴきのホタルがとびまわって、手をさしだすと、手のひらにのった。
「あっ、わたしのお友だちの、ホタルさん!」
 ホタルは、チャチャの手からとびたつと、頭のまわりを、ぐるぐるとんで、とつぜん川上のほうにむかった。
「わあっ。あっちの方見て!」
 みると、川の上流に、たくさんホタルが、とんでいるのがみえる。
「にいちゃん、あっちに、いってみようよ」
「でも、このさきに、大きな木があるんだよ。妖精たちのすみかだって、大丈夫かなあ」
「だいじょうぶよ、だって、わたしのお友だちのホタルさんが、おいでおいでって、いってるもん。」
「なんだか、あのがけのむこう、あかるいねえ。」
 がけをまわったとたん
「わあっ、なんてたくさんのホタルさんたち!」
「大きな木が、たいまつみたいに、かがやいているよ!」
「大きな大きな、クリスマスツリーのようだね!」
 子どもたちは、大木の下に立つと、うえを見あげた。
 大木のまわりを、無数のホタルたちが、ついたり消えたりしながら、飛びかっている。
 それをみて、チャチャが、さけんだ。
「大きな木が、ホタルさんたちの光のお洋服を着て、夜空の星のしたで、輝きながらおどっているよ!」
 子どもたちは、口をあんぐり開けたまま、びっくりして見つめている。
 一人の男の子が、川にはいってさけんだ。
「わーい。たくさん、いるよ!かえるが、いるよ!」
 子どもたちは、いっせいに川に入ると、カエルとりをはじめた。
 たいまつはなかったけれど、ホタルさんたちが飛んできて、まわりを明るく、てらしてくれた。
「ホタルさんたちが、手つだってくれる!」
 男の子の一人が、チャチャを見ると、手をあげていった。
「ほら、チャチャ、かにもとれたよ!」
 そして、チャチャのもっているカゴにいれた。
「たっくさん、とれたねー、さあ、帰ろう!」
「カゴが、いっぱい!」
 お兄ちゃんが、いった。
「チャチャ、カゴおもいだろう。ぼくが、もってあげるよ。」
「兄ちゃん、ありがとう。」
 子どもたちは、おおよろこびで、斜面をのぼった。
 ホタルさんたちも、チャチャたちといっしょに、斜面をのぼって、みおくってくれた。
「ホタルさん、ほんとうに、ほんとうに、ありがとう!」
 村にだどりつくと、父さんと母さんや、村人たちが、家から飛びだして、むかえてくれた。
 みんな、カゴをのぞいて、びっくり。
「すっごい、たくさんのカエルだなあ!」
「カニも、とれたんだね!」
 よくじつ、村中であつまって、大きなお鍋で、カエルとカニの、ココナッツ煮こみをつくって、みんなでたべた。

「ひさしぶりの、おおごちそう!」




























 「あなたの考えは、とってもいいわね」

 ある村では、小学生に登録しても、二年生になると70パーセントがストップします。
 理由は、「貧しくって、お弁当を持って行けないし、靴も履いていけないから」。
 ここで描かれた子どもも真実、エルニーニョもときどこ起こります。
 先生もMCLの卒業生で、本当に子どもたちを自分の給料で助けています

 

あなたの考えは、とってもいいわね

 ぼくは、一年生のときは、学校にいったけれども、二年生になってやめてしまった。
 学校は、とっても楽しかったよ。
 授業もとっても楽しくって、「はいはい」って、手をあげた。
 先生にあてられると、大きな声で答えた。
 すると、先生はいった。
「あなたの考えは、とってもいいわね。」
 学校で、何よりも楽しかったのは、友だちにあえること。
 休み時間には、いつも校庭で友だちと、かくれんぼしたり、鬼ごっこをしたりしてあそんだし、女の子たちともいっしょに、うしろの正面だーれをしたり、なわとびをしたり、歌ったり踊ったりもしたよ。
 ぼくの家は、山おくだから、学校からすっごく遠い。
 だから、朝は4時半には家をでて、橋のない川をはだしでこえて、ジャングルをぬけて歩いたけれど、友だちといっしょだったし、こわくなかった。
 ニシキヘビにであったときは、木の枝で頭と体を押さえてつかまえて、みんなでもちかえった。
 村の人たちは、おおよろこび!
 串焼きにして食べたら、おいしかったよ!
 夜は、電気もないから、外にでて、月あかりのしたで、がんばって勉強もしたよ。
 休まずにかよったし、成績も悪くなかったから、終業式のときには、表彰されてメダルももらった。
 それなのに、なぜ二年生になったら、学校をやめたのかって。
 二年生になると、午後の授業がでてくるでしょ。だから、お弁当をもっていかなくちゃいけないから。
 お金が無いから、お弁当をつくるための、お米なんて買えないからね。
 山の斜面では、父ちゃんたちが、小さな畑でトウモロコシをつくっているけれど、いつも収穫があるわけじゃないし、ときには何日も、食べものがない日もあるし。
 おなじ村の友だちたちも、二年生になると、お弁当を、もっていけない子たちは、つぎつぎに学校をやめていった。
 だからぼくも、やめたんだ。
 でもね、今年はひどい年になった。
 半年近く、雨がほとんど降らなくって、山の草も木もかれてしまった。
 野菜やトウモロコシはぜんめつだし、雑草もかれて、見わたすかぎり茶色い野原だ。
 ジャングルのなかのモンキーバナナも、枯れてしまって実がならないし、川の水も流れてないから、カニやカエルや魚もいない。
 食べるものも見つからなくって、父ちゃんも母ちゃんも、どうしたらいいのかわからずに、こまりはてている。
「このままここで死んで、天国にいくしかないのかしら」と、母ちゃんがいうと、妹たちは、ワッとなきだした。
「そうだ、学校の先生にそうだなんしてみよう!」 僕はいった。
「学校だったら、水があるかもしれないし。
 先生もやさしいから、どうしたらいいか、教えてくれるかもしれないよ。」
 父さんと母さんもうなずいて、着替えの服だけもって、家をでた。
 (絵のみ。学校が見えてくる。)
 学校に着くとビックリ!
 たくさんの家族たちが、食べる物もなく、飲み水も無く、こまりはてて、学校にうつりすんでいることがわかった。
 ぼくは、ひさしぶりに先生を見つけて、話しかけた。
「ここに、しばらく住んでも良いですか?」
「もちろん。
 いまは避難場所として、だれでも住んで良いことになっているから、だいじょうぶよ。多くはないけど、お米もあるし。」
「来てよかった!」
 家族は、おおよろこび。
 ぼくは、先生の顔を見ると、質問した。
「こんなへんな天気は、はじめてです。
 どうして、雨がふらないのですか?野火も起こるし、みんな大変!」
 すると、先生が答えていった。
「これはね、エルニーニョっていってね。人間が、自然を破壊したから、自然が怒って、雨をふらさなくなったのよ。」
「どうしたら、この問題を解決できるのですか?」
 そういうと、先生が言った。
「人間が木を切りたおしたり、空気をよごしたり、いろいろなことが原因としてあるみたい。
 学校で勉強して、本が読めるようになったら知識を得て、それから、どうしたらいいのかを、みんなでいっしょに考えて、実行する必要があるわね。」
「だったら、ぼく、学校にもどって勉強します!
 お昼ご飯が食べられなくっても、外で遊んだり、大声で歌ったりして、お腹がすいたのを忘れればいいから!」
 そういうと、先生は、笑顔でいった。
「あなたの考えは、とってもいいわね。
 だったら、先生が、あなたのお弁当を用意してあげるわ。」
 ぼくは、おもわず先生にだきついた。
 先生は、ぼくを抱きあげて、ぎゅっと抱きしめて、耳もとでささやいた。
「わたしも、親がいなくって、学校に行けなかったけど、行かせてくれた人がいて、それで大学をでて先生になれたのよ。
 こんどは、わたしが、助けるばんね。」

























 
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青い山の妖精さんたち

 ミンダナオの我が子のような子どもたちの事ばかり、日々考えているのですが、そんな子たちの背景が思い浮かんできて止まらずに、お話しが出てくるのです。 
 頭のまわりを、妖精たちが、飛び回っているような感じ。
 父さんが、岩に閉じこもってしまっていた某さん。
 でも今はもう、だいじょうぶ!


 

 大きな岩にうえに、兄ちゃんと私がすわって、青い山をながめていると、ばあちゃんが側に来ていった。
 「おまえたちは、父ちゃんも母ちゃんもいなくて、かわいそうだのう。」
 「父ちゃん、母ちゃんどこにいるの?」私が聞くと、ばあちゃんがいった。
 「たぶん、あの山のなかにいるんだろう。」
 「どうして、あそこにいるの?」兄ちゃんがきいた。
 「お前の母ちゃんはね、森の泉で、水を汲もうと思ってね。小川をのぼっていったんだが、それっきり帰ってこないんだよ。たぶん泉のそばに生えている、大きな木に吸いこまれて、天にのぼっていったんだろう。」
 「父ちゃんは?」
 「父ちゃんは、母ちゃんが居なくなって、さびしくってさびしくって、泉までいくと、その向こうの岩穴に、ずっと入っていたんだがね。なぜかある日、父ちゃんもいなくなってしまったんだ。」
 「ふたりとも、あの山のなかに消えていったんだね。」
 私がそういうと、兄ちゃんは、私の手を取っていった。
 「ぼくたちで、父ちゃんと母ちゃんをさがしに、山へ行ってみようよ。」
 小川をさかのぼって森を行くと、泉にたどりついた。泉のほとりには、大きな大きな木がはえていて、その後ろには岩穴があった。
 「あの木のなかに、母ちゃんは、吸い込まれていったんだ。」
 「父ちゃんは、あそこの岩穴に入って、母ちゃんがもどってくるのを待ってたけど、どこかに消えてしまったんだ。」
 泉の横には、小さな踏みあと道があったので、兄ちゃんと私は、さらに踏みあと道を登って、森のなかへと入っていった。
 急な登りは、やがて少しゆるやかになり、小道のはたに、お花が咲き始めた。
 森はジャングルになり、キャッキャッキャッと声がするので見あげると、たくさんの猿たちが、枝から枝に飛びうつって、兄ちゃんと私を見おろしている。
 深い谷をこえ、大木の間をぬけて登っていくと、とつぜん尾根うえにとびだした。いちめんにお花畑が広がっていて、その向こうには、うつくしい青い山が、兄ちゃんと私をみおろしていた。
 お花畑のなかにかけだすと、兄ちゃんと私は、青い山に向かってさけんだ。
 「やっほー、父ちゃん!」
 「母ちゃん、どこ!」
 すると、あたりの花たちが、急にゆれだして。お花畑のあちらこちらから、たくさんの妖精たちが飛びだしてきた。
 「わあっ、妖精だ!」
 「こんなにたくさん、どこからきたの!」
 妖精たちは、いっせいにかけよってくると、兄ちゃんと私のまわりで踊り始めた。
 「いっしょに、踊ろう!」
 「手をつないで踊ろうよ!」
 兄ちゃんと私は、うれしくなって、妖精たちと、いっしょに踊り始めた。
 「こんな楽しいの、はじめだ!」
 「妖精さんたちと、お友だちになれて、うれしいわ!」
 兄ちゃんと私は、たくさんの妖精さんたちと、お花畑で歌ったり踊ったり、鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたりして、いちにちじゅう遊びまわった。
 するとだんだん、お日さまがかたむきはじめ、夕焼け空が広がっていった。
 お日さまが、青い山にさしかかったとき、光がきゅうに、金色の川になって、山の頂上から流れだした。
 見ると、その光の流れのなかを、白く輝くふたりの天使が、手をとりあっておりてくる。
 ふたりの天使は、微笑みながら、兄ちゃんと私の前にたった。
 「あっ、父ちゃん!」
 「あっ、母ちゃん!」
 父ちゃんと母ちゃんは、しゃがみこむと、しっかりと兄ちゃんと私を抱きしめてくれた。
 「あいたかった。本当に会いたかったよ。」
 「良くここまで、会いに来てくれたわねえ!」
 まわりにいるたくさんの妖精たちも、嬉しくてうれしくてたまらないといった様子で、踊りだした。
 それを見て私がおもわず、「ここに住みたいなあ!」とさけぶと、妖精たちは、大声で歌いながらいった。
 「すんだら、いいよ!」「すんで、ちょうだい!」
 すると、父ちゃんがいった。
 「気持ちは良くわかるけれど、今はまだ、こっちに来るときじゃないなあ。」
 母ちゃんも、うなずいていった。
 「そうね。でも心配しないでね。高い空から、いつもあなたたちのことを、愛して見まもっているからね。」
 別れるのは、ちょっとさびしかったけれども、涙をながしながら、兄ちゃんとわたしはうなずいた。
 そうして、母ちゃんと父ちゃんに別れを告げると、たくさんの妖精たちといっしょに、山を下りた。
 「ここで、おわかれね。」大岩のところまでくると、私はいった。
 「私たち、せっかくお友だちになったのに、さびいしいなあ!」
 すると、ひとりの妖精が、大岩の上に立つといった。
 「ぼくたちも、この岩のまわりに住もうよ。」
 「そうしたら、毎日みんなと、ここの野原で踊れるね!」 「そうだ。そうだ!」「そうしよう!」
 家の方を見やると、おばあちゃんが心配して、ポツンとひとり腰をかけて、待っているのが見えた。
 「ただいまー、おばあちゃん!」
 「妖精さんたちと、帰ってきたよ!」
(大岩の回りが、すっかりお花畑になり、子どもたちが妖精たちと、踊ったり歌ったりしている様子。遠くに青い山が見え、太陽よ光が降り注いでいる。かすかに両親の姿。ミンダナオ子ども図書館)
 家族が抱きあっている姿。

















 

  
巨人とイノシシ

 ミンダナオ子ども図書館のなかの、某ちゃんのお話です。

 

 朝早く姉ちゃんは起き出して、赤ちゃんをおんぶすると、朝ご飯のしたくをはじめた。
 二人の妹も起きてきて、姉ちゃんのお手伝いをはじめた。
 すると、姉ちゃんが、いった。
 「お料理をしようにも、食べるものが何にもないわ。お父ちゃんが、亡くなってから、いつも食べるものがないよね。」
 二人の妹たちは、泣きだした。
 「お腹がすいたよー。」
 「すきすぎると、お腹が、いたくなってくるよー。」
 それを聞いて、兄ちゃんは、ぼくと弟に声をかけていった。
 「母ちゃんは、下の村に洗濯仕事にいって、まだ帰ってこないし。よし、ぼくたちで、山に食べものを探しに行こう!」
 ぼくらは、ナタをいれた竹カゴを背負うと、食べものをさがしに、山を登っていった。
 谷間におりて、川の流れにはいって「なにか食べられるものはないかなあ」と、さがしたけれど、魚も蟹もカエルもいない。
 「ぼくらの来たのをかんじとって、逃げたのかなあ。」
 しかたがないので、ジャングルの中を、食べものをさがしながら、さらに登っていった。けれども、バナナもサルがとってしまってないし、カサバイモもイノシシがほってしまって、さがしてもさがしても、食べるものが見つからない。
 いちにちじゅう食べものをさがして、山から山へと歩いたけれど、何にもみつからないまま、だんだん日が暮れていった。
 「このまま家に帰っても、姉ちゃんも妹たちも、がっかりするだけだね。」
 弟がいうと、兄ちゃんがいった。
 「そうだね。しかたがない、こんばんは、山の中に泊まろう。」
 見晴らしの良い尾根にたどりつくと、遠くには、海が見えた。
 見あげると、夜空いちめんに、星がかがやいている。
 子どもたちは、大木の下にしゃがんで、お腹をすかせたまま、ぼんやりと星空を見ていた。すると。
 満天の星空の中に、とつぜん巨人が立った。
 こわくなって、思わずたがいに抱きあって、大木の下で震えていると。巨人は、子どもたちほうを見おろして、語りかけた。
 「おまえたち、かわいそうにのお。食べる物もなくって、お腹をすかせているのだな。」
 子どもたちは、怖くて震えながらも、うなずいた。
 すると、巨人は、大きく両手を広げて、天にむかってさけんだ。
 「みんな、行ってあげなさい!肉をあたえて、あげなさい!
 そして、いのちを与えたら、天にもどっておいで。そんなおまえたちを、私は、、心からむかえよう!」
 すると、おどろいたことに、天から無数の流れ星が、雨のように落ちてきて、ジャングルにふり注いだ。
 そのとたん、目の前のしげみの中から、たくさんのイノシシたちがとび出してきた。
 イノシシたちは、子どもたちをとりかこむと、その中のいっぴきが、前に出てきていった。
 「ぼくが死んであげるからね。ぼくの肉を、食べたらいいよ!」
 そして、ごろんとひっくり返った。
 びっくりした子どもたちは、かけよると、そのイノシシを抱いた。けれどもイノシシは、すでに息をひきとっていた。
 子どもたちの目からは、涙がこぼれだした。
 すると天から、声が聞こえてきた。
 「心配しないで、ぼくは、天の父ちゃんのところに、帰っていくよ!」
 子どもたちが天を見あげると、流れ星が一つ、巨人の方に向かって、飛んでいくのが見えた。他のイノシシたちも、みんな天を仰いでいる。
 巨人は、両手を広げて、流れ星を受け止めた。
 翌日の朝、兄ちゃんとぼくと弟は、死んだイノシシを背中にかついで、山を下りた。
 家に近づくと、姉ちゃんと妹たちが、大喜びでかけてきた。
 夕方には、母ちゃんも、おイモと塩を買って帰ってきた。
 そこで家族みんなで、イノシシを丸焼きにして、村の人たちも呼んで、みんなで食べた。
 「イノシシさん、あなたのお肉をくださって、ありがとう!」
 「巨人の父ちゃん、ありがとう!」
 










  お父さんが撃たれた
(ミンダナオ子ども図書館の子供たち)

 国際リゾート開発に反対して、先住民の酋長だった父親が殺され、自分も足を撃たれた少女と、レアメタルの開発に反対して、酋長だった父親が殺された少女を、ミンダナオ子ども図書館では、奨学生にしています。
 いまは中学生になっていますよ。
 

 ミミンは、ひとり草陰に座っていた。
 すると、目から涙がこぼれ出てきた。
 友だちのジョイが、一人で泣いているミミンをみて、かけよってきた。
 そして、隣にしゃがみこむと、肩を抱いていった。
 「どうしたの。だいじょうぶミミン。」
 ミミンは、顔を上げると、ジョイをみた。
 「ありがとう、ジョイ。わたし、思いだしてしまったの。父さんのこと。」
 「どこにいるの?」
 「私のお父さん、マノボ族の首長だったのよ。でも、死んだの。殺されたの!」
 ジョイは、びっくりしていった。
 「私もよ。私の父さんは、バゴボ族の首長だったけど、やっぱり殺されてしまったの。でも、あなたのお父さん、どうして殺されたの?」
 ミミンは、話し始めた。
 「わたしたち、昔は平地に住んでいて、貧しくても食べるのには困らなかったわ。」
 「でもねえ、平地の土地は、外から来た人たちに取られてしまって、山の上の方に追いやられていったの。」
 ミミンは、つづけた。
 「山での生活はたいへんで、食べものと言えば、山芋やカエルばかり。小さな竹の小屋だったけど、それでも、家族みんなで、仲良く暮らしていたのよ。」
 ジョイは、うなずいていった。
 「それって、私たちも同じ。」
 「ところがある日のこと。山麓の町の方から、シャベルやスコップを持った人たちが、たくさんやってきてね、父さんを外に呼び出すとこういったの。
 『これから、ここの山を掘りかえすから、おまえたちは、どこかへ移れ!』
 『なんで、こんなところを、掘るんだ』と、父さんが聞いたら。
 『ニッケルを、掘り出すんだ。高く売れるからな。』
 それを聞いて、父さんはいったわ。
 『それだけは、やめてくれないか。この山には、たくさんの先住民たちがすんでいるんだ。彼らは、川の水を飲んだり、炊事に使ったりもしている。もしも、ここで鉱山開発をはじめたら、水が汚れて病気になってしまう。ここは、おれたちに残された、最後の土地なんだ。』
 すると、後ろから、鉄砲をかついだ男が出てきて、父さんが、『出ていかないぞ!』と、いったとたん、バーンって撃ったの。
 父さんは、その場で殺されてしまった!」
 ミミンは、ワッと泣き出すと、ジョイにしがみついた。
 ジョイも、目に涙を浮かべるといった。
 「私の父さんも、そう。町から人が来て、かってに戸をあけて、家の中に入ってくるといったの。
 『ここに、外国人が泊まれるようなリゾートを作る。1万円だすから、おまえたち先住民は、ここから立ち去れ!』
 でも、父さんは、バゴボ族の首長だったし、プライドもあったから答えたわ。
 『ここは、先祖伝来のわたしたちの土地だ。出ていかない!』」
 「そういったとたん、バーンって音がして、父さんは撃たれた。
 母さんが叫んで、たおれた父さんに駆けよると、今度は母さんもお腹を撃たれたの。」
 「驚いた私は、父さんと母さんの所に、走りよろうとしたわ。
 でもそのとき、パパーンと音がして、わたしの足に痛みが走った。見るとつま先から、まっ赤な血が飛び散っていたわ。こうして、父さんは死んだ。」
 ジョイは、そういうと靴を脱いで、ミミンにつま先を見せた。つま先の中指は、つぶれて曲がっているのが見えた。
 ジョイが、なきだすと、ミミンは、ジョイをしっかりだきしめた。
 (二人が抱きあっている場面)
 「それで、住むところがなくなって、あなた、ここに(ミンダナオ子ども図書館)来たのね。」
 ミミンがいうと、ジョイがこたえた。
 「そうなの。母さんだけでは、おおぜいの子どもたちを、養っていけないから。」
 「でも、ここに来られてよかった!」
 ミミンとジョイは、たがいに顔を見合わせながらいった。
 「だって悲しくっても、ここにいると、たくさんお友だちがいるから、生きていけるわ!」
 「そうだよね。大事なのは、お金よりも愛と友情!」
 そうさけぶと、ふたりは、草むらにひっくり返って、たがいにしっかり抱きあった。
 まわりの花たちが、二人をみて嬉しそうに、うなずいていた。

 








  ほんとうのおままごと

 日本から来た青少年が、ミンダナオ子ども図書館の子供たちと出会って、感動して、友情と心と未来への希望が見えてくる体験をして帰っていく姿を思いだして、子どもたちの気持ちを主体に、こんなお話しがうかんできました。

 

 ここは、日本のとなりの国、フィリピンのミンダナオ島にある、ミンダナオ子ども図書館というところ。
 なまえは図書館だけれど、おおぜいの学校にいけない子どもたちが、日本の人たちの支援をうけて、ここにすんで学校にかよっているの。
 わたしのなまえは、サラ。いもうとのなまえは、サノ。
 父さんと母さんにつれられて、サラとサノが、はじめてここについたとき、たくさんの子どもたちが、いっせいにかけよってきた。
 サラとサノは、ここにくる前から、母さんからきいていた。
 「ここにすんでいる子どもたちは、親が死んだりいなくなったり、戦争で殺されてしまったりした、かわいそうな子どもたちなのよ」って。
 けれども、あつまってきた子どもたちの顔をみたら、みんなふしぎなくらい、あかるい笑顔でビックリ!
 「ハロー、ハロー(Hello)!」
 みんな英語がとってもじょうず。
 わたしは、まだ小学校の4年生だし、英語も少ししかわからないし。
 いもうとのサノは、まだ4歳で幼稚園ではじめての海外旅行。
 「だいじょうぶかなあ。」
 でもね、そんなんぱい心には、おかまいなく、子どもたちは、笑顔で語りかけてきたの。
 「ネイム、ネイム(Name)!」ってきくから、名前のことね、とおもっておしえてあげた。
 「わたしは、サラ。いもうとは、サノ。」
 すると、子どもたちは、おおよろこびで、わたしたちの手をとって、食べるまねをしていった。
 「サラ!」「サノ!」「プレイ、プレイ(Play)!」
 「いっしょに、あそぼう」って、いってるんだ。
 「どうやら、いっしょに、おままごとをしたいみたいだね」と、父さんがいった。
 子どもたちは、サラとサノの手をひっぱって、お花畑につれていってくれた。
 サラは、まっ赤なお花をみて、おどろいてサノにいった。
 「あの、大きなお花、ブーゲンビリアだわ。日本では、お花屋さんでしか見られないけど、ここではそこらじゅうに咲いているね。」
 サラは、子どもたちのほうをみると「ビューティフル(Beautiful)!」って、はじめて英語をつかっていってみた。
 そしたら、みんなも「ビューティフル(Beautiful)!」っていって、お花をつむと、わたしとサノのあたまにさしてくれた。
 「サノ、わたしの英語が、つうじたよ!」
 ひとりの女のこが、「プリィティ(Pretty)!キュット(Cute)!」といって、サノをだきあげると、お花畑のなかでおどりはじめた。
 「『きれいね!かわいいよ!』って、いってるよ。」
 それをきくとサノは、うれしそうに笑って、女のこの首にだきついた。
 サラは、サノにいた。
 「みんなとっても目がきれいで、言葉がつうじなくっても、心がつうじるから、さびしくないね。」
 女のこの一人が、男のこたちに、なにかいっている。
 「ハウス、ハウス(House)」という言葉が、きこえてきた。
 「お家をたてよう」って、いっているのかなあ?
 「こんどくるときは、ぜったいに、英語をもっとおぼえてこよう!」
 サラとサノは、たくさんのお友だちといっしょに、お花畑をぬけて、林のなかにはいっていった。
 「枝もないし、ふしぎな木だなあ」って、わたしがいうと、サノがさけんだ。
 「ねえちゃん、これって、ヤシの木じゃないの。絵本で見たことがある!」
 木のてっぺんには、とげとげの葉っぱがしげっていて、そのかげには、緑や茶いろのボールのようなものがたくさんくっついている。
 サラは、ゆびさすといった。
 「そうだね、あのボールみたいの、ヤシの実だよね!」
 男のこのひとりが、こしにナタをぶらさげると、とつぜん木にのぼりはじめた。
 サノが、びっくりしていった。
 「まるで、お猿さんみたい!」
 てっぺんまでのぼると、男のこはナタで、ヤシの実と葉っぱをきっておとした。
 子どもたちは、ヤシの実と葉っぱをかつぐと、小川をわたり、林のおくへとあるいていった。
 すると、小川のそばに、まるで木のようにしげった、せのたかい葉っぱがはえていた。子どもたちは、上のほうを指をさすとさけんだ。
 「バナナ、バナナ!」
 みあげると、なんとバナナが、ふさになってぶらさがっている。
 男のこは、ナタをにぎると、根もとからきりたおしはじめた。
 バリバリバリって音がして、大きなふさをつけたバナナがたおれた。
 男のこは、バナナのふさを切りとると、葉っぱも切った。
 「なんて太いバナナなの。日本のバナナとぜんぜんちがう!」
 子どもたちは、バナナのふさ、ヤシ実、そしてバナナの葉っぱとヤシの葉をかつぐと、楽しそうに歌いながら、林をぬけてお花畑にもどってきた。
 お花畑にもどると、女のこたちは、お花のなかにすわって、ヤシの葉をあみはじめた。
 男のこたちは、小枝をじめんにさして、そのうえに、女のこたちがあんだヤシの葉をおいた。
 床には、バナナの葉っぱがしかれ、かべにはお花がかざられた。
 「わあーい、おねえちゃん。お家ができたよ!」
 「ほんと、ほんと、かわいい、お家ね!」
 女のこたちは、お家にはいると、サラとサノを、てまねきしてよんだ。
 「サラ!」「サノ!」「カムイン(Come in)!」
 「おはいり、っていっているよ。」
 サラは、サノの手をとると、できたての緑のお家にはいって、すわった。
 「きもちいい!」
 あっちこっちにお家がたち、お家のまえで、子どもたちは、たき火をはじめた。
 「おままごとが、はじまったみたいね。」
 子どもたちは、とってきたバナナの皮をむくと、おさとうをつけて、クシにさして、たき火でやきはじめた。
 男のこは、ヤシの実を、ナタでパンパンとわると、サラとサノにさしだしていった。
 「ドリンク、ドリンク(Drink)!」
 「のんだらいいよ、っていってるよ。」
 サラとサノは、ヤシの実をうけとると、口をつけてのみはじめた。
 「わあ、おいしい!」「ちょっぴり甘くて、おいしいね!」
 女の子が、焼きあがったバナナをわたしてくれた。
 ふうふういいながら、バナナをかじった。
 「おいしいバナナ!」
 「焼きバナナって、こんなにおいしいんだ!」
 サラは、サノにいった。
 「これが、ほんとうのおままごとね!」
(楽しいおままごとの風景。赤ちゃんをあやしている子もいる。)
 














 15年ぶりに日本に滞在し、日本の人々、とりわけ若者や子どもたち、青少年だけでは無く、中高年の人々の孤独な様子を見ていると、とにかく、ミンダナオの風を送らなければ・・・!!!と考え始めて、絵本、児童書、ヤングアダルトから大人向けまで、どんどん書いていくことにしました。
 出版されるかされないか、以前に、今の時代に向かって、語りかけずにはいられないことが、次から次へと浮かんできます。
 サイトにもどんどん掲載していきますね。
 ただ、出版が決まり、版権が委譲された後は、削除するかもしれません。
 よろしかったら感想などをお聞かせください。mcltomo@gmail.com

 




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ミンダナオ子ども図書館では、支援者へ真の活動報告が行くように、
自分で撮った写真と記事を、10年以上サイトに随時掲載してきました。
近年、日本の特に青少年の国際化が謳われる中、この記録が学習素材としても注目され、
国際活動へ一歩踏み出したい体験希望者や、悩みを抱えた若者たちの受け入れも決断しました。
また、中高年の方々にも、現地の子供たちの笑顔が生きる喜びになっていることがわかり
夢と真実を伝えるために、活動を年次ごとにまとめ、過去の機関紙もPDFで掲載しました。
ただし、機関誌は2018年4月までで、数年はサイトに掲載しません。
購読されたい方は、自由寄付や奨学生支援等を振り込んでいただければ現地よりお送りします。
隔月にお送りし、そのうちの一回は、MCLで制作した、絵本をお届けしています!
 
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