「週感ジョジョンプ」第248号！

　こんばんわ。
　いやー、お盆休みに観て、書こう書こうと思ったら全然書けないんだもん。おかげで封切直後に観に行ったのにあんまし意味が無くなってしまいました。今週の一本はウィリアム・フリードキン監督『英雄の条件』（2000年、アメリカ）。
　どうもこの映画、前時代的なタイトル、ポスターなどで「ああ戦争ものなのね」という感じで見過ごされがちの様ですが、個人的には早くも今年の問題作ベスト3に入る出来だと思っています。

1968年のベトナムからこの映画は始まる。ホッジス少尉（トミー・リー・ジョーンズ）とチルダーズ少尉（サミュエル・L・ジャクソン）はベトコン相手に地獄のような苦戦を強いられていた。チルダーズの「行動」により、すんでの所でホッジスは結局救われる。それから28年後、海兵隊屈指の歴戦の勇士として知らるようになったチルダーズ大尉は、暴徒に囲まれたイエメンのアメリカ大使館を救出する任務を与えられる。ゲリラの抵抗は想像以上に激しく、「ある一瞬」を境にチルダーズは決断を下す。群衆に対する銃撃命令。その結果、婦女子を含む83名もの一般市民が殺害され、この事件は全世界に衝撃を与えた。窮地に陥ったチルダーズは、かつての戦友、ホッジスに軍事裁判での弁護を依頼した。チルダーズは殺人者なのか、それとも英雄なのか………。

　そもそもフリードキン監督って誰？という方が多いと思いますのでちおう書いておきます。偉そうな事言っていますが、私も後から言われて気がついたほどです。それほどこの監督の作品は久々です。
　『フレンチ・コネクション』（71）、『エクソシスト』（73）、『恐怖の報酬』（77）の人なのですよ。最後の劇場用映画が『ガーディアン　森は泣いている』(90)なのですが、すみません未見です。『エクソシスト』と『恐怖の報酬』は「見ていない奴は人生で損をしている」と言ってもいいぐらいのジョジョファンへオススメの名作なので、当然期待ができますよね。たとえつまんなさそうなテーマの映画でも（笑）。
　いや、最近は法定ものとか戦争ものか、失礼なジャンル分けですけど避けてきたような気がします。最後に観たのは『ラリー・フリント』かな？というのはもちろん真っ赤な嘘で、こないだの『ザ・ハリケーン』も法定ものでした。続いてこの映画を観ると「アメリカ人は結局、どこかでビシっと正義を打ち出さないと気が済まない性分なんだな」と誰でも思えてくるでしょう。特に今回は戦争の現場というネタを絡めたイヤガラセの様に複雑なネタ。チャプリンの言葉を引き合いに出すまでもなく、様々な視点と事実で観客を揺さぶってくる訳ですが、このあたりの監督の力量がやっぱ凄い。
　はっきり言ってプロットを何度考えても面白くなりようが無いのですが、それぞれの人間の立場の描き方、そして法定での迫力、戦場での迫力、と三本柱がしっかりしている訳です。銃撃戦の後のしめやかな死の場面として静寂を用いるのはありふれた演出ですが、カメラワークとハエの音を入れ、別の場面に関連付けていくこの手腕。ハエは荒木飛呂彦もよく使っていますね、そう言えば。

　とまぁ、演出に特に力を入れて観てみましたが描いている現実は「アメリカの正義/軍隊」に挑戦しているのでちと左がかった身には薄気味悪さを感じ得ません。そこが狙いでもあり、「軍事法廷」という所もミソなのですが、正直言ってアメリカの人はどう見たの？という所が知りたいですね。それもオヤジでなくて若い人のね。このあたりは人と話したい所ではあります。

　最後になりましたがトミー・リー・ジョーンズの「ぱっとしない大人である事の渋さ」はたまりませんね。とにかく冒頭からサエなくて飲酒経歴のおまけつき、裁判の前は吐いちゃうわ………という所からボルテージを上げていき（それでも外見的にはサエないのがミソ）、最後のあの台詞のシーン。オヤジ連中感涙の場面ではありますが、これも若年層の反感を計算づくで入れているんだろうなと思うとそのヒネクレ具合に感慨深いものがあります。この力量で今度はサスペンスかホラーを撮ってくれよな！　ホントに。

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