write 2000/07/17
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「週感ジョジョンプ」第238号!


 こんばんわ。
 さて、先週に引き続きお送りします「夏本番!納涼特別企画『クロスファイア』 vs 『ファイアスターター』」。前号に引き続き念力発火能力(パイロキネシス)を題材にした小説を取り上げております。
 今回はS・キング『ファイアスターター』(上・下巻、新潮文庫)です。
 これ書くためにもう一度読みなおしてみたのですが、いろいろな発見があったり、忘れていたり………いろいろですね。初版は昭和57年ですので読んだ事がある人は多いと思うんですが、なかなか古本屋とかになかったりするんですよね。必要かどうか解りませんが概略を。

アンディ・マッギーは娘のチャーリーを連れて果てしない逃避行を続けていた。彼と今は亡き妻、ヴィッキーは12年前、200ドルのためにある薬物の投与実験を受けた。その実験は実はCIAの下部組織「店(ザ・ショップ)」によるもので、超能力の開発を目的としていた。二人の娘、チャーリーは恐るべき能力………念力放火能力(パイロキネシス)を持ってこの世に生を授かった。アンディとチャーリーを執拗に追う「店」の工作員、レインバードによって二人は捕らわれの身になるが………。

 さて、薬物投与による超能力の開発だとか、CIAの下部組織だとか、S・キングが舞台で用いるものは相変わらず一見チープに見えます(「現代に蘇った吸血鬼」なんてものからはじまって今でもそれは続いていますよね)。
 ところがこの上下二冊分の分量で簡単なプロットを執拗に描くため、周囲の人間を通じての少女チャーリーの「異能」というものが絶望観をもって現れているんですね。私が好きなS・キングの小説『クージョ』は日常に現れたたった一匹の犬によって家族が壊滅的な打撃を受けるという物語でした。ところが『ファイアスターター』ではスリリングな逃避行から物語が始まるため、最初から欠落した家族の物語、という事になってきます。
 この欠落した家族………全員が異能者であり、残ったのは父親とたった一人の娘………が異能者の「抜き差しならない立場におかれた」状況というものを上手く表現している訳ですね。
 『クロスファイア』の青木淳子は両親がすでに事故死という、最初から「存在しない」かのような家族で異能者の孤独を表していました。「家族の再生」というラストと「欠落」を結び付けた『ファイアスターター』とは似て非なるものなので、両作品の一番の相違点はここなのでしょう。
 『ファイアスターター』の主人公は言うまでもなく少女で、当初の逃避行では保護される身分でした。後半に進むにつれて、父親を助け、自らの意志で生きていく様になる訳ですが、どうも私にはあのラストがちょっとなぁ、と思っているのですよ。物語の方向性などを考えるとしごく当然の結末なのですが、異能、異端が日常化していく所に無理を感じてしまうのです。お国柄をよく反映しすぎているから、かもしれませんけど………。
 これよりは孤独に出て、人知れず孤独に終わる『クロスファイア』の方向性の方がどうもしっくりくるのですよ。自分の置かれている心境を考えると好みの問題だなと思うのですが、考えれば考えるほど両作品の違いの大きさを思い知らされます。いろいろ書くとネタバレになってしまうのですが、灼熱の太陽の下で読むにはどちらもオススメの作品ですよ。読了すると、女性に対する深い尊敬の念が生まれてくるおまけつき。男には「家族の再生」はどだい無理な話ですからね。

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