こんばんわ。
さて、予告通り今週の一冊。トマス・H・クック『夜の記憶』(村松潔・訳、文春文庫)。新作であります。訳者はキングのダーク・ハーフとか訳した人なのね。毎度毎度、登場人物の過去に密接し人間の闇を描き出す作者、さて今回は………。
ミステリー作家、ポール・グレーヴスは少年の頃、悲劇で両親を奪われ、その後、目の前で姉を惨殺された。今日を昨日と同じように生き長らえる毎日。ある日、50年前の少女殺害事件の謎解きを依頼される。次第に明らかになっていく恐ろしい事実。その恐怖は、ポールに過去の悪夢を蘇らせるに十分だった………。
なんか違うような気もしますが(笑)、あらすじって難しいですね。これを書くだけでも文章力上達になるだろうにと思うのですが、私はカバー裏の文などから一部ちょっぱったりしてここに挙げています。
さて、あらすじを見ると何か前作とよく似ているなーという感じがしなくも無いのですが、最初は実際そうだったりします。今回の主人公はミステリー作家。これが『ダーク・ハーフ』の主人公よろしくケスラーっていう殺人鬼の登場する小説を書いています。この劇中劇とも言える主人公ポールの小説が心境に密接に結びつき、人心の闇を炙り出す事に成功しているわけですが、ある意味これはプロファイリングですね。残忍な殺人者が何を考え、何を為すかという。空想の殺人鬼ケスラーに対するのが刑事のスロヴァック。この老刑事が悪の権化のようなケスラーを長年執拗に追い続けているのです。スロヴァックがポールの善の心、などと考える間もなく、間に実際の事件の、様々な「起きたかもしれない」シーンが浮かび上がってきます。この白昼夢のようなシーンがミソで、心の闇を様々な切り口でポールに見せていくわけですね。結末はまぁ勘のいい方ならすぐに読めるでしょうが、それでも主人公のインナーワールドのページをめくらずにはいられない………といういい感じの作品に仕上がっています。前作と比べて友情とかそういったものがなくポールの過去、内なる戦いが読ませる訳で、そのあたりのドツボな暗さが嫌いな方には全くオススメできません。
こう書くと救いが無い感じですが読後感が美しい。これもT・H・クックの味わいでしょうね。昔をちと懐かしむ年齢になってきたら、「人に歴史あり」という言葉の意味を見せつけてくれるクックがオススメですよ。
No. | 投稿者 | 概要 |
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PAGE1 | 投稿者:"グリーンドルフィン"YEBISUさん | 孤独な戦い! |
PAGE2 | 投稿者:螺愚那さん | 反撃の狼煙! |
PAGE3 | 投稿者:美々和さん | 我ガ息子ヨ………! |
PAGE4 | 投稿者:A・ドライさん | 二枚のDISC!! |
PAGE5 | 投稿者:klinikさん | 邪悪の審美眼! |
PAGE6 | 投稿者:A’たーぼ"コステロ"さん | エルメェス勝利への道! |
PAGE7 | 投稿者:よーやん | アタチの話を聞いて! |
PAGE8 | 投稿者:わくわくさん | 二枚の謎! |
PAGE9 | 投稿者:"レクイエム"QTQさん | 電波の届かない場所! |
PAGE10 | 投稿者:さくしーどさん | 宇宙(そら)を駆け巡る! |
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