戦争と死




感想等をお寄せいただければ幸いです。
mcltomo@gmail.com



戦争と死
    松居友(写真も全て撮影)

これは、自由寄付でも、寄付を下さっている方々に、
各月でお送りしている機関誌『ミンダナオの風』61号です。

今回は、今戦争が起こっているマラウィの戦争避難民救済支援についてですが、
宮木梓さんが現地報告をしてくれています。

妻のエープリルリンの子ども時代を書いた連載も載っています。

そのなかで、今回は、私が書いた原稿「戦争と死」のみ、
試しにサイトに掲載してみました。








 戦争と死
    松居友(写真も全て撮影)

 ミンダナオに住む決断をしたのは、2000年から2003年の長期にわたり、北コタバト州とイスラム自治区で起こった戦争を、目前にした時だった。
 この戦争は、ほとんど日本に報道されなかったが、120万人を超える極貧の避難民たちが、路上や空き地で、3年半ちかく避難生活をよぎなくされた。マラウィの避難民は、40万人。
 家財道具も家畜も、ときには衣服も残したまま、必死に逃げてくる避難民たちは、テントもビニールシートもなく、道のわきに木の枝を立てて、そのうえにヤシの葉をふいた下で生活をしていた。雨が降れば、びしょ濡れになってしまう。可愛そうなのは、子どもたちだ。

 今回のマラウィとの違いは、マラウィは、都市が戦争の舞台で、激しい空爆が行われ、建物の崩壊がひどいこと、一方でぼくが見たピキットの戦争は、広大な貧困の湿原地帯が反政府の拠点になっていたこと。当時の、イスラム反政府勢力は、MILF(モロ民族解放戦線)と呼ばれるイスラム最大の勢力だったが、ドゥテルテ大統領の掲げる州立制によって、イスラム州の独立と和平交渉の進展を期待して、今回、MILFは政府側に対して中立の立場に立って和平を守っている。これは、日本のJICAのトップだった緒方貞子さんの提案で作られた、国際停戦監視団の果たした役割も大きい。
 ミンダナオ子ども図書館も、協力してきており、イスラム自治区の最も危険で困難なカルボガン集落に、4棟目の学校も建てて去年の12月に完成した。ただし、マラウィの戦闘によって発令された戒厳令のために、開所式は延期されたままだ。

 2001年に、「イスラムの人たちを、助けに行かなければ!」と言って、救済に誘ってくれたバリエス司教につれられて現地を訪れ、表情を失った子どもたちの様子を見てショックを受け、活動を始めた経緯。そしてなぜ故に、当時はまだ16,7歳の若者たちが、NGOミンダナオ子ども図書館を立ちあげたかは、拙著『手をつなごうよ』(彩流社)に書いたので、ここでは詳しく書きませんが、あれから、15年。大きな戦争は、3年おきに、小さな戦闘は、毎年のように勃発し、そのたびに救済支援を行ってきた。

 「現地の人だけではなく、国際停戦監視団やNGOでも、容易に入れないと言われている、反政府地域に、武器も持たずに、良く入っていけますね、怖くないですか?」と、良く聞かれる。
 正直に言って、怖いと思うときもある。でも「そこに、子どもたちがいる。」と思うと、スウーッと恐怖が消えていき、心に愛情がわいてきて、「いかなくっちゃ。命をうしなっても!」と、思うから不思議だ。
 率直に言って、護衛の武器を持ってこんな地域に入っていったら、もっと危険だ。ぼくにとって心のよりどころは子どもたちだ。
 けれど、もう一つ、日本には平和憲法があり、現地では2003年のテロリスト掃討作戦の時も、アメリカ軍の無人機による空爆もあったけれど、日本人は武器を持って他国に攻め入らないという、平和憲法による約束があるので、過去の大戦時の残虐な記憶はあるものの、現地の人々も信じてくれた。

 ぼくも、現地で「平和の祈り」の集会を行うときには、必ず日本軍が過去行った残虐行為を謝罪する。ピキットには、日本軍が駐屯した要塞城が残っているし、敗戦で湿原に逃げた日本兵たちは現地でイスラム教徒となり、その子孫は日系人となって、今も自分の血筋を隠して生きている。山に逃れた新人民軍(共産ゲリラ)にも、日系人はけっこう多い。
 集団的自衛権の法案が通った後に、彼らが恐れたのは、日本軍(自衛隊)が海外に派兵できるようになったことだ。その後さらに、平和憲法が改変されて、米軍と一緒に、日本軍がミンダナオにも攻めてくる。そうすれば、日本軍が日本人の血の入った人々を、殺すことにもなるだろう。

 高校の3年生の時に、「ぼくは、決して武器をもたない。人を殺すぐらいだったら、殺されることを選ぼう。」と決心したのを思いだす。
 そのころは、まだカトリックの洗礼を受けてもいずに、どちらかというと神の存在を認めない、実存主義者であったのだが、なぜか聖書にある、イエスの言葉が浮かんできた。「剣を取る者はみな、剣で滅びる。」
 この聖句での「滅びる」という言葉の意味は、「地獄に落ちていく」という意味だろう。それなのに、世界の多くのクリスチャンたちが、十字軍の時代から、宗教を前面にだして「正義」の名のもとに、武器をもって戦争に向かっていくのはなぜだろう。
 少なくともカトリック教会は、ヨハネ・パウロ2世の時に、かつての十字軍の行いも含めて、宗教を前面に押し出して戦争を起こした過去の行為が、過ちだったと認めて、神に罪の許しを請うているけれど・・・。
 ミンダナオの多くのイスラムの人々は、穏やかで平和を願う人々が多い。日本でも、イスラム教徒に対する誤解が多いので、次世代の子どもたちが、そのような偏見を抱いて育つことが悲しくて、絵本『サダムとせかいいち大きなワニ』(今人舎)を書いた。

 ミンダナオ子ども図書館の子どもたちを見ていて驚くのは、先住民、イスラム、クリスチャンの子たちが、同じ屋根の下で、宗教の違いを認め合って、友情と愛のなかで、「わたしたちは、宗教や部族が違っていても、兄弟姉妹で一つの家族だよ。」といって、共同生活していることだ。
 今年の4,5月に、ミンダナオ子ども図書館の12人の先住民、イスラム、クリスチャンの若者たちが、立正佼成会の招きで、各々の踊りと唄を披露しに日本に行き、お寺や教会や学校や公会堂で公演をしたけれども、多くの人々が、宗教や部族が違うにもかかわらず、いっしょに歌って踊る姿に、驚きと感動を隠せない様子だった。
 その反響のすごさを見て、これから毎年4.5月に日本公演をすることにした。日本の青少年や家族やお年寄りにも、大事な企画だと思っている。
(希望の方は、mcltomo@gmail.comに連絡下さい。)
 現地の村長さんや、宗教指導者たちからも、「IS(イスラム国)や過激なグループは、あれは本当のイスラムじゃないよ。」と言う言葉が聞かれる。
 仏教徒は、平和主義者かと思っていたけれど、いまミャンマーで起こっている事を見ると、結局は、国の利益や権力のためには、戦争を辞さないというのが、人間らしさ?ただ、ぼくは仏教にも親しみをもっている。ぼくの人生に最も大きな影響をあたえてくれて、今の自分があるのは、小学校時代の恩師で曹洞宗の僧侶である、無着成恭先生だったから。

 「なぜ、軍に入りたいの?」と、若者たちに聞くと、ほとんどの子たちが、「給料がいいから。」と、答える。日本の若者たちも同じ?
 だんだんわかってきたのは、ミンダナオのイスラム地域の戦争が起こる(外からの力によって起こされる?)理由は、武器売却と広大に湿原地帯に眠る石油と天然ガスの利権を、国際資本とつながって、どこがとるかというきわめて生臭い話だった。
 戦争で儲けたい人々が、背後で意図的に、宗教や部族対立をあおって戦争を作る?
 山を動かすような強い信仰をもっていても、愛がなければ無に等しい。






































































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