そんな訳で今週も本の紹介になっちまいます。今週の一冊も古いなぁーおい、J.M.ストラジンスキー『新・トワイライトゾーン』(尾之上浩司・訳、扶桑社文庫)。91年5月初版発行の本ですよ。
ときは1999年。この箱に収められているのは、時の流れによっても変えられることがなかったあるものの痕跡といっていいでしょう。入っているのは粉微塵になってしまった人生の断片の寄せ集めで、いまや第三者たちの取り立てに応じるためのひと握りの金に換金されようとしています。彼がこれから行うのはいつもと同じく質屋通いなのですが、しかし今回入るのは、いつもとはちょっと違うトワイライトゾーンにある質屋だったのです。………「サイモン・フォスターの心」より
アメリカが産み出したものの中で唾棄すべきものと賞賛すべきものというのはいくつかあり、個人的にランク付けがなされていると思うのですが、個人的には『トワイライトゾーン』は後者にあたりますね。それもかなり高いランクの。
トワイライトゾーンはもはや説明の必要もありませんが、人気TVシリーズでして、この文庫本はそのノヴェライズという形をとっています。ノヴェライズと聞くと、一般的に読書意欲がガクンと下がるのですが、私は現在、S・キングの『死の舞踏』を何ヶ月もジョジョンプで取り上げる本と併読しています。強烈な舞踏にはそれなりのステップが必要だ、と考えているからでありまして………。アメリカのホラーTV番組についての考察が出てくるので、この本を手に取った次第です。
ちょっと驚いたのですが、作者自身による覚え書きが全短編の前についています。興をそがれるという読み方もあるでしょうが、大抵はその巧みな文書でいい前奏曲になっています。そしてそこへさらに上に挙げたような「トワイライトゾーンへの序文」とも言うべきものがゴシック体で挿入されています。テレビでは冒頭でナレーションとして入るあれです。
誰もが、トワイライトゾーンの物語である事を解って読んでいるのにさらに入るのは何故でしょうか? トワイライトゾーンは日常に潜む奇妙な物語という事を一貫して題材にしている訳ですが、その淵を際立たせるためか? 今回、読んでみて思ったのですが、この文章自体もトワイライトゾーンそのものである、という事です。あまりに簡単な話ですが、別に文脈を割き、一旦読者を切り離しておきながら、そのアイデアで観るものをガツン!と近づける悪魔の連結器(サタニック・カプラー?)の如き効果が有るわけですね。小説などを考えると、いかに読者を引き込むか、なんて事がポイントになるように思えるのですが、トワイライトゾーンではあえて一歩引かせるのです。誰もいきなり視界に飛び込んでくるゴシック体の文字を「物語の臨場観を強めるのに役立っている」なんてマトモに考えないでしょ? 「これはフィクションですよー」と見せておいてだまし討ちするトワイライトゾーンの奇妙な儀式というものは、まさにアメリカが産み出した傑出したシステムであると言えるでしょう(お好みならその範疇にハーレクイーンの生産方法を加えてもいいですけど)。
ちょっと話は変りますけど、アメリカにWWFっていうプロレス団体があるのはご存知? 私の知り合いの編集がよくこの話をするのですが、WWFていうのはとにかくショーマンシップというか、ヤラせの演出がすさまじい。観ている方も誰一人としてマトモなプロレスをやると思っていないのでそりゃもうショーという事で大騒ぎです。何とレスラーが逮捕される瞬間とか拘置所の中とかまでセットを組んで?撮影してしまう訳ですからそれだけでも単純に笑えます。
そういったものを考えるとアメリカ産「けれん」「ハッタリ」というものがいかに変ったものかという事が解ります。WWFが成立してしまうアメリカ、トワイライトゾーンのヘンテコなナレーションが通用してしまうアメリカ、まさにトワイライトの国という事ができるでしょうね。
作品の方の出来はまちまちなのですが、あの映画『トゥルーマン・ショー』の元ネタである「特別サービス」とか、スタンド、スーパー・フライを彷彿とさせる「エドガー・ウィザスプーン氏の奇妙な症例」、S・キングの『ローズ・マダー』を思わせる「獣性」など、見るべきものはいろいろと有りますね。時間に見合ったものかはともかく。何だか、『ウルトラQ』が観たくなってきましたよ。
No. | 投稿者 | 概要 |
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PAGE1 | 投稿者:A・ドライさん | 見てしまったわね! |
PAGE2 | 投稿者:MASさん | 使用不可! |
PAGE3 | 投稿者:づけあごさん | ウツボカズラ! |
PAGE4 | 投稿者:ラバーソウルさん | 裏切り! |
PAGE5 | 投稿者:うにさん | 人間だから! |
PAGE6 | 投稿者:yooichiさん | エルメェスの答え! |
PAGE7 | 投稿者:よーやん | それが恐怖のサイン! |
PAGE8 | 投稿者:A’たーぼ"コステロ"さん | 敵は既に忍び込んでいる! |
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