write 2000/07/09
ジャンプ第32号予想
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「週感ジョジョンプ」第236号!


 こんばんわ。
 長らく映画の事を書いていませんでしたが………今週の一本です。しかも先週の予告通り、邦画です。沖浦啓之監督、押井守原作・脚本『人狼(JIN-ROH)』(1999日本・98分)。

 私は仕事柄、週に一度は神田神保町の通称"神田村"と呼ばれる所に行きます。神田村というのは出版物の流通、いわゆる小規模の取次が集まるところで、書店が本を買い付けに来て、自転車の荷台に縛り付け悠々と去って行く牧歌的な光景が見られるところです。現在、その神田村は再開発が行われ、町並みがもろとも解体され、順次、新しい建物が建とうとしています。
 撤去された土地の前に立っていつも考え込んでしまうのが、依然ここに何が有ったか思い出す事がなかなか出来ないという事です。偉そうに紹介したものの、私にとって生きた風景とならなかったために、そういう結果になってしまうのでしょう。
 なんでこういう事を書いたかというと、今回のこの『人狼』でもそういう光景があり、はっとしたので………。

 舞台は可能性の戦後史としての昭和30年代日本。戦後の首都に反政府勢力治安部隊「首都警」が設置され、その一員である青年、伏一貴は一匹の"狼"として任務を遂行していた。しかしある時、地下組織の追跡で、衝撃的な事件に遭遇してしまう。その後の一人の女性………雨宮圭との出会いにより、伏の心境に変化が訪れる。そんな中で、首都警を大きく巻き込んだ様々な謀略が巡らされ、二人はその渦中に飲み込まれていく………意外な結末へと向かって………。

 昭和30年代の古い町並みなどは説明がしやすいのですが、当時の体制側権力内での諜報戦、という所が背景となっているので、なかなか説明するのが難しいのですが………映画『機動警察パトレイバー 2 the Movie』 + 『シュリ』を想像して頂けると解りやすいかと。ただ主人公は若い頃の高倉健みたいな渋い顔立ちとして描かれている所がポイントの一つ。
 この映画の舞台設定がなぜ昭和30年代の日本なのか? それが最初の印象だったのですが、「忘れ去られる風景」というのが重要なテーマのひとつになっている………と気づかされます。昭和30年代というと私の親父の青春時代の頃ですかねぇ。つまり私としては一回り昔の異次元の光景。『サクラ大戦』じゃないんですが、いちおー新鮮さはあるか、という舞台な訳です。
 そこで前述のデジャヴなシーン。物語中でヒロイン雨宮圭が主人公・伏一貴を子供の頃のよく遊んだ公園に連れて行き、建物が撤去された後の角地を指差し………「あそこに何があったか覚えている?」。そこで、「忘れ去られる風景」というのは「流れ行く風景」であり、「帰り来る風景」でもあるな、という事に気がついたわけです。
 それを下地にしてなお、「再生しない出会いの破局」という所を描き出す手腕にうなされた訳です。考えてみれば『シュリ』も南北統一という大きな復活を下地として個々の人間の破滅を描いていく作品であった訳ですが、リュック・ベッソンが『レオン』等で天然で描いてこそ許されるかなという感じの『シュリ』のあざとさが『人狼』にはない訳です。
 伏が地下通路で遭遇した衝撃的な事件………反政府組織内で爆弾の運び手として動いていた少女の目前での自決………を経て、彼女の姉を名乗る雨宮と出会い、冷徹な法の執行人から人間性の回復を見せる幻想的なシーンがあります。これがアニメでしかも押井チックな美しさなのですが、それを裏切っていく?最後の展開に業を感じますね。私が『シュリ』に欠けていると思っていたのはこういう人間の業のようなもので、これはやっぱし今後の映画をどう作っていくかという事の考え方の違いかなと思ったものです。

 タイトルの「人狼」というのは首都警の中で秘密裏に組織された部内粛清機関の事である訳ですが、誰が「人狼」のメンバーなのか?という事にピンとこないと途中の諜報戦のシーンはすごく解りにくいです。要は公安部と首都警のある警備部の対立な訳ですが、公安部員・辺見と首都警養成学校教官の塔部のやり取りはよーく見ていないと解らないですよん。
 あと、昭和30年代なりの風俗というか、泥臭さが描けていればもっといいんだがなぁと思いつつも、上半期では個人的にかなりのランクに位置するこの映画、オススメ。しかしテアトル新宿は土日はメチャ混んでいます。絶対30分以上前に入る事をお勧めします。

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