マリア祭を無事(?)に終え、
志摩子と乃梨子をお聖堂に残し、
外に出てきた山百合会メンバー達。
令:「結局、私たちが志摩子の戒めを解く役をやってしまったわね」
祥子:「そうね、なにせあの方があまりにも無責任だったから。仕方ないわ」
恐る恐る二人に話し掛ける祐巳。
祐巳:「あの、無責任とかじゃなくて、できなかったんだと思います。
志摩子さんのことを知りすぎているから荒療治が出来ない、っておっしゃってましたから」
祥子:「普通、知ったら何か行動を起こすものよ」
令:「同感だね」
祥子:「それなのに、あの方は自分では何もせずに卒業なさった。無責任といわずになんていうの?」
祐巳の言葉は弁護になっていなかったらしく、
ますます二人の悪口に拍車をかけてしまい、オロオロする祐巳。
瞳子:「お姉さま、それって聖さまのせいじゃないと思いますわ」
祐巳:(あっ、また「お姉さま」っていってる。私だけなのに、祥子さまに「お姉さま」っていっえいいのは。ぶつぶつ…)
祥子:「それはどういうことかしら、瞳子ちゃん?」
祐巳:(お姉さまもなんで訂正させないんだろう。ぶつぶつ…)
祥子:「祐巳、あなた何をそんなに不満そうな顔をしているの?」
祥子さまにそういわれ、慌てて両手を振る祐巳。
祐巳:「いえ、な、何でもありません」
祥子:「そう?ならいいけど。…で、どうして聖さまのせいじゃないといえるのかしら?」
瞳子:「だって、もし聖さまが、志摩子さまを助けてしまっていたら、困るじゃないですか?」
瞳子が登場して、今までそばで聞いているだけだった由乃がたまらず口をはさむ。
由乃:「いったい誰が、どう困るっていうのよ?」
瞳子:「あれ、わからないんですか?」
由乃:「だから聞いているんでしょ!」
むっとした表情をみせると、天敵瞳子にきつい言い方をする由乃。
令:「こら、由乃。そんないい方をしないの」
由乃:「は〜い…」
祥子:「瞳子ちゃん、もし聖さまが志摩子を助けてしまっていたら、困る人がいたってことよね?そんな方、いらしたかしら?」
祐巳もそれが誰なのかを知りたく、瞳子に尋ねる祥子の脇で首を大きく縦に振っている。
瞳子:「いいですか、みなさん。もしもですよ、聖さまが志摩子さまを救ってしまてっていたら…」
みんな:「救っていたら?」
瞳子:『銀杏の中の桜』の話が成り立たないじゃないですか!!」
「ガクッ」とする山百合会の面々。
令:「でも、確かに瞳子ちゃんのいう通りだね」
由乃:「くやしいけど、それが事実でしょうね」
祥子:「本当ね…あら、祐巳?どうしたの?両手を組んで眉をしかめてしまって?」
祐巳:(話が成り立たない?なんで?別に救っててもいいと思うけど?)
首をかしげ、クエッションマークを頭の上にいくつも浮かばせている祐巳の姿を見て、
祥子さまはあきらめのようなため息を軽くついた。
祥子:「まったく、祐巳ったらしょうがないわね…」
由乃:「あのね、祐巳さん、もし志摩子さんが、『寺の娘』ということをばらされても大丈夫な人になっていたら…」
祐巳:「なっていたら?」
由乃:「さっきまで令ちゃんや祥子さまが一生懸命やっていたことは必要なかったわけ」
令:「そういうこと。わざわざみんなの前で志摩子を乃梨子ちゃんを一緒にさらし者みたいにする必要はなかったわけね」
瞳子:「私も、役割が変わっていたかもしれないんです」
由乃:(小声で)「それはその方が良かったかもしれない」
瞳子:「何かおっしゃりました、由乃さま?」
由乃:「いいえ、なにも」(ちっ、地獄耳め)
祐巳:「え〜っ、ていうことは、聖さまが何もせずに高校を卒業されたのは、したくても出来なかったからじゃないですか!」
祥子:「そういうことになるわね」
由乃:「祐巳さん遅すぎ…」
令:「でも、これで山百合会の結束も固まったわけだし、志摩子も、今まで以上に積極的になってくれるだろうし、よしとしましょうか」
みんなが令さまの言葉にうなずいていると、
大学の校舎の方から走ってきたらしく、
軽く息を切らせ気味の聖さまがみんなの前にあらわれる。
聖:「なーんだ、終わっちゃったの?」
みんな:「終わった、って?」
聖:「何か、あったんでしょ?志摩子に関する重大なイベントが」
祥子:「もう終わりましてよ」
聖:「あっ、そうなんだ。みんな難しそうな顔をしていたみたいだけど、うまくいったの?」
令:「はい、うまくいきました」
由乃:「志摩子さん、今ごろ楽しく、乃利子ちゃんという新入生とお聖堂の掃除をしてます」
聖:「そっか、よかった。私もこれで心おきなく・・・」
祐巳:「心おきなく?」
祐巳に近づき思いっきり抱きしめる聖さま。
聖:「祐巳ちゃんだけをかまえるよ〜ん!!」
祥子:「卒業してまで、私の祐巳にちょっかいを出さないでいただけます?」
由乃&令:「いつものパターンだね」
瞳子:「へーっ!祐巳さまって、前の白薔薇さまのお気に入りだったんですね」
祐巳:「祥子さま〜!!助けてください!!」
祥子:「…祐巳、お姉さまといわないと、助けないわよ」
祐巳:「そ、そんな〜!!」
聖:「祐巳ちゃん、薄情な祥子は放っておいて、お姉さんといいことしようね!!」
せっかくみんなが聖さまに同情を抱き始めたというのに、
それを自ら壊してしまっているのに気がついていない聖さま。
祐巳は(ちょっとぐらいならいいことされてもいいかな)なんて考えているやら、いないやら…。
当サイト公開:01.09-04