イマジネーションとキャラクターメイキング   (植田清吉)



 Fローズのマスターをしていると、初めてプレイするという人から不満気な口調で質問を受けることがあります。「このゲームは、自分の好きなキャラクターを作ってプレイすることができないのか?」と。Fローズに限らず一連のローズトゥロードシリーズでは、ダイスを振ることによってプレイヤーキャラクターの出身が決定します。あくまで「出身」だけなんです。「職業」や「クラス」とは違います。向き不向きこそありますが、たとえどんな種族、どんな身分に生まれようと、キャラクターには目指す職業に向かって努力する自由が有るのです。それこそ一つの物語の主題になるほど、重大な自由が。
 しかし、僕が、Fローズのキャラクター作成ルールを読んで最も感銘を受けたのは「18.それがどんなキャラクターなのか考える」という一項が設けられているという点です。作成手順の最後にあたる部分に。
 僕はこの部分を、次のように解釈しましています。Fローズは「こういうキャラクターを作りたい」と思って作るゲームではなく、出来上がったキャラクターに様々な思い入れを付加していくゲームである、と。
 全くのランダム作成によって出来上がったキャラクターは、初対面の相手のようであると評した人がいます。しかし僕はこの点少し違うように考えます。ルールに従って作成していけば、彼もしくは彼女について、徐々に知っていくことが出来ると思うのです。どんな家柄に生まれ、どんな体格、容貌をし、今までどんなことをしてきたか、といった点までは。
 キャラクターシートに記入してあるのはこのあたりまででしょう。それ以上については、書いてないことを読みとらなくてはなりません。想像する、という手段をもって。例えば、そのキャラクターが騎士の家柄に生まれ、グンドを尊敬する男であったとします。経歴に「戦功を立てて昇進」という一行が有れば、彼については厳格で勇猛というイメージが湧くでしょう。その反面、名誉や忠義といった言葉を振り回す石頭という性格も浮かんでくるかも知れません。
 同じグンドの崇拝者にしても、「旅行者の一団を襲い捕虜を愛人にする」などという経歴があればまた変わってくるでしょう。彼はその過去を恥じ、罪滅ぼしのために放浪を続けているのかも知れません。また一時の快楽に溺れたことを後悔し、極端な慎重居士になっていることも考えられるでしょう。
 こういう想像を巡らすことも、RPGの楽しみの一つではないでしょうか。もし想像することすら出来ない、または面倒、重荷であるというかたとは、一緒にテーブルを囲みたくはないですね。きっとそういうかたと僕とではRPGというものの楽しみ方が全く違うでしょうから。
 マスターとしての立場から言わせてもらえば、プレイヤーのかたにはこうやって自分のキャラクターに思い入れを持っていって欲しいと考えています。先に思い描いていたキャラクター像があって、それに近いキャラクターを作ると言うことが、果たしてそのキャラクターに親しむということになるかというと、僕としては疑問を抱かずにはいられません。いつもいつも、同じ種族、同じ名前、同じ性別、同じ年頃、同じ性格、同じ能力。想像力が硬直してはしまいませんか?
 ランダムに作成されたキャラクターへのとっつきにくさというのもわからないではないですが、僕にはそれは想像力を働かせるのを面倒がっているように感じられるのです。RPGを楽しむためには最重要なことのひとつだと思うのですが。いかがでしょう。

筆者注:この文章はかつてRPG専門ネットEXCELに発表したものを加筆訂正したものです。


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