天空の山百合

風花



雪が舞う。まるで花びらのように―



栞を失って数ヶ月がたった。もうすぐ春が来るのに、私の時間は栞と別れた時から止まったままだった。
だけど、そんな私にもマリア様は新しい出会いを下さった。

名残雪が降る中、ぼんやりと銀杏並木を歩いていると、一本だけある桜の木の下に見慣れぬ制服の少女が立っていた。
新入生だろうと思って通りすぎようとすると、その少女が私に気付いて微笑んだ。
その笑顔に、私は見惚れてしまった。
桜の木の下、雪がまるで桜の花びらのように少女を包むのを、神々しいとさえ思った。
一目惚れだった。

それが志摩子と私の出会いだった。
本当は妹にしたかったけど、見守るだけにした。
お姉さまに、好きな人とは距離を置きなさいと言われたから。
でも、祥子が志摩子を妹にしようとしていると聞いて、姉として傍にいたいと思う自分を抑えられなかった。
申し込んだのは祥子が先だったけど、私は志摩子に選んで貰える自信があった。
自惚れだけど、志摩子もあの日、私を好きになってくれたと思えたから。
我儘と言われても、私は志摩子を渡したくなかったし、志摩子は私を選んでくれた。
私達は似ていて、お互いに求める物が同じだったのだ。

志摩子が私を選んでくれたあの日から、今まで私達はずっと一緒に歩いてきた。
そして、きっとこれからも一緒に歩いていく。
彼女が私の下をを離れる日まで。



―時が巡り、あの日見た雪が桜に変わっても。


当サイト公開:03.04-01



千尋さまからのおことば(いただいたメールより無断抜粋)

聖様と志摩子さんの出会いって桜のイメージだなぁと思って、
本当は祥子様より先に聖様が出会ってたんじゃないかという妄想の下作ってしまいました。
すみませんお目汚し致しました!



tanaからの謝辞

長い間放置しておりました。
よいお話を送ってくださった千尋さまには陳謝の嵐です。

第8巻で前三薔薇様が卒業して以来、志摩子さんと乃梨子の姉妹がtanaの気に入りなのですが、
その前は、この聖と志摩子の出会いを描いた場面が一番好きでした。
見た目淡白で、全然姉妹っぽくない。でも深い本質的な部分でつながっている二人。
ちょっと噛んだだけでは味はしないが、噛めば噛むほど味が染み出てきておいしい。
tanaにとって、前白薔薇姉妹はそんな感じで、とても好きでした。
その前白薔薇姉妹のイメージが、見事に表されたこのSSも、
きっと読めば読むほど味わいがでてくることでしょう。

どうもありがとうございました!!




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