「覚えてる?」 「覚えてるさ、そりゃ。典子だろ?」 「ふふ。正解」 受話器の向こう。あの頃と変わらない彼女の声。 そう。覚えている。受話器から聞こえる声の調子だけで、表情や機嫌、それから誘って欲しさ加減までがおおよそ予想がつくくらい、僕はこの声の持ち主を愛したことがある。 「この前は、手紙ありがとう。手紙も驚いたけど、今度は電話か」 「へへへー。返事に電話番号書いてあったからね。貴哉、本当は電話してほしかったんでしょ?」 「いや、それよりも」 「なに?」 「典子のほうが、電話番号書いてほしそうだったから」 「あー、やっぱり判った?」 「何年つきあったと思ってるんだ」 「あはは。手紙でやりとりしても良かったんだけどね、でも時間無かったから」 「みたいだな」 「住所はね、エミが教えてくれたの」 「エミ? エミなら電話番号も知ってたんじゃないか?」 「バカ」 「こら。バカとは何だ」 「バカね。相変わらず。用件が用件だもの。いきなり私が電話したらそっちが困るかもって、気を使ってくれたに決まってるじゃない」 「そうか」 「そうよ」 「構わなかったのに」 「『親しき仲にも礼儀有り』って言うでしょ? あはは」 「どうした?」 「久しぶりだったから。こんな日本語」 六六年式シボレー・コルベット。初めてスティングレイと呼ばれたこの型の車に、ほんの一時期だけ乗っていたことがある。 僕と十一歳しか違わない、親父の末弟にあたる叔父。親戚中で呆れられているほどの趣味人がずっと乗り続けている愛車。 僕が大学二年生だった夏。彼が海外出張する三ヶ月間だけ「預けるからな」と、不意に僕に貸し与えられた。 前にも、幾度かこの車に乗せてもらったことがあった。最後に乗ったのは中学の頃だったと思う。シートに落ちていた茶色い犬の毛が、着ていたセーターにべったり付いてなかなか取れなかった。それでも、大型犬を乗せたスティングレイを運転している彼の姿を想像して「格好いいなぁ」と思ったのを覚えている。 とにかく、僕にとってはこの車が彼と彼の暮らしの象徴のようなものだった。大学を出てすぐに渡米し、向こうの生活を経験していた彼は、例えば親父と比べてひどくスマートに見えた。 身近にそういう人物がいる。ただそれだけで晴れがましいような気分、逆に自分もあまり冴えない真似はできないという気分。そんなものを、ずっと抱えていたような気がする。 それだけに、このスティングレイが自分に預けられるということが嬉しく、誇らしかった。 「ぶつけるな。こするな。ワックスを欠かすな。それから」 日本を発つ二日前に、彼は僕にそう言い渡した。 「絶対に、幌をかけるな」 喫茶店の窓際のテーブル。植え込みの向こうに、シアンメタリックのスティングレイ。三ヶ月間、僕に任せられることになったその車に目をやりながら、彼が続ける。 「あの車の幌はファッションで付けてるんでな。そもそもコンバーティブルとかカブリオレってのは、幌をかけるぐらいなら乗らないほうがマシだ。ま、英車のドロップヘッドとあいつじゃ性格が違うけどな。寒い中ロードスタージャケット着込んで乗るみたいなストイシズムは似合わないだろ? 暑い盛りに乗るのがいいんだ。ともかく」 窓の外から、テーブルを挟んで座った僕の顔に視線を移す。 「雨が降りそうだったら乗るな。出先で雲行きが怪しくなったら帰って来い。全速力で、だ」 全速力と言われても、と思ったのが僕の顔に出たのだろう。叔父が付け足す。 「心配するな。こっちに持って来てからエンジンもボディもいくら掛けたか判らん。足周りだけはいまひとつだけどな、まぁ百マイルぐらいなら大丈夫だ」 パワーユニットだけなら、翌六七年式、四二七キュービックインチのエンジンを積む型のほうが強力だ。が、わざわざバランスを考えてややパワーに劣るこの型にしたんだと、彼は説明した。 「でも」 僕が、ずっと疑問に思ってたことを聞いてみる。 「なんで僕が?」 アイスコーヒーのグラスを持ち上げながら、叔父が言う。 「お前の父親があいつに乗ると思うか?」 僕が首を左右に振る。 「だろう? 仮に預けておいたとしても、三ヶ月間あいつはエンジンもかけてもらえないかも知れん。仲間はみんな自分の車持ってるからな、あんな大きいのがもう一台となると面倒だろう。だから」 彼が左手のストローでグラスの中の薄くなりかけたコーヒーを掻き回す。 「自分用の車を持ってないお前なら乗ると思ってな。免許取り立てと新婚夫婦ってのは、とにかく乗っかりたくてたまらないって相場が決まってるんだ」 叔父は一度として「新婚生活」などというものを経験してはいないはずだったが、とにかく彼の言う通りだった。半年前に免許を取ってから、親父の車を借りて乗るだけだった僕の中で、ようやく「自分の車が欲しい」という思いが大きくなり始めていた。 「ほら」 スティングレイのボディカラーに合わせたのだろう、ライトブルーのブルゾンの左のポケットから、彼がキーホルダーを取り出す。がちゃりと音をたてて、それがテーブルの上に置かれた。 「大事に乗ってやってくれよ。あいつのこの夏を、お前に預けてやるんだからな」 「隣、誰か乗せるの?」 典子がそう声をかけてきたのは、初めてスティングレイに乗って大学に行った、その日の午後だった。 高校が一緒で、一年だけクラスも一緒になった。同じ大学に進んだが、学部は違っている。彼女については、本当にそれだけの関係でしかなかったはずだった。 「そういう趣味だったとは思わなかったな」 彼女が聞く。おおかた予想はついていながらも、僕が聞き返した。 「そういう趣味って?」 「だって、そんな車」 この時、正直に「借り物だよ」と答えられなかったのが、三ヶ月後の僕をひどく悩ませることになる。 そう言えなかったのは、スティングレイのパッセンジャーシートに座った彼女と、その左でステアリングを握る自分の姿を想像したからだ。その想像があまりに魅力的だったばかりに、僕は彼女に対して「叔父のように格好いい自分」を演じてみせたくなった。 「乗るかい、何なら?」 「乗っていいの?」 「どうぞ、My fair lady」 「あはは」 彼女が口を抑えて、笑った。 「似合うね、その車」 「そうかな?」 「うん。なかなか、ね。ほら、開けてよ。ドア」 「うん」 カーマインレッドの革のシートに、彼女が腰を下ろす。 「凄いね。このへんのスイッチとか、メッキが」 センターコンソールを興味深そうに覗き込んでいた彼女が、顔を上げて言った。 「これって」 「どれ?」 「ハチトラってやつ?」 「そう」 助手席側のダッシュボード下に吊り下げられた、大仰な作りのカーステレオ。叔父が置いていったThe Venturesのカセットが、突き刺さったままになっている。 「初めて見た」 そう言って、彼女が適当にスウィッチを押す。 「鳴らない」 「エンジン掛けてないから」 「掛けてよ」 うなずいて、僕がキーを捻る。セルモーターが回る。どぅっ、と低い響きを起ててエンジンが目を覚ましかける。 「あれ?」 回り始めたエンジンが、ぐぅっという情けない音をあげて止まってしまう。焦ってもう一度セルを回してみる。高い音でモーターが回る。が、掛からない。 「どうしたの?」 メーターパネルを睨みつけて、キーを捻り続けている僕を、にやにや笑いを浮かべながら彼女が横から見つめているのが判る。 「参った」 「掛からないの? エンジン」 皮肉っぽく、彼女が言う。 「もう一度、やってみる」 叔父が出張しているニューヨーク市。そのニューヨーク市民が等しく見上げる自由の女神に祈りつつ、キーを捻る。 ぐんっ、とスティングレイが震えて、大きなV型八気筒のパワーユニットにようやく火が入る。最初はどうっ、どうっと不規則な動悸を繰り返していたエンジンが、やがて脈を整えた。 「掛かったね。おめでとう」 「おかげさまで」 この場合、横に座った彼女が女神の化身ということになるんだろうか。有名な彫像が右手に掲げる松明が、スティングレイの心臓に生命の火を灯してくれた。僕はそう考えることにした。 ようやくスティングレイの体内に行き渡った電流がカセットのリールを回転させ、今となっては工夫の無いというか、素朴なサウンドが、リアにマウントされたスピーカーから響き始める。 「Venturesって、やっぱりVenturesねぇ」 当たり前のことを、彼女がつぶやく。 「でも、何かいいよね。こういう天気の日にさ、こういう車で聴くってシチュエーション、あんまり無いし」 彼女が僕に笑いかけながら、言った。 「ね、どっか連れてってよ」 「はいはい。どこがいい?」 初夏の日光という格好の光源を得たクロームの被膜が誇らしげに輝く。叔父が磨きに磨き、昨日僕も磨いたスティングレイの広いボンネットの塗装も、それに負けじと光る。 「海!」 有無を言わさぬ口調の彼女。そういえば、と僕は別の女神の姿を思い出した。絵の中で、男たちの先頭に立って戦旗を振りかざし、士気を奮い立たせる勇敢な女神。やっぱり彼女はその化身かも知れない、などと胸の内で呟きつつ、セレクターをDポジションにスライドさせる。 低回転から発生する太いトルクを、車軸が受け止める。扁平なタイヤがアスファルトを掴み、重いボディを押し出す。 「別の景色に見えるよね。こういう車からだと」 見慣れたはずの大学の構内。さっきまで退屈な講義を聞き流していたコンクリートの校舎。スティングレイのエンジン音に驚いて振り返る学生たち。 確かに、彼女の言う通り、別の風景だった。スティングレイに乗っているから、だけじゃなくて。多分に同乗者に原因がある。 よく笑う、と思った。彼女と同じクラスだった一年間を振り返っても、こんなに笑顔を見たような記憶は無い。そもそも、ろくに話をしたことがあっただろうか。 とにかく気が強い。彼女に対しては、何よりもそういう印象を受けていた。クラス委員でも何でもないのに、何かのイベントの時には彼女が自然とその中心近くにいた。女子と男子で意見がぶつかった時、「女子代表」を買って出て、人数的に劣る女子側の意見をややヒステリックなまでに主張するのが彼女の役割だった。 だから男子生徒に敬遠され、目の敵にされることもあったし、女子の一部からも「出しゃばり」と陰口を叩かれているとも聞いた。 「あのさ」 その彼女が口を開く。 「あ、やっぱいいや。また今度で」 大学の敷地は、街から離れた台地の麓に位置していた。ここから真南の海にまで出るには、商店街を抜ける旧国道か、先月開通したばかりのバイパスという二つのルートがある。ごみごみした商店街にスティングレイを乗り入れるのは、愚行以外の何物でもないだろう。 「思ったより巻き込まないね、風」 あの喫茶店からの帰り道に、僕も経験した驚きだった。黙ってうなずきながら、径の大きなステアリングを右に切る。分岐点を通り過ぎて、真新しいアスファルトの舗装路に乗り込む。 「それにさ」 ドアの上に、ノースリーブから伸びた、まだ日焼けしていない腕。 「当たり前なんだけど、色んな音が聞こえる。屋根が無いって違うね」 Venturesの「Walk don't run」。エンジンの鼓動。すれ違う車の風切り音。木の葉の揺れる音。遠くの踏切の音と、列車の通過する音。 「もうすぐ」 緩い右カーブの坂道。彼女のお喋りを遮って、僕が言った。 「ここを抜ければ」 「海!」 彼女の歓声。坂道を登りきったカーブの終わりから、太平洋が見渡せる。ウィンドシールドの向こう一杯に広がる水平線。波頭の白と、夏が本番になる前特有の、やや明るいコバルトに染められた水の色。向かい風が運んで来る黒潮の匂い。 「すっごーい! 凄いね!」 うわずったような声。彼女がシートから乗り出そうとする。 「危ないって!」 「ごめん、興奮しちゃった。でも」 彼女が浮かせかった腰を戻し、照れ笑いを浮かべて言った。 「初めてだったから。こんなの。ずっと住んでたのに」 彼女が心底楽しそうに見えた瞬間。決定的だった。 僕のことをどう思っているかは判らない。「スティングレイに乗って来た男」としか認めていないかもしれない。このスティングレイは叔父からの借り物で、三ヶ月後には返さなくてはならない。彼女にはその事実すら伝えていない。それを知ったときの彼女の反応も想像できない。けれど、もう引っ込めなくなっていた。 「あのさ」 僕が口を開く。そういえば確か、さっき彼女が同じ言葉を口にしたような気がする。その彼女は、まるで子供のように、ウィンドシールドの向こうの景色に夢中になっている。 今、言うべきなんだろうか。 「ねぇ」 躊躇している間に、彼女がアドヴァンテージを取る。 「埠頭まで、行きたい」 その夏が、終わろうとしていた。来週には叔父がニューヨークから戻って来る。同時にこのスティングレイも、本来の持ち主のもとに戻ってしまう。 彼女とは、なし崩し的につきあっているという状況。天気の良い日のスティングレイの助手席には、ほとんど彼女が座っていた。我ながら驚いたのは、彼女の存在が決して鬱陶しく感じられなかったこと。一緒にいて、これほど負担にならない相手というのは、今まで性別を問わず会ったことがなかった。 それだけに、夏の終わりが近づくにつれて、心の一角が締めつけられるような不安が強くなっていた。 スティングレイを失う。それがイコール彼女を失うということになりはしまいか。ただそれだけが心細く、早目にこのスティングレイが借り物だと言い出せなかった自分が呪わしかった。 「あのさ」 言うべきなんだろう。言わなくちゃならないんだから。 「このスティングレイなんだけど」 「この車?」 親父の車と比べたら信じられないほど燃料を食う、パワーを持て余し気味のスティングレイ。到底僕の力でねじ伏せることもできるはずがなく、車に乗せられているようなものだった。だから、あの日彼女が「似合う」と言ってくれたことだけが、世辞であったとしても誇らしかった。 「そう」 「どうかしたの?」 彼女が、聞く。 「ちょっと、訳があってね」 僕が良い淀む。 「ワケ? 何よ?」 じれったそうな彼女。強い調子の、苛立ったような声。 「来週」 彼女の目を見ずに、言う。 「返さなくちゃならない。持ち主に」 ほんの短い休符すら、挟まる間が無かった。 「ふーん」 こともなげに、僕のほうを見ながら彼女が言う。 「それで?」 それで、と言われても。当惑しながら、言葉を続ける。 「だから、来週には返すんだ。叔父さんとこに」 「それって何か関係あるわけ? 私と」 「いや」 横目で、彼女を見た。 「関係ないじゃない」 いつもの通りの海岸沿いの国道。ウィンドシールドの向こうに広がるその風景に目を移して、彼女が言う。 「何か後ろめたいの?」 「隠してたから。典子には」 「バカ」 突き放すような口調。 「私、何も聞かなかったじゃない」 彼女が、足を組み替えながら続ける。 「別に私に嘘ついてたんじゃないでしょ? どうしてそんなに済まなさそうに言うの? それとも」 もう一度、彼女の視線がこちらに向いたのが判る。 「私が車目当てで貴哉とつきあってたとか思ってるわけ? そんなに自信無いの?」 高校の頃、男子生徒と口論でもしていた時のように、彼女がまくしたてた。 「自信持ってよね。私の彼氏なんだから」 「ごめん」 心の底からそう思いつつ、言った。 「この車、借り物かなんかかなって、あの時からだいたい予想ついてたもの。エンジン掛けられなかったし」 彼女の声に、いつもの悪戯っぽい調子が戻って来る。 「貴哉がこれに乗って来たの見てさ、やったって思った。声かける口実ができたって」 彼女が、頭の後ろで手を組む。 「貴哉って、ちょっといいなって思ってたんだけど。同じクラスだった時からね。でも高校の頃ってさ、男子から避けられてたじゃない、私。もし万が一、貴哉もそうだったらって思ったら、言い出す勇気とか出なくて」 「そんなことなかったのに」 「あはは。おあいこ? 私も自信無かったのかも」 笑って、彼女が言葉を継ぐ。 「だからすごく嬉しかった。言ってくれたじゃない、『どうぞ、My fair lady』って。あの時の声の調子も覚えてる。勇気出して良かったって思ったら、泣いちゃいそうだったもの」 「格好つけ過ぎだった?」 「ううん。格好よかった。それに」 「それに?」 「間違ってなかったって思った。自分の見立て。私って、オトコ見る目あるなぁって」 言って、彼女が笑った。 「でも」 ぎくりとした。この逆接の接続詞の後に、どんな言葉が続くのか、不安でたまらなくなった。 「残念だよね。この車、返しちゃうんだ。来週?」 内心どきどきしながら、黙ってうなずく。 「気に入ってたのに。貴哉の次ぐらいに」 思わず、大きなため息が出た。 「どうかした?」 「いや、何でも。でも何でみんなが典子を敬遠してたのか、判った気がする」 「何それ? どういう意味?」 「心臓に悪過ぎる。何を言い出すか想像がつかないし、どこまで本気か判らない」 「あはは」 彼女が、左手で僕の肩をぽんぽんと叩く。 「ごめんね。でも、性分ってヤツ? ちょっとすぐには治らないと思う」 「OK。我慢する。惚れた弱みだから」 だから、彼女がアメリカに行くと言い出した時も本気にしなかった。僕が本気にしないでいるうちに、彼女は準備を整えていたのだろう。あれから数えて三度目の夏だった。 「次のフライトで行く」と電話で聞かされて、僕は大いに慌てた。 「そういうこと」 受話器から、落ち着いた彼女の声。その後ろに発着便の時刻を告げるアナウンス。 「待てよ、典子」 「待たない。もう時間だし」 「待てって言ってる」 「待たない。今まで楽しかった。あ、貴哉に飽きたとか嫌いになったとか、そういうのじゃないからね。自信無くさないで。忘れないから、私」 「典子!」 「じゃ、切るね」 それきり、彼女が僕の前から消えた。それは動かしようの無い事実だったが、あまりに鮮やか過ぎてまるで実感が沸かなかった。彼女がアメリカのどこに行ったのか、それすら僕は知らなかった。ただ確信できたのは、僕自身が彼女の中の優先順位で「何かの次」になったということだけ。 それからまた数年。僕宛てに届いた一通の航空便。カリフォルニアの州都から投函されたその手紙の差出人が、彼女だった。 「じゃ、切るね」 「ああ。おやすみ」 「貴哉」 「ん?」 「こういう時の決まり文句ってあるじゃない? 貴哉に、言ってほしい」 さすがに、言葉に詰まる。 「言って」 「おめでとう」 万感の思いを込めて、一言づつ。 「末長く、お幸せに」 「うん。ありがと」 受話器の向こう。太平洋を隔てて、彼女が電話を切る。 日本時間の明朝、午前五時。サクラメント市二十四番街の教会の鐘が、彼女と、彼女の夫になる男のために鳴らされる。 太平洋を隔てて、僕が祈る。 二人に、幸の多からんことを。 |
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