知っておきたいカナンの人々

そして彼らはカナンを動かす


 私は旅の講釈師。口先一つを財産に、昨日は東今日は西、旅から旅への根無し草。明日には別の街に出る。ここの街での講釈も、これが最後だ聞き逃すなよ。私は旅の講釈師。

●アナナ
(C40140/女性/芸人)
 アナナは、ハンムーの幼年王ハルシャの愛人だ。正妃ウラヌニが生きていた頃から愛人だったりする。そもそもその愛人の座を得たきっかけが、ハルシャとウラヌニの婚儀の席で踊ったことだったっていうから大胆だ。性格は情熱的で人なつこいらしいけどね。腰まで届く長い髪に、かぐわしい香りが特徴だというから、ハルシャもくらくらっときたのかな。まあ、当時ヴォジクの捕囚も同然だった王としては、愛人でも何でもとにかく自分の動かせる人間が欲しかったって事情もあったのかもしれないが。
 何にせよ、王への影響力の大きな立場という意味では重要人物と言えるだろう。ハルシャの第2夫人のナジュマはいろいろ問題のある人物だし、せっかく自由になれたハルシャ王もまた何やら企んでいるしで、アナナも気の休まる暇がないだろうね。
 まあ、10歳になるかならないかの国王の愛人になろうっってんだ、それぐらいの苦労は当然かもしれないがな。(8月期D−1−1)

●イルイラム
(C40253/男性/武人)
 イーバの滝ってのを知ってるかい? ヴラスウルの山奥にあってな、陸路じゃ辿りつく道も無いってぇ辺鄙なところだ。そこじゃ呪人たちが集まって、おのれの技を磨くための修業をしているんだと。そういえばちょっと前にはそのイーバが山賊だか何だかに襲われたって話もあったよな。その後、闇の領域が出張って来たりでさすがの呪人たちも町場のほうへ避難したってことだが、その呪人たちのまとめ役になっているのがこの人だ。
 銀糸と見紛うってぇ程の見事な銀髪でな、見た目は話し掛けるのもちょっと憚られるって感じだ。神々しいって言うのか? まぁ腕の立つ呪人なんてのはみんなそうかも知れんがな。それからこいつぁあんまり大きな声じゃ言えんことだが、どうも何代か前に魔族の血が入ってるみたいだな。もしかするとそれを抑え込めるために自分で呪人の道を選んだってことも考えられるな。おっと、勘違いしてくれるなよ。だからってこの人が物騒な人だって言うわけじゃない。この人の一番の仕事はなぁ、闇に間近いイーバの滝が、魔族の被害を受けないようにってんで結界を張ったことだ。自分の両目を供物にまでしてな。世のため、人のためってのはこういう人のこったろうな。
(8月期C−1)

●ソヴァ
(C40038/男性/武人)
 ソヴァはカヤクタナの将軍だ。ついこの間、モロロット2世王から委任され、カヤクタナを代表してクンカァンのセセラギ・クォン将軍やその他の勢力の代表と会談を行ったのが、このソヴァ将軍なのさ。これまでの軍功に加えて、この会談を成功させたこともあり、モロロット王の信頼も厚い。噂じゃ、王は彼をメルレス太守に望んでいるって話だ。いずれにせよ、これからのカヤクタナを背負って立つ人間の一人であることは間違いないね。
 そのソヴァ将軍がどんなお人かというと、豪快で親分肌、肌は日に焼け、武人らしく全身に傷がある。得物は金棒。それに、優れた革鎧を持っている。もちろん従軍経験は豊富だ。武人というと最近は傭兵が目立つが、ソヴァ将軍は生え抜きの王国武人の出身。王が信頼するのも頷けるな。
 ところで、関係ないが、カヤクタナには確かウドゥンって人がいたな。ソヴァとウドゥン、なんか2人並べると妙にゴロがいいような気が……。
(8月期Z−0)

●メイヤメイヤ・スグナ
(C40014/女性/貴人)
 カナンが今後どうなるのかは誰しも気になるところ。特に、クルグラン亡き後のクンカァンはどうなるのかが問題だ。とりあえず、例のソヴァ将軍たちの会談で戦勝国のカヤクタナは、オロサス家、つまりクルグラン出現前のクンカァン王家から新王を立てるよう要求したそうだが、セセラギ将軍にそこまで決定できる権限はない。では、クンカァン本国に王の候補がいるのかというと、実はいる。少なくとも、その一人と言えるのがメイヤメイヤ・スグナだ。名前からも判る通り、スグナ家、つまり旧テガーナ王家に連なる貴人だな。
 いかにも貴人らしい優雅なものごしややわらかい声は、確かに女王の風格があるかも知れない。もっとも、実は暗殺者として生きてきたという話もあり、冷酷非情だとか、微笑みは氷のようだなんて言う者もいる。
 最近、腕を切り落とされたとか、懐妊しているとも聞くが、動向の注目される人物であることは確かだな。
(8月期F−0)

●ナグウェン
(C40058/男性/商人)
 バーブック亡き今、ヴォジクも大変だ。そのヴォジクの都ムチリジノトルを今牛耳っているのはシャイレンドラ党を率いるティアンだが、確か彼女は前にも紹介したな。
 あとあちらで重要な人物というと、そうだ、クロムル家の婿となった“ヤドカリの”ナグウェンがいる。
「味方につけるべきはやはり民衆、王だの大商人だのはいつか倒れる」
 というのが彼の持論で、確かにバーブックが倒れているのを見ると見事な見識なのかもしれないな。それを実行するように、奥さんの懐妊祝いの宴では庶民にも大判振る舞いだった。
 このナグウェン、楽観的な割に几帳面で、目が細く、肌はよく日に焼けている。貴人にも人脈が広い一方で、丁稚奉公の経験もあり、庶民の心にも通じているってところかな。
(8月期E−0)

●ファルコ
(C40019/男性/盗人)
 もうよく知られているように、最後の神の肉体ともいうべき巨人の中に魂が入り、最後の神となったのは、少年盗賊のナッフだった。そしてナッフにそうするように頼んだのは、少年盗賊団の仲間の一人ファルコだと言われている。
 見た目はちょっと神秘的な雰囲気の美少年。性格は熱血で、好戦的だそうだ。1羽の鷹を友として連れている。このファルコ君、昔のつきあいのゆえか、最近も最後の神ナッフの声を直接聞いたそうだ。クマリ様でも神人でもない一介の浮浪児が神の声を直接聞くなんて、そうそう滅多にあることじゃない。もしもこれからも最後の神との交信が頻繁にあるとすれば、これはものすごいことだ。近くクマリ様がウラナングに戻ると言われちゃいるが、今ティカン神殿は今ろくに神殿として役割をはたせる状態じゃない。だからファルコ君はカナン世界にとっても重要人物と言える。(8月期A−0)

●マセウス
(C40178/男性/武人)
 今その動向が最も注目される勢力、それはマセウス将軍の軍だ。クルグランの死後、彼は、ヴォジクのバーブック王に投降することで、一触即発の諸勢力から戦力を温存することに成功し、ドゴンドッチに移動した。さらにそのバーブックが死んでしまい、結果的に彼の手にはクンカァン軍残党の主力が残されたのだ。戦乱と政治的混乱からっようやく立ち直ろうとしているハンムーには、これに太刀打ちできる戦力はないという情報もある。
 この将軍は、鋭い目と何よりも顔の刺青で一目でわかる。ちょっと話せば高飛車な人間であることもすぐわかるだろう。まだ将軍になる前の一介の傭兵だった頃から、誰と話す時でも自分のことを「俺様」と呼んでいたってぐらいだ。それと魔族の血を引いているが、それをむしろ誇りにしている。
 ハンムーの、いや、カナンの行方の鍵を握っているのは、そういうおっかない将軍様ってわけだ。はてさて、この先どうなることやら……

 というわけで、ここでの私の講釈はこれで終わり。だが、これからも多くの語るべき人が出てくるだろうよ。私がすべてを語り尽くす時は、いつまでたっても来ないのさ。さてさて、私は旅の講釈師……。


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