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b98526a:東京深夜26時の車内にて


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Today's Relish:

Today's Story:


天気予報があたり真夜中に降りはじめた雨は

勢いを失うことなく降り続けている

夜も更けているのでそのまま眠ろうかと思ったが

タクシーの運転手が印象的だったので

それを書き留めたくなったのだ

とりあえず……

つまみは葱焼き

表面に少々色付く程度に焦げ目をいれ

シャキッと

そして内からは甘みのあるジューシーなネギの香り

もちろん軽くふった塩は挽きたて

 

もう一品は冷蔵庫で保存しておいた塩辛

賞味期限が半年異常先

異常は誤字ではない

便利だがいただけない

日持ちの秘訣はこの強烈な塩分だけにあらず

つまみは必然的に葱焼きにもどる

 

酒は身体をいたわり軽めに

はじめはロックでつくってみたが

日々飲みつづけている身体には濃度が高すぎる

じっくり寝かされた泡盛の古酒の年月は

水で割っても楽しめる

原料は米

最後の一杯だけにじっくり飲んでしまう

 

焼酎の変わり種を先日飲んだ

昆布焼酎

名前の通り口に含めば昆布の香り

ただし昆布を原料として100%使うことができないのか

極めて珍しい「甲乙混合焼酎」という表記

「電気ブラン」で有名な合同酒精のユニーク焼酎だ

一度話のネタに試してみるには最適

 

さて、遡ること今日の帰路

タクシーに乗ったの時のこと

おもむろに会話ははじまった

「落花生のうまい飴があるんですよ、どうぞ」

いきなり一人乗った車内で出されたのは

封の空いキャンディーの袋

市販されている商品であることは分かったが

いきなり乗ったタクシーで

しかも

空いた袋の口をセロハンテープでとめてある状態で

即座に勧められ

驚かずにいられるわけがない

とはいえ、好意を感じる話し方に

むげに断る気にもなれず

「では、ひとつ」

「袋毎全部どうぞ」

あやしさと緊張増幅の瞬間……

しかし、

もう口に含んでいるわけで

いまさら出すのも信義に反する!?

疑う気も生まれぬくらい

「おいしいから食ってみてよ」

という相手の意志が不思議なことに伝わってくてしまったのだ

 

もちろん車内では飴の話もした

某ロッテ社の社員が

「うちの飴ではかなわない」

といっていた話もあった

落花生の産地といえば千葉

という常識も確認した

 

口の中でその飴は崩れ始める

つかれたからだには

控え目な甘さと

ふんだんにつめこまれた落花生の「実」が

優しく身体にとけてゆく

 

一つめを食べおわるころ

クルマは既に我が家のドアの前

「ごちそうさま、おいしかった」

残りを返そうとすれば

「もっていってよ」

やっぱり最初からこの袋ごともたせるつもりだったようだ

またしても理由なく断る空気はなかったが

「いやいや」

といえば

ダッシュボードを開け

「ほらっ、こんなにあるんだから」

そこには何パックもの飴が…

結局2袋をいただいた

「奥さんのみやげにもってってよ」

家で自分の帰りを待つかみさんなどいないが

多くを語ることなく

「じゃあ」

と、うれしくありがたくいただくことにした

飴代など請求されていない

運転手は歳老いた個人タクシードライバー

b98526a1

  

雨る深夜・都心での1シーン

ここにある証拠写真で

この不思議なストーリーの締めくくりとしたい

 

 


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