注水が終わり、ドックが完全に水没した。各機のMSBSが水中対応モードへと切り替わる。
 ゴゴゴ……と地響きにも似た音と共に、ハッチが開放された。VRが動く度に、水面が波打つ。
 各機がキャリアーを飛び出し、一機残されたバル=バロス。
 フィィィィ……ン!
 プロペラが回転し、水の流れが激しさを増す。
「バル=バロス、出ます!」
 白い水の尾を率いて、バル=バロスが発進する。登場している泉水の顔は誇らしげで、十七歳の少年の顔をしていた。本当に嬉しくて仕方ないのだろう。そして、水中での機動力を見せつけんと、誰よりも先に、今回の戦場となる「アンダーシープラント」へ辿り着いた。
「なんか不思議な感じ〜」
 フェイ=イェンを駆る、同じ飯田隊の千羽矢が続く。動く度に関節部分に入り込んでいたと思われる空気が泡となって、水中に舞う。
 フィーリングなどは地上にいる時と、何ら変わりはない。だが、スペシネフに登場している蒼我恭一郎を始め、既にこのプラントの特徴に気付いている者がいた。
 ジャンプの高度が出ない。
 元々、水中での稼働を目的としているバル=バロスは除き、水圧による弊害であろう。こちら側に瀧川隊(バイパーUやサイファー)を回さなかった司令緒方豊和の采配は、見事としか言いようがない。
『敵機反応確認』
 オペレーター日向友紀の声が、インカムを通じて全員に伝わる。
『相手は?』
『ドルドレイ一機、エンジェラン一機、バル=バロス一機、もう一機は…恐らくサイファーです』
「じゃ、その同型は僕がもらうよ」
 泉水がさも当然のように宣言した。
「おがっち、それでいい?」
 泉水の上司でもある飯田成一が、緒方に「お伺い」を立てる。
『そうだな。相手もわざわざ狙ってきたくらいだろう。ここはその歓迎を受けるのが男だな』
「よっしゃ! んじゃ、お先に!」
 地上から送られてくる情報を頼りに、敵機の出現予測ポイントへ急ぐ。
「成ちゃん」
「何?」
「久々に組まね? 前に俺がZi=Killにサポ入って以来だけど」
 重戦隊隊長・菊地哲が成一に呼びかける。短期間ではあるが、Pパイロット時代、成一と鉄は同じチームにいたことがあった。サポートに入る以前から二人は交流があり(もちろん一郎や藤崎も含まれる。緒方と知り合ったのは、もう少し後の話だ)、所属チームぐるみでの付き合いが多かった。アーケードの野試合やエキシビジョン等で組むことはあったが、公式な戦闘ではいったい何年ぶりだろう。
「おがっち、いいよね?」
 成一も、哲と組む事に何ら不満はない。むしろこちらからお願いしたいくらいだ。今後の展開などで単騎出撃もあり得ることを考えると、タッグを組むなら今回が最後、と言うこともある。チャンスは今しかない。
『全然OK。俺も久々に見たいくらいだし。んなら、ドルドレイ行っとく?」
「いいね〜 同機体歓迎! ヤツらのことだから、相当骨のあるの出してくるだろ」
『なら二人はそれで。あとは千羽矢と蒼我でエンジェラン、水無月とアリッサでサイファーに当たってくれ。特に水無月はアリッサの分までフォローを頼む』
「了解しました」
『よし、なら全員出撃!』
「飯田成一、出ます!」
「菊地哲、出るよ!」
「竜崎千羽矢、行っきま〜す!」
「蒼我、出ます」
「水無月、行きます」
「……行きます……」
 遠くでマインが爆発した。泉水が敵機と交戦し始めたのだろう。各機も直ちに分かれ、配置につく。

 「Operation Alice」第二戦、アンダーシープラント。開戦



 メタルブラックとスレートグレイ、二機のバル=バロスが縦横無尽に海底を駆け回っている。
 今回の出撃に当たり「ある事」が注意された。
 一つは「レーザー兵器の威力が非常に弱くなること」。
 もう一つは「実弾兵器の威力が倍増すること」。
 バルシリーズのマインも例外ではなく、ノーマルのマイン一発でも派手に爆発した。
 しかし、バルシリーズの主力は、リフレクトレーザー、ラピッドレーザーと言った、レーザーへ行きに頼る部分も大きい。低下した攻撃力を如何に補うか。パイロットの技量にもかかってくる。
 両名ともその点については重々判っており、遭遇するや否や、早々にマインがエリアを埋め尽くした。その隙間を縫って、リングレーザーでマインを相殺する。
「さすが泉水優輝…… BBBシステムの申し子と呼ばれるだけはある……」
 橋立は、初めて戦う泉水の実力を、素直に認めざるを得ない。泉水はOMGには参戦していないが、アーケードでは天性の才能で全てのVRを使いこなしていた。年齢、およそ九歳。特にバル=バス=バウとの相性は群を抜いて良かった。Pパイロットライセンス取得後、初めて出場した大会がランダムバトル世界大会。それも初出場で初優勝。初代「マシンチャイルド」染谷洋和の再来として、Blau Stellarに鳴り物入りで入隊した。まさに天才である。
 橋立は反対に、努力の積み重ねでここまで腕を上げたタイプだ。全ての機体を試し、自分では不向きだと思っていたバル=バス=バウが一番相性が良かったのだ。元々パズルなどの頭脳ゲームが好きな橋立は、ERLを使い、空間を自分の思うように支配出来るバル=バス=バウが、まるでパズルのピースを埋めている様に戦うことが出来、実は自分に合うのがバル=バス=バウであることにようやく気付いたのだ。実力を付け、頭角を現し始めたのも、バル=バス=バウをメインにしてからだという。
 二人とも、まるで遊んでいるかの様にフィールドを駆ける。バルシリーズのパイロットは、特に戦闘をアーケードでの対戦の延長に捕らえる傾向が強い。
「僕のバルを相手にして、どこまでついて来れるかな?」
 泉水はまさに、典型的なパルシリーズのパイロットだ。相手を翻弄させ、自分の戦いやすいスタイルに持ち込んでいく。そうして数々の勝利を手にしてきたのだ。
 しかし、今回は自分にとっては新型機に移行してからの初陣。しかも対戦相手は同機体。自然と似通ったスタイルになってしまい、なかなか自分の勝ちパターンに持ち込めないでいる。それでも、手は緩めない。バルシリーズには、行き詰まってもまた新しい手を使い、現状を打破出来る可能性がたくさん詰まっているからだ。
 だが、忘れてはならない。これは戦争。負ければ、自分達に明日はない。
 それでも、楽しいのだ。戦争という目的を超えて、二人はこの対戦を楽しんでいる。不謹慎と思われても、「命」というコインを賭けて、二人はゲームを楽しんでいるのだ。



 アンダーシープラント、ポイント761。菊地哲のドルドレイと、飯田成一のアファームド=ザ=バトラーが辿り着いた。
 水中最適化モードになっているとは言え、水中戦に対して不安がない訳ではない。万一の非常時も考えられる。よほどのことがない限り、大丈夫だとは思うのだが……
 地上と違い、外部音声はほぼ無音の状態だ。不気味な静寂に包まれる。
 距離300m。二機の眼前に蒼いファイヤーボールが突然現れた。三回するバトラーとドルドレイ。続けざまにファイヤーリングが襲いかかる。
「ぎゃははははははははッ!!」
 インカムから耳をつんざく様な笑い声が響いた。わざわざオープンラジオを使ってくるとは、気がおかしいとしか思えない。
「たまんねェなァ。手前ェらが俺の相手だなんてさァ」
 聞こえた声は、間違いなく女のそれだ。えづいている様に息が荒い。眼前の蒼いドルドレイも、それに呼応しているかの様に、機体を上下に揺らしている。
「手前ェらのご自慢のブツ、俺の中にブチ込んで来いやァッ!!」
 グレンデルのドルドレイは、その場でジャンプし、ジャンプVターボハリケーンを繰り出した。これが開戦の合図となり、エリアが一瞬にして炎に包まれる。
「ったく、やっかいなのが出て来たな!」
 哲のドルドレイは持ち前の高機動を生かし、何とか敵に一矢報いようとするが、相手もかなり早い。
「二人で絡め手で行かないとね。数の上ではこっちが有利なんだし」
 まず、哲とグレンデルのドルドレイが対峙し、その隙を縫って成一が近づく。ターボマシンガンの爆風で攻撃を相殺し、何とか近距離に持ち込みたい成一だが、グレンデルの切れ間ない攻撃に、距離をなかなか詰められない。さすがにまだ焦る様な状況ではないが、少々やっかいには感じた。
『そいつ、ちょっとまずいかも知れないな』
 緒方からのインカムが入る。
『出来るなら、短期で決めた方がいい』
「なんで!?」
『「エクスタシー型」なんだよ』
 それはMSBSを介し、戦闘による破壊衝動などで性的快感を得るパイロットの俗称である。Vポジティブ値が高い人間程、MSBSから受ける神経的衝撃が快感になりやすいが、殆どが一時的な高揚などの症状で済む(成一がハイパー化を応用したり、Autobahnにおいて神宮寺深夜がボムの爆風からのVフィールド回復から発生した症状がこれである)。しかし、性的快感を受けることを人より強く好む者、破壊症状の高い物などは、その傾向が顕著に表れる。また、好まなくとも性的快感を通常より強く感じる者も同様である。それを総称して「エクスタシー型」と呼ばれているのだ。
 しかも、戦闘が長くなれば、自ずとMSBSとの接続が長くなり、より深く接続することとなる。そうなると、自然とVポジティブ値が上昇するのだ。そして、この手のパイロットは適性が非常に高い者が多く、この程度で「持って行かれる」事はまずないと言ってよい。理論上、「エクスタシー型」のパイロットは、Vポジティブ値が無限に上昇するも同じなのだ(実際にはっきりと「エクスタシー型」と判断されたパイロットは少なく、研究が遅々として進んでいない為、あくまでも理論上の話である)。
「なるほどね……」
 哲が納得した様に苦笑いする。
「一郎なら喜びそうな相手じゃね? あいつも半分そんな感じだし、そういう女タイプだろ!」
「てっちゃん!」
 成一がナパームの爆炎を盾に、グレンデルに近づきながら抗議した。その顔は笑っていた。
「うっぜェなァ、お前ら。男同士でこしょ話してんじゃねェよ!!」
 グレンデルが容赦ない怒鳴り声で割り込んできた。
「…ったく、せっかちだね。そんなに欲しいならイイコにしてないと。痛いくらいデカいのあげないよ!!」
「せ…成ちゃん!?」
 成一の放った買い言葉に、哲は目を白黒させた。決して成一は普段そんな言葉を口にする様な人間ではなく、挑発的でもない(某隊員曰く「誰かさんと違って」)。時々、相手によっては人が変わった様に自ら挑発的になるのだ。
 バトラーが一気に前に出た。グレンデルのドルドレイもそれに乗り、マシンガンや竜巻、ファイヤーボールの応酬となる。哲はその動きを見失わないよう、サポートに入った。
 グレンデルのドルドレイも高機動カスタムを施しており、成一のバトラーと余裕で渡り合っている。これには元祖高機動ドルドレイを駆る哲も感心した。彼のドルドレイ「Greddy III」には劣るが(哲の場合、基準が瀧川一郎のバイパーUの為、ある意味規格外ではある)、成一のバトラーや、恐らく藤崎のテムジンと比べても、遜色ない機動力だろう。
「いいよお前…こんなに感じる男は父上以来だぜ!!」
 恍惚の表情を浮かべ、得意のジャンプVターボハリケーンを繰り出した。
「気持ちいィィィィィィィィィィィッッッ!!!」
 グレンデルは攻撃力の高い技、例えばVターボハリケーンやドリル特攻等を使っている時が、最もエクスタシーを感じる。即ちVポジティブ値が急激に上がるのだ。攻撃による硬直も少なくなり、油断すると、逃げ場を失いかねない程、攻撃を仕掛けてくる。
 そして、成一と哲には少しずつ異変が起こり始めていた。グレンデルから発生される精神ノイズにより、二人にMSBSに接続障害が出始めているのだ。思う様に機体が動かず、僅かなダメージが蓄積し始める。

「友紀、何とかならんのか!?」
「そんなこと言っても! 防護フィルターは最大まで上げてるわ!! これ以上は正直どうすることも……」
 仲間の危機に、緒方も友紀も、持てる物を総動員して成一と哲をサポートする。だが、相手のノイズが強力すぎて、為す術がない。
 −こんな時に……
 友紀は思わずキャリアーの天井を見上げた。きっと、今この空の上で戦っている彼女なら、きっと手を尽くしてくれるはず……

「がぁぁぁぁぁっっ!!」
「てっちゃん!!」
『哲!!』
 哲の激しい苦悶の声に、友紀の意識も引き戻された。
 成一がグレンデルとの距離を引き離されている間、哲とグレンデルが真っ向になった。グレンデルの放ったクローに完全に動きを封じられ、ドリル特攻を真正面から食らったのだ。しかもグレンデルはドリル特攻における硬直を全く発生させることなく、次の攻撃につなぐことが出来る。密着状態からクローで掴まれ、ドリルで殴られた。一気にダメージが入る。
 グレンデルのドルドレイはクローの拘束力を、攻撃力を多少犠牲にして最高レベルまで上げている。恐らく、これは世界でも類を見ない。一度捕まれば完全に動きを封じられ、身動き一つ取れない。これにドリル特攻を組み合わせることにより、相手に密着し、強力な近接に移行することも可能だ。グレンデルはこのコンビネーションを得意とし、ドルドレイにしては近接攻撃の頻度が非常に高い。
 この戦いぶりは、遺伝子上の母・Königin Rを彷彿とさせる。そして、当のグレンデルはドリルがヒットしたと同時に、モニタリングしていれば耳を塞ぎたくなる様な声を上げ、レバーを握ったままぐったりとしていた。肩で息をし、時々痙攣しているかの様に身体がびくつく。快感の頂上を一気に駆け上がった反動でしばらく動けずにいた。精神ノイズは更に強さを増す。
「地球の男、たまんねェな……」
 身体をぶるっと震わせる。その様は、毛にまとわりつく水滴を払う虎のよう。
「デカいのブチ込まれて…俺もグショグショだぜ……」
 Vアーマーを派手に飛び散らせた哲のドルドレイ。ようやく立ち上がった側に、バトラーが追いつく。
「でもよォ、俺が一人で満足するとでも思ってんのかァ?」
 背を向けていた蒼いドルドレイがこちらを向いた。愛欲の化身。「紅蓮太夫」の名を持つ者。
「次はそのバトラーだ。手前ェのご自慢のブツを……」
 クローの照準をバトラーに向ける。精神ノイズと物理的攻撃の両方からダメージを受けている成一。正直、今までの様に最後に互角に持ち込むのは難しいと考えている。それは哲も同じだ。
「てっちゃん」
「何?」
「墜とされたらゴメン」
「それは俺も同じだって」

「俺の中でブチまけてみろやァァァァッッッ!!」

『きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!』

 ファイヤーボールの爆発音に混じって響いた悲鳴。間違いなくそれは……

「ちーちゃん!?」



 蒼我のスペシネフと千羽矢のフェイ=イェンは、敵の出没予測ポイントに向かい、随分とキャリアーを離れた。
「なんか薄暗い〜」
 水面からは陽の光が差し込んでいるが、その光も少しずつ弱くなり、海底に到達する頃には随分と暗くなってしまっている。
「こういう所って苦手なのよね〜」
 きょろきょろと、少々落ち着かない様子の千羽矢。辺りを警戒する様に進む。
 蒼我は神宮寺深夜に続き、今回も女性隊員とのタッグとなった。しかも、エンジェランに続き、フェイ=イェンとのタッグで、ヴィジュアル的に非常に高視聴率が見込める。しかもフェイ=イェンはようやくロールアウトした新型で、おまけに相手はエンジェラン。プラジナーブランドの姉妹対決に、アイザーマン博士の最高傑作であるスペシネフが加わるのだから、否応なしに視聴者も期待するだろう。
 2人のモニターに、異変を知らせるサインが出た。前方200mにノイズが走る。
 スペシネフの姿が消えた。「DEATH CUSTOM」には熱工学迷彩が標準装備されている。かつて所属していた42危険分子駆除部隊−通称「死神隊」では、任務内容故にその機能を多用していた。
 今回はエンジェランとフェイ=イェンによる混乱に乗じ、スペシネフの高い攻撃力で相手を圧倒する作戦だ。
『蒼我はダブルロックレンジに入るまでは無理しない様に。判っているとは思うけど』
「了解」
『千羽矢はちょっと大変だけど、引きつけ役とフォローに回ってくれ』
「OK!」
 ノイズは徐々に形となり、やがてエンジェランの姿を形取った。蒼我は姿を消しているとは言え、装甲の低さ故に、一旦安全圏に距離を置く。
 現れたエンジェランからは、「冷たさ」しか感じられない。外見は一般的なエンジェランと変わらないのだが、モノトーンでまとめられた機体、赤紫色のクリスタルとダブルスリット、そしてパイロットの「心」を投影しているかの様な佇まい。千羽矢はスロットルを握り直した。グローブの中が汗で滑り、武装であるソード−愚者の慈愛我滑り落ちそうな錯覚を覚えたから。
「さぁ、始めましょうか!」
 心の中にいつの間にか生まれた恐怖を拭い去る様に宣言する。
「言っておくけど、私は逃げも隠れも嘘もつかない、Blau Stellar9012隊の竜崎千羽矢……」
「愚かな……」
 インカムを通じて聞こえてきたのは、殺意。気を確かに持っていないと、一瞬で魂を奪われてしまいそうな。
「我に盾突くとは…… それほどまでに命が惜しくないか」
 感情が全く感じられない。まるでエンジェランの冷たさしか持っていない様な声。感情は不要という事なのだろうか、その声は只の「音」にも等しい。
「ならば望み通り、その魂をAliceに捧げてやろう。その前に……」
 エンジェランは振り向き様に、ダイヤモンドダストレーザー(LTRW)を繰り出した。その先には……
「!!」
 エンジェランの背後には、姿を消したスペシネフが接近していた。ダブルロック距離まであと僅かの所だ。蒼我は紙一重の所で回避したが、こうなった以上、これから先光学迷彩を使った攻撃の有効性は望めない。
「下らん。アイザーマンの造った機体など、恐るるに足りんわ!!」
 エンジェランパイロットであるマリアは、Vコンバーターに合わせた人格フォーマットがなされており、特にエンジェランへの適正を特化して造られたマシンチャイルドだ。O.D.A.の兵士ではあるが、故にエンジェランの生みの親であるリリン=プラジナーには敵ながらも敬意を覚え、逆にスペシネフやサイファーを造った遥香=アイザーマン博士には、強い嫌悪を示す。
「お母様は何の為に私を地上に送ったのか…… 正直理解に苦しむ……」
 しかし、眼前には既に敵機を二機確認している。これを撃破する事が、彼女の任務だ。
「せいぜい私を楽しませる事だな。罪深き人類よ!!」
 スノーマーク(LTLW)が放たれ、フェイ=イェンとスペシネフが散開する。
『随分とまぁ、スペシネフがお嫌いみたいだな』
 デュオがつぶやく。先程のマリアの一言が余程気に入らなかったのだろう。珍しく声に敵意が感じられる。
「相手が何を考えていようと、私達は倒すだけだけどね!」
 アイスピラーをかわしながら、ハンドビームで牽制する千羽矢。しかし、距離を取られるとハンドビームが弾かれてしまう。
「へぇ、随分とお堅いです事!」
 神宮寺深夜は例外として、エンジェランはプレートディフェンダー(LTCW)を張り、長距離からブレス龍や双龍等で仕掛けるタイプが多い。しかもVアーマー値が高いとなれば、地道に削っていくか、Vアーマーに干渉されない攻撃に出るしかない。一番手っ取り早いのは近接攻撃だ。幸い、千羽矢には成一直伝のスキルがあり、フェイ=イェンの近接能力の高さも手伝って、確定どころでの攻撃は外さないタイプだ。これがスペシネフであれば、確実に近接を狙っていくのだろうが。
「蒼我さん! 私が近づくからフォローお願い!」
「了解……」
 返事をした蒼我は、以前深夜のエンジェランと組んだ際も、フォローに回ったのを思い出し、エンジェランの動きを出来るだけ押さえる為、エネルギーボールを大量発生させる。その間を縫ってライフルで牽制するが、やはりVアーマーに弾かれてしまう。
 マリアのエンジェランには、全くと言っていい程隙がなかった。これほどに力上位のパイロットが出てきた事はほとんどなく、かつマシンチャイルドとなればこの戦役に於いてまだ記録がない(Autobahnに出撃した八部衆は別として)。
 単純な「手数」という事であれば、千羽矢と蒼我に分があるだろうが、いかんせん相手側のパイロットにマシンチャイルドがいるなど、a08年に於いては想定外の事である(ちなみに、相手のパイロットにマシンチャイルドや使役獣がいると判ったのは、たまたま緒方が持っていたアーカイブのお陰である。高森尚貴・染谷洋和組が対峙したサイファーパイロット、ソア=ファールズもマシンチャイルドである事は、本人達に伝わっている)。
 基本的にマシンチャイルドと言えば、高いVポジティブ値を持ち、感情がない為死を恐れず、戦役に於いて大量投入が可能な戦力であるというイメージがある。OMG終結後、一部のマシンチャイルドが起こした反乱によって、彼らの人権問題等も含め、マシンチャイルドの生産が世界的に禁止になった経緯もあるくらいだ。
 それを今になり、O.D.A.がその技術を復活させ、実戦投入してきた。彼らの組織が立ち上がってどのくらいになるのかは定かではないが、少なくともO.D.A.の技術力は、VR開発やMSBSのニューバージョン投入等も含め、世間一般やBlau Stellarの想像を遙かに凌駕していると言えよう。
 しかも、マリアの持つポテンシャルは、既存のマシンチャイルドの力を確実に超えている。何しろ、たった一人でサンクチュアリを壊滅に追い込んだのだから。
 千羽矢と蒼我が持てる技をどれだけ出しても、マリアに有効打を与える事が出来ない。それどころか、じわじわとダメージを受け始めている。
「俺が出る」
 蒼我のスペシネフがエンジェランの正面に出る。
「クリーキングは!?」
「通用しないだろう。さっきのがいい例だ」
「……そうでした……」
「サイズが一発当たれば、何とかなるだろう。そうしたら、後は任せる」
 スペシネフがアイフリーサーを構え直し、エンジェランの視界範囲内に出た。
 久々に背筋も凍る恐怖を感じている。相手は確実に手加減をしているだろう。にもかかわらず、自分は30%、寮機も既に40%近いダメージを受けている。相手にも多少のダメージは入っているだろうが、有効打にはなっていない。
 決定打を与えるには、Vアーマーに左右されず、且つVアーマーを削る能力に長けた、サイズを狙っていくか、近接を狙うしかないのだ。
「ほう、次は貴様か。ならば、スケルトンシステムの原子まで破壊してやるわ!!」
 エンジェランが距離を詰めてきた。これは渡りに船だ。どういう戦略があるにしろ、2人には俄然有利になる。
 蒼我は手を緩めずに、動きを牽制する為のエネルギーボールを発生させ、フェイ=イェンと共にその陰からライフルやハンドビーム、ソードウェーブを繰り出す。時折フェイ=イェンがジャンプターボソードハートを出し、緩急のある攻撃を展開した。少しずつではあるが、一方的だった戦況の流れが変わりつつある。
「ほう…… なかなかやるな。ならば、貴様らに敬意を表し、『コレ』を見せてやろう!!」
 エンジェランがフィールドの中央に立ち止まった。正面にフェイ=イェン、背後にスペシネフ。確実に挟み撃ちになるポジションだ。フェイ=イェンは一気のハートビームでダメージを与えようとし、スペシネフはアイフリーサーを振り上げた。
 刹那、エンジェランから目が焼かれる様な強烈な光が発生した。それは僅か数秒の事で、目を開けたそこには……
「な…何よそれ……」
 そこにいたのはエクロージョンモードを発生させたエンジェラン。しかし、その翼は三対。織り込まれたヤガランデ・アイが不気味に鈍い光を放つ。
−今だ!
 蒼我がその隙を逃さず、ターボサイズを背後から繰り出す。エクロージョンモード発動後の僅かな隙を狙っての攻撃。紫色の衝撃波が確実にエンジェランを狙う。

「馬鹿め……」

 ターボサイズがヒットする、と思われた時。エンジェランはまさに「エンジェランらしからぬ」スピードでその場を離脱した。横から前へとバーティカルターンし、高々とジャンプした。水中によりジャンプの高度が出ないのも何のその、このエンジェランにはそんな事お構いなしである。そのまま双龍を召還し、安全圏へと移動する。
 本来双龍は召還された二匹が左右対象の動きをするが、マリアの龍は既に次元を超えていた。それぞれが異なる動きをし、フェイ=イェン、スペシネフを補足し、攻撃する。故にどちらかが囮となって龍を引きつける、と言う事が出来ない。
 今まで彼らが戦ってきた相手とは違う。パイロットも機体も、全てが規格外だ。
 死。
 2人の脳裏を横切ったのは、この一文字だった。



 ライデンとグリス=ボックは、方や光学兵器、方や実弾兵器が主力の、実に対照的な機体である。
 緒方は今回、その対照的な二機を組ませることにより、様々な局面に対し、バイロットがどう対応出来るかを実戦を通じて経験させることにした。
 機体知識は豊富だが、実戦経験にかけるアリッサ。実戦経験はあるが、数に乏しい水無月。まだ年齢も若く、パイロットとして成長の余地のある二人。どういった対戦を見せてくれるのだろうか。

「相手がサイファーみたいだから、出来るだけネットで引っかけて。俺が弾幕張るから。いいかな?」
 ワイプを通してアリッサの表情が見える。いつものことだが、非道く緊張しているのが水無月にも判った。
『敵機反応確認』
 インカムから友紀の声が耳に入る。二人の間に更に緊張が走った。
 海底からダガーが飛んでくる。危なげなくかわし、アリッサが威嚇代わりにバズーカを撃った。水中で派手に爆炎を上げる。
「……………!」
 アリッサが僅かに顔色を変えた。揺らめく水の中に見えてきたサイファーの姿。その姿に旋律を感じた。コンソールをいくつか叩き、水無月よりも早く海底に降り立つ。
「君が相手か」
 アリッサに僅か遅れて降り立つグリス=ボック。オープンラジオで水無月が呼びかけた。
「投降しろって言っても聞かないんだよな。君たちの仲間は皆そうだ。そしていつもこう言うんだ。『誰かの敵討ち』だと……
 君は一体誰の……」
「うるさい!」
 悲痛な叫びがインカムに響く。
「あたしは…親父と…皆と…普通に暮らして…それを……なのに…あんたたちが……」
 敵を前にして、来夢の感情が爆発する。自分でもコントロール出来ないのが判る。でも……

「あんたたちが…あんたたちが……」
 ビリビリと空気が振動する様に、水が震えている。サイファーが淡い光を帯びた。初めは蛍火の様に。それが一瞬、目も眩む程強く輝いた。
「うっ………」
 とっさに視界確保の為の保護シールドを展開した。もし攻撃されて、見えなければ一方的にやられるだけど。
『なんてエネルギーなんだ。まるで重量級の出力じゃないか。二人とも、どうやらあのサイファーのVコンバーターは普通じゃないらしい。気をつけろ。何が起こるか判らんからな』
「了解です」
 防護シールドでやや暗めの視界の中、水無月がサイファーを追った。アリッサは持ち前のライデン離れした機動力で、既にサイファーにとりつこうとしている。電磁ネットをハーフで繰り出すも、僅かな所で逃げられてしまう。
 来夢のサイファーは、よく知られたサイファーとは全く異なる動きで二人を戸惑わせる。ダッシュ初速はドルドレイ並みに遅いのだが、慣性がつく度にその速度を増していく。しかもダッシュ距離が長い。そのせいか、バーティカルターンの回数も多い。
 トリッキーにも感じるこの動きが、本来であれば引っかかるであろうネットも回避されてしまい、ミサイルやバズーカを外してしまう。
 この動きに関係しているのか、攻撃と攻撃の間隔も長いのだ。恐らく、リロードが通常のサイファーよりもかかっているのだろう。
 業を煮やしたのか、水無月のグリス=ボックが攻撃の手を強めた。発光現象の影響もなくなり、防護シールドを解除したが、サイファーは未だ淡い光に包まれている。動く度に、バインダーブレードから光の尾が生まれる。その光に吸い込まれていくミサイル。早くても遅くても、攻撃が当たらない。
 アリッサも小刻みにネットを展開した。エリアに縦横無尽に張り巡らされるも、やはり予測の出来ない動きに回避されてしまう。だが、手を緩めない攻撃は、相手へのプレッシャーにもなる。
 海面からうっすらと差し込む光が、海底の視界に青みを持たせる。水の青とレーザーの青が解け合う。光のイリュージョン。光学兵器にも似た、まるで魔法の様な光景だ。
 それをグリス=ボックのミサイルや、ライデンのバズーカやナパームがかき消す。爆炎が派手に上がり、更にその爆炎の陰からサイファーのフォースビームが飛んでくる。来夢のサイファーは攻撃に回すエネルギーの出力が高く、光学兵器の水中での攻撃力低下をさほど気にしていない。しかもフォースビームは命中精度も高めているので、もしVコンバーターに直撃でもすれば、重量級でも一瞬で行動不能に陥るだろう。
「くそっ! 埒があかない!」
 業を煮やした水無月が、ミサイルをフルリロードから展開した。大型ミサイルが六発。一発でも当たれば、サイファーなら命取りになりかねない。それを援護する様に、アリッサもナパームを放った。海底に火柱が立つ。
 来夢の視界は、ナパームの火柱とミサイルの爆発により、限りなく零に近い状態だった。一セット、二セットと、ミサイルをかわした。しかし、揺らめく視界に飛び込んできたのは……
「きゃぁぁぁぁぁっっっ!!」
 三セット目のミサイルの内、一発が見事にサイファーを捕らえた。しかし、このダメージを与えるまで、グリス=ボックはダガーによる継続ダメージを数回受け、ライデンはバルカンでVアーマーを削られていた。僅かとはいえ、蓄積されたダメージが繰り返せば、大きなダメージとなる。いくら今効果的なダメージを与えたとしても、後々自分達も危ないかも知れない。
 サイファーはVアーマーを飛び散らせ、大きく転倒した。転倒した際の地響きが、コックビットまで伝わってくる。
「…あの……」
 アリッサのか細い声が聞こえる。とても上がり症の彼女は、戦闘中は殆ど口を利かず、感情が高ぶった時しか声を出さない。普段は二十時間は黙っているのではないかと言うくらいだ。
 そんな彼女が口を開いた。一体何が…… さすがに水無月も不安になる。
「何か言った?」
「…ヤガランデ…」
「は!?」
 アリッサの口から出た言葉は、あまりに衝撃的で、それでいて即座にその言葉が意味するものを理解出来なかった。
 ヤガランデと言えば、OMGに於いて、シミュレーターでの適正チェック中に突然現れた謎のVRである。レーザーとバズーカによる攻撃はライデンを彷彿とさせ、ペイントされた赤い目がより一層の恐怖を与えた。しかし、誰一人として実体を見た者はおらず、「ヤガランデの幻影」として、今でも語り継がれている。


「ヤガランデが……」
 インカムの会話をモニターしていた緒方が、データベースにアクセスした。思い当たる節があり、自ら調査しようというのである。友紀は精神ノイズに苦しんでいる哲と成一をフォローするので既にいっぱいだ。CRAZE大破全員が一丸となって戦う部隊だ。時には緒方自ら動くこともある。VRには乗らなくとも、戦うことは出来る。


『データを送ってくれ。気になることがあるんでな。とりあえず俺の方で当たってみるから』
「大丈夫ですか?」
『お前達は戦うことだけ集中しろ。俺だって伊達に司令じゃないんだぞ』
 その言葉が、二人を勇気づける。アリッサがあらかじめ調べておいたデータを転送し、後は緒方に任せる事にした。
 ライデンとグリス=ボックは、起き上がるサイファーに今一度注意を向ける。
「よくも……」
 立ち上がったサイファーには、さほどダメージが入っている様には見受けられなかった。被弾時の受け方が適切だったのだろう。水無月は苦虫を噛んだ。通常であれば、これで形勢逆転と行けるはずなのに。
「よくも、傷つけたね……」
 ふらり、と動いたサイファー。その気配に戦慄が走る。二人は実際のヤガランデを知らない。知らないが、まるで自分より強大な『何か』に圧倒された。並々ならない重圧感を感じる。
「この子は…煉爆は親父が残してくれた、たった一つの思い出…… それを傷つけたあんたは……」
 とてつもないプレッシャーが二人を襲う。それは、まさにヤガランデの出現にも似た。


「そうか、あの時の……」
 緒方は膨大なデータから、一年前のある一つの「事件」を見つけた。CHN地区にあるとあるVR工場の襲撃。そこは秘密裏にVコンバータの生産やVディスクの再生、果てはヤガランデの実体化実験まで行っている噂が飛び交う工場だった。Blau Stellarはその噂を入手してから、常に工場を監視していたが、ある日所属不明の尋常ではない数のVRが一斉に工場を襲撃した。Blau Stellarは直ぐさま近隣の基地から防衛戦力を送ったものの、工場は破壊され、機材などはあらかた奪われてしまった。
 その時、一機の研究用VRが姿を消していた。奪われた形跡もなく、戦闘に乗じて逃げ出した、というのが大方の予想だった。
 それがこのサイファーだと、緒方は推測したのだ。
「なるほど…… そういう事か……」
 緒方はインカム用の固定マイクを掴むと、やや声を荒げた。
「二人とも、そいつはただのサイファーじゃない! 最大限警戒しろ!! そいつは……」


「許さない…許さないよ…この子を傷つけて……」
 
 二人を襲うプレッシャーはますます強くなる。この高出力は、通常のサイファーのVコンバータではオーバードライブさせてもまず不可能である。アリッサがつぶやいた「ヤガランデ」という言葉にふさわしい、正にヤガランデを彷彿とさせるような。
「くそっ…… なんだこの力は……」
 水無月のグリス=ボックは、サイファーから発するプレッシャーに押しつぶされそうになる。アリッサは狼狽し、がたがたと震えている。ライデンは完全に動きを止めていた。

「皆の、親父の、殺された子供達の仇……」

 発行したダブルスリットを見て、緒方はいらだつ表情を隠さず、後頭部を音を立ててかきむしった。
「そいつはヤガランデのコピーだ!! サイファーの姿をしたヤガランデだ!!」



「何やと?」
「WAL、言ってる事がよく判らないんだが……」
 珍しくKönigin RKavalier SFurstSklaveの四人が揃ってラウンジで顔を揃えた。と言うよりは、KavalierSklaveがライブラリにいる間、KöniginFurstをラウンジで待たせており、そのタイミングがたまたま同じだっただけなのだが。
「気になったからついでに調べてみた。Meisterのヤツ、下手すりゃプラントごと破壊させる気だ」
「どうしてだ? あのプラントを破壊するなんて、何のメリットもないはず……」
 手にした資料を見て、Furstが訝しんだ。
「ヴォルフの言う通りだ。本来であれば、我々の全プラント占拠以降、各プラント内で発生するエネルギーはそれぞれで備蓄され、ある一定のタイミングをもって、然るべき所へと送られる。しかもアンダーシーはOMGの頃からMSBS開発の拠点でもあり、我々も内通者により、それらのデータをリークしていた。おまけに、Vコンバータのフォーマット作業も多く行われている関係上、コンバータの在庫を大量に抱えている」
 SklaveFurst同様、旧世紀の平行宇宙からこの世界にやってきた人間だ。元々軍人として実戦司令官候補の立場にあった彼は、持ち前の頭脳と探求心で、この電脳歴に関する常識、VR誕生にまつわる歴史等、この世界の人間以上の知識を身につけた。何より、情報社会を操作する「電脳師」の肩書きを持ち、そのランクは特S4と位置づけられている。
「だが、他のプラントと一つ違うのは、アンダーシープラントは全プラント随一の敷地を誇る。しょうじき、大陸丸々がプラントとなっているムーニーバレー何か話にならないくらいにな。今回戦闘が行われているエリアだって、ほんの一部に過ぎない」
「しかも、今回の戦闘に当たり、エネルギーの転送から資材の搬送、人員やデータ移行、内部施設に関わる事まで、全てが処理されていた。殆ど廃墟状態に近かった。Vコンバータも綺麗に片づけられていたんだ」
 KavalierKöniginに代わり、業務的な作業を行う事が多く、割とよくMeisterからも雑用を押しつけられる事が多い。今回たまたまライブラリにいた所をSklaveに見つかり、調査に付き合わされたのだが、Kavalierの処理能力は電脳師であるSklaveも目を見張るものだった。さすが、Königinの片腕と、Sklaveは褒めていた(本人はあまり嬉しくないようだが)。
「ただの資材整理とは思えない。いわゆるロスト状態になっていた」
「なら、Meisterがあのサイファーに出撃を命じたのは……」


「あのプラントはブッ壊してもえぇっちゅーことか!! 
 ヤガランデのVコンバータを乗せたあのサイファーが暴走して、全部ブッ壊しても!!」


 To be continued.