『ほな、次はブラックホールでっせ!
はい、右手切り離して! 右ターボと両トリガー!!』
サポートOSと『零距離戦最適化システム』に慣れる為、休む間もなくトレーニングが続く。
この時は深夜のテムジンと尚貴のバル=バドスが対戦していた。
深夜は時々対戦でテムジンを使っていただけあり、サポートOSが入っていても、その辺は卒なく操作をこなしていた。
しかし、問題なのは尚貴の方で、これまでバイパーUからサイファーへの典型的な乗り替わりであるが為に、その操作性にかなり苦戦を強いられていた。
だが、彼女も腐ってもプロのパイロット。小一時間もすれば、基本的な操作には慣れ、今はバル・シリーズ独特の特殊攻撃のレクチャーを受けているところだ。
『これで相手のショットはしばらく封じられますけど、ここでわてらに近接しかけてくるのがセオリーでっせ。
次はいよいよ、新しいシステムを使こて回避を練習しまっせ!!』
「あいよ!!」
『バル兄ちゃんはERLがないから、僕達に攻撃は出来ないよ。
今度は新しいシステムを使って、バル兄ちゃんに攻撃だ!!』
「OK!」
初めはこのサポートOSに戸惑っていた深夜だったが、しばらく付き合ううちに、幼いながらもテムジンのサポート力に感服し、すっかり良きパートナーへとなったようだ。
深夜がソードに意識を集中すると、スクリーンには『零』という文字の書かれた小さいワイプが出現した。これが『零距離戦最適化システム』が起動した合図で、後はパイロットの意識の切り替え次第で特殊近接と通常近接の使い分けが出来る。
『ソードを水平に持って…… 前に突き出す!!』
『テムジンはんの「ピースィングストライク」や! レバーを後ろに…って、何でや!!』
バルは上半身を大きく後ろに反らし、波打たせながらテムジンの攻撃をかわした。
この回避法は「プラムウィロー」と言い、Type Vに於いては魅せ技的な回避方法だ。
『尚貴はん、あんさんコマンド表全部覚えたんとちゃいますか?』
「何が!? 普通に回避しただけだよ!」
『普通に…って、今のコマンド入力せな発動しまへんで!!』
尚貴はバルの指示を聞く前に、「プラムウィロー」のコマンドを入力していた。それは即ち、全てのコマンドを事前に覚えていなければならないはずだ。
その間にも、テムジンは次々に攻撃を仕掛けてくる。
「バル! ぼさっとすんな! 次「ジ・ラック」行くぞ!!」
サポートOSがパイロットに注意されるのも珍しい光景だ。
そうしている間に、切り離したERLが帰ってくる。これでバルにも攻撃が可能になった。
『もう「ジ・ラック」でっか!? まぁ、それがわての攻撃の要ですけどな……
ほな、一気に行きまっせ!!』
バルがテムジンとの距離をとる。相手はソードのリーチが長いので、あまりこちらには近づいてこないのも好都合だ。
『まずはレバーを後ろに倒してぐるっと回す!』
今のコマンドで、バルは完全にテムジンに背中を向けることになった。
『レバーを内に倒して右ターボ!!』
バルの状態がぐわっと後ろに倒れ、ブリッジ状態になる。これが「ジ・ラック」の体勢だ。
「げぇっ!! 気持ち悪……」
コックピットの尚貴は完全に逆さの状態になり、落ちてくる足を固定するのがやっとの状態だった。
「おいおい、大丈夫かよ。旦那は」
スペシネフで待機するデュオが、バルの様子を見てとりあえず心配してみたりする。
『すごいわね〜。あれが本当にVRな訳?』
千羽矢も感心半分、驚き半分と言った状態だった。
二人の対戦を見ながらも、デュオは自分が使える技を確認しながら「形」を取る。
「スペシネフのパワーを十分に生かし切れるな。これなら技に不足はねぇぜ」
デュオも自分に与えられた新しい能力に、かなりご満悦なようだ。
『こっからがわての真骨頂でっせ!
そのままレバーを前に倒して!』
尚貴はコックピットで逆さになり、顔を真っ赤にさせながらも、残っている意識でレバーを前に倒した。
「どはーっ!! 中身出ちゃう……」
強烈な前Gが尚貴を襲う。
わずかにレーザーブレードを展開して、ジ・ラックのまま縦に移動する。「スティアラック」という技で、これもType Vの中では比較的ベーシックなものだ。相手の足元を狙ったり、相手のダウン後の追い討ちとしての役割がある。
当然ながら、見た目に比例してパイロットにかかる負担も大きい。コックピットのシートベルトは6点式だが、それでもかなりの振動だ。逆さの状態なら尚更である。
テストパイロットも、他のパターンの倍以上用意されていたというのは、あながち嘘ではないのかもしれない。
一方のテムジンは、相手の予想外の攻撃にもひるむことなく、バルを中心に円移動を始めた。これがクイックステップに変わる「8way Run」という移動法で、一直線的な動きしか出来ないクイックステップとは違い、方向転換なども容易に出来る。
『レバーをニュートラルに戻して右トリガー!』
ジ・ラックからの立ち上がりを狙い、テムジンがソードを横に一閃する。だが、バルが体勢を変えたのがわずかに遅く、ソードはむなしく空を切った。
しかし、これでは終わらない。テムジンにインストールされているType SSには、3つの「構え」の体勢を取ることが可能で、ソードを振ったテムジンはそのままひざをつき、ソードの切っ先を地面に触れさせるような構えをする。
これがType SSの構えの一つである「ベースホールド」だ。ここから当然攻撃に移行出来るし、多少であれば移動も可能だ。
バルが完全に立ち上がったのを見て、ベースホールド状態のテムジンの両足が地面を蹴る。その勢いで自機を前方宙返りさせ、さらにその反動でソードを振りかぶる!
「うわぁ〜っ!!」
これには流石に深夜も衝撃を受けた(物理的にだが多少精神的にも)。この「エアディバイド」という技は、技を繰り出す体勢がサイファーの空中ダッシュ近接にも似ていて、これを発展させた「ファームメントディバイド」という技は、相手に向かって一直線にダッシュし、先ほどのエアディバイドよろしく前方宙返りからの反動でソードと自機を回転させる、完全に空中ダッシュ近接の様な技だ。これはほとんど「魅せ技」と言ってもいいが、セイ曰く「3回のダメージ判定があり、カウンターで入ればとんでもなく持って行く」そうだ。
そして、特筆すべきことは、『零距離戦最適化システム』というのは、カウンターという判定があり、このカウンターが入ると、ダメージが2〜3割り増しにあるという。だが、このカウンターも狙って入れられるものでもないそうだ。その辺は、今後の「使い込み」次第ということか。
完全にバルの背後を取ったテムジンのエアディバイドは、バルの背中にクリーンヒットし、バルはそのまま大きく転倒した。
『あいたぁっ!』
「ぐわぁっ!!」
二人そろって声を上げる。そのまま前に倒れこみ、機体をうつ伏せにさせる。
「いてて…… 姉さん容赦なしだよなぁ」
顔をゆがめながら尚貴がぼやいた。
だが、その間にも深夜は攻撃を仕掛けようとする。自機を回転させ、ソードの切っ先を地面から跳ね飛ばす「シャドウスライサー」だ。Type SSにおける有効な下段攻撃で、ダウン時の追い討ちから、相手の立ち上がり狙いなど、多様に使える技である。
「そうは…行くか!!」
ソードの軌道を予測し、機体を立ち上がらせるとすぐさま相手に背を向ける。Type Vではこの背向けの行動が非常に重要で、相手に隙を見せるようだが、実は強力な攻撃に移る第一段階であることが殆どだ。
『行きまっか!?』
「あたぼうよ!!」
機体の上体を再び大きく後ろに倒した。
「さっきの攻撃ね。そう簡単に当たらないわよ!」
ジ・ラックからスティアラックへの移行は、先ほど出したばかりだ。同じ手にそう簡単に引っかかる深夜ではない。
が……
「な…何よちょっとぉ!!」
深夜は目の前の光景を、正直信じられなかった。
相手はジ・ラックの体勢から、自身の機体で輪を作るように、両手と両足を連結させた。そしてそのまま機体をネズミ花火のごとく回転させたのだ!!
『見なはれ!! これがわての必殺技「ローリング・クレイジー」や!!』
その名の通り、バル・バドスの機体は、暴走するかのごとくキャリアーを回転し始めた。触れた物を全て薙ぎ倒すが如く。
「こんなの食らったら、ただじゃ済まないわよ!!」
深夜もこの攻撃を回避するのに一苦労だ。なぜなら、相手はどこから飛んできて、どこへ行くのか全く判らないのだから。
『あーあ、バル兄ちゃんも頑張るなぁ』
一方のテムジンの方は、まるで二人が本当の「兄弟」であるかのように、しみじみとつぶやいた。
そして、もっとも大変なのは、この人である。
「ちょちょちょ…タンマタンマ!! やべっほんとまずいって!! マジで止めて〜!!!」
空中ダッシュ近接の比ではない。正直拷問とも言えるパイロットの状態だ。尚貴は気絶寸前でスロットルを根性で「握って」いるだけだった。
機体はやがて、転がり続けたコインの様にその回転を緩やかにし、そのうちくるくるとその場で回転し始める。
「もう、びっくりさせてくれちゃって。立ち上がりを一気に攻めるよ!」
深夜は回転するバル・バドスに駆け寄ろうとする。が……
『だめ!!』
あと数m、というところでテムジンに強制的に機体をストップさせられた。体勢が適切だったので転ばずには済んだが、半ばつんのめった形になった。
「ちょっと、今度は何よ!」
ばん!!
深夜がテムジンを諫めようとしたのと、バル・バドスが回転を止めた体勢から、本当にネズミ花火のように音をたて、輪状にしていた機体から全身を伸ばして相手の足下を切り払おうとしていたのは、ほぼ同じだった。
「あー、あぶなかった……」
『バル兄ちゃんはいつもそうなんだ。自分はごろごろ回って相手を油断させて、近寄ってきたところをいっつもあれでばん!ってさせられるの。
バトラー兄ちゃんやストライカー兄ちゃんはいっつつも引っかかってたなぁ』
くすくす笑うテムジン。彼は恐らく「末っ子」ながら、兄達よりよほどしっかりしていたのだろう。
「あ…ありがとう……」
さすがはサポートOS、深夜は彼の学習能力に、痛いほど感謝した。
そして、最後に渾身の一撃を繰り出したバル・バドス、まだ立ち上がれない。それもそのはず。ローリング・クレイジーを初めとする、ジ・ラックからの回転技は、パイロットの方がダメージを受けると言っても過言ではないのだ。
彼女達を預かる緒方豊和は、さすがに見かねてコントロールルームから回線をつなぐ。
『生きてる?』
「……死にそう……」
この事態に、緒方も苦笑いを浮かべると、オペレーターに二人のシミュレーションを終了するように指示する。
『お姉ちゃんばいばーい』
『尚貴はん! 次の時には連係技の練習をしまっせ! コマンド覚えといてーな!!』
深夜はともかく、尚貴の耳には別れ際のバルの言葉など、耳に届いていないのだが。
スクリーンが再びカレイドスコープのように変化し、一瞬ブラックアウトした後、起動前の状態に戻った。システムが終了したのだ。
ここで二人のシミュレーションが終了。深夜は自力でシートから降りたものの、尚貴に至ってはオペレーターに担ぎ出されるようにしてシートから出てきた。そのままベンチ送りになったのは、言うまでもない。
「さて……」
緒方はインカムを付け直すと、今度は千羽矢の搭乗するスペシネフに回線をつなげる。
「どうする? いっちょやってみるか?」
千羽矢−正確にはデュオだが−はしばし考えると、
『……お願い』
千羽矢はデュオに判らないように笑った。しばし考えていた時間は、おそらく言葉を選んでいたのだろう。それを見抜いた千羽矢は、考えて出てきた言葉を、悪いと思いながらもつい笑ってしまったのだ。
「了解、じゃぁ俺出ようか?」
『え!? それはちょっと……』
「うそうそ(笑) ダミーのバトラーを送るから、好きに遊んでいいよ」
デュオのスペシネフのスクリーンに「Enemy is Aporching」の文字が点灯し始めた。バトラーの姿がスクリーンに現れると、ロックオンマーカーが表示される。
「さぁて、いっちょやるかい!」
アイフリーサーのサイズブレードを展開して、バトラーと向き合う。
常識ではあるが、通常のダブルロックオンでバトラーのトンファーに敵う者などいない。
だが、今回は勝手が違う。このスペシネフにも零距離戦最適化システムが搭載されているのだ。
「うぉりゃぁっ!!」
サイズを右から左に振り抜く。ヒットこそしなかったものの、バトラーを威嚇するのには十分な攻撃だ。
続いてアイフリーサーを縦に持ち替え、体ごと前に押し出すように攻撃を加える。「ヴィサリオン」という攻撃だ。
全体的にリーチが長く、それでいて攻撃の威力も全体的に高めの「Type A」は、邪教によって作られた人造人間の攻撃モーションをモデルにしているという。それだけに、ガード不能な技も多数存在する。
武器の形状もジャイアントアックスということで、似たような形状のサイズを近接武器とし、元々「パイロット殺し」の異名を持つスペシネフの為のパターンとも言えるだろう。
さすがにダミーのバトラーも、この攻撃には少々戸惑ったようだが、距離を取ってマシンガンで威嚇する。当然スペシネフもこれに素早く反応、ライフルを撃ちながら牽制する。
だが、デュオとしては少しでも多くこのシステムに搭載された技を試してみたい。ダッシュは出来なくなるが、相手を中央に補足しながら移動する8WAY RUNに移行した。
「ひっかかってくんねぇかな〜」
悪戯を思い浮かべた様な子供の如きデュオ。レバーを前後左右に動かしながら、バトラーを煽る。
スペシネフの相手を嘗めたような動きに(本当はそんなことは全然ないのだが)、バトラーがしびれを切らした。ナパームを投擲し、その爆炎を壁に前ダッシュで距離を詰める。
「よっしゃ!! かかった!!」
デュオはバトラーの動きを確認すると、方向を右に切り替えバトラーの側面を取り、今度はデュオが距離を詰めた。
「食らえ!!」
サイズを短めに持ち、自分の体を独楽の様にスピンさせる「シウル・ムズルスーサ」という技。これは見た目も派手な上に、その攻撃形態があまりに特殊なので(「Type V」の「ジ・ラック」には負けるが)、テスト時には同じ技を同時に出し合うなどということも多々あったという。
それ以外にも、近距離でヒットすれば打撃投げ判定に入る「エル・リアスハーザ」、相手機体を空中に放り投げる「クルメシア」など、魅せ技としても十分通用する技も多く、このシステムが正式に採用されれば、スペシネフのパイロットの間で流行ること請けあい、というのが緒方の見解だ。
バトラーにはそれをガードする術などなく、攻撃がヒットすると派手に弾き飛ばされた。
『すご……』
これには千羽矢も感心と驚きの半分半分で、デュオの戦いぶりを改めて再認識している。
この攻撃がヒットしたのをいいことに、デュオは一気に片をつけようとする。距離を詰め、バトラーの立ち上がりを狙ってショルダータックルの様な「スルバルト」を食らわせた。
バトラーはこの不思議な攻撃に対し、どうすることも出来ず、既にされるがままだ。
なぜなら、相手は自慢のトンファーが届かない所からも、近接攻撃を仕掛けてくるのだから。
「スルバルト」を食らったバトラーはふらりとよろけると、もう戦う意思を失ってしまったかのようにスペシネフと向き合った。
「かわいそうだしな。一気に決めてやっか」
距離を詰めると、スペシネフは大きく振りかぶった。
がつっ!!
攻撃がヒットする。通常であれば、これで判定が終わるのだが……
スペシネフのアイフリーサーがバトラーの足を絡めとる。そしてあたかもジャイアントスイングのように、バトラーを振り回し始めたのだ!
これが「Type A」一番の魅せ技である「エル・リアスハーザ」だ。
本当にこれがVRによる戦闘なのか? 「Type V」そして「Type A」。共に『零距離戦最適化システム』を世界に知らしめる為には、充分過ぎるパフォーマンスである。
「そーらよっ!!」
散々振り回されたバトラーは、アイフリーサーからようやく解放されたものの、大きくキャリアーに叩きつけられると、爆炎を上げてその機能を止めた。
その光景を見届けた全員が、それを思い知らされるテスト運行となった。
とりあえず、サポートOSも含め試運転は成功となり、今回使用された3機は、アリッサの新しいライデンとともに、待機状態に置かれることとなった。
GRM地区、BRL市内。
観光客で賑わう市内には、いくつものホテルが点在している。
その中の、とある高級ホテルには、「最上階」が存在した。
料理やサービスのクオリティは世界屈指、かつ値段はこのクラスにしてはリーズナブル(一般的に見ればそれは高い値段なのだが)。
そんなこのホテルには、ごく一部の限られた人間のみが入ることを許される、VIPルームが存在する。
その部屋には、既に招かれた客がいた。
日当たりの良い部屋には、薄いカーテンが敷かれ、明かりは全て落とされている。
テーブルには食べ終わったファーストフードの残骸。灰皿には数本の吸殻。
扉を隔てたベッドルームには、横たわる二人の姿。
それはKönigin RとKavalier Sだ。
彼女らもMeisterからの特別任務を受け、四人の「八部衆」を伴い地上に降りている。
実地調査は八部衆に任せ、二人は四人からの報告を待つのみだ。
Kavalierの耳に、携帯の着信音が響く。その音で、Kavalierは意識を現実に引き戻された。
だが、Königinはその音に気づく様子もない。彼女を起こさないように、サイドテーブルに置いてあった自分の携帯を取る。
「………もしもし……」
『
「どうした?」
『陛下は……』
「恋なら寝てるよ。ダイレクトメロディにしてるから」
ダイレクトメロディとは、携帯電話のオプションシステムで、ピアスやイヤリングをアンテナとし、必要最低限の音量で着信を伝えるものだ。最近ではアンテナ側となるアクセサリーも様々なデザインが発売され、若者の間で流行している物の一つだ。
『そうでしたか……』
「何かあったか?」
『あ…はい。さっき
「やつらは?」
『いえ、『ファイユーヴ』一人だったようです。繁華街のゲームセンターにいたそうですが、見失ってしまったようで……』
「……判った。張り込みは続行しろ。ヤツらを見つけても、決して刺激するな。
攻撃は、こっちから仕掛ける」
『了解しました』
八重からの電話が切られる。
「……………………」
隣に人の気配を感じた。
「……なんやねんな……」
ごそごそと起きる彼の人。
「あ、悪ぃ……」
「いぃって。半分起きてたんやし。
……で、誰や?」
爆発しかけた頭(長さも量も半端ないのだからそれも仕方ないのだが)を掻き上げながら、気怠そうに体を起こす。
「八重だ」
「見つけたんか」
「六道が見かけたらしい。見失ったそうだが、この範囲内にいるのは確かだ」
「そっか……」
Kavalierの言葉にKöniginは虚空を見上げた。
その光は、野生動物のそれにも似ていた。
To be continued.