一人の子どもを救済するためにも、多くの活動と、
それを巡る許可が必要となるのです。
(2004年執筆・松居友)

貧しいからといって、必ずしも不幸とは限らない
私たちの生活の方が、豊かな国の人々の生活よりも
はるかに美しいと感じるときだってある。
けれども、どうにもならないのが、
お金が無くて学校に行けないときと
病気になっても病院に行けないとき・・・

セック登録がないと・・・
 セック登録がないと、すべての社会活動は無認可の非合法活動と見なされてしまいます。寄付を募ることも、冊子の発行も法的には許されていません。
 セック登録後初めて正式に許可され、ファンデーションと名のることができるのです。


 『ミンダナオ子ども図書館』の活動目的は「貧しい子どもたちを支援する」こと。

 支援の方法は、「子どもの成長と発達支援」と「医療と救済活動支援」の二つに分かれています。
 成長と発達支援は
 1,本をとおしてのコミュニケーション 
 2,ハウスライブラリーとストーリィーテーリング 
図書館活動を通して子どもの成長と発達を支援するものです。
 医療と救済活動支援は
 1,医療プロジェクト
 2,スカラシップ
 3,子どものシェルターと孤児施設
スタッフや奨学生と協力して、貧しい子どもの生活医療救済プロジェクトを行います。

 ずいぶん欲張った内容だなと思われるかもしれませんが・・・
 ずいぶん欲張った活動内容だなと思われるかもしれませんが、実はそうでもないのです。というのはこれまでの経験から、一人の子どもの救済にも、すべての許可を得ておく必要が出てくるからです。
 わかりやすくするために、例を追いながらご説明しましょう。 


 先住民の村プロックの例

 先日プロックというバゴボ族の村に読み聞かせに呼ばれました。もちろん電気もなく、石臼で籾をついて粉にして自給生活をしている純粋な先住民の村です。とうぜん子どもたちは、絵本を見たこともありません(本を通してのコミュニケーション)。
 そんな子供たちを支援するために、私たちは、キダパワン市の郊外に『ミンダナオ子ども図書館』を作りました。近くに小学校、高校もあり子どもたちも訪れます。オフィスはすべて奨学生たちが仕切っています。毎週の日曜日は読み聞かせのスケジュールでびっしりです。私たちの図書館活動は、基本的に移動図書館が主体です。(ハウスライブラリーとストーリィーテーリング)
 その日、私たちは5時に起き6時に朝食をとり7時に出発、途中で仲介者を乗せて目的のプロック村へ。森の中の道で案の定、車はスタックしてしまい村の人々が助けに来てくれました。これしばしば起こるのです(大型四輪駆動車が欲しいなあ・・・トヨタさん寄付してくれませんか)。村に着くと早速ゴザをしいて読み聞かせを始めます。奨学生のお姉さんお兄さんの読み聞かせに子どもは夢中。


 奨学生たちは、学校に行くと同時にスタッフとして活動してくれています。

 学んでいるのは、図書館学、教育学、看護学など活動に役立つものばかり。彼らを支えているのが『ミンダナオ子ども図書館』の奨学金制度です。(スカラシップ)


 読み聞かせは大成功
 現地の子どもたちも奨学生たちもこの活動をとても楽しみにしています。プロック村は初めての訪問地でしたが、その前の週はすでに5度訪問した場所で子どもたちも読書になれてきたので『アジア子ども文庫』の支援でボックスライブラリーを設置しました。
 本とぬいぐるみの詰まった箱を家庭に2ヶ月ほど置いて貸し出し、後に新たな箱と取り替えるこの図書館活動に子どもたちも大喜び。
 需要は増える一方ですが、購入資金が不足しているので、ダバオの古本屋から買い増ししている状態です。日本の絵本の寄贈も増えているのですが、それよりも現地の出版社を支援するためにも絵本を買う費用が欲しいというのが正直な気持ちです。(ハウスライブラリーとストーリィーテーリング)。


 読み聞かせをしていると、杖をついた足の悪い男の子が父親に連れられて山から下りてきました。

 足にふとい枝が刺さり膿んでいます。裸足の生活ですから、傷口は汚れ化膿がひどい。また別の子は、頭に銃弾をうけて半分が化膿しています。まだ元気ですが緊急の手術が必要です。大きな手術ですからダバオ市の病院にコンタクトをとらねばなりません。読み聞かせに行くたびに新たな子どもが出てきてこちらも資金が足りません。(医療プロジェクト) 


 子どもを緊急に泊めるとしても、許可がないと誘拐や幼児虐待と見なされかねません

 大きな手術は、ダバオ市の病院の予約が必要ですが、小さい手術はキダパワン市でもできるので、その日は足の悪い子どもとお父さんだけ図書館に泊まっていただき、翌日に手術をすることにしました。ここで、セック登録が役に立ちます。子どもを緊急に泊めるにしても、許可がないとこの国では誘拐や幼児虐待と見なされかねないのです。先日は、戦闘の続くモスリム難民キャンプを訪れましたが、緊急の宿泊場所を必要としている子どもたちを収容したり治療を提供したりするにも、法的許可が必要です。
 この許可を得るために『ミンダナオ子ども図書館』は、難民や子どもの緊急避難場所として提供できる1ヘクタールの農地を個人資金で購入しました。現地は、スタッフとスカラーが共同生活していますが、大学、高校、小学校が近く、将来には本格的な子ども図書館を建設する予定です。(子どものシェルターと孤児施設)


 孤児施設を申請したのは、大規模な孤児施設ではなく、難民キャンプや山村に必ず孤児がいていつか数人でも、家族同様に引き受けることがあるかもしれないと考えてのことです。
 プロック村での読み聞かせが終わった後、私たちは、子どもを病院に連れていくために、親の承諾書と責任の所在と限界を明記した書類にサインをしてもらい、親子を車に乗せてキダパワンに向かいました。翌日、子どもの手術は無事にすみ、村に送り届けることができました。大きな手術の場合はさらに村長さんやDSWD(福祉局)の書類を整備します。


 もうおわかりかと思いますが、一人の子どもを救済するためにも、これだけ多くのボランティア活動と、それを巡るさまざまな許可が必要となるのです。


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