先住民の村ルモット
(2003年執筆)
松居友
ぼくはこの村が好きだ。
ここは、アポ山のふもとに住む先住民の村ルモット。二度目の訪問。
前回は山のふもとの村に車を置いて、若い男性のスタッフと手分けして、八〇リットルの大型リュック三つに、上ぶたまでぎっしりと絵本をつめて、ふうふう言いながら山道を歩いた。標高が上がるにしたがって、フィリピンの最高峰3000メートルに近い標高を持つマウントアポが姿を現す。
ビックリするほど背の高い木は、切られずに残ったラワンの木だ。遠くから見ると、ジャングルしか見えない山並みでも、森の中に所々に椰子の葉葺きの家があって、エッこんな所にもという場所に人が住んでいる。たいがい家の周囲に小さな焼き畑を開き、自給自足に近い形で生活しているバゴボ族の家族。
午後二時、読み聞かせの時間になると、山上の掘っ建て小屋にしか見えないデイケアセンターに子どもたちが集まってくる。
いったいこの山のどこに、こんなに沢山の子どもたちがいたの?
思わず驚きの叫びをあげてしまうほど沢山の子どもたちが、お話に期待して大きな瞳を輝かせながら、小屋の外まであふれている。下界の子どもたちよりも、いくぶん色黒の先住民の子どもたち。貧しいけれども目がとてもきれい。
母ちゃんたちを中心に、大人たちも集まってくる。高校生や若者たちも集まってくる。
読み聞かせが終わった後、スタッフたちは、ルモットの子どもたちとジャングルの奥の滝に行き、生きた鶏を料理して夕食を食べた。
その晩ぼくらは、星の下で眠った。