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(2003年執筆)松居友
「医療ミッションまで始めるつもりですか?」と聞かれてしまった。
もちろん、ミッションを始めるつもりは毛頭ないけれども、読み聞かせに難民キャンプや貧しい村に行くと、重病の子や瘤のある子に出会う。知らん顔して通り過ぎるのは、簡単なのだけれども、こうした子供が生涯背負っていく重荷を考えると、思わず立ち止まってしまう。
とりわけスタッフの中に17年間も兎口で苦しんだ少女がいて、家族からも見離され、何度も死のうと思ったその壮絶な孤独と悲しみの告白を聞いているだけに・・・けっきょく放っておけなくて、いろいろ調べた。ポケットマネーをはたいて安くない検査費や治療費も出した。神父さんやシスター方から「そんなことをやっても切りがないよ」とも言われたけれども、救える子がいたら一人でも二人でも救えばいいと思った。試行錯誤をくり返しながら、ミッション会に連絡を取って信頼できるルートも開いた。そしてわかってきたことは、NGOに連絡すれば手術代はただ、薬代だけで治療が受けられるということ。
兎口の場合は病院で2500ペソ(5000円)ほどで比較的安い手術、今まで治した子で、最高で40万円ほどかかる。貧しい家族にとって、5000円が2ヶ月分の生活費にも匹敵するし、まして難民家族にとっては不可能な出費だ。しかも医療というと、健康診断や兎口などの簡単な手術が主で、重篤な患者や緊急治療を必要とする子どもたちを支援するNGOやミッションはほとんど無い。たとえあっても治療費の一部負担で、薬代を出す団体があまりない。手術中の点滴から術後の薬までたくさんあるので、結局高いのは薬代なのだ。

写真の兎口の子は、今回の戦闘で難民となった5万人を越すイスラム教徒の子どもたち。ここ数年で三度も難民になって放浪する、彼らの顔は絶望的に暗い。笑わないし、泣きはらした顔がそのまま固まってしまったような表情で、ビニールシートの下で過ごしている。病気で死んでいく子も多い。教会やNGOが物資中心の救済活動をしているけれども、圧倒的に不足しているし、アメリカ軍がミンダナオに駐留する中で、無力感だけがつのっていく。
このような中で、イスラムの若者も交えた読み聞かせは、地元に腰をすえていないと出来ないきめ細かな活動だし、私たちは大きな団体がやれない事を、やっていこうと決心した。子供たちへの心のケアという意味でも読み聞かせは効果が多いし、目の前にいる子で救える子は、ひとりでもふたりでも良いから救っていこう。兎口の子供の救済も悲しい難民キャンプにとっては、ちょっとした明るいニュースで、こんな所から固まった心が解きほぐされて、生きる希望が出てくるように思える。
(ミンダナオ子ども図書館長・松居友)

