write 2000/01/16
ジャンプ第7号予想
「週感ジョジョンプ」第188号トップに戻る
「週感ジョジョンプ」トップページに戻る

「週感ジョジョンプ」第188号

PAGE8・ZEHさんより

Hermit Purple attack JUMP 2000 No.7!


 こんばんわ。今週はまだ終りではないです。すみません。

 「本を買うのに、金をケチってはならない」………これは、私が時折思い出す言葉であり、実践しなくてはならないポイントだと常々思っています。しかし、ここに「後悔」という言葉はありません。買ってもいい、しかし後悔もしてもいい、ここも忘れてはならない事でしょう。
 繰り言が続きそうなので本題に入りますと、先週読んでいた本『二重螺旋の悪魔』(梅原克文・著 角川ホラー文庫)です。読むきっかけは、A社F通DCにお勤めの某氏からICQでお勧めされたからです。運悪く、手持ちの「電車本」のストックが切れかかっていました。明日通勤で読む本がなくなる!という事は恐怖に等しいものがあります。で、最近SFをじっくり読んでいない「後悔」もあり、取り急ぎ買ってきて読んでみたのですが………。
 『パラサイト・イブ』などでも脚光を浴びた化学的アプローチを要所でうまく使うバイオ・ホラーな訳ですが、DNA解析が97%ほど終わったなどという記事が誌面を賑わせている現代ではある程度のリアリティをもって迎えられるものなのでしょう。
 この小説、テンポはいいです。しかしそのぶん所々の精緻さに欠けるので、そういうのがニガテな人には全くお勧めできません。1,600枚の大作なので、的を外すとツラい………。冒頭で書いた、「後悔」でして、古本屋で買った方がよかったかなぁとつくづく思いました。角川ホラー文庫ならわりと入手できますからねぇ。
 ネタバレにならないように書くと、主人公・深尾とその彼女、知美の間柄かなぁ。まず、深尾がどういう人間なのかというのは最初の方でいろいろと描写されるのですが、そのアッパーな性格が要所要所でボロボロになる所に深みが感じられないというか、どうも「後悔」を蓄積しないタチである分、クライマックス付近に重みが感じられないんですよ。そして知美。この人も美人な事は解るんですが、主人公の一人称で書かれているせいか、何を考えているか解らない(筆者のイタいもてなさっぷりが垣間見えるがそのへんはおいておこう)。まぁそれでもいいのですが、そこへもってきて結末はアレなので、ボリュームに見合った読了感がないのですよ。
 まぁ最近こういう粗削りのものを読んでいなかったので、スピード感だけはサイコーでしたけどね。昔の朝日ソノラマ文庫(『ヴァンパイアハンター・D』シリーズとか『キマイラ』シリーズとかですねやっぱし)を読んでいるような感じでした………と書こうと思ったら、これ、もともとの版元は朝日ソノラマなのか! 版元カラーが存分に出ているなぁ。これは編集者の選択眼のなせる技ですね。
 しかし、この作者の梅原って人、やっぱり映画好きのようで、キャメロンぽい「見せ場」も随所随所に出てきます。漫画とかにするといいんでは? 個人的には、『バオー来訪者』の亜流として読めなくもないかな、という感じですが(しかしカタルシスがほしい!)。

 さて、ホントに今週最後の投稿、ZEHさんです。「ぜち」って読むんだそーです。投稿、ありがとうございました。

投稿者:ZEHさん

「DQと第6部と安倍公房」

 安部公房の処女小説「壁」に収録されている第三部「赤い繭」を読んだことはあるでしょうか?
 たった5Pの話です。
(ゆえにほとんどそのままなので読んでない人は御注意)

 が夕暮れの街を歩いています。
 は家路を急ぎますが、彼は呟きます。

「街中こんなに沢山の家が並んでいるのに、おれの家が一件もないのは何故だろう」

 その幾万遍の問いに答えはなく、

「おれは歩きつづける。俺の家がない理由が呑み込めないので、首もつれない」

 ふと男は、自分の体に絡み付く糸を見つけ、たぐり寄せます。
 しかしその糸は際限なくあらわれます。
 そしてふいに男はバランスを崩します。それは、

「おれの足がほぐれているのだった。その糸は糸瓜(ヘチマ)のせんいのように分解したおれの足であったのだ」

 そして糸は体を覆い始め・・・。

 デッドマンズQの吉良と第6部のつながり、そしてその後の暗示がここにあるのではないでしょうか?
 つーか、これでしょ。

結論:ジョリーン、繭になるよ。

 安部公房、昔は好きだったのに亡くなってからあんまし読んでないなぁ。公房先生、すみません。で、そんな私もこれは今いわれて気がついたような………。やはり鮮烈なイメージというのはいつまでも覚えているもんですね。それを予想に結びつけてしまうあたりもすごいのですが………。「体からひょろっと紐が出てくる」というのはどっかの小説で読んだ事が有って、思い出そうとしていたのですが、これかなぁ? 繭になった後、どうするんだろ? ………蝶? 蝶なのか?

 という訳でこれを読んでいる中学生の皆様、しょーもないSFなんて買っていないで、安部公房を読みましょう。中学生にオススメです特に!(ホントか?) あ、宮沢賢治でもいいんだけど。その後はバカSFとかバカミステリをたっぷり読みましょう。そうすっと人間形成は完璧ですたぶん。


「週感ジョジョンプ」第188号トップに戻る
「週感ジョジョンプ」バックナンバートップページに戻る
「週感ジョジョンプ」トップページに戻る

CON$ E-mail: condor@edit.ne.jp
このPAGEはWindows95+Netscape Communicator Ver4.7Jで作成しています
Copyright (C) 1998 CON$