write 1999/07/04
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「週感ジョジョンプ」増刊第8号

PAGE10・ゆうこさんより


 こんばんわ。さて、ここにダイレクトでPAGEに飛んでる人はいないでしょうから、ゆうこさんの投稿って事、ご存知の方々ばかりでしょうね。今回、投稿数がなかなか少なくてちょっぴり悲しかったのですが、謎めいたこの短編(中編か?)にとっては欠かせない方々が投稿して下さったかと思います。ありがとうございます。

投稿者:ゆうこさん

 どうも こんばんは。
 行き付けのジムで、体重と体脂肪率を測る度に憂鬱になるこの頃です。
 仕事でも納入日迄に与えられた仕事数をこなすことを第一とし、私生活でも、ありとあらゆるところで数字に追われ又数字によって全ての基準を決めてゆく。そんな世界に疲れ離脱したいと思うのだが、もし数字が無くなってしまったら、今度は目標を失い遊惰の徒となり、やがて自分を失うことが不安でしょうがなくなるに違いない。いずれにせよ生きている限り魂に永遠の平穏を得ることはあるのか、とDQ2話を読み終わって、こんなことを思いました。
 もし樫ノ木坂の殺人事件の犯人が時効以降も生き延びた場合、彼は心静かに暮らすことができたのでしょうか。それとも過去に苦しめられて生きるのか、今となっては想像するしか ないのですが。(4部の「杉本鈴美殺人事件」も時効になったんでしたか?)

 さて百人百通りの解釈ができる前編・中編でしたが、今回は私のあくまでも個人的見識に基づき後編がどうなるか考えてみようと思います。

 台所の食器棚にあった「卵」なんですが、屋敷幽霊にあるということはやはり幽霊だと思うのです。で何の幽霊かというと、この地帯で死んだ人の魂が、屋敷、つまり現世とあの世の狭間に引きずり込まれ(もしくは囚われて)「殻に閉じ込められた魂の幽霊」となってしまっているのではないでしょうか。私が想像するに、「たまご」=「魂(たま)のこ(庫?又は児?)」を意味しているのではないかと思うのですが。あの潰れかたからするに、何個かの卵は新鮮ではないように見えます。つまり古い、何十年か前に死んだ、人間の魂も含まれているはずです。潰れた卵は幸か不幸か恐らく「あの世」に行ったのだと思うのですが。

 では誰がこの卵を製造し保存しているのかというと、矢張りこの屋敷の「住人」だと思われます。
 屋敷の「住人」とはおそらく

  1. 軍人
  2. 髪の長い女性

 のいずれかであろうと思うんですが。

 2. で髪の長い女性としたのは、前編の表紙の右上に髪の長いカチューシャをした裸の女性がいますよね。私は最初、前編ででてきたあの女性かと思ったのですが、髪が長すぎるし、髪型が若干違うし、前編の彼女なら「デッドマンズ・Q」の題目の下にいるんです。そうすると、これは別人である可能性もなきにしもあらず、なんじゃないでしょうか。で、前編、中編に登場してない、ということは後編に登場するだろうし、後登場する人物で考えられるのはあの屋敷の「住人」しかいません。もしそうであるならば、彼女は恐らく軍人と縁のある者で、(軍人が写っている写真の中で、彼の後ろに家族の写真があるように見えます)娘か妻ではないかと想像します。(でも前編の彼女だという考えも捨て切れないんで すよねええ・・・非常に優柔不断で申し訳ないんですが。)

 屋敷幽霊にある蔵書のラインアップですが、ここで言及されたのが「神曲」、宮沢賢治、乱歩それに「ああ無情」です。竹久夢二の絵にしてもそうですが、これらの本の選択があの時代の職業軍人の趣味だとしたらちょっと妙な気がするのです。彼が学生時代集めた書物なのでしょうか?いずれにせよ「禅」やら新渡戸稲造でも国学でもないのですから、軍人にしてはずいぶん変わったインテリゲンチャではないでしょうか。もしこれらが軍人ではなく髪の長い「彼女」の趣味であるとすれば、なんとなく納得が行くような気がするのですが。

 恐らく彼は(若しくは彼女は)普段は壁に掛けてある写真の中に棲み、時々ここから外にでては人間の魂をこの屋敷に引きずり込み卵にしているのではないでしょうか。そこには、明確な目的、例えば魂を集めるのがこの幽霊の(快楽的な)趣味である、若しくは、人の魂を集めて食べないと「幽霊」として「生活」できないとか、魂を100個集めたらもう一度生まれ変われる等の理由がある、と推測します。
 屋敷に足を踏み入れた吉良も当然、この「住人」のターゲットになるでしょう。「吉良」VS「住人」の戦いが来週の見所となるのではないでしょうか。結果は十中八九吉良がこの戦いに勝ち、念願のホームを手に入れる、というところで終わると思いますが。

 「吉良吉影」なんですが、私にはどうも彼が4部の「吉良吉影」なのかどうか判断しかねるのです。杜王「町」が「区」になったように、微妙に4部とDQの世界はシンクロしているのだ、というのが私の考えです。仕事、生活に対する考えは二人の「吉良」は線対称の位置にありますが、ある特殊な性格(怒ったときのキレ方や果物ナイフでなければいけないというような物に対するこだわり)はまさしく同一人物といってよいでしょう。DQの吉良は「鼻のないゾウさん」のように、非常にちゅうぶらりんです。鼻のない象は、ゾウさんのようで、ゾウさんじゃないような、でもそうであるようなという存在であり、そしてこの吉良は4部の吉良らしいが、そうじゃないかもしれないし、吉良じゃないというと、否そうかもしれない、っていう感じです。この辺りの謎は曖昧なままDQは終わると思います。

 「ああ無情」で主人公(うう名前度忘れした ジャン某)が死ぬ間際、「死ぬことはこわくない、生きてないことが恐ろしい」(記憶あやふやですが(大汗))というようなことを言っていました。同じ「住人」でも「無限の住人」の卍さんは死ねないという運命を背負いながら「生」の為に日々戦い続けています。 一方この屋敷の新しい「住人」になるであろう「吉良」は、何のために幽霊でいようとするのでしょうか? 矢張り無限の時間を幽霊で過ごすのでしょうか? もしそうであるならば、これからの「生活」の目的を探し、それを得ない限り、生きてない、つまり充実した生活を送ることはできません。

 「吉良吉影」は幽霊なのですが、一個所に固執して地縛霊になったり、ゆらゆらあっちこっちをさ迷う浮遊霊ではなく、自分の家を持とうとし、生活する術に仕事をし、時には出張もする、そして休みには他の屋敷幽霊を訪ねる旅をしたい、というまるっきり普通の「はたらくひと」と同じ生活を営もうとしています。自分の家を持ちたいという念願を叶えたならば この先或いは、自分の「車」を持ちたい、ワーグナーのLP(CD)をもっと欲しい、という別の欲又は「生活する目的」が「吉良」に生じる可能性もあるのではないでしょうか。かなり通俗的かもしれませんが、このような目的を持ってしまった場合、その発生時点で充実した時間を得る代わりに苦労をせねばならず、要求を満たさない限り心の平安を得ることが難しくなります。

 又会社人である「川尻浩作」、或いは同じ殺し屋でも5部の暗殺チームと違い、組織に属してないこの「吉良吉影」には、後ろ盾がありません。あの尼僧とどの程度の労働契約をしているのか知りませんが、万が一暗殺者である「吉良」が仕事を遂行するに必要な自分の「手」を失うことがあれば、或いは相手と戦い敗北した場合、又は自分と同じ仕事をする幽霊がでてきたら、彼にとって死活に関わる問題になります。職を失い(リストラでしょうか)、「鼻」という生活する上なくてはならない「手」を失った「象さん」のように自滅してあきらめて「あの世」にいくか、その辺にいる惨めな霊魂と同じにならざるをえなくなるかもしれないのです。

 こんな風に考えてみると、吉良がこれから本当に心安らかに日々を送れるのか疑問になります。物質的な「生活する目的」は仕事に遣り甲斐を与えるかもしれませんが、心の平安を約束するものではありません。そんなものいらずにひたすら「あの世」についてとか「子供の魂」について考えていきたい、と願い静かに趣味の書物を読んで暮らすという生活もいいですが、死後の世界について語った本(「銀河鉄道」とか「神曲」)は明確な「答え」を与えるものではないですし。「答え」が見つからなくて、果たして心穏やかに過ごせるのでしょうか?

 いずれは定年退職みたいに「あの世」でもいかない限り、吉良の魂が「質問」に対する「答え」そして永遠の平穏を得ることはない、のかもしれません。

 メール頂いてからいろいろあってしっかり読めずに、今、こうして拝見しております。
 ネットで簡単に人が死ぬ(あ、これは語弊があるか)このご時世、吉良の質問は、誰もが思う生者の質問ではないと思います。しかし、生きている者にも受け入れられる質問ではあります。これだけ紙一重でありながら、奇妙なところがあります。吉良が人を殺した際、死者はどこ行くのかとか考えないのか? 吉良は「「あの世」が確実にあるってどうして生きてるあんたにわかる?」と尼僧に語っています。死んでいるヤツにも解らない事なのに………という訳です。吉良は社会のルールをしつこく守っています。電車の代金は払いますし(歩いても疲れないだろうに)、これらがまるで何かの「基準」となるように………。恐らく、吉良が他人(他幽霊?)と話す事はもう無いでしょうけど、人との比較によって自分を確かめてきた自分が死んだとたんいきなり「物質」との比較によって変ってゆくんだ、という事を永遠に認められない事でしょう。無難な妥協点が、「家」であり(シャーマンキングじゃないけど)「ベストプレイス」という事なんでしょう。


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