write 1999/07/05
「週感ジョジョンプ」増刊第8号トップに戻る
「週感ジョジョンプ」トップページに戻る
「週感ジョジョンプ」バックナンバートップへ

「週感ジョジョンプ」増刊第8号

PAGE11・よーやんより


 さて、週感ジョジョンプ増刊、デッドマンズ・アンサーズもとうとうというか、やっとこさPAGE11となりました。今回が予想では最終回、となる訳ですが、最後の最後によーやんの投稿です。しかも今回バオーですよバオー。バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン!!

投稿者:よーやん

 ぼくの名前は橋沢育郎。現在謎の組織「ドレス」に追われている。
 ボクと一緒に逃げているのは予知能力を持つ少女スミレ。
 ぼくも彼女も、今日の寝床も無い逃亡生活・・・・だから魂の殺し屋『吉良吉影』の苦しみは、良くわかる。
 彼にもぼくらにも、安住の地は見つかるのか・・・・。
 そうだ、これから彼がどうなるか、スミレの予知能力を使って当ててみよう。

「スミレ、どうだい?何か見えるかい?」

 少女は文字の書かれたスケッチブックに10円玉を乗せ指をそこに置いて、心を滑らせた。

「や・・・し・・・き・・・ゆ・・・う・・・れ・・・い・・・は・・・」

「何?あの屋敷からいろんな物を盗みだそうとした吉良吉影に、危険な追手が迫っているというのか?」

「う・・・・動き出したわ!」

 それは少女スミレにのみ見える映像(ビジョン)だった。

『タマゴを・・・もっと集めるのだ・・・わたしの世界を壊すものは・・・許しておいてはいけない』

「絵の中の・・・夢路の絵の中の少女が、若い軍人の肖像が見ている・・・彼を・・・いけない・・・あの屋敷の物に手を出しては・・・そしてあの『タマゴ』こそ!!」
「何なんだ?スミレ、何が見えるんだ?」
「ユーレイのタマゴよ」

「幽霊の卵?」

「そう、あの屋敷は幽霊を製造しているの。本も絵画もマッチの一本まで、あの家のユーレイが自ら作った『タマゴ』で生み出したものよ」
「何だって?」
「あの家の主人である軍人は・・・いまでいうオタク・・・コレクターだった。彼が小さい頃からコツコツと集めたシールヤメンコ、大人になってから集めた美術品まで、何もかもが戦争によって灰になったの」
「でも、軍人は死ななかったんだろう?」
「ええ、でも彼の大切なコレクションは『無念』の気持ちのせいで『成仏』出来ずにあの場所にとどまったの、消失したはずのコレクションの『幽霊』と共に・・・そしてその『家』は思ったの。『もっともっとコレクションを増やさねば』って」
「家が?じゃあ家が意志を持ってコレクションを増やしているのかい?」
「ええそうよ。家は魂を・・・あの家の周囲に寄ってきた魂を捕まえるの。魂に取りついて殺すの。ある者は車に飛び込み、ある者はビルの屋上から落ち・・またある者はコップ一杯の水で溺れ死んだりしたわ。」
「そんなバカな事が!!」
「全て事実よ。そうやって捕獲した『成仏していない魂』をあの家は取り込んで『タマゴ』に変えるの・・・この世に浮遊する死者の魂がある日何処かの女性の体内に取り込まれ、新しい身体を得て生まれ変わるように、あの家は『魂』を『物』の幽霊に変えるのよ」
「何だって? じゃあこの世で生まれる新しい生命は、全て死んだ人の魂がリサイクルされて生まれ変わるってワケなのかい?」
「私にはわからない・・・でもこのスケッチブックにそういうビジョンが現れたの・・・このままでは・・・いけない。吉良吉影の迷える魂もタマゴに変えられて戸棚の中のナイフになってしまうわ!」

バルバルバルバル・・・・

「ああ、育郎ッ?」
 危険を感じ取った時、『寄生虫バオー』は宿主である橋沢育郎を生命の危険から守るべく、無敵の肉体に変身させるのだ。これがッ『バオー武装現象(アームド・フェノメノン)だ!!

『ニオイがする・・・屋敷幽霊の発する殺意のニオイが・・』

ウオオオオオ〜〜ム バルバルバルバル!!!!

「そうだ、良く分かったな・・・さすが我が組織『ドレス』が目をつけた超能力少女・・・・」
「あなたはッ!? か、霞の目博士!!」
「いいことを教えてやろう・・・・この物語は・・・・『デッドマンズ・Q』のテーマを・・・それはすなわち『こだわること』そして『ボーダレスへのいざない』なのだ」
「なんですって!?」
「『こだわること』とはすなわち、時効を待ち時間が過ぎるのをひたすら待つ殺人犯、ブーツの油がついたと言って何度もフロに入り直す女、そして幽霊のくせに『眺めの良い部屋』を探す主人公・・・・それらの存在を浮き彫りにした挙げ句、『こだわらないもの』すなわち『ボーダレス』な存在への転換を促しているのだ」

「わからない!わたしまだ9才だからよくわからないわッ!!」
「教えてやろう。それはすなわち『鼻をなくしたゾウさん』『尼僧』『タマゴ』などのキーワードに要約されているのだ」
「どういう事なの!?」
自分のアイデンティティを捨てるということだ。それが出来ないからこそ、吉良吉影はこの世に留まっている。そして『屋敷幽霊』もしかり。しかし魂のカラを捨てて『タマゴ』に戻る事により、永遠の平安と未来へのパスポートを手に入れられるのだ。さあ、オマエ達もいつまでも逃げていないで、わが組織の一部となれ。何も考えず組織の為に働くことにこそ、オマエ達『はみ出した能力の持ち主』の安住の地があるのだ」

バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン!!

 手のひらから出る特別な液で物質を溶かす。

「ぎゃあああああああああ!!! 溶ける・・・溶けて行く・・・私の野望が・・・」

「見えるわ!!屋敷幽霊が溶けてゆく!!再び『幽霊の火』で炎上する屋敷の絶望が見えるわ!!消失するコレクション・・・開放された魂達が飛んで散ってゆく・・・育郎!もういいわ、事件は解決したのよ!」

ピシ! ピシ! ピシ! カカカカカカ

 バオー武装現象は解けた。橋沢育郎のやさしい表情が戻る。
「・・・・・しかしスミレ、マッチの火はカーテンには燃え移らなかったんじゃないのか?」
「ええ。でもマッチ自体は燃えてるわけでしょ?吉良吉影はその火を自分に燃え移らせて大きくして、屋敷全体を燃やしたのよ」
「でもそしたら吉良吉影は・・」
「開放されたわ・・・タマゴの魂と一緒に・・・今ごろは昔の姿も、今までの幽霊の姿も捨てて生まれ変わるべく誰かの体内に入ったかも・・・」
「それはひょっとしてあの女の・・・・」
「わたしは見たわ・・・これから9ヶ月後、新しい命が杜王町に生まれる・・・そういうビジョンが見えたの・・・」
 

《終わり》

 さて、前回のゆうこさんの時にも書こうとしたのですが、「屋敷幽霊」と言えば、マヨイガを思い出しますよね。マヨイガは東北の昔話に出てくる妖怪のようなもので、確か深い山奥に突如として現れる民家で、人の気配がするけども人はいない。そこから食器を持ちかえると金持ちに(あるいは幸福に)なれるというものです。今回の吉良も嬉々として部屋の中の中のものを漁っていますが、人気のあるところから、何かを運び出すっていう事は特別な意味のある事なんでしょうね。生きるにせよ、死んでいるにせよ。死人の吉良にとって人と違う、唯一のものなのかもしれません。


PAGE12に進む
「週感ジョジョンプ」増刊第8号トップに戻る
「週感ジョジョンプ」バックナンバートップページに戻る
「週感ジョジョンプ」トップページに戻る

CON$ E-mail: condor@edit.or.jp
このPAGEはWindows95+Netscape Ver3.01Jで作成しています
Copyright (C) 1997 CON$