write 2000/11/21
ジャンプ第51号予想
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「週感ジョジョンプ」第272号

PAGE10・ラバーソウルさんより

Hermit Purple attack JUMP 2000 No.51!


 こんばんわ。
 さて、今号もこれで終わりです。
 長かったようで、あっという間でしたね。ラバーソウルさんです。ありがとうございます。

投稿者:ラバーソウルさん

 もうそろそろ冬の木枯らしが吹き始める季節だ。青々とした草木が薄茶色に枯れ果てて、白銀の冬景色に豹変するのももうまもなくだ。いいねー。こういう季節の変わり目ッてやつはよー。
 だけど最近はこう、季節の変化を感じさせてくれるもんが少ねーよな。ちょいと寂しいぜよ。変化がないっつーのはよォ!気晴らしに旅行にでも出てみりゃあよ、北海道で買ったうにの塩漬けと同じもんが長崎で売ってるし、それがみんなアメリカ産だったりすんだよなー。松茸買ったらモロッコ産。練りわさびは韓国産。黒砂糖はキューバ産ときたもんだ。日本も落ちたもんだよなー。ニセ土産(みやげ)なんか売りさばきやがって、このゴキブリ商人がア!そろそろ日本ともおさらばか?まーたひと稼ぎしなきゃならねえぜ。ディオは死んじまったし。なんかいい仕事ねーかなあ。
 え? 予想師? んなもん金にならねーじゃねえか!・・・まあいいや、やってやるよ。

 とにかくよー、もうちょっと自分の持ってるもんを大事にして欲しいんだよな。このままじゃどこもかしこ同じになっちまうぜ(まあ俺様自身もよ、知らぬ間に他人になりすまして入り込めるレプリカスタンド持ってっからなー。あんまし他人のこたー言えねー立場だけどな)。

 とにかく世の中、変化ってもんが大切だ。その点、ジョジョは面白いねえ! まあパクリもあるけどオリジナリティもあるし、一度舞台に上がったものは転々と変わり続けている。ハイテク刑務所という人工空間が出てきた直後にはよお、フロリダの大自然が目の前に転がり込んできやがるんだ。にくいねー。景色が変われば人も変わる。服装も顔つきもコロコロ変わる。その中で変わらずに貫き通されている主人公の心! 血筋ってやつよのー。見た目の変化があるからこそ内面を貫く不動の心が際立って見えるのさ。目に見えないものを表現するにはなあ、目に見えるものとのコントラストが重要なんだよォ! 見た目が変化したその瞬間に、本質的なものが見えてくるのさ。

ドゥーユゥーアンダスタンンンドゥ?

 今回のラングラングラーも、最初はけっこう整った顔してたけどよ(なんとなく露伴に似てた)、最後は怪物じみた顔に変わっちまったよな。だけどその瞬間から内面的なものを吐露している。心の奥底に秘められていた本質的なドロドロをぶちまけている。「ドス黒い」ってやつよ。ジョジョにはこういうキャラがしょっちゅう出てくる。変化っちゅうものを最大限に利用してキャラクターを表現しているのさ。ラングのセリフが突然増えたのはこのためだと思うぜ。セリフにもコントラストを効かせているのさ。

 今回のテーマはこれだ。「変化」だ。「豹変するキャラクター」ってやつだ。そん じゃあ行ってみようか!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

 ラングラングラー(以下ラング)との激闘を制したジョリーンは、ウェザーリポート(以下WR)の肩を担いで立ち上がった。時間はもうわずかしか残されていない。ここは急がなければならない。

ジョリーン「WR・・・、動ける?あの扉まで移動するのよ。あ、ちょっと待って。出血がひどいわね」
WR「心配はいらん・・・傷は雲でふさいだ。それより急がねば」

 ヨロヨロとつまさきだちで歩くWRをジョリーンが支えながら、何とか扉のところまでたどり着いた。

ジョリーン「この扉・・・・どうすればいいのかしら。カードが無いから壊すしかないわよね。エンポリオはあなたの力業が必要だと言っていたわ」
WR「いや・・・今のところ、力業は必要ない。これを使えばいいさ」

 そういうとWRは、扉を通過するためのカードをジョリーンに差し出した。

ジョリーン「どこでこれを!?」
WR「雲を固めて造ったんだ。さあ、はやく」

 ジョリーンはカードを受け取り、それを扉の左側に設置されている小型のボックスに通した。だが扉は開かなかった。何度も通したが、何の反応も無い。

ジョリーン「おかしいわ。ねえWR、このカード本当に使えるの?」
WR「ああ、使えるはずだ。それよりボックスを見てみな。どうやら壊れているみたいだぜ」

 よく見ると、箱には無数の小さな穴があいていた。ラングがあらかじめネジを打ち込んでいたのだ。

WR「あいつ、やりやがった。オレたちが中庭に向かっていることを、やはり知っていた。地獄耳だな。たぶんホワイトスネイクもこのことをかぎつけただろう」
ジョリーン「まだ別の追っ手がくるかもしれないわね。用心しなくちゃ。WR,、お願い、やっぱりあんたの力技が必要なのよ」
WR「了解!」

 扉の前で身構えるWR.。両手を前に突き出して、力を集中させているようだ。わずかにだがあたりの空気が湿り気を帯びて、白いもやのようなものが気流に乗って舞い上がった。スタンド使いであるジョリーンは、そのもやの中に強烈なパワーを感じ取った。WRがもやを扉の一箇所に集中させているのだ。

ジョリーン「何をしようとしているの?」
WR「この扉を破壊する・・・・・・そのための風力を結集させている・・・・・・だが派手に吹っ飛ばすわけにはいかない・・・・・・ブサーが鳴って看守が来ちまうからな・・・・・・人が通り抜けられるだけの穴を・・・・・・開けられればそれでいい・・・もう話し掛けないでくれ・・・・・・失敗したらブザーが鳴る・・・」

 話したいことが山ほどあるジョリーンは、仕方なく質問したい気持ちを抑えた。ラングとの死闘を終えてなおこれほどの力を発揮するとは、記憶が無いとはいえ、この男、一体いかなる人物なのだろう。まだ自分のことも大して伝えてはいないし。エンポリオやこの男と出会ってからまだ間もないが、ドタバタした戦いが続いていたせいで、落ち着いて話をする機会がなかった。今のうちに聞きたいことや試しておきたいこともあるのだが、いま自分たちは、限られた時間の中で一つの目的に向かって動いている。余計な行動は慎まなければならない。話し掛けるなと言われれば、そうするほかはない。

 だがその時、ジョリーンのジレンマとは裏腹に、扉の外から話し掛ける声が聞こえてきた。

「いけませんねー、そういう手荒なことをなさっては」

 男の声だった。声質はやわらかいが、張りのあるハキハキとした喋り方だった。

男「あ、わたくしの声、聞こえます? もし聞こえるのならおやめください。」

 扉の外から心地よく響く魅力的な声に、二人は思わずキョトンとなって立ち尽くした。

男「心配いりませんよ。扉ならわたくしが開けますから。こちら側には開閉用のスイッチがありますので・・・・・・これを押せば」

 カチリ・・・というかすかな音が聞こえた後、ついに中庭への扉が開いた。ヴィーンという機械的な開閉音がした後、外気に満たされた中庭の光景が、二人の眼前にひっそりとその面影をのぞかせた。さえずる小鳥の声と、所々にほどよく生い茂る草花、そして真昼の陽光を受けながら、その静まり返った空間にたたずむ背広姿の男・・・。

男「ああ、お嬢様・・・・・・お嬢様でいらっしゃいますね? ご無事で何よりです」

 年のころは30代半ば。背は高く、体つきは少しやせ型だが、スラリと伸びた背筋がどことなく誇らしげで、頼りがいのある雰囲気をかもしていた。オールバックにした黒髪を擁するその面構えには、知的なまなざしが輝いており、品格のある鷲鼻が印象的だった。ダークグリーンのスーツに赤いネクタイ、磨きのかかった革靴と品のよい帽子。それらには、所々に草花をかたどった緻密な紋様が打ち込まれており、その年齢にふさわしい高級感を漂わせながらも、静けさに包まれた中庭の空気と見事に調和していた。あたかも今までの戦いがウソであったかのような、そんな静けさが、この男の存在によっていよいよ際立ってくる。

ジョリーン「あ、あのー・・・別にそのー、無事ってわけでもないんですけども」

 あまり礼儀正しい会話にはなれていなかったジョリーンは、少々面食らっていたが、その場がどんなに平和な雰囲気であっても、先を急がねばならぬことに変わりはない。

ジョリーン「あのー、はやくしないと」
男「わかっておりますとも。今は急がねばなりません。敵が迫っている可能性がありますからね。さ、はやくこちらへ!」

 男はクルリと身を返すと、足早に歩き出した。そのきびきびとした歩き方には、確かに紳士的な物腰が感じられたが、どことなく、規律を重んじる官僚的な気配も漂う。
 この男は、SPW財団の中でも、かなり上層部の人間ではなかろうか。ふと、そんな推測がジョリーンの頭をよぎった時、この男の正体に対するある意識が、フツフツとこみ上げてきた。不安というか、疑問というか、彼の正体を確かめもせずに従っていて安全なんだろうか。礼儀正しくしておきながら実は・・・・・・。そんな思いにとらわれて、ジョリーンの口から質問が出た。

ジョリーン「あの、あのさあ、ちょっといい?急いでる時で申し訳ないんだけど。あんたさあ、名前なんていうの?」

 ピタリ・・・。男の足が止まった。ジョリーンはまだ「サヴェジガーデン」という言葉を男の前で口にしていない。もしこの男が敵なら、その言葉を知らない可能性がある。

男「わ・・・わたくしですか?」
ジョリーン「そうよ。別にあんたを疑うわけじゃないけど、でも確かめておきたいのよ。あたしに伝えるべき重要なキーワード。知ってるんでしょ?」
男「わ・・・わたくしの・・・わたくしの名前は・・・・・・」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

男「コンドルです。・・・コンドル・ザ・グレートとでもしておきましょう」
ジョリーン「ちょっとあんた、いいかげんなこといわないでよ」

 再び歩き出しながら、

男「あ、いや、ごめんなさい。今のは冗談です。本当はサヴェジガーデンと申します」

 男の口からその言葉が出てきたが、まだそれだけでは信用するわけには行かない。ホワイトスネイクから情報を得ている可能性もあるのだ。

ジョリーン「あ、そう。ふうーん。じゃあさ、名刺見せてよ名刺。持ってるんでしょ? あんたみたいな人なら」
男「わかりました。あなたがそれほどまでおっしゃるなら」

 男は胸のポケットから名刺を取り出すと、ジョリーンに見せた。そこには確かにサヴェジガーデンという名があり、ダラス本部、および彼自身の住所や電話、ファックス番号などが記載されていた。これなら信用できるかもしれない。ジョリーンがそう思った時、男が再び口を開いた。

男「つきました。ここです」

 男の示した場所には、奇妙なことに地面にぽっかりと穴があいていた。1X1メートルくらいの正方形の穴で、薄暗い階段が地下へと続いている。

男「<行けばきっとわかります>と申しましたのは、このことなんです。あと、中庭といいましたが、これは敵を欺くための方便です。本当は中庭の地下なんです」

 階段を下りながら、男はジョリーン達に急げ急げと手招きしている。しかしジョリーンとしてはいざ踏み込むとなると、またあの不安がよぎってくる。名刺は見せてもらったが、この穴が罠ではないかという疑念が、どうしても頭をよぎるのだ。

男「お嬢様、お急ぎください」

ジョリーン「ちょっと悪いんだけどさあ、もう少し何か見せてくれねーかなあ。名刺以外にも、いろいろあるんじゃないの?あたしとしては、どーしてもこのディスクを確実に届けなければならない。だからさあ、何かもうちょっと見せてよ」
男「これはこれは、気が効きませんでした。申し訳ない・・・・・・。まあ、お嬢様がそこ までおっしゃるならよろしい、お見せしましょう。今わたくしの身分を証明できる全てのものを」

 男は口早にそういうと、ポケットから3枚のカードを取り出してみせた。

男「これらは、財団が発行しているテレホンカードです。まずこれは、ダラス本社の立派なビルディングを映した写真が印刷されています。もう1枚は、わがSPW財団のトレードマークが印刷されているものです。わが社の礎(いしづえ)を築かれた偉大なるスピードワゴン様が、日々ご愛用なさっておられたシルクハットが、今ここにトレードマークとして印刷されているのです。そしてこれが3枚目。これは非常にレアなカードですよ。スピードワゴン様若かりしころのお写真が、しかもカラー版で拝見できるのです。スピードワゴン様の熱烈なファンの中には、これを10万ドルはたいてご購入される方もおられます。財団職員でなければ入手することはとても困難ですからね。あ、最後にもう一つ、テレカ以外にもありますよ。これなんかどうでしょう」

 そういって男は、ポケットから手帳を取り出した。

男「これは、財団の中でも、重要な役職についたものだけがもつことを許される特別な手帳です。ご覧ください。ここにわたくしの写真がありますでしょ? その横に財団の印鑑が押してあります。そしてその上に、合衆国法務省の承認用の印鑑も押してあります。これでよろしいでしょうか?あとはお嬢様に信じていただかないと・・・」
ジョリーン「わかったわ、うたぐったりしてごめんなさい。WR、行くわよ!」

 もし敵なら、電話してからわずかの間に、これだけのものを集めることはできまい。とにかく他に判断材料がない以上、このまま進むしかないのだ。ついに意を決したジョリーンは、男の後を追って穴に飛び込んだ。

 一気に階段を駆け下りると、目の前に扉があった。男がそれを開けて中に入ると、 ジョリーン達もそれに続いた。

男「ようこそ・・・わがスタンドへ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

 そこには、豪華な大理石をふんだんに敷き詰めた廊下が、広々と横たわっていた。
 幅15メートル、高さ10メートルはあろうかというその廊下には、床にも壁にも天井にも、薄く様々な色をにじませた大理石がしつらえてあり、それらはすべて顔が映るほど美しく磨きこまれていた。廊下の左右の壁には、これまた見事な彫刻の施された石柱が、規律正しく等間隔に並べられており、その一本一本には、人体の骨格を基準とした比率や、1X1・618を基にした黄金率などが、随所に反映されていた。

 それら柱の、ちょうど人間の頭の高さくらいのところには、精密にくりぬかれたくぼみが穿たれており、そのくぼみの中に、飾り気の少ないシンプルな金属性ランプが、目立たないように品よく置かれていた。そこにゆらゆらとゆれるオレンジ色の炎は、あたりに微妙な光を投げかけ、この、石の海さながらの世界に、よりいっそうの美しさを奏でていた。ジョリーンとWRは、柱の比率までを見抜くことはなかったが、その炎の光を受けた壁のあちらこちらが、チカッ・・・・・・チカッ・・・・・・と、光を放っていることに気が付いた。見れば、ダイヤモンドやサファイア、エメラルドなどの宝石が埋め込まれており、優しげな光を反射して、眠たげに瞬きをくりかえしていた。はたして、この世界そのものがスタンドなのだろうか。それともまぼろし?

 気が付けば、あたりにはほのかな芳香が漂っている。

ジョリーン「これはスタンドなの?やっぱりあなたはスタンド使いなのね?」

男「度々うそをついてしまい、誠に申し訳ありませんでした。あの時の電話では、どうしてもスタンド能力者だとはいえなかったのです。私はスタンド使いです。この地下迷宮全体が私のスタンドです。さあ、まいりましょう。もっと奥へ。ここまでくれば安全だとは思いますが、敵もスタンド使いであると考えられます。もしかしたら、ここまで追ってくるかもしれませんので、油断はできません。さあ!」

 再びきびきびと歩き出す男を追って、ジョリーン達も歩き始めた。

WR「それにしても・・・すげーなあ」

ジョリーン「このスタンドを維持しているだけでも、相当のパワーね」

男「<名は人格を表す>というのをご存知でしょうか。わたくしはスタンドも同じだと思います。スタンドは人格を表す。ンンー、実にいい言葉です。スタンドを支えているものは、パワーだけではないということです」

 廊下をまっすぐに進みつづけると、やがてT字路に出た。壁には、看板がかけられており、赤い矢印が左を指し示している。

男「目的の場所までは、この矢印に従って進みます。道に迷うわけには行きませんから」

WR「自分のスタンドの中で迷子になるなんて、奇妙な話だな」

ジョリーン「ええ、そうね。でも、この矢印。このままじゃあ・・・敵もついてきちゃうんじゃない?」

男「ハハハ、心配いりませんよ。わたくしが通過した後は、この矢印はデタラメな方を向くようにセットされています。我々を正しい場所へ導くと同時に、敵を欺く手段でもあるのです」

 そのままジョリーン達は、右へ折れ、左へ曲がり、時には階段を降り、時には登り、複雑に入り組んだ迷路の中を歩んだ。あたかも同じ場所を行ったり来たりしているだけであるかのような、奇妙な錯覚にとらわれながら。
 唐突に、男は立ち止まった。そして壁の一ヶ所を触った。するとその部分がガバアッと開いて、中からオーク製の大きな棚が現れた。その棚には、豪華な酒類がずらりと並んでいる。

男「さあ、そろそろいいでしょう。ここまでくればもう大丈夫です。休憩を取りましょう」

 手早くグラスにワインを注ぎながら、ジョリーン達にも勧める。

男「お一つ、いかがです? わたくしはワインが大好きでしてね。これなどは、フランスノのブルゴーニュから取り寄せました。40年ものです。この地下迷宮はワインの保存にもちょうどよいのです」

ジョリーン「いえ、ありがたいけど、遠慮しておくわ。あなたはお疲れのようだから、ここで休んでいてちょうだい。でもあたしたちは急がないといけない。あとは矢印を追っていくから、目的の場所のこととか、どうしたらいいか教えて」

男「まあまあ、そんなことは言わずに・・・・・・。そろそろディスクを渡していただきたいんですが」

ジョリーン「いま? 目的の場所についてからにするべきじゃない?」

 男は急に立ち上がり、激しい憤怒の表情を浮かべ、恐ろしい目つきでジョリーンをにらみつけた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

男「てめー、いつまでもウダウダほざいてんじゃねーぞ、このクソアマがァ!」

 手に持っていたグラスを思いっきり床にたたきつける。バリーン!

男「小便くせー小娘のくせして、このオレ様にタメ口吐くんじゃねーッつってんだよォ。わかってんのか、こらァ!」

 りりしかった男の表情は見る見るうちに変わってゆき、トローンとした下品な目つきになり下がってしまった。右目などは左側にずれていた。
 ふと見ると、宝石のちりばめられていた大理石の廊下は、いつのまにか苔むした岩肌の洞窟に変わっていた。気品漂うランプの光は、荒々しいたいまつの炎にとって代わられ、あたかも蛮族の住まうほら穴ようになり果てていた。あたりには凶々しい雰囲気が立ち込め、動物の死骸が腐ったような異臭すら漂っていた。遠くの闇の中からは、得体の知れぬものがうごめくような、カサコソ・・・・・・カサコソ・・・・・・という不気味な音も響いてくる。

男「さっさとよこせってんだよ、その小汚ねーディスクをよォ! オレ様はもともとホワイトスネイクに頼まれてんだからよォ! 言葉理解してんのか? あたまん中に腐った魚のハラワタ詰まってんじゃねーのか、このド畜生がァ!」

 すらっと伸びていた背筋は、ダルーンとした猫背になっている。張りのあったはずの声も、だらしなくがなり立てるようなダミ声に。唇の端からはヨダレがこぼれ、足は蟹股、指先はぽりぽりと尻をかいている。

男「ああー、めんどくせー、堅苦しい格好はもうたくさんだあ! こんなくされスーツ引き裂いてやる!」ビリビリビリー「こんなアホらしいオールバックもやってられっかよォ!」グシャグシャグシャシャー「「靴なんかよー、やっぱかかと潰してスリッパみてーに履くもんだよなアアア!」ドグシャア「ああー、鼻水までたれてきやがった。こんなもんは放っときゃいいんだ、放っときゃ。邪魔ならすすっちまえばいいんだからよォ!」ズズズチュルルルー・・・ゴックン「ンンー、すっきりするぜ」

ジョリーン「だましたのね、あたし達を!」

男「グヘヘヘヘヘ。今ごろ気が付いてもおせーんだよ。やっぱりてめーはノータリンでオッチョコチョイのクルパー女だア!」

ジョリーン「でもおかしいわ。あの名刺とかはどうしたの?」

男「ケッ・・・偽造したに決まってんだろーが!」

ジョリーン「こんな短い時間で用意できるの?」

男「てめーはいつまで時代遅れの原始人やってんだよォ! IT革命ってもんをしらねーのか?昔はなあ、身分証の偽造っつーのはよ、専門の職人が何日もかけて作ってたもんだがよー、今じゃあちょっとした技術さえありゃ、その場でさっさと作っちまえるんだよ。てめーみてーなド素人だますのはわけねーんだ、このスカポンタンがア!」

 壁にしつらえてあったオーク棚は、オンボロの冷蔵庫に変わっていた。

男「ワインなんて上品くせーもん飲んでられっかよ!ビールだよビール、決まってんだろうが、ジョッキでがぶ飲みよォ!」ゴキュンゴキュン「「ンンー、うめーや、うめーや。そんでもって思いっきり音立ててゲップすんのが風流ってもんよォ!」ゲッフゥゥゥゥゥ

 たたくなら今のうち!

ジョリーン「オラオラオラオラオラァ!」

 だがしかし、とつぜん壁がせり出してきて、ジョリーンのいくてを阻んだ。サヴェジガーデンを名乗っていた男は、そのまま岩肌の向こうに飲み込まれ、ストーンフリーのこぶしはむなしく壁をたたいただけだった。

ジョリーン「しまった逃げられた!」

 その直後、天井のギザギザした黒い岩の裂け目から、奇妙な形のスピーカーが出てきた。そこからあの男の声が伝わってくる。

男「ゲヘヘヘヘヘ。いいかジョリーン。そのすっトロけた脳ミソひっぱたいて聞きやがれ。オレはサヴェジガーデンなんかじゃねえよ。そいつが何者か知らねーけどな、今ごろ地上で待ちぼうけよ。オレ様の名はデイビット・ボウイだ。スタンド名は”ラビリンス”。地下の岩盤と一体化した迷宮のスタンドだ。一度入った野郎は二度と出られねえ。道に迷ってウロウロするだけさ。まともに殴りあったらこのオレに勝ち目はねえ。だがこん中に閉じ込めちまえばよォ、ホワイトスネイクにだって勝てると思うぜェ。オレ様は無敵なんだ!戦わずに勝てるから無敵なのさ! もう一つ、いいこと教えてやる。何か腹へってこねーか?いまハラペコだろ? わかってんだよォ。この迷宮の中ではなあ、現実よりも速いスピードで時間が流れてるんだ。10分経つあいだに、10日分の時間が流れちまうのさ。つまりおまえらはほんの10分で餓死するんだよォ!グヘヘヘヘヘヘ。今いいもの見せてやる・・・・・・ほれ、足元に転がってるだろ? わかるだろ? 猫の死骸だよ! もうミイラ化しちまってる。だがこいつは、実際にはほんの6時間くらいまえに迷い込んだだけなのさあ!これがどういう意味かわかるか? ええ? てめーらの未来にきまってんだろうがァ! 便所に住んでる薄汚いネズミの小便野郎がァ! オレ様はなあ、めんどくせーことが大嫌いなんだ。めんどくせー事ばかりぬかしやがる母親ブっ殺して、この刑務所に入ったんだからなあ。あんなメス豚はこの世に存在しねーほうがいい。それほどめんどいことが嫌いなんだよォ。ラングのようにボカスカやりあうのはゴメンだね。ディスクはてめーらが死んだあとで、ゆっくり回収してやるからな。とっととくたばりやがれ!」

 さあ、このピンチにジョリーンはどう立ち向かうのか!? ここでTOBECONTINUED!

 お疲れ様でした。こんななげー予想、読むやついるのかな?(笑)なんかどうでもいいって感じ?まあ、今回は予想の変わり目ってことで、いろいろかんがえてみただけさ。じゃ、またねー。


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