透先生の第7弾

サブ・タイトル「言葉の究極リミット」…(苦笑)

 いつの間にうとうととしていたのだろうか。ふと気付いて、気配の方へ顔を向けると、ザックスを前にしてクラウドがそこに座っていた。手には原稿用紙の束があり、とんとんと正座の膝の上でまとめていた。
「…読んだのか?」
「ええ。黙って読むのも悪いかと思ったんですけど…よく眠ってらっしゃったから、お起こしするのも申し訳なくて」
 ザックスには、心無しかセフィロスの顔色が失われたように思われた。尤も、気のせいだといわれればそれまでといった程度の変わり様だったから、気には止めなかった。元来、細かいことを気にかける質の男ではない。
「…そうか。」
「あの、ちょっと気になったことがあるんですけどよろしいですか?」
 ザックスは息を飲んだ。編集者である彼でも、そう滅多にセフィロスに意見することなどできない。一種のカリスマ性を持ったこの作家に真正面から作品について言える者は殆どいないといっていい。あまりの事態に、ザックスはセフィロスもまた凍り付いてしまっていることに気付かないほど動揺した。
「ここの伏線が消化し切れてないように思います。ここからこの、主人公の心理描写へとつながっていく重要な箇所ですよね?それが中途半端な場面転換に飲み込まれて、印象が薄くなっていると思うんです。」
 奥方はぱらぱらと正確な頁をめくって、一つ一つ指摘していく。それはすこぶる的確なために、酷く辛辣でもあった。ザックスは心の中で『ひとーつ、ふたーつ、…』と数えながらうつむいて奥方のご意見を拝聴していた。
「…といった所でしょうか。」
 どうやら全て指摘し終えたらしい奥方は、編集者に視線をやった。しかしこの状況で話を振られても多いに困る。慌てたザックスはついすがるような視線をセフィロスに向けた。
「…だが、直している時間はあるのか?」
「あ、いえ、あのもう次にまわさなきゃならないんでっできればこのままで…」
「…だそうだ。」
 うんうんと頷くザックスを横目で見ながら、さもほっとしたような感じでセフィロスは言った。あら、と首をかしげてからクラウドはにっこりと微笑んでとどめを刺した。
「でも、誤字脱字は大分減ってきて、良かったですね。」

「…そんなことがあったんだ。」
「やっぱ大作家の奥方ともなると違うのかなあ…」
「というより、その奥さんがすごいんだと思うわ。確か、セフィロス先生の奥さんってクラウド・ストライフでしょ?」
「旧姓までは知らないけど…」
「結婚前のね、ペンネームよ。」
「は?!」
「有名大手小説サークルの作家さん。結婚と同時に引退しちゃったんだけどね。」
「…なに?」
「イベントでコスプレ姿を見初められたって話だけど?」
 エアリスから話を聞いて、軽くショックを受けたザックスであった。



…「強い(もしくは怖い)クラウド」が書いて見たかっただけです……
台風の影響で開始時刻が30分遅れた試験会場で問題集も開かずにこんなこと考えてるなよ、自分!!


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