透先生の第2弾
”平和な妄想・童話作家編”

純文作家と幼な妻(笑)は他の方々におまかせした方が面白くなりそうなので。
(逃亡とも言う。私が怖くてできなかった和装の描写まで入れて下さって本当にありがとうございました(^^)



 夕方、乗客の少ない列車の中でザックスはうつらうつらと睡魔におそわれていた。これから頂いた原稿を持ってかえって校正に回して・・・べつの作家の原稿も見なくてはならない筈だったから、今夜も帰りが遅くなるのは必至だろう。
ここしばらく時間通りに帰れた試しがないな・・・などとぼんやりと考えていた。
「ザックス?」
「はああ?」
 寝惚けているところに突然声をかけられたため、思いきり間抜けないらえを返してしまってから、その人物を確認して後悔した。彼女にこう言うところを見られるのは、いささか具合が悪い。目の前に立っていた人物は気にした風もなく微笑んで彼の隣の席に腰掛けた。
「久しぶりだね。お仕事、大変?」
「あ、いや忙しいには忙しいけど・・・」
「忙しいけど、楽しい?ザックスいつもそう言うよね。仕事人間、て風には見えないのにね。」
 そう言って、エアリスの方こそ楽しそうに笑った。
「今日は原稿取りに行ったの?」
「ああ。セフィロス先生の所のな。」
「ザックス?」
 エアリスはふと、ザックスの方に顔を寄せてのぞき込んだ。
「顔、赤いよ?だいじょぶ?」
「あ、ああ・・・いや、気のせいじゃないか?ホラ、西日が照り返してるからっ」
「ふうん?でも、無理しちゃ、ダメだよ?」
「大丈夫だって。・・・所で、エアリスはどうしたんだ?こんな所で」
「うん、そうだ!聞いて、今度ね、雑誌に載せてもらえることになったの!」
 児童向けの雑誌の名前を挙げた。ザックスの出版社のではないが、知っている雑誌だった。
「そっか、よかったな!」
「うん!」
 エアリスの書く話はいつも優しく、暖かくてザックスは好きだった。遠からず世に出るだろうと思っていたし、そうであるべきだと思っていた。



・・・さて、逃げるか。

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