しのぶ先生の第8弾

たはは、あやさんに捧ぐ(と言うか代金の一部(笑))シリアスなザックラ…短い話でシリアスなんて無謀でした。反省します。



ホーリーが発動した。
これでエアリスの祈りを無駄にしなかったし、仇も取った。星も救った。
ミッドガル付近にハイウィンドウを不時着させ、ただ唖然とミッドガルを、ホーリーを見守る戦友達に混じってクラウドのそのホーリーと同じ色をした目に影が落ちる。
これで責任は果たせた。
たった一つを除いては…。

クラウドがきびすを返して去っていったのをホーリーに見とれていた戦友らは誰も気付かなかった。いや、気付けなかった。ライフストリームの本流がクラウドの背中を隠すように迸ったから。

ライフストリームのせいで辺りは鮮やかな魔晄の色に彩られ、味気ない筈のミッドガル付近の岩場も別物に見える。しかしそれでも、見分けがつかないほど特徴が無いのは変わらないのだが、クラウドはただ一点を目指して迷いも無く歩いていた。
そして、目的の場所に目的の物を見つけ、やっぱりと思う。
見つけたのは、岩に埋め込まれた、マテリア。
マスタークラスのほのおマテリア。愛しい人を弔ったファイガを発動したマテリア。そしてちょっとした墓標代わりのマテリア。
しかし、クラウドがここにマテリアを埋め込んだのは1年以上前の話である。
本来ならばほのおマテリア如き、とっくに星に帰っている筈であった。
「ザックス…」
クラウドはそう呟いてマテリアを外してみる。
それは1年以上そこに固定されていたとは思えない程に、そっと指で触れただけで簡単外れた。
手のひらでコロンと転がるそのマテリアには何の変哲も無いのだが、何故か暖かい様な気がして鼻の奥がつんと痛くなった。
クラウドは滲んできた涙を否定するかのようにごしごしと手のひらで擦ると、マテリアをじっと見入った。
神羅屋敷から逃げ出して、後もう少しでミッドガルだと言う所で、クラウドとザックスは追手に見つかり、ザックスはクラウドをかばって殺された(異議アリ!!しかし話を単純にする為無視!!)。うまく逃げおおせたクラウドは騒ぎの収まった頃にこの場所に戻ってきて、そしてザックスの死体を見つけた。
クラウドはその時の恐怖感を思い出して背筋が寒くなった。
あの、絶対的な孤独感。世界の崩壊する音は、わずかに残っていた自分も完全に崩壊させた。いや、セフィロスコピーとして完全体になったと言えばいいのだろうか。
「ごめんザックス…」
クラウドの目から涙が溢れマテリアに落ちる。
「俺、あの恐怖に耐えられなかった。ザックスがいないって現実にも耐えられなかった。だからザックスの体を灰にして、自分のザックスに関する記憶を消して、自分がザックスの変わりに…ザックスとして、生きる事を選んだんだ。」
あの時、セフィロスコピーだった自分は死ぬと言う選択肢は取れなかったから…。
そして、それと同じ様に最後の自分はザックスを消し去る事を否定した。
なるべくしてなった結果とも言えなくはないかもしれない。
クラウドは両手で包むように持ったマテリアにそっと触るだけのキスをした。
それからそのマテリアをそっと宙に放つ。
自然落下するマテリアを、ライフストリームの迸りが捕らえた。
本来ならマテリアはそのまま星に帰るところなのだが、不思議な事にマテリアはそのままで、ライフストリームが徐々に形を変えていき、そしてある形を取った。
クラウドはそれが当然であるかのように、ライフストリームで構成された、全てはライフストリームで構成されているのだからこの呼び方はおかしいのかも知れないが、淡く魔晄の光を放つ体に抱き付く。
ふわりとした、実態とは違ってなんだか心ともない感触ではあったけれども、確かにザックスはそこに存在していた。
「ザックスがいる事はずっと知ってたんだ。」
クラウドは一人独白する。
「俺はライフストリームから知識を吸収して、ザックスも同じ様に散っていないって思った。でも、セフィロスを殺さない限り俺はセフィロスの人形で、一刻も早くセフィロスを倒さないと、ここには来れなかったんだ。」
クラウドは体を離してザックスの顔を覗き込んだ。
「そんな言い訳はどうでもいいよね。」
くすりとあどけない顔で笑うと、その唇ををそっとザックスの唇に近づける。
「さあ、今度こそ俺…僕も連れていって…」
キスは最後のキスとは違って血の味はしなかった。


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