しほ先生の第16弾

投稿者 しほ 日時 1997 年 8 月 11 日 18:29:45:

会長のお許しを得たので載せます。FFTなんですが…とうとうやってしまった…ディリータ×ラムザ!!
 くぅ、まさかFFTに手を染めるとは。これも全て、ラムザの愛らしさと、第1章終盤「草笛」のシーンのおかげね。ありがとうスクゥエア(謎)。
 しかし、やっぱりラムザって、どう見ても受け子ちゃんよね…ふふふ…



 オレンジ色の夕陽がゆっくりとその姿を平原の彼方に隠して行く。いつだったか、こんな夕陽の中で、光を浴びる自分を綺麗だと言ってくれた人がいた。それが彼だ。今、自分の隣に腰をおろし、草笛を吹いている青年。
小さな頃から兄弟のように育った、かけがえのない親友。
「…俺たちは、いつまでこうしていられるんだろうな…」
 彼、ディリータの呟きに、ラムザは顔を上げる。彼がこんな事を言い出したのは初めての事で、ラムザは戸惑っていた。今まで何の疑問も持たずに来た。それなのに、自分の、自分達の間で、確かに何かが変わり始めようとしている。
「まだアルガスの言ったことを気にしてるのか?」
「そうじゃないさ。俺は、ラムザを信じてるよ。だけど…」
 地平線を見つめるディリータの目は、遠い。そんな彼が、ラムザの胸に密かな不安をもたらす。
「俺達はそれでいいかもしれない。けど、世間はどう思ってるんだろう。俺は…ここにいてもいいんだろうか」
「ディリータ…」
 ラムザの眉が曇る。否定しようとして、言い切ることのできない自分に気づいてしまったのだ。それは、自分も感じていた疑問だったから。
 ラムザの兄たちが、ディリータを快く思っていないことは、以前から知っていた。いや、ディリータだけではない。この自分も−−−実の弟である自分すら、腹違いだというだけで、疎まれていることを感じていた。
 自分はここにいてもいいのだろうか。幼い時から、そう何度も自問してきた。だから、ディリータの気持ちはよくわかるつもりだった。
 一体どこに、貴族と平民の違いなどという馬鹿げた基準があるというのだろう。何が違うというのだろう。自分とディリータの違いは? 誘拐されたのが、もしもティータではなくアルマだったら、兄達はどうしただろう? 自分たちはこれから、どこへ向かおうとしているのだろうか。
「…もうよそうよ。僕は、ディリータにいてほしい。他の誰が何を言おうと、ディリータが側にいてくれればそれでいい」
 ディリータにというより、自分自身を納得させるかのように、ラムザはきっぱりと言った。だが、ディリータの表情は晴れない。遠くを見つめ、どこか生気の抜けた声で、彼はぽつりと呟いた。
「俺はいてもいいのか? 今まで通りベオルブに仕えて…」
「ディリータ…!」
 ラムザはディリータを強く睨みつけていた。こんな事を言い出す友人が信じられなかった。
「そんな…そんな風に思ってたのか? 使用人じゃあるまいし、仕えるなんて……!」
 ディリータは打たれたようにはっとした。滅多に激昂する事のないラムザの、怒りを露にした表情に、ディリータは困惑した。が、彼以上に戸惑っているのは、当のラムザだった。
「僕たちは友達じゃないのか? それとも、僕のことは…ただ、あの家の人間だから、付き合ってくれてたのか…?」
「違う、ラムザ」
「違わない! みんなそうなんだ…あの家の血筋だから……僕は、ディリータだけは他の奴等とは違うって思ってたのに…」
 ラムザは泣き出しそうな顔をしてディリータを見上げ、すぐに視線を逸らした。感情的になってしまった自分を恥じ、ラムザは唇をかんで顔を背ける。そんな彼に、ディリータは、何も言うことができなかった。
 違和感を感じているのは、ディリータ一人ではない。だが、その違和感を打破する手段を、彼らは持ち合わせていなかった。
 ラムザの兄たちならば、相応の地位や富を持っているだろう。けれどラムザには何一つ与えられていない。彼が持っているものはベオルブの名だけだ。何かを変えるための行動を起こすには、彼らは幼すぎた。
 ラムザは手近な草をむしり、唇に押し当てた。彼らが今よりもっと幼かった頃、父に教えてもらった草笛のメロディを奏でるために。それが、今の自分とディリータをつなぐ、唯一のもののように思われた。
「…っ痛…」
「ラムザ?」
 悲痛な声に、ディリータは反射的にラムザの顔を覗き込んだ。ラムザは口元を押さえて俯く。その手を優しく取って、ディリータはラムザに笑いかけた。
「切ったのか。相変わらず、そそっかしいな」
「…なんでもないよ」
「大丈夫か? 見せてみろ」
「いいよ。かすり傷だ」
 腕の中から逃れようとするラムザをしっかりと押さえつける。もともと、ラムザがディリータに力でかなう訳がない。それでも子供じみた行為を恥じてか、頑なに傷を隠そうとするラムザが、どうしようもなく可愛らしい。
 ディリータの大きな手が、ラムザの細い顎を取る。そのまま顔を強引に引かれ、真正面からディリータの笑顔に向き合う羽目になった。
「血が出てるな…」
 優しい指が、ラムザの唇をなぞった。
「ディリー…」
 ディリータの舌が傷口を舐める。唾液が傷にしみた。ぴりりとした痛みに眉をしかめ、ラムザはディリータの体を押し戻そうとした。が、彼はラムザを完全に腕の中に封じ込めてしまっていた。
「……っ…」
 柔らかい感触が唇を覆った。
 何が起こっているのかわからなかった。−−−いや、本当は知っている。パニックを起こしかけている心の中で、どこか冷静な自分の存在をも感じていた。
 いつものディリータじゃない。だからこれは、衝動的なものなんだ。そうでなければ考えられない。だって、彼は友達で、僕も彼も男で。キスなんて、するような仲じゃないんだ。−−−そう思っていた。
「ラムザ…」
 しかし、ラムザの名を呼びながら、離れかけた唇が再び重ねられた事で、ディリータが明確な意志を持っている事を知る。
 これが、彼の答え。身分や地位の違いも、同性という障害すらも乗り越えた、ディリータのラムザに対する想い。
「ん……」
 ラムザはゆっくりと目を閉じ、彼に応えた。彼の唇は柔らかく、温もりは心地よかった。
 自分は持たざる者なのだとディリータは言ったけれど、それは嘘だ。ディリータはこんなにも温かい。彼の腕は、こんなにも力強い。彼は、彼の存在自体がラムザを安堵させる、そんなものを持っている。
 触れあうだけの口づけを、どれ位の間続けていただろう。それ以上を求めず、けれど離れる事を何より畏れるように、彼らは唇を、想いを重ね合っていた。ややあって、名残惜しげにディリータがラムザから離れた時、ラムザは無意識に彼の腕を求めていた。
 まばゆい光を放っていた夕陽は地平線の彼方へとその姿を隠し、薄闇が辺りを染めようとしている。
「ディリータ…ずっと一緒に行こう」
 ラムザの言葉に、ディリータは強く頷く。何があろうと、自分たちの関係は変わらないと、確信するように。二人は、これから起こる悲劇を未だ知らない。今は−−−信じられる。信じていられる。
 次第に迫る闇に負けまいとするかのように、彼らは互いの温もりを求めて体を寄せあった。



 君達、純愛すぎるよ。甘甘べたべたで、おねいさんは恥ずかしい…。
 あまりに愛しすぎて、16歳ラムザを汚すことはできなかったでしゅ。これから章が進むにつれて、この考えがどう変わるか楽しみだわ(オイオイ)。
 さあ次はラムザ×クラウド(リバーシブル)だ!! 一体いつになるんだ…
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