ケロしゃんに捧げるケロ×クラ(笑)。モンスター×クラともとれますが、決して反省文ではありませんので悪しからず。
揺れるバギーの中、クラウドは疲れ果てていた。やっとコレルプリズンを抜けることができた。今まで良いことはあまりなかったが、今回のは最悪である。何が悲しくて、殺人犯に間違われて投獄されなければならないのだろう。初めてチョコボにも乗る羽目になったし−−−意外に楽しかったりしたけれど−−−とにかく、慣れないことだらけで、彼はぐったりとしていた。
「クラウド、何かいる!」
その声が響いたのは、鬱蒼としたジャングルの真ん中だった。バギーの前に何者かの影が立ちはだかったというのだ。
「モンスターか?」
「そうみたい。どうしよう?」
「出るしかないだろう」
クラウドは不機嫌だった。本音をいえば、今は体を動かしたくない。全く、余計な時に現れてくれるモンスターである。
「…なんだこいつ」
クラウドは、露骨に舐めきった声を出した。どんな強いモンスターがいるのかと思えば、彼らの目の前には、一匹の小さなカエルが、まるで挨拶するかのように片手を上げて立っていたのである。
「馬鹿馬鹿しい。早く終わらせて戻るぞ」
「でもクラウド、どんな能力を持ってるかわからないわよ?」
エアリスの助言も、クラウドの耳には全く入っていない様子だった。
「大丈夫だよ。たかがカエルじゃないか」
クラウドは背中の剣を取り出して構えた。カエルは攻撃してこない。どころか、愛嬌のある顔を傾げ、くりくりとした瞳でクラウドを見上げてくる。
案外可愛いかも……と思い始めた時。突然、カエルがクラウドめがけて突進した。
「きゃあっ! クラウド!?」
別に痛みは感じない。ダメージは受けていないようだ。大丈夫、と言おうとして、クラウドは愕然とした。エアリスとティファが、異常に大きい…いや、自分が縮んでいるのだ。しかも、カエルになって。
「ケロケロケロ〜(なんだこれは〜)!」
彼ら一行は、この地域のジャングルに出没するカエルのパンチを食らうと、カエルになってしまうということを知らなかったのである。故に、ステータス変化、特にカエル化に対するアクセサリーを、全く身につけていなかったのだ。予備知識がないというのは、恐ろしい事である。
カエルはにやりと笑い、胸を反らせて歌い始めた。
ティファ=カエル+睡眠、エアリス=カエル+睡眠、クラウド=ミス!
「ケロ、ケロっ?(ティファ、エアリスっ?)」
無防備に眠ってしまった仲間の横で、どうすることもできずに焦るクラウドに、カエルの魔の手が迫る。
「ケ、ケロロ…(よ、寄るな…)」
じりじりと後ずさるカエルクラウド。しかしそれを許すモンスターではなかった。
カエルが手を挙げて合図すると同時に、周囲の草むらの中から、わらわらとカエルが出現したのである。どうやら一番最初からいるカエルがリーダーであるらしい。そのカエルの指示で、数匹のカエルがクラウドを押さえつけにかかった。
「ケロケローー!(やめろーー!)」
じたばたと暴れるクラウドだったが、その耳に飛び込んでくる会話を聞いて呆然とした。クラウドも今はカエルなので、カエル達の会話が理解できるのである。
「ケロケロ、ケロ(うるさいわね、も〜)」
「ケロ、ケケロケロケロ?(ケロ、こいつも眠らせちゃおうよ?)」
「ケロロ〜。ケロケロッケロ…(そうね〜。このままじゃつまんないしね…)」
カエル達は、結論に達したようだ。リーダーの合図で、後ろに並んだ数匹が、一斉に歌を歌い出した。それは子守歌のように、クラウドの意識を夢の世界に誘って行く。
薄れ行く意識の中で、クラウドが最後に見たものは、満足げに笑うカエル達の顔であった……
目を覚ましたクラウドは、がばっと跳ね起きた。まずは自分の体を見下ろし、ほっとする。
カエルじゃない……
が、安心したのもつかの間、シャツが胸元までたくし上げられているのに気づいて、クラウドはパニックを起こす。しかも、ズボンの前は全開である。腹や胸につけられた、赤い小さな跡は、いったい何を意味するのか?
「ケロケロケロ…ケロッケロッ(最高だったわよ…くっくっくっ)」
鳴き声に顔を上げると、あのカエル達が、一様に満たされた表情でクラウドの前に整列していた。クラウドの顔が、さぁっと青ざめた。
「待て…何があったんだ? 待ってくれぇーーーっ!!」
びょーんびょーんと跳び去って行くカエル達。ティファとエアリスはまだカエルのまま眠っている。
たたたかーたーたーたったらー♪
訳のわからないまま、戦いの終わりを告げる音楽だけが、虚しく響きわたった……。
ちなみに後ろでカエルのうたを合唱してるのと、クラを押さえてるのはナイツ集団です(笑)。
ケロしゃん、満足していただけました? くっくっくっ…
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