しほ先生の第5弾

 ま、まさかフォントで反省文を食らうとは…恐るべし、罰則。
 という訳で、コルクラです。と、とにかくがんばってはみました。自分がこのネタを書く時が来るとは思わなかった…くぅっ!(涙)



 気がつくとそこは、見覚えのある豪奢な屋敷だった。
 クラウドは自由にならない体をやっとのことで起こした。両腕は後ろで縛られ、足も一つに纏められている。
「お目ざめかい」
 頭の上から声が振ってくる。鋭い目で睨み上げると、相手は少しひるんだようだ。
「そんな怖い目で睨むなよ。俺だって本当はこんな事、したくないんだ」
「…コルネオの手下か」
 記憶を巡らせ、一つの結論にたどり着く。この悪趣味な装飾品、意味もない掛け軸の数々。紛れもない、あの男の屋敷である。
 うかつだった。カームの村で、一人で武器を調達しに行った時、数人の男に囲まれた。それが、こいつらだったという訳だ。
「俺をどうしようというんだ?」
 クラウドは精一杯きつい声を出した。状況は不利だ。が、弱さを見せる訳にはいかなかった。
「まあそうとんがるなって。…全く、ボスもこんな奴のどこがいいんだか…」
「?」
 意味のわからない言葉に、クラウドは首を傾げた。よく見ると、手下達も何故か困ったような顔をしている。
「クラウドさん…だったっけ?」
「そうだが…」
「ウチのボスが、あんたに惚れちまったらしいんだよ」
「はぁ!?」
「ほら、あんたが女装して乗り込んできただろ。あの時、一目惚れだったらしくてさ。あれ以来、もう大変なんだよ。子猫ちゃん子猫ちゃんってさぁ…」
「こ、子猫ちゃん…」
 クラウドは茫然自失状態だった。寝耳に水、しかしちっともうれしくない。第一何だ、子猫ちゃんってのは!
「あんまりうるさいもんだから、こりゃ捕まえてきた方が手っ取り早いと思って。だからさ、悪く思うなよ」
 これが悪く思わずにいられるか! そう怒鳴ろうとして、クラウドは凍りついた。背後のドアが勢い良く開き、
「マイハニイィィーーーーーーーーー!!」
 丸い体で転がるようにして、コルネオ本人が駆け込んできたのである。
「わ、わしの愛しい子猫ちゃん! 会いたかったよ!」
「だからその子猫ちゃんってのをやめろ!」
「ほひほひぃー。照れなくてもよいではないか。相変わらずうぶいの〜」
「わあっ、やめろバカ! そんなとこ触るなぁっ!!」
 じたばたと暴れるクラウド、それを押さえつけるコルネオ、そして周りには困り果てて立ちつくす部下。異様な光景である。
「…済まなかったの」
 突然、コルネオがうなだれ、クラウドに向けて頭を下げてきた。その殊勝な様子に、クラウドは毒気を抜かれる。
「わし、本当にあんたが好きなんよ。あの事があってから、わし、ず〜っと後悔しっぱなしで…もう一度、一目だけでも会いたかったんよ」
「……」
 成程、手下の表情の意味がよくわかる。曲がりなりにも暗黒街のボスにこんな態度をとられては、困りながらもついつい従ってしまうのが人情というものだろう。
「一度だけ、一度だけでいいから、わしの思いを遂げさせてくれんかの〜」
 頭を床をすりつけてお願いするコルネオの姿に、クラウドは複雑な気持ちになった。なんだかコルネオが哀れになってきたのである。まあいいかな、まんざら知らない訳じゃないし…などという、怖い考えさえ浮かんできてしまう。
「…一回だけだぞ」
「ほひぃ〜! ホ、ホントにいいの!?」
「やりましたね、ボス! おめでとうございます!!」
 ため息をつくクラウドの傍らで、暗黒街のボスとその手下の美しい兄弟愛がくりひろげられていた。


「……あ」
(なんだこれ…?)
 コルネオの醜悪な裸体を目にした時、思いっきり後悔したクラウドだったが、いざコトに及んでみると、コルネオの手技の巧みさに溺れそうになってしまっていた。
(こいつ…う、上手い…)
 そう、巧いのだ。だてに女を日替わりで相手にしてはいない。そのテクニックたるや、相当なものである。
「どう? どう? 子猫ちゃ〜ん」
 コルネオの声も、もう耳に入らない。持てる技を駆使して攻めるコルネオに、もうクラウドは骨抜きである。
(も…ダメ……)
 今まで、こんなに上手い奴には会ったことがない。いや、ひょっとしたらこの先もお目にはかかれないかも…
「ほひぃ〜。わし、ますます気に入った! もうしばらくここにいてくれんかの〜」
「…考えさせてくれ…」
 冷たく背を向けたつもりだったが、一度だけ、という約束が、音をたてて崩れていく。こんなにイイなら、もうしばらく…などと、またもや恐ろしい考えがクラウドの心を占めつつあった。
 ほひほひ言いながら部屋を出ていったコルネオを背中で見送り、クラウドは真剣に迷っていた。旅は続けなきゃならない。仲間が待っている。−−でも、あいつのテクニックも捨てがたい……
「迷うことなど、ない」
 低く響く声に、クラウドはぎょっとして顔を上げた。
 目の前に立つ、長い銀髪の美貌の男。ここにいる筈のない彼がなぜ、などと思う余裕もない位、クラウドは焦った。
「セ、セフィロス!?」
「クラウド…お前は私を追ってくる運命なのだ。誰であろうと邪魔はさせん」
 心なしか、セフィロスの表情は固かった。
「お前は私のものだ! あんな奴…私よりあんな奴がいいなんて…」
「ちょ、ちょっと待って…セフィ…あ、あぁん…!」
 セフィロスのお仕置きモードは全開だった。それは、クラウドにとっては自業自得であった…。


『コルネオへ。
 俺は旅を続けます。あんたも良かったけど、俺はやっぱりセフィロスが…
 探さないで下さい。 クラウド』
「ほひぃぃ〜〜! 愛しのマイスゥイートハニィ〜〜〜!」
 翌朝、テーブルの上に残された手紙を握りしめ、号泣するコルネオの姿があった。
 ドン・コルネオ、年齢不詳、一応ウォールマーケット街の暗黒のボス。
 彼の本気の恋は、もろくも敗れ去ったのだった。


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