しほ先生の第2弾

 Vジャンプのザックス効果で、彼の株急上昇中なのに、こんなものを書いてしまう私ってきっとヒンシュク者。ごめんよザックス、でも好きなんだよぅ。
 そして緒方さちさんへ。ザックスはやはり鬼畜にはなりきれませんでした…。



 綺麗な白い体を抱き込んで、いつからこうなったのかをぼんやり考えていた。
 きっかけは、何だったんだろう。お前は可愛い顔してるから、言い寄って来る奴等が必ずいる。その前に、俺とそうなっておけよ。そんな事を言った覚えがある。こいつは驚いて−−当たり前か−−少し迷って、困ったような顔で、それでも小さく頷いた。
 本当に最初は、言葉は悪いけど遊びでいいと思ってた。軍隊の中じゃ、こんなことはざらにある。だから深くなんて考えなかった。
 なのに−−女好きで知られるこの俺が、よりにもよって男に本気になっちまうなんて−−絶対、こいつには言えない。
「ザックス…」
 甘えるような声が、たまらなく可愛い。
俺は、応えるように口づけてやる。首筋にキスして、そこから少しずつずらして、肩から腕へ−−そうして、二の腕の内側に、小さな赤い痣を見つけた。
 …ま、仕方ないか。俺のモノじゃないしな…
「あ…もぅ…っ」
 クラウドは震えながら、俺に限界を訴えている。その顔を見ているだけで、俺ももう我慢できなくなって、クラウドの中に一気に体を沈めた。


「明日の事、聞いたか?」
 まだベッドの中で毛布にくるまってるクラウドに聞いてみる。返事は、決まって返ってこない。
「ニブルヘイムって、お前の生まれた所じゃなかったっけ?」
 俺は知ってる。クラウドは今回の任務を嫌がってるってこと。だから子供みたいに拗ねてるんだ。実際、まだ子供だけど。
「なあ、何怒ってるんだよ」
「怒ってなんかない」
「声が怒ってる」
 俺はクラウドの顔を覗き込んだ。クラウドは真っ赤な顔で、ぷいっとそっぽを向いた。…ホントに、まるっきり子供だな、こいつは。最中はすごく乱れて誘うくせに、そこに至るまでが一苦労だし、終わった途端にこうやって拗ね始める。いつものパターンだ。
「お前だって良かっただろ?」
 耳元でささやくと、キッと睨まれた。といっても、全然迫力不足。
「セフィロスの前でも、そうやっていじけてんのかよ?」
 ダメ押し。
 クラウドはがばっと跳ね起き、俺に枕を投げつけると、ばたばたとシャワールームへ駆け込んで行った。
 はあ…俺って、サイテー。これって、嫉妬ってヤツなんだろうか。
 セフィロスがクラウドに手を出してるのは知ってたし、別にどうこうって訳じゃなかった。−−つもりだった。
 そりゃ俺だって、休みごとに街に繰り出しては女の子と付き合ってはいる。けど、みんなその場限りだ。だけど、なんでかなぁ…クラウドに対しては、マジなんだ。こいつをセフィロスには渡したくない。けど、クラウド本人がどう思ってるのかがわからない。−−だからって、あんな事言うなんて、大人げないよなあ。
 明日の任務は、俺だって気が重い。別に、仕事自体は大した事じゃないけど、同行するのがセフィロスだ。俺のセフィロスに対する気持ちがどんなに穏やかじゃないか、クラウドにはわかってるんだろうか。
 なあクラウド、俺は本当に、本気なんだぜ。お前はちっとも気がついちゃいないだろうけど。
 シャワーの音が聞こえる。俺はため息をついて目を閉じた。
 とりあえず、今は眠っておこう……


 ニブルヘイムでの任務は、思った通り、大したものじゃなかった。壊れた魔晄炉の修理−−伝説のソルジャーと唱われたセフィロスが、部品の修理のためにかがみ込んでる姿は、滑稽だった。
 けれど俺達は、そこでとんでもないものを見た。
 以来セフィロスは、神羅屋敷と呼ばれる建物の地下に籠もっている。俺は魔晄炉で見たことをクラウドに話し、セフィロスのことはそっとしておく事に決めた。奴に何があったか原因はわからないが、人を寄せ付けようともしないんじゃ、話にもならない。
 そんな訳で、俺はクラウドと二人、神羅屋敷の2階でつかの間の休息を楽しんでいた。
 実際、楽しんでいたのは俺だけかもしれない。クラウドの顔色は、この村に入った時から冴えなかった。その理由を知っているだけに、俺は何も口出しできない。
 クラウドは、一歩も屋敷の外に出ようとはしなかった。俺が退屈紛れに村に出て行くのを見送って、屋敷の2階の窓から顔を覗かせている。それも、外からは絶対に自分の顔が見えないようにして、だ。
「家に戻ってやれよ。お袋さん、いるんだろう」
 思い余ってそう言った俺を、例の迫力のない目で睨みつけて、クラウドは珍しく怒った。
「ザックスには関係ないだろ!」
「…そりゃ、そうだろうけど」
 関係ない、か。淋しいことを言ってくれるよな。
「どこ行くんだ?」
 俺に背を向けて、行くところなんてないんだろう?
「−−セフィロスが、心配だから」
 瞬間、俺の頭の中で何かが弾けた。
 クラウドは外に出ない代わりに、1日に何度も、セフィロスが籠もる部屋を覗きに行く。心配だから、決まってそう言いながら。
「ザックス…離せよ、痛い」
 気がつくと俺は、クラウドの腕をしっかりと握り込んでいた。細い、細い腕。ちょっと力を入れると、折れてしまいそうだ。
「−−行くな」
 クラウドは、きょとんとした瞳で俺を見上げた。
「俺がいるだろ。だから、セフィロスの所になんか行くな」
「なに…言ってるんだ…」
 自分がどんな顔をしてるかなんて、考えなかった。ただ、クラウドが怯えているのだけははっきりと分かった。
「俺を見ろよ!俺は、お前がっ−−」
 何を言いかけたんだ、俺は。これじゃ、出来損ないの告白だ。だけど…もう、止まらない。
「ザックスに何がわかるんだよ!」
 クラウドが逃げようとするのを、俺は手に力を込めて止めた。クラウドの表情が、苦痛を訴えた。
「女の子と仲良くしてればいいだろ!何で…何で俺の事、抱いたりしたんだよ。どうせ、俺のことなんか何でもないんだろ!?」
 痛いところを突いてくる。
 そうだよ、何もないつもりだったよ。それがお互い、一番いいと思ってたから。でももう駄目なんだ。もう…気持ちに嘘はつけない。
「…セフィロスは、違う」
 その一言を聞いた時、俺はクラウドを乱暴にベッドに押し倒していた。
「ザックス…っ!」
 お前の声はいいな。そうやって必死に叫ぶ声が、最高にそそる。
 俺は、クラウドに口づけて、叫びを吸い取った。もがく体は細くて、動きを封じるのは簡単だった。
「いやだ…ザックス…や、めっ…」
 一度離した唇をもう一度押しつけて、抵抗を殺した。
「おとなしくしろよ。じゃないと−−」
 低い声で威嚇するように言うと、それだけでクラウドの体が震える。こんなに怯えるクラウドを見るのは初めてだ。
「ティファって子に言っちまうぜ」
「−−−!」
「あの子、俺に聞いてきたぜ。クラウドってソルジャーを知らないかって。…言っていいのか? クラウドはここにいる、ってさ」
 卑怯だ、俺は。どうしてこんなに卑屈になっちまったんだ。ただ、クラウドが好きで、愛しくって…それだけだったのに。
「ザックス…!」
 クラウドが今にも泣き出しそうな顔をした。胸が…痛い。
「どう…して…?」
 弱々しい問いかけから、俺は視線を外した。そんなこと、俺の方が聞きたい。なんでこうなっちまうんだろう。俺はこんな事がしたいんじゃないのに。
 おとなしくなったクラウドの体から、服を乱暴にむしり取る。クラウドは抵抗しなかった。ただ、顔を背けて、目をぎゅっと瞑り唇をかみしめている。
 そんな顔が、見たいんじゃない。
 俺はクラウドの顎を掴んで無理矢理こちらを向かせ、口づけた。クラウドが呻く。息次ぐ間さえ与えず、俺はクラウドの唇を塞いだまま、手を体に這わせた。クラウドが感じるところは、全部知っている。
「んんっ……あ…」
 甘い声が、俺を心地好くさせてくれる。少しずつ白い肌が赤く染まってくる。もっと、もっと良くしてやるよ。お前が喜ぶことなら、俺は何だってしてやる。
「…嫌…やだ、ザックス…いや……」
 拒絶の言葉に、俺は愕然とした。
 頭の中が真っ白になり、何も考えることができなかった。
−−−それから自分が何をしたのか、全然覚えていない。我に返った時、クラウドはぐったりとベッドに体を投げ出していた。俺は後ろからクラウドを押さえつけ、その細い腰をしっかりと抱いていた。まだ繋がったままの体からは、完全に力が抜けていて、もうクラウドには意識がないのだと俺はやっと気づいた。
 体を離すと、クラウドはベッドに沈み込んだ。投げ出された腕がやけに細くて、哀れで…胸の奥がひどく苦しかった。
 結局、俺はクラウドに酷い事をしただけで、俺の気持ちも伝えられず、こいつの気持ちも考えてやれなかった。
 こいつは、どうしたって俺のものにはならない。今はっきりと解った。クラウドは、セフィロスを追いかけ続けている。クラウドは…セフィロスのものなんだ。
 なら、セフィロスはどうなんだ?
 セフィロスもクラウドと同じなら、俺は何も言わない。言えない。だけど、クラウドがこんなにセフィロスを慕ってるのに、あいつは何をしてる? こんなに近くにいるのに、クラウドに辛い思いをさせてるだけじゃないか。セフィロスは一体、どういうつもりなんだ!?
 頭にカッと血が上り、俺は大急ぎで服を着込むと、部屋を飛び出していた。


 長い長い螺旋階段を下って、地下室の奥へと駆け込む。何を言おうとしているのか、自分でもわからない。けど、この男に何か言ってやらなきゃ気がすまない気分だった。
「誰だ!」
 セフィロスは、鋭い目で俺を睨み付けた。誰もが震え上がる、ブルーグリーンの瞳が、クラウドを見つめる時はどんな風だったんだろう。…許せない。
 が、セフィロスはふと嘲笑うと、意外な事を言った。
「フッ…裏切り者め」
「裏切り者?」
 いきなり何を言い出すんだ?
 セフィロスは一方的に話し出した。神羅で行われていた恐るべき実験、空からやってきた古代種ジェノバ、セフィロスの誕生の秘密−−どれもこれも、俺の想像もつかない事だった。俺は、自分がここへ来た目的も忘れて、セフィロスの言葉に聞き入っていた。
 やがて、セフィロスが動いた。
「セフィロス!?」
「邪魔するな。俺は、母に会いに行く」
 俺の制止を振り切って、歩き去って行く。その時俺は、入り口のところに身を潜めて立っているクラウドの姿に気がついた。
 いつから聞いていたんだ? 今ここにいるセフィロスは、セフィロスじゃない。何かにとりつかれて狂ってしまっている。そんなセフィロスの姿を、クラウドに見せるわけにはいかなかった。
 セフィロスは、クラウドの側を、表情も変えずに通り過ぎて行く。いや、過ぎる瞬間−−確かにクラウドに、蔑むような視線を向けた。
 俺の前では絶対に見せなかった涙が、クラウドの頬を伝った。


 ………
 ここは、どこだ?
 −−−ああ、そうか。魔晄炉だ。ひんやりした床に、俺は横たわっている。
 動けない。体が冷たい。何か生暖かいものが肌を伝っているのがわかる。これは…血、か。セフィロスに斬られた傷から流れ出ているんだ。
 視界の隅に、黒髪の少女が倒れている。ティファ、だったな……ごめん、助けてあげられなくて。
 俺はこのまま死ぬんだろうか。…たぶんそうだろう。だるくて、頭が重くて、もうどうでもよくなっている。指一本も、自分で動かせない。
「−−ザックス!」
 …誰だ? 優しい腕が俺を抱き起こしてくれた。気持ちいいな…柔らかくて暖かくて…安心する。
「ザックス…」
 覗き込む綺麗な顔。ああ…俺の好きな瞳だ。光が射すと金色に見える、うすい茶の瞳が大好きだった。
「…クラウド…」
 そんな顔するな。お前はここに来てから、ずっと辛そうな顔ばっかりだな。俺は、笑ってるお前の方が好きだぜ。
「クラウド…セフィロスをこの剣で…」
 最後の最後まで、俺は酷い男だ。だけど、セフィロスを止められるのは、お前しかいない。
 迷った末に、クラウドは頷いた。俺の手からバスターソードを受け取り、立ち上がる。それでも、なかなか足を動かせないでいるらしい。
「何してる…早く行け!」
 強い口調で言うと、ようやくクラウドはふらりと一歩踏み出した。それから俺を振り返り、泣きそうに顔を歪めると、振り切るように駆け出して行った。
 どうしてこんな事になっちまったのかなあ。俺達は、何を間違ったんだろう? それとも、俺だけが間違っていたのか? …今更、どうでもいい事か。
 ああ、なんだか眠くなってきた。もういい、このまま、眠ってしまおう。
 クラウド…最後にお前の顔が見れて良かった…
 …俺は…本当に、…お前の事が……
 ………………



 うわああーーー!ごめんなさいいーーー!
 ラストがどうしても書きたくて、むりやりザックス口調にしたんですが、どーも違う!何かが違う!
一人称大失敗でした!
 ”クラウドの瞳=茶”に関しては…彼は5年前魔晄炉に落ちた時に今の目の色になったと思ってるので…気に入らない人、ごめんなさい(汗)。
 はっ!そしてまたこれも強姦……さくっ!!


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