しほ先生の第1弾


初投稿なんです。優しくしてね…っていいながら、中身は獣○なんです。苦手な方はご遠慮下さい。
この話は緒方さちさんに捧ぐ!(いらない…?ううっ)



 ニブルヘイム。何も変わらない、けれど変わり果ててしまった村。クラウドの故郷。
 クラウドは、重く垂れ込める雲を見上げ、深いため息をついた。
 もう、ここにはいられない。ここはもうふるさととはいえない。−−明日、郷愁を断ち切り、セフィロスを追ってこの村を出ていくことに決めた。
 けれど、自分は何をしているのだろう?
 彼は、村全体を見渡せるニブル山の麓に一人来ていた。その高台に立ち、眼下に広がる村を眺めるつもりで。−−下らない未練だ、と思う。けれど、ここは紛れもなく故郷だ。生まれ育った、かけがえのない場所なのだ。
 ゆっくりと歩みを進める彼の青い目が、一つの影を捉えた。
 先客がいた。
「…ヴィンセント…」
 長いマントを、吹きつける冷たい風にたなびかせて、彼はクラウドの目的の場所に佇んでいた。黒髪が美しく揺れている。
 このニブルヘイムで仲間になった、元タークスの男。無口な彼は、自分の過去についてほとんど語ろうとはしなかった。いや、他の仲間達と話しているところさえ見たことがない。いつでも距離をおき、一歩下がったところでひっそりと立ち尽くしている、そんな男だった。
 けれどクラウドは、この元タークスに、並々ならぬ興味を持っていた。自分も元神羅に関係する人間だから、かもしれない。
 近づいてくるクラウドに気づいてか、ヴィンセントは緩慢な動作で振り返った。
「美しい村だな、ここは」
「…え?」
 一瞬、自分に向けて発せられた言葉だとは思えなかった。彼が自分から言葉を他人に向けるなんて、思いもしなかったから。
「私はこの美しい村で、眠り続けていたのか…」
 ほんの少し、ヴィンセントが笑ったように思えた。唇の、微かな変化。何気なく接しているだけなら、見逃してしまうだろう。
 クラウドは足を早め、ヴィンセントの隣に立った。
 足下に広がる村を一望し、断ち切る筈の想いが蘇る。この村は、特別な場所だ。全てがここから始まった。クラウドの旅立ち、セフィロスへの憎しみ、そしてヴィンセントとの出逢い。
「あんたは、自分のことほとんどしゃべらないんだな」
 視線を上げてクラウドは言った。
「…何か、知りたいことがあるのか?」
「あるさ。新しい仲間のことだ、何だって知りたい」
 それはクラウドの本心だった。ふ、とヴィンセントの表情が微かに曇る。
「今は話せないと言った。…罪が、増えるだけだ」
「あんたが言うほど、大きな罪なのか? 俺にはそうは思えないけどな」
 およそ無邪気ともとれる問いかけに、ヴィンセントは困惑したようだった。
 ヴィンセントの方でも、元ソルジャーと名乗るクラウドに興味を持っていた。自分と同じ、神羅に関係する者。そして今は敵対する者。
 年齢は、21と聞いた。しかし、時折見せる、あまりにも無邪気な表情や言動が、クラウドを実年齢よりも若く−−幼く感じさせていた。このギャップは、いったいどこから来るものか。
「罪は罪だ。私が背負わねばならぬもの。恐らく、一生かけても償いきれはしないだろう」
「よく、わからないけど」
 クラウドは小首を傾げた。−−猫のようだ、とヴィンセントは思った。
「じゃあ、他のことを話してくれよ。故郷のこととか、どうしてタークスになったとか」
「そんなことを知って何になる」
「意味なんてない。ただ知りたいんだ」
 無垢な瞳だった。戦闘の時には、冷たく鋭い光を放つ青の瞳が、今は子供のように輝いて、ヴィンセントを見つめていた。
「−−意味のないものを、知る必要はない」
 ヴィンセントは踵を返し、クラウドに背を向けた。歩き出そうとしたその背中に、クラウドが追いすがる気配。
「ヴィンセント!」
 懸命に呼び止めようとするその声は、一途でひたむきだ。その声の若い響きに、ヴィンセントは想いをはせる。あの時、これほどの情熱があったなら、あるいは彼女を止めることができただろうか…
「…クラウド。私を怒らせるな」
 止めてしまった足は、根が生えてしまったかのように動かない。ヴィンセントは立ち止まってしまった事を激しく後悔したが、もう遅い。
「ヴィンセント…?」
 クラウドはヴィンセントの前に回りこみ、彼をまっすぐに見上げていた。その反らすことを知らない瞳。あの時、彼が持ち得なかったもの。
「私は−−っ!」
 びくん、とヴィンセントの体が震えた。
 体の内から、何か得体の知れないものが目覚める気配がする。危険だ。こんなものを外へ出してはならない。これは、封じておかなければならないものだ……
 クラウドは、目の前の出来事を、呼吸をすることすら忘れて見つめていた。
 ヴィンセントの体が、変化してゆく。
 筋肉がみるみるうちに盛り上がり、肌は青黒く塗り替えられ、人の形が崩れてゆく。赤い、炎のようなたてがみが逆立ち、鋭く長い角が天を刺し貫くかのように急速に成長を遂げ−−−
「ヴィン…セ…」
 茫然と呟くクラウドの声に、野獣の咆哮が重なった。もはや、そこにはヴィンセントの姿はなく、異形の獣がクラウドの前に立ちはだかっていた。
 これが、宝条の残した手紙にあった、「改造」の成果なのか? 宝条は、いや、神羅は彼に一体何をした? これは本当にヴィンセントなのか?−−混乱するクラウドの前に、野獣は一歩足を踏み出した。クラウドは、小さく息を呑み、思わず後ずさる。
 クラウドはじりじりと追いつめられ、気がつくと背後に絶壁が迫っていた。もうこれ以上、後ろに逃げることはできない。
「ヴィンセント…俺がわからないのか?」
 先刻とは全く違う、必死の呼びかけに、獣は微かに首を傾げた。
「ヴィンセント−−っ!!」
 叫ぶクラウドに、野獣の長い尾が襲いかかった。横に払った尾が、クラウドの体を軽々と吹き飛ばし、彼は傍らの草むらに倒れ込んだ。咄嗟に起きあがろうとするクラウドの上に、素早い動作で野獣がのしかかる。
 鋭く長い咆哮が、耳を打つ。
 間近で見るその顔は醜悪で、クラウドを残酷に見下ろす目はぎらぎらと光り、口元には鋭い牙が覗いていた。クラウドは初めて恐怖した。
−−殺されるかもしれない−−
 頭を掠める思いに、必死で首を振る。−−これは、ヴィンセントだ。ヴィンセントはそんな事はしない。絶対に。
 悲鳴があがった。ヴィンセントの−−ヴィンセントだったものの長い爪が、クラウドの両肩に深く食い込んだ。ぬめる血が、肌をしたたり落ちてゆく。
「ひっ…」
 喉をひきつれた息が通り過ぎ、泣き声のようなか細い声となって唇から洩れた。体は痛みにがくがくと震えていた。獣の荒い息が、顔にかかる。
 コロサレル。
 その思いが確信に変わった、その時。不意に体を持ち上げられ、下肢を強く押さえつけられた。見開いた瞳に、野獣の欲望に満ちた光る目が映る。
「やめろ…やだ…っ!」
 野獣の意図を読みとったクラウドが、必死に体をよじる。が、細い体を押さえつける腕は太く力強い。クラウドの抵抗を全く許さず、獣は無慈悲にも彼の体の奥深くを押し開いた。
「や…あぁっ!」
 前技も愛撫もない、一方的に欲望を満たすためだけの侵入に、クラウドは声を限りに叫んだ。慣らされてもいない狭い場所から、軋むような痛みが全身に広がっていく。野獣が体を揺らす度、失いかけた意識が呼び戻され、再び遠のく。
「ヴィンセント……」
 限界に達し、ついに意識を手放す瞬間、クラウドは切なくその名を呼んだ。


 ヴィンセントは、ゆっくりと体を起こした。
 彼の下には、気を失ったクラウドが、白い体を投げ出していた。その肩口を赤い血が彩っている。気がつけば、彼の全身に無数の傷があり、そこから溢れた血が、彼の肌を朱に染めていた。
 無言のまま、ヴィンセントはクラウドから離れた。そのすんなりと伸びた足の間からも、鮮やかな赤がしたたっている。
 一体自分は、クラウドに何をした?−−自問に対する答えは明白だ。その答えに、ヴィンセントは愕然とする。
 欲しかったのだ、と思う。自分が持ち得なかった情熱を、一途さを、この少年は持ち合わせていた。
それが、たまらなく欲しかった。しかし、だからといってこんな……
 ヴィンセントは、クラウドの目元ににじむ涙をそっと拭った。その感触に、ふと少年は気怠げに目を開けた。
「クラウド…」
 何を言えばいいのだろう。ヴィンセントは逡巡する。しかし、どんな言葉も、今この場には不釣り合いに思えた。
「済まない…私はやはり、目覚めるべきではなかったのだ」
 陳腐な言葉だ。ヴィンセントは自嘲した。言葉では全てを語ることはできない。だから、言葉を紡ぐことを今まで拒んできた。
 クラウドの手が、ゆっくりとヴィンセントに伸びた。ヴィンセントはためらいがちにその手を取った。彼の力を借りて、クラウドが辛そうに上体を起こす。
 ヴィンセントを見つめるクラウドの目は、穏やかだった。
「あんたを、知りたいって言っただろ? だから…いいんだ」
 クラウドの言葉が、ヴィンセントを救う。
 ヴィンセントは、クラウドの細い体を抱きしめた。何故欲しいと思ったか、その理由が今分かった。
 愛しいから、だ。
「もっと…知りたい…」
 誘う唇に、ヴィンセントは吸い寄せられるようにそっと口づけた。

 風が、吹き抜けていく。いつしかその風は、静かなものへと変わっていた。



−−−すっ、すみませぇぇぇーーーん!
ああ、なんて甘甘なんでしょう。げろげろ。安藤生徒会長様、ゴミを増やしてすみません。早急に焼却処分しちゃって下さい!
ダンナ…夜中にこんなものを書いてる嫁を許して…
ちゅどーん!!(自爆)


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