瀬尾先生の第63弾

投稿者 せのおさん 日時 1997 年 8 月 09 日 00:19:14:

えーと・・すみません・・もう一つありました・・(汗)
人格分裂したようなお話です(汗汗汗)

季節物・・ですね、多分(笑)なんだか辻褄合ってない話ですが、とっとと送らないと夏が終わってしまうので恥を忍んで送ります。まじめに読んではいけません。

今回のキーワード。「白い」
今日の目標「初志貫徹」



「・・まだ始まらないのか・・」
ルーファウスがぐったりとした様子でパイプ椅子に腰掛けている。ここはコスタ・デル・ソル。仮設置テントの外には白く輝く日差しが圧力を伴って降り注いでいた。
まもなく新式潜水艦の出港イベントが始まるはずだったが、色々な理由で時間が遅れていた。せめて正確に何分遅れるというのなら冷房の効いた別荘で休んでいるのだが、いつ始まるかも分からない状況ではここにいるしかないという悲劇的な状況であった。
「もう少しの辛抱ですよ・・」
流石のツォンすらも流れる黒髪を首筋で束ねている。だが黒系のスーツをびしっと着込んだ彼の姿は傍目にも熱を放射しているようで、ルーファウスはこめかみに指先を当てた。
「・・ツォン・・暑苦しいからちょっと離れていてくれないか・・」
ひらひらと白い指先が宙に舞う。といいつつも、彼自身は汗はかいてはいない。しかしそれは決して彼が我慢強いというわけでもない。日頃空調の効いたところしか移動していないので、そもそも体温調節機能というものが備わっていない為である。
「しかしそれでは護衛に付いてきた意味がないでしょう・・」
汗を拭き拭き答えるが、実際ついてきたことを後悔しているツォン。彼の脳裏に浮かぶのはもはや、タークスの制服にも夏物軽量スーツを導入しようかということだけである。
「まったく・・もうすこしTPOを考えて服を選んでくれ・・こんなことならイリーナを連れてくればよかった・・」
徐々にツォンに対する風当たりが強くなっていく。本人とて言ってどうしようもないことくらいは分かってはいるのだが、それでも腹にため込むよりはマシ、といったところか。
「どうして・・僕がこんな所で無駄な時間を過ごさねばならないんだ・・まったく・・」
ルーファウスのリミットがそろそろ限界に近づいてきた頃を見計らったように、やっと潜水艦は動き出した。

「・・ご気分はいかがですか?」
ツォンの声と冷たい刺激にルーファウスは目を覚ました。あの凶悪なスーツは脱がされ、ラタン編みのカウチに横たえられている。額と首筋には冷たいタオルが当てられていた。その状況を一目で見て取り、深く息をついた。
「・・僕は・・また、倒れたのか・・」
「そうです。でもよく持ちましたね。」
なんとかイベントが終わり、涼を取る為に別荘に戻った途端にルーファウスは倒れた。ひどい汗をかくでもなく、ただぐったりとツォンの腕に体と意識とをを預けて。その体は通常の彼では考えられないほどの熱気を帯びていた。
「暑気中りですね。医師を呼びましょうか?」
金色の髪をかきあげ、そっと耳の下に手を当ててみる。こもった熱気がふわりとツォンの指先に絡み付く。このまま熱が放射されないようなら多少困ったことになる。
「・・いい・・あいつらはすぐに大騒ぎするから嫌いだ。」
額に載せられたタオルをうっとおしそうにのけながらルーファウスは眉を顰めた。
体の中の熱く渦巻くものが彼の思考を妙な方向へ引きずっていこうとしている。目の前の観葉植物が変形していく。抗えば抗うほどひどくなるその錯覚に抵抗することをあきらめ、彼は体の力を抜いた。
「ふぅ・・」
「・・大丈夫ですか?やはり医師を・・」
「うるさい・・嫌だといったら嫌だ・・それに大丈夫かなどという、曖昧で答えようのない質問をするんじゃない・・」
ルーファウスの語気が荒くなった。ツォンははっと息を呑む。
「失礼しました・・つい・・」
「・・いや・・僕が・・何か・・おかしいみたいだ・・」
虚弱な自分の体に対する苛立ちが、彼を気遣うツォンの心すらを悪意のあるものにとってしまう。そんな弱い自分に対する情けなさを隠すように、ルーファウスは話題をそらした。
「・・それよりも、何か冷たいものをくれ・・・・」
「そうですね、水分補給したほうがいいようです・・何がよろしいですか?ジュースくらいなら冷蔵庫にありましたが・・」
「・・ソルベかジェラードはあるか?」
「は?」
ぬるくなったタオルを再び氷水で絞りながら、ツォンは怪訝な顔をした。その様子から彼のボキャブラリーにはそのような単語は存在しないことを悟ったルーファウスが苦笑混じりに補足する。
「君なりに言うと・・そうだな、アイスクリームか氷菓か・・ないのか?」
「はぁ・・ご滞在予定のない時なので日持ちのしないものは入ってないようですが・・買ってきましょうか?」
「頼む。そういえば近くに最近ジェラード屋ができたそうだから・・」
冷えたタオルを再び額に載せ、ルーファウスは目を閉じた。その細く整った指を見ながら、ツォンは耳慣れない言葉を復唱した。
「その・・ジェラードを、ですか・・?」
「そう。」
「えーと・・では、どのようなものを?」
「なんでもいい。適当でいいから早く行け・・」
「はあ・・」
またしてもだんだんにルーファウスの機嫌が悪くなっていく。これ以上しつこく聞けば爆発をおこす危険性がある。ツォンはとりあえず深く詮索するのをやめ、タイムマシンに乗せられた原始人のような気分で、その耳慣れない食物を買いに熱線の降り注ぐ外へと出かけていった。


「さてと・・何を買って行ったものか・・」
肝心のジェラード屋の前で色とりどりのジェラードを前に、ツォンはほとほと困り果てていた。周囲では露出過多の水着姿の女の子達が面白そうに黒服の男を眺めていく。
眼前にはミルキーウェイだの青い珊瑚礁だのとわけのわからない名前のついた、彼の常識からすれば大凡食べ物ではない不思議な色合いのペーストが並んでいる。
はっきりいって彼にはなにがどーなっているのか、なににどーいうものが入っていてどーいう味なのか全く見当がつかなかった。
「ふぅ・・仕方ないな・・当てずっぽうでいくか・・?」
今までかつてこんな難しい仕事を依頼されたことはなかった・・
ため息を吐いた彼の目に、ジェラードと共に並ぶ自家製のアイスバーが留まった。
ジェラードに比べればかなり冴えない色ではあるが、彼の目にはよほど食べ物らしく写ったに違いない。おまけにちゃんと材料の名前が書いてある(笑)
「あちらのほうがいいかな・・そう言えばルーファウス様がアイスバーを食べているのは見た事がないしな・・」
よく見れば、周囲の水着ギャルズの中にも結構アイスバーを食べているのがいる。
ツォンはアイスバーを食べるルーファウス像をふとその姿に重ねてみた。
「・・!?」
その瞬間、ツォンはふと、ものすごぉく、邪な想像をした。その想像がどのようなものだったかは彼のみぞ知るところであるが(笑)
「・・いいかもしれない・・」
ぼそりと呟くと手当たり次第にアイスバーを買い込み、彼はいそいそと愛する王子様の元へ戻っていった。


「何、アイスキャンディ?」
ツォンの買ってきた箱を開けて早速品定めをするルーファウス。ドライアイスの煙が白くたなびく。んなこといいから早く食えといいたいツォン。だがここであせってルーファウスに疑問を抱かせては計画がおじゃんである。彼はあくまでも平静を保ってみせた。
「はい。自家製だとかで結構評判がいいらしいので・・」
「ふーん・・バナナと苺と・・あ、マンゴー・・」
いいながら、バナナミルクの薄い包み紙をばりばりと剥がし、桜色の唇に運ぶ。
「しめしめ・・」
その後に見られるであろうラブリーな光景を想像したまさにその時・・
がりっ
「?!」
一瞬、ツォンの某所に痛みが走った(笑)
「が・・がりって・・(汗)」
「・・どうした?」
怪訝そうな顔をしながらルーファウスが顔を上げた。
「・・ルーファウス様・・アイスバー齧るんですか・・?」
「うん?・・まぁね。」
いいながら、白い歯ががりがりとアイスバーを削り取っていく。それはそれで扇情的な光景ではあるのだが、見事に目論見外れたツォンはアイスバー以上に冷え切った心を抱えながら、すっかり汗の引いた顔に貼り付いた笑みを浮かべていた。



すみません、冷凍バナナ食べながら思い付きました(苦笑)ちなみにアイスキャンディーはがりがりと食べる人間なもので・・(笑)
それにしても・・おかしいなぁ・・シリアス展開が途中からどうして・・(笑)ごめんなさい、前半部分でなんらかの期待をされた方・・(笑)ちなみに、後半がメインだったりするんですが・・(笑)


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