瀬尾先生の第62弾

こんにちは、お元気ですか?
風邪ひいたり暑かったり大変で何が何やら分かったいない状況ですが、一つ一つ課題を片づけていこうと思っています。
そんな時でも駄文は書く・・・この性質はどうにかならないものか・・・(苦笑)

本日の課題。視点を一人に絞るように今月の目標。現実を直視するようにただ今の予約状況。ぱのらまさんへのルーファウス攻め。鬼丸さんへのクラウド受け。
できればりんさんへのクラ攻めも書きたいですねぇ・・あ・・書きかけセフィ受けもあったっけ・・とほほ・・
って・・まだまだできもしないような約束があったような気がする・・・



彼の寝室に時々現れる少年がいた。整った顔をしてはいるがその表情にはどこか人形を思わせる空虚さが漂っていた。
少年はいつも事務的に服を脱ぎ、決して表情を変えることもなく抱かれ、また服を整えて去っていく。
少年は彼に何も語らず、彼もまた少年自身に興味はない。そんな肉体のみの関係が数年続いていた。

ある日、普段よりも激しい情交を重ねた後、セフィロスはふと傍らで乱れた息を整えている少年に目を向けた。それはふとした気まぐれから、だったのかもしれない。

お前はどうして私と寝るのだ?

自分が他人に興味を持っている、その事実にセフィロスは妙な愉しさを覚えて少年に尋ねた。彼には親や友人などというものは存在せず、またそれを構築するなどという気もさらさらなかった。過去にも未来にもつながりを持たない、自分という存在のみで確立された世界。そんな中で生きてきた彼が今どうして他人に興味を抱くようなことになったのか。それは彼自身にすらも解らなかった。

今、君は会社に必要な存在であり、僕はそれを繋ぎ止める要素の一つである。親父がそう判断した。だから僕は君と寝る。

少年は即答した。あくまでも事実だけを淡々と。その表情は変わる事もなかった。
傀儡になるにはあまりにも聡明すぎて。狂ってしまうには強すぎて。危うい均衡の美がそこにあった。

つまり、道具、か。

そうだね。それがぼくの存在意義だから。

セフィロスの歯に衣着せぬ物言いに、少年の顔が「笑い」という表情を形作った。
自分はただの道具でしかない、そこに辿り着くまでの血の滲むような逡巡は彼の心を深い闇で包み込んでしまっていた。

そうか・・他の人間ともこのようなことをしているのか?

当然だ。興味あるかい?

いや。

遠慮しなくてもいいよ。なんとも思っちゃいないから。

言葉とは裏腹に、少年は腕に嵌まる金色のバングルに口付けをした。恥じらいもなくあっさりと服を脱ぎ捨てる少年がいつもこれだけは外さないバングル、その裏には誰の目にも触れられることのない深い傷痕がある。

おかしなものでね、幼い頃からずっとこんなことをしていると段々心が冷えていくのが判るんだ。そうしてその次は体が冷たくなっていく。
僕の心も体もとっくに死んでしまったらしくてね、今では誰に抱かれても感じる事すらない。

まるで数でも数えるような調子で、少年は誰に聞かせるともなく語った。彼の彼自身に対する無関心は崩れそうに危うい少年の心を保つ為に彼が会得したただ一つの方法だった。

お前はそれで幸せなのか?

セフィロスは少年に問うた。同時にそれは彼自身への質問だった。
幸せ。不確定要素によって引き起こされる感情の一つ。
おおよそ感情というものをもたない彼にとって、それは非常に不可解なものであった。

わからない。いい加減、この生活が嫌になる時もある・・

少年の体が向こうを向いた。細いうなじと背が露になる。肌目細かく張り詰めた皮膚の下に白い骨の形がかすかに浮き出ていた。

そのようなものなら捨てれば良い。

不可解さを隠しもせずにセフィロスは言った。枕元の時計を見れば思いがけず時間が経っている。後一時間もすれば任務が開始される。そろそろ身支度を整えなくてはいけない。

・・強いね、君は・・でも、僕自身が持っているのはこの非力な体だけ。他に何もない・・僕の存在意義なんてもともとどこにもない・・こうしていることでようやく僕は人間として扱ってもらえるのだから・・

どこか夢見るような口調で語る少年の隣でセフィロスは体を起こし、無駄無く鍛え上げられた優美な肉体を検分するように見回す。どこにも支障は見あたらない。

・それでは、プレジデントを殺せば・・お前は自由になれるのだな?

何?

セフィロスはベッドから音もなく起き上がり、少年を振り返ることもなく身支度を始めた。滑らかな白い肌を黒い野獣の皮が覆っていく。

お前の体の代償だ。

それだけを言い残し、セフィロスは去っていった。長身に揺れる銀色の髪が視界から遠ざかっていく。その姿が完全に消えると、少年は自分の体に上掛けを巻き付け、乱れきったベッドの上で丸くなった。自分の周りを温かい空気が包んでいる。もうしばらく、このままでいたかった。

しかしその後、セフィロスはまもなくニブルヘイムで行方不明になったという報告が少年の元に流れてきた。
あれは哀れな捨て猫に対するほんの一時だけの口約束かもしれなかったのに。
わずかな期待を抱いていた自分がおかしくて、少年は一人口元を歪めた。

そうして五年後。
神羅ビルに侵入したテロリスト達によってプレジデントが殺害された。今は社長となった青年は、自分を今まで苦しめていたもののあまりにも小さなその死体を見下ろしていた。その背に輝く銀色の刃。それはあの男の姿に良く似ていた。

まさか・・

青年の脳裏を忘れかけていた過去の約束がよぎった。

・・僕の体の代償・・か・・

心の奥底から笑いが込み上げてくる。意外に律義な男だったのかもしれない。自分の体を抱きしめるようにして、青年は笑った。生まれて始めて心から笑った。

君は・・僕がツォン以外で唯一狂える男だったんだよ・・それは教えていたかな・・セフィロス?

この手に握ったものの大きさを確かめるように、青年は腕を差し伸べた。
その強化ガラスの窓の向こうには、赤く染まった市街が広がっていた。


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