瀬尾先生の第51弾

どこからともなくとんとんという音が聞こえる。朝の光の中に、なんとなく温かないい匂いが混じっている。
セフィロスは薄く目を開けると、自分の隣に寝ているはずの恋人の姿を探った。が、手は空しくシーツの上を滑るだけである。
いない?
まだ暖かいそのぬくもりを手に、セフィロスは起き上がった。

あ、セフィ、おはよう。
キッチンにいくと、寝乱れてくしゃくしゃになったパジャマの上から大きなエプロンをかけ、まな板で何かを刻んでいるクラウドの姿があった。その細い体を後ろからそっと抱きしめ、返事の変わりに頬に軽いキスをする。
* ・駄目だよ。包丁使ってるんだから・・危ないよ・・
* ・朝飯よりは・・おまえの方がいい・・
* ・ん・・そういうわけにはいかないの・・
くすぐったそうに微笑みながら、小猫のようにもがくクラウド。その薄い唇に再び深いキスをして、セフィロスは名残押しそうにその体を離した。
ねぇ、すぐにご飯できるから新聞でも読んでてよ。
生活感を感じさせない白魚のような指がダイニングテーブルの上を指し示す。きちんと並べられた食器の側に、まだインクの匂いも清々しい今日付けの新聞が置いてある。そのセッティングのよさにすこし残念だと思いつつも、セフィロスは字面を読むふりをしながらその恋人の愛らしい姿を観察することに決めた。

おい・・こんな記事があるぞ・・
適当にめくっていた新聞の中に、例の記事を見つけたセフィロスがクラウドを手招きする。
これ、どういうこと?
あどけない眼差しで見上げるクラウド。よりいっそうの愛しさがともすればセフィロスの自制心を奪いかける。それを何とか押え、自分のひざの上に軽い体を抱き上げた。柔らかな髪が眼前に紗の幕を作る。
要するに・・お前と私の子供が産める・・ということだ・・
本当?!僕、セフィの赤ちゃん、産めるの?
一瞬にして輝く微笑み。細腕に渾身の力を込めてセフィロスに抱きつく。
こら・・そんなに力を入れたら苦しいだろう?
だって、嬉しいんだもん!僕、頑張って産むからねっ!
より力を込めてしがみつくクラウドに苦笑するセフィロス。その腕をそっと外そうとした時に、ふとクラウドの腕に無数に付く青いあざとバンドエイドを見つけてしまった。
これは・・一体どうした・・?
あ、これ。これは今日階段から落っこちてー、こっちは着替え出す時に箪笥の角にぶっつけてこれはさっき上からお鍋が降ってきて・・
さらっと語ってはいるが、いずれにしても大怪我一歩手前である。セフィロスの秀麗な顔に一瞬縦線が走った。
* ・クラウド・・どうしても子供が欲しいか?
うん?
* ・そうか・・では私が産んでやる・・お前には危なっかしくて任せられない・・汗
そう?
きょとんと首をかしげるクラウド。別にセフィロスがよければそれでもいいのだが、なんだか状況がよく分かってはいなかった。


かくして数日後・・産婦人科でばったりであってしまったツォンとセフィロスであった・・笑
な・・なんでお前が・・?!
うっ・・(冷や汗)


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