瀬尾先生の第17弾

レノのピアスの謎。らーまさんにあげるよ。


「以前から聞きたいと思っていたのだが・・・」
レノの腹部を枕にして、ルーファウスはうつ伏せに横たわっていた。浅黒い、引き締まった筋肉の感触。頬を通して体温が伝わってくる。レノの顔を見上げて、気怠げに聞いた。
「ん?どーぞ、と。」
喋ると、音が振動になって反響する。
「・・・そんなものを付けていて、喋りにくくないのか。」
「これのことかな、と?」
レノは舌を突き出してみせた。その先に、銀色のピアスがちらちらと光る。 「んー、もう慣れた、かな、っと。そういえば、社長、ピアス穴あけないのかな、と?いい医者知ってるから紹介するぞ、っと・・」
「遠慮しておく。何故好き好んで痛い思いをしなければならない。」
「そーんなもんかねぇ・・・・」
少なくともあける時はそんなことは考えていなかった。ただ、結果だけが目の前にちらついて、そんな些細なことには気も付かなかった。
「君といい、ルードといい、全身に穴をあけて・・・一体何を考えているのか・・」
ルーファウスはころり、と体を反転させた。天井の淡い照明がぼう、と霞む。
「わざわざ痛い思いをしなくても・・」
自分の歩んで来た道には、数え切れないほどの苦痛があったような気がする。思い出す気にもならない程。なのに何故、人は自分を自分で傷付けるのか。
「そうだなぁ・・・うーん、若気の至りといえば、そーかも・・・あのな、俺、昔は結構ワルい奴だったって、社長、知ってるかな、と?」
「知らなくても見ていればわかる。」
「ひっでぇー。これでも丸くなったって言われるんだけどなぁ・・・でもな、ピアスの痛みでほかの痛みを紛らわしてたかもしれないんだな・・と。」
人間、生きていればいろいろな痛みがある。それにいちいち正直に立ち会っていたのでは身が持たない。適度にごまかして生きる。そのほうが楽になる。
「ふぅん・・・で・・・舌のピアスはずっとそのままか?」
「んー・・外しておけば塞がるけど・・せっかくあけたんだし、それに・・」
「?」
「社長がイイ顔するの、楽しみで・・・」
「・・・勝手に言ってろ。」
ぷいと顔を背けた拍子に眼に飛び込んできたものを見て、ルーファウスはにやりと笑った。いいアイディアが浮かんだらしい。
「そこまで言うならいっそ、ここにもあけたらどうだ?」
つい先程まで自分を狂わせていたものを、爪先でぴん、と弾く。
「それも一応考えたぞ・・と。でもな、そこにあけるとオンナのこ抱けなくなっちゃうぞ、と・・・あ、ついでに社長も・・・って、ててててっ!!」
ルーファウスの整えられた爪が思いっきりくいこんできた。レノは飛び起きた。
「ってえーっ!!」
「ふん。」
「あ・・あんたなぁっ・・使いもんにならなくなったら困るんだぞ、とっ!!」
「知るもんか。」
つん、と顔を背けてしまった。
「っつーっ!!ほんっとに可愛くないのなっ!」


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