瀬尾先生の第10弾

禁断の・・・宝条・セフィロス
このときセフィロス十歳くらいでしょう・・・・それで許してください。


「ふん・・・・順調だな・・・」
昼でも薄暗い実験室の中で、宝条は顕微鏡を覗き込みながら一人ほくそ笑んだ。
試験管に入れられた、人体と同成分の培地に同化するように、ジェノバ細胞は順調に増えている。この様子では、自分の実験が確実になる日も近いはずだった。
「ん・・?」
ふと、人の気配がして顔を上げた。薄い明かりの下に、セフィロスが立っていた。白い陰が、燐光を発する。
「どうした?」
セフィロスは何も言わず、眼を伏せたまま宝条の側に近よってきた。その細い体を抱き上げ、実験台の上に腰掛けさせる。
「・・・体の調子が悪いのか?」
同じ眼の高さにしておいて、この男にしては珍しく、優しく聞いた。セフィロスは首を縦に振った。
「・・・胸が痛い・・」
ぽつりと、それだけ言って、また静寂が戻る。
「ふぅん?」
宝条は首を傾げながら、手早くセフィロスの上着を脱がした。まだ幼さの残るあおく薄い胸に指をはわせる。
「どこも・・・悪いところはないようだが・・・・いつからだ?」
あちこちに触れながら尋ねる。セフィロスはいやがる様子もなく、じっと静かに座っていた。
「・・・・ドクターガストが、いなくなった・・・それから・・」
以外な答えだった。宝条は手を留めると、じっとセフィロスの顔を見、そして洪笑した。
「それは病気ではない。淋しい、という感情だ。まったくまだまだ子供のくせに・・」
自分がそれを知ったのは、愛するものをこの手で破壊してからだった。それを知った時は既に、その人は自分に対して憎悪をもっていた。
「さ・・みし・・・い?・・・さみし・い・・さみしい・・・」
口の中で復唱する。どこかせつない響きのする言葉。初めて聞く言葉だった。
「胸が痛い・・こと?」
「あぁ、それを淋しいという。だが、それはお前には不必要な感情だ。お前は神だ。神はそんなことを知らなくても良い。ただ、冷徹に、残酷に、そうして傲慢に支配しろ・・愛など、不必要だ・・」
いいながら、滑らかな胸に口づけする。指が神経質に肌の上を動く。
セフィロスはなんの感情も抱かないアイスブルーの眼で、その様子をただじっと見ていた。


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