瀬尾先生の第6弾 |
ついでといってはなんですが・・・・
また書きました・・・・今回、なんかまとまりなさすぎ・・・・泣
いらなければぽいしてください・・・・ごみ箱へ・・
安藤さん皆様すみません、毎回容量取ってしまってますせるるです。
おまけに、「あー、あと三十分・・」などという時間制限付で書いているので心理描写も味わいもへったくれもございません(泣)恥じも文章もかきっぱなしです。
さて、今回はまたしてもツォン・ルーファウスです。ここんとこ、なんかものすごく可愛げのあるルーファウスばっか書いていたので、そろそろ我儘ルーファウスを書きたくなって・・・(苦笑)
副題は、ゆけゆけ神羅カンパニー・・です(笑)
「はぁ・・・・」
ミッドガル零番街神羅ビル、軍事開発部門別室の片隅で、ツォンは深い溜め息を吐いた。目の前の机には「イベント企画書」という名前のついた、一冊の企画書がのっている。
「ふぅ・・・・」
その表紙を指先でめくり、内容をちらりと見る。
(・・・・・こんな話、どうやって切り出せというんだ・・・)
改めて頭が痛くなってきた。
プレジデント亡き後、副社長から社長へと就任したルーファウスは、古い組織の体質を改善するべく、次から次へと新しいやり方を考案してきた。
その一つが、今回ジュノンで開かれるC・I(コーポレートアイデンティティー)である。テーマソングを作り、シンボルマークをかえ、式典の様子をテレビで全世界に中継することによって新しいイメージを定着させようというのが目論見である。
それ自体には全く問題はない。諸手を挙げて賛成してもいい。
だが、今ツォンの頭を悩ませているのは、その後の会社内での、いわばお楽しみイベントだった。
「・・・・こんな宴会ネタ、一体誰が考案したんだ・・・・」
髪をかきむしりながら、ツォンは苦渋に満ちて呟いた。
CIE(コーポレートアイデンティティーイベント企画書)
(実際にはあちこちにハートマークが散っているものと思ってください。)
・とりかえばやこんてすと
ミスコンなんてもう古い、これからは真の男女平等の時代です。
あなたの周りにも男よりかっこいい女性、女より奇麗な男性はいませんか。
そんな人々を晒し者(笑)に、皆で楽しく盛り上がりましょう。
勿論ルーファウス新社長参加は必須ですよね。
備考、これはもう既に決定事項として各部所に配布しちゃいました。
ようするに、女装男装コンテスト、である。しかし、ルーファウスまでもが参加とは・・・・・勿論、本人はそんなことを知るはずもない。だが知らせればただではすまない。それでもやってみたい。では誰が猫の首に鈴を付けるのか、それはもう、ツォンしかいない。
そんなこんなで、女性秘書がそろっとツォンにこの企画書を差し出したのが、今日の朝である。
「あの・・すみません・・下からこんなの来ちゃったんですけど、どうしましょう・・・・・」
戸惑いがちに、おずおずと差し出された書類を見て、一瞬眼前が暗転した。なにか言いたかったが、なにもしらなさそうな秘書を頭ごなしにどなりつける訳にもいかない。
「私・・どうやってこれを社長に渡したらいいのか・・・昨日から悩んでいて・・」
目に涙が溜まっている。本当に悩んでいたらしい。
「わかった・・・私からなんとか話しておく・・」
ツォンは結局、受け取ってしまった。
そんな、浅はかな今朝の自分がつくづく恨めしい。ツォンは今日数十回目の溜め息を吐いた。そのおり、ふと触れた顎がまだ痛い。今朝、熟睡しているルーファウスを起こそうとして強烈なアッパーを食らったせいだ。そんなルーファウスに、こんな企画を持っていけばどうなるか・・防弾チョッキを着込んだほうが賢明かもしれない。
一体こんな宴会ネタ、誰が考案したのか、勿論ツォンは知るよしもないが、神羅ビル内で働く、主に事務職についている多くの煩悩に満ち溢れた女性社員達である。普段暇を持て余している彼女達に、今度の式典ついでにイベントをするからとアイディアを募ってみたところこういう企画書ができてしまったらしい。
もっとも、考案くらいはどこででもありそうであるが、そんなものがすんなり通ってツォンの所、つまりルーファウス寸前まできてしまうあたりが、この企業の凄いところなのかもしれない。
(一体どーいう経緯をとったのか・・・・・まったく四天王はあれだし・・・役たたずどもが・・・もう少し企業の体質を考える時なのかもしれん・・・)
この際、四天王というのはガハハとキャハハとウヒョヒョとボー・・のことを指すらしい。自分がもしいなくなったらルーファウスはどうなるのか、ツォンは決してルーファウスより先には死ねないと固く心に誓ってしまった。
「しかし現在の問題は・・・これをいかに切り出すか・・・だったな・・・」
ツォンは再び頭を抱えてしまった。
「ルーファウス・・様・・・」
「おや、ツォン。ちょうどいい。一緒にケーキ食べないか。」
死刑台に向かう心境で、げっそりとしながら社長室を訪れたツォンをルーファウスは珍しくご機嫌で迎えた。
「新しい店ができたって聞いたから、外周りに頼んで買ってきてもらったんだ。」
にこにこしながら大きなケーキの箱を開ける。中には色とりどりのケーキが十数個ほども並んでいる。
ルーファウスは幼い頃から甘いものには目がない。偏食で少食で、散々ツォンを悩ませておきながら、デザートやおやつの甘い菓子類だけはぺろりと平らげていた。今でもどちらかといえば、酒よりはケーキのほうが嬉しいらしい。
「またそんなに買い込んで・・・食事が入らなくなるでしょう・・・」
無駄だとわかっていても思わず一言言いたくなる。
「わかったわかった。もう子供じゃないから大丈夫だ。」
と、言ったそばからケーキを片付け、既に三つめに手を伸ばしている。あまり甘いものが好きではないツォンとしてはいささか気分が悪くなってきたが、この際、少しでもルーファウスの機嫌の良いほうが嬉しい。
「あの・・・ルーファウス様・・」
「なんだ?」
人心地ついたのか、満足そうに紅茶を飲んでいる。
「今回の、CIのイベントの件なんですが・・・」
「あぁ、式典後の。まかせておいたが、決まったのか?」
「それが・・その・・女装して頂くことに・・・」
カップを持ち上げる手が止まった。
「女装?誰が?」
「ルーファウス様が、です・・・」
きょとんとした顔で、ルーファウスがカップをソーサーに置く。
「もう一度、いってみろ。君の話はなんだかよくわからん。」
わかるようにいったら即爆発である。
「ですから・・その・・ルーファウス様を女装させようというのが・・・・」
そっと企画書を差し出してみる。ルーファウスはそれを目で追っていった。
まず、眉がぴくりと跳ね上がった。
次に、食い入るように、しっかりともう一度読んだ。
続いて、紙を持つ手が震えた。
そして、リミットブレイク。
「冗談じゃないっ!どーして僕の歓迎イベントで僕が女装するんだっ!?」
ルーファウスは立ち上がり、椅子が音をたてて転がった。
「ハイデッガーだなっ、こんな計画を立る奴はっ!即刻撃ち殺してやるっ!」
今にもライフルを持って飛び出していきかねないルーファウスを、ツォンは羽交い締めにしてなんとか押えた。(防弾チョッキ着ててよかった・・・)
「はなせっ!!ツォンっ!!」
「ハイデッガーは関係ないんですっ!!」
「じゃあ誰だっ!?」
「多分、ルーファウス様ファンの女性職員ではないかと・・・」
口から出任せであったが、ほぼあたっている。ルーファウスの力が抜けた。
「なんでそーいうことになる・・・・」
よろめきながら、ツォンのたてなおした椅子に座る。頭がひどく混乱していた。
「・・で、それは決定事項なのか?」
無駄とは思いつつも、聞いてはみる。
「はい・・・すでに・・・」
ルーファウスはテーブルにつっぷした。
しかし、そうと決まってからのルーファウスの仕事は早かった。やりだせばとことんまで、という達らしい。デザイナーをよんで女物のスーツを仕立て、それにあわせて靴を選び、メイクやヘアデザイナー、アクセサリーデザイナー、スタイリストも手配した。(ツォンに反対されて、さすがにエステにまでは通わなかったらしいが。)
そうして当日がやってきた。ミッドガルの社長室をしめきり、しばらくごそごそという音とルーファウスの怒る声だけが聞こえていたが、思ったよりも早くドアはあいた。
「あ・・・・・・・・・・・」
「・・・どうだ?」
待ち兼ねていたツォンは言葉を失った。白い、ぴったりのセミロングタイトのスーツを着込み、ハイヒールを履いたルーファウスはどこから見ても女性、いや、美女であった。いささかきつい顔だちではあるが、十分に美女の範囲に入ってまだおつりがくる。
喉元の太さをカムフラージュするために極彩色のスカーフを巻き、爪にはルージュと同色の、真赤なマニキュアまでしている。
「奇麗です・・・」
それだけしか言えなかった。もともと顔の造りは整っているのだが、化粧をすればより引き立つルーファウスである。その場の誰もが見とれていた。
「あまりうれしくないが・・・じゃあ、さっさといくぞ。」
あっけにとられるツォン以下をほうっておいて、ルーファウスはすたすたと歩き始めた。歩き方はいつものままであるが、もともとが背筋を伸ばしたモデル歩きなのでさほど違和感はない。
「新社長・・・似合いすぎ・・・」
イリーナがぼそっと呟いた。
「それでは、一番のかたどうぞぉー。」
どう見ても業界人という感じの司会者によって、イベントはテンポよく流れていった。時々客席から笑い声とどよめきがおきる。出場者も様々で、出ると同時に黄色い声の上がった男装の麗人から、会場を爆笑の渦に巻き込んだ肉体派のオカマ風などなど、普段すまして仕事をしている姿から見れば信じられない盛り上がりようである。
そんな中、プログラムは進み、遂にルーファウスの出番になった。
「では、本日のメインイベントー。この時を待ち焦がれた女性は多かったことでしょう。世界女性の憧れの君、ルーファウス新社長のおでましでーす。」
ふざけたコピーと共に、ルーファウスが出てきた。観客に向かって艶然と微笑む様子はあれだけいやがっていた人間のものとは思えない。かつかつとかたい音をたててステージの真中まで歩いていき、にっこりとポーズをとる。観客は、静かにただ呆然と見とれている。が、誰かがフラッシュをたいたのを契機に、大きな歓声があがった。
「すばらしい二重人格だ・・・」
舞台袖で見守っていたツォンが、ぼそりと呟いた。
「おい、司会者、なんとかまとめろ。早くひっこみたい。」
ぼーっとしている司会者に向かって、ルーファウスは低く呟いた。はっとして、慌ててマイクを突き付ける。
「えーっと、そのー、一位は確定したようなものですが何か審査員に向かって一言・・・?」
「そうだな・・・」
ちらりと、脇の審査員のほうに目をやる。
「僕に票を入れたらどうなるか・・・わかっているだろうな。」
低い声で叩き付けるように言い、さっさと退場した。審査員席の面々はすくみ上がったが、会場はますますもりあがってしまった。
「まったく、どういう社風なんだか・・・」
沸き上がる歓声を聞きながら、舞台袖で苦々しく呟いたツォンの独言を拾い、レノがけらけらと笑いながら、余計な情報を漏洩した。
「そういえば、社長とツォンさんの同人誌が裏で流れてるって聞いたことあるぞ、っと。」
「はぁ?なんだ、それは・・・」
「さぁ・・・・?なんか、副社長から社長になってからおおっぴらに出回ってて、集めるのが大変だとかなんだとか・・・」
レノは肩をすくめた。
「俺も女の子にちらっときいただけだからそれ以上はねぇ・・でも、怪しい本だから本人達には内緒って言われたぞ、っと。」
それをあっさり漏らすと言うことは、レノ本人もなんらかの興味はあるらしい。にやにやしながら、ツォンに詰め寄った。
「なぁ、怪しい関係、ってなにかな、っと?」
「知るか。第一、社長と私は人に知られて困るような関係ではないっ。」
ツォンはきっぱりと断言した。・・が、心の中では冷汗ものである。まさか、本当に泣きつ泣かせつの関係であるとは言えない。(当り前だ。)
もっともその数日後、イリーナを通じて入手した数冊の問題の冊子を見て、そのあまりの描写の的確さに、彼は血の気が引くのを感じてしまった。
(・・・・これは・・・・・・)
そこにイリーナの一言がとどめを指した。
「それの逆バージョン(ルー・ツォン)もあるらしいんですけど。」
「そんなことより・・・社長が帰ってきた。私は社長と共にミッドガルに戻る。後は頼んだぞ。」
「はいはい・・・まかせろ、っと。」
ツォンは舞台袖に戻ってきたルーファウスに駆け寄り、何か話をしながらすぐに立ち去った。その妙にお似合いな後ろ姿を見ながら、レノは首を傾げた。
「・・・まぁ、いいか・・・っと。」
「寒くないですか?」
銀色のオープンカーで草原を走りながら、ツォンはサイドシートのルーファウスに声をかけた。着替える時間もなかったルーファウスは、取り敢えずサングラスだけをかけていた。
普通、ジュノンからミッドガルへ移動する時にはジュノン内のヘリポートからヘリを出せばいいのだが、今日はルーファウス目当ての社員達が待ち構えている為、あえてジュノン付近の草原にヘリを留めていた。
「・・ヘリは近いのか?」
どこまでも続く平原を見ながら、ルーファウスが聞いた。遙かむこうに森が見える。が、視界の中にヘリは見当たらない。
「はい。カムフラージュシートをかけています。」
「そうか・・・」
ドアに肘をつき、物憂げに考えているルーファウスの横顔には、微かに疲労の色が見えた。ツォンは時計を眺め、頷いた。
「・・・まだしばらく時間がありますから、海岸にでもいきましょうか。」
「・・いいのか?」
「はい。」
「だったら・・・それよりは、あの森にいってくれ。」
ルーファウスは前方の深い森を指差した。
「はい。しかし、あの森に何か?」
ツォンがそれに向かってハンドルを修正する。
「・・・あそこに、ダーネィが眠っているんだ・・・」
ダーネィ、ダークネィションは、ルーファウスのペットであり、友人だった、緑の目の、黒いジャガーの名前である。まだルーファウスが幼かった頃、狩りに連れられてきたジュノンの森でひどい怪我をして死にかけていたのを、拾った。
拾った時は既にかなりな大きさだったが、別にルーファウスを襲うこともなく、傷が癒えてからは後を付いて回っていた。頭のいいジャガーで、時としてルーファウスの相談相手にもなるほどだった。
それが、この間のアバランチの襲撃により、ルーファウスを守るために命を落とした。
「あそこがダーネィの故郷だから・・」
「わかりました・・・」
「ありがとう・・なんだか、疲れた。」
草原をふく風に髪をなびかせながら、ルーファウスは呟いた。シートを倒し、頭の後ろで腕を組んで仰向けに寝ころがる。
「女というのは・・大変なんだな・・・とても窮屈だ。」
そのまま、足を組む。スカートのスリットから、ガーターベルトがちらりと覗いたのを、ツォンは気にしまいと念じた。
「・・・しかし、女性は強いですよ。いろいろと・・」
ツォンの頭の中に、一人の陰が浮かんだ。古代種という大きな宿命を持ちながら、それに押し潰されない、しなやかな強さ。敵をも愛する、穏やかで豊かな心。それは、草原のように優しく人を和ませる。
ふと、我にかえった。ルーファウスが顔をこちらにむけている。化粧も崩していない顔が、真剣にツォンに尋ねる。
「・・僕が女だったら、よかったか?」
それだけいって、顔を空に戻す。
「僕が女だったら・・こんなに苦労しないで、君と恋に落ちて、結婚して、子供作って、ずっと幸せに暮らしてって・・・そんなことも可能なんだって考えたことがある・・・」
勿論それは一つの可能性でしかない。しかし、ルーファウスが男である限り、それは絶対にありえない。
「そうですね・・・・」
ツォンが静かに答えた。
「でも、結婚するだけが愛の形ではないと、私は考えます。私は、今のルーファウス様が好きなんです。それでは、いけませんか?」
ルーファウスが破顔した。
「答えになってないよ。それ。都合の良い逃げゼリフだ。」
笑いながら、勢いをつけて起き上がる。ツォンが、続けた。
「ただ・・・」
「ん?」
「そのお転婆な所と、我儘な所がもうすこしどうにかならないかなぁ、とは思いますけれど。」
「ツォンっ!!」
ルーファウスがハンドルに飛び付いた。車体が左右にぶれる。
「だ、だめですっ!!なにするんですかルーファウス様っ!!!」
「今の、おてんばってのはなんだ、とりけせっ!!」
「ほんとのことでしょうがっ!あー、ぶつかるぅぅぅっ!」
賑やかな叫び声を残しながら、銀色の車体は草原を蛇行していった。