瀬尾先生の第3弾

いつだったか書いた、セフィロス・宝条。あれは流石の煩悩せるるでも、「わはははは(汗)」の域を超えないので、今回は少し趣向を変えて、ヴィンセント・宝条でやってみました。ったって、完全プラトニックですけれど・・・(絡みなんか入れたら世のヴィンファンに爆弾送り付けられちゃいますぅ)
なんか、ほんまに辻つま合わせだらけで、こーなるとセフィロス誕生の意義なんかもひっくるめ、極論すれば、「宝条のヴィンに対する片思いが世界を崩壊させたんかい、こら」とゆーことになってしまいますが・・・ねぇ。それはいいとして。
それから、せるるはヴィンファンではないので(というか、好きなんだけれど、ギャグになってしまって・・・・・・笑)あんまりイベントの詳細まで覚えてはいないのです。なんか、最後に宝条倒す時にヴィン入れとくとイベントがあるとか・・・
あと、何故改造されちゃったのかとか・・・種々疑問はありますけれど・・・ご存じの方はお教え下さいませ。

それでは御感想・リクエストなどお待ちしています。一例、ドミノ市長・ハット助役、ガスト=ファレミス・宝条などなど・・笑(注、クラウド*セフィロス(リバーシブル)というのは御遠慮下さい。何をどーしても想像できませんでした。笑)

しかし「クラウド」を「蔵独活」と変換するうちのワープロって・・苦笑
ヴィンセント、宝条ってのもうちにくかった・・・泣。もぉやらないぞっ。


(メテオ発動後・ミッドガル)

 「やったぞっ!」
 ジェノバによって巨大化した宝条が崩れてゆく。膨張していた宝条の体から呻きとも叫びとも聞こえる声が、黒い瘴気となって抜け、後には横たわる、一人の痩せた男だけが残った。
 「おい・・・あいつ、まだ生きてやがるんじゃねぇか・・」
 シドが呟いた。確かによく見れば、まだ微かに呼吸をしているのがわかる。
 「・・・・・」
 クラウドは複雑な思いで宝条を見た。こいつのせいで、セフィロスは悲しい宿命背負って生きることになり、ザックスは殺され、自分は自分を見失った。
 いわば、すべての諸悪の根源なのではあるが、今ここに横たわっているのは、死にかけたただの男だ。
 「・・放っておいてもいいさ。どうせ、もう・・・・それより、いこう。俺達にはまだ、やるべきことがある。」
 「そうだな・・おいヴィンセント。いくぞ。」
 シドがヴィンセントを促したが、ヴィンセントは動かない。
 「こら、どーしちまったいっ。」
 「ヴィンセント??」
 クラウドも駆け寄ってきた。ヴィンセントは、ぼそりと言った。
 「・・先にいってくれ。私は、こいつに、聞いておくべき話がある。」
 「はぁ?とどめをさしてやりたい、の間違いじゃねーのかぁ。」
 シドは首を傾げた。自分の人生をぶっ壊した男に、今更何を聞くと言うのだろう。これがもし自分であったなら、迷うことなく殺ってしまう。
 クラウドはしばらくヴィンセントをみつめていたが、ゆっくりと頷いた。
 「・・わかった。じゃ、俺達は先に行ってる。」
 「おいおい。」
 「いいだろ。すこしくらい。行くぞ、シド。」
 クラウドが扉の方へ走ってゆく。
 「こらぁっ、・・・ちっ、しゃーねぇなぁ。ヴィンセント、まってっからなっ。ちゃっちゃと用事済ませてこいよっ。」
 それを追って、シドも駆けて行った。後には、二人だけが残った。
 暫く、沈黙が続いた。
 「君が・・きてくれるとは思わなかったよ・・」
 宝条がそれを破った。
 「まだ喋れたのか・・・」
 ヴィンセントが歩み寄る。のぞきこんだ顔には、すでに死相が浮かび始めている。セフィロスにどことなく似た、神経質そうな細い作りの顔。
 「・・聞きたい事があるんじゃ・・なかったのか・・?」
 これから死に臨むものにしては不適当な、妙に安楽かな表情を浮かべている。
 「・・・・・」
 「自分の体のこと・・ルクレッツイァのこと・・セフィロスのこと・・クラウド・・そんなところだろう・・・どれだ?全てか?」
 「・・何故・・・・・」
 「・・その前に、悪いが、もう、大きな声を出すのが辛くなってきた・・・もっと近くにきて・・くれないか。」
 ヴィンセントは宝条の横に腰を下ろし、そっと耳を寄せた。宝条は彼らしくない、嬉しそうな表情を浮かべた。
 「・・・ありがとう・・」
 「お前に感謝されるとは思っていなかった・・・年を取ったな・・」
 「君は・・かわらないな・・あの時のままだ・・ずっと・・もっとも、施術したのは私だが・・。さぞや、恨んで、いるだろう・・」
 「・・何故・・・」
 「好きだったんだよ、君が。いや、今でも・・」
 突然の告白。
 「私は・・君が好きだった。愛していた。なのに君は・・・あんな女と・・・」
 宝条の顔が苦しげに歪む。
 「だから私は、彼女に取り入り、実験という名目であんなことをした。・・彼女も科学者だからね・・自分の好奇心と名声欲に眼がくらんだのさ・・・」
 そうして、運命の子、セフィロスは誕生した。
 「私は、君に憎まれることで、君に想っていて欲しかった・・忘れられるのは耐えられなかった・・」
 「だから、私の体をこのようにしたのか。」
 ヴィンセントの顔には、侮蔑も怒りも、哀れみも、全ての現われうるべき表情がなかった。ただ、淡々と事実のみを受け取っている。
 「そう、だから私は君を改造した・・ずっとずっと、その美しい姿のままで・・私を憎んでいてほしかった・・そうして、こうやって私を殺しに来てほしかった・・」  「・・・・・・・」
 「・・今、私がどれだけ幸せか、わかるかい?・・自分でも可笑しくなるほど、幸せなんだ・・・」
 そういって、くっくっくっと喉で笑った。薄い、蒼ざめた唇の端には今迄誰も知ることのなかった微笑が浮かんでいる。
 「・・愚か者が・・」
 ヴィンセントが苦々しげに呟いた。宝条の笑みが濃くなる。
 「・・そうだな。私は愚かだ・・いや、馬鹿だ・・そうだ・・自分の為に、星を巻き込んだ・・不思議だ・・こんな形容詞が自分に当てはまることがあるとは・・愉快だよ。愉快・・だ・・」
 宝条の笑い声がふいに小さくなった。苦しげに呼吸を整えている。
 「ふぅ・・もう、そろそろだな・・・これで、私は開放される・・」
 「宝条・・・」
 「・・いいのか?・・そろそろいかなくても・・・仲間が、待っているのだろう・・・?」
 「・・・・・・・・」
 ヴィンセントは動かない。
 「ヴィン・・セント・・・」
 「最後に、一つ聞きたい。私の体は、このまま死ねないのだろうか・・・」
 宝条は弱く首を振った。
 「否・・冬眠状態にしていれば話は別だが、通常の生活をしていれば、ゆっくりといはあるが年を取る・・・また、ダメージを受ければ死ぬ・・幾ら私でも不死身にまではできなかったんでね・・・だが、私の本意としては君の年をくった姿なぞ見たくはないのだが・・・」
 面白そうに宝条は言った。
 「・・ならば、メテオを始末したら、宝条、お前と一緒に眠ってやる・・」
 「?・・・なんだって・・」
 「どうせこの世に未練はない。それならば、文句はなかろう・・」
 「・・いいのか?」
 「あぁ・・・・」
 「そうか・・すまない・・・・」
 「だから、それまではライフストリームなどには入るな。」
 「・・・無茶を言う・・・・」
 宝条は嬉しそうに目を閉じ、深く息をついた。ヴィンセントは、その投げ出されていた両腕を取り、胸の上でそっとあわせてやって、立ち上がった。
 「もう・・いかなくてはいけない・・・」
 「そうだな・・」
 マントを翻し、ドアの方へ足を踏み出す。その背後から、細い、掠れた声が聞こえた。 「セ・・フィロスを・・わが息子を・・頼む・・私は・・わたし・は・・・」
 「あぁ。わかった。」
 振り向かずに、ヴィンセントは答えた。
 「ルクレッツィアの為にも・・・」
 「・・・あった・・のか・・彼女・・に・・・」
 「あぁ・・滝の洞窟で・・。セフィロスという罪悪感に縛られて死ぬに死ねずに・・だから、私は彼女の枷を外しにいく・・・・」
 「・・・種々と迷惑をかける・・・な・・・・」
 「これが私にできる全てだ。私は、お前に泣いてやることすらできない。永き眠りの間に、心が凍ってしまった・・・」
 「・すまな・・い・・ヴィン・・セン・ト・・」
 「・・・・・・・・・」
 最後の息が、ヴィンセントの名前と共に胸の上に吐き出された。全てのものから開放された、そんな笑みが宝条の顔に宿っていた。
 「・・・私は・・・」
 固い言葉が途中でつまった。ヴィンセントは首を振ると、振り向きもせず、クラウド達を追い、駆けていった。


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