瀬尾先生の第2弾

(ぱたん)
「ん?」
 闇に響くドアの音でザックスは目を覚ました。誰かが音を立てずに、ひたひたと注意深く歩く気配が感じられる。外はまだ暗い。
(・・・誰だ・・)
 息を潜めて、体制を整える。足音が止まり、ばさりと、なにかをベッドに投げ出したような音がした。
「?」
 起き上がって向かいのベッドを見て見ると、クラウドが泥のように寝ていた。
「なんだ・・・お前か・・・・・」
 緊張と眠気が一気にふっ飛んでしまった。思わず溜め息を吐く。
「しかし・・・毛布も着ないで寝てると風邪ひくぞ。」
 しかたがないのでベッドから這い出し、クラウドの下に入り込んでしまっている毛布を引っ張り出す。その時に少し揺れたはずなのだが、本人は起きる様子もなくこんこんと眠り続けている。
「ったく、しょーがねぇなぁ・・・」
 ぶつぶついいながらも、きちんと首まで包んでやる。ふと時計を見ると、もうそろそろ明け方の時刻であるのが分かった。
「こんな時間まで一体どこ・・あ、セフィロスんとこか。」
 そう言えば、クラウドは時々、夕食を終えてからセフィロスの部屋へ行っていた。帰りは大体夜中か明け方、朝という時もあった。当然、次の日、クラウドはふらふらで一日ぼーっとけだるそうな顔をしていることになる。たまにならかまわないが、それがこの頃頻繁になりつつある。
「まったく・・・どーせ昇級試験の勉強にでもいってんだろうが・・・・」
 この場合、結構怪しい理由を想像してもいいものであるが、(実際そうなのであるが、)そうは考えず、飽く迄も馬鹿の付くほどまっ正直に誤解(曲解)してくれるのがザックスのいいところである。はっきりいって、セフィロスとクラウドの怪しい関係はこいつの鈍さによって守られているんだと思うよ。せるるは。
「ふぁぁぁぁぁぁ。あーあ、もーすこし寝よ。」
 大きな欠伸をしながらザックスはベッドに入った。明日、セフィロスに少し注意してやろうと考えながら・・・


 次の朝、案の定、クラウドは一日ぼーっとしていた。ぼーっと起き、ぼーっと身仕度をし、ぼーっと食堂に行ってぼーっと朝食を取っているが、熱いお茶の他にはほとんど手をつけていない。
 見かねたザックスはフォークを起き、呼び掛けた。
「おい、クラウドっ。」
「・・はい・・?」
 ワンテンポ遅れてこれまたぼーっとした返事が返ってきた。
「お前なぁ、寝不足なのはわかるがな、そーやって飯を食わんからいつまでたってもやせっぽちの体力不足で昇級試験に合格しねーんだぞ。」
 もちろんそれだけではないとはおもうが、それも理由の一つだ。
「・・・ほっといてよ・・・」
 ぷいとそっぽを向くクラウド。ザックスはテーブルに身を乗り出した。
「これ以上俺に心配させんなよ。な?。あ、なんならセフィロスには俺がかけあってやるぜ。」
「・・それが余計なお節介というのだ。」
 突然、二人の頭上から例の、独特の響きを持った声が聞こえた。何時のまにか、セフィロスが立っていた。
「び、びっくりさせんじゃねーよっ。」
 ザックスが突っ掛かる。クラウドは耳まで真赤になり、慌てて顔を伏せた。
「私がここにいては何か不都合なのか。」
「いや・・お前が朝飯食いにくるなんて珍しいなと・・・」
「気が向いただけだ。」
 言いながら、開いている椅子の一つを引いて、腰を下ろし、当たり前のようにカウンターから取ってきたらしい、湯気の立つコーヒーを口にしている。
「ところでクラウド・・・例の件だが・・・」
 クラウドの顔がますます赤くなった。セフィロスはいつも通り、平然としている。ザックスは何が何やら状況が分からなくなった。
「・・そーいえば、おいセフィロスっ!」
「・・なんだ。騒々しい・・・」
 只でさえでかいザックスの声と、人並み以上によく透るセフィロスの声が重なって、食堂中の兵士達がこちらを遠巻に見守っている。が、当然この傍若無人ソルジャー達には関係ない。もしかしてクラウドがソルジャーになれなかった理由って、神経の細さが原因なのかも・・・(笑)
「なんだじゃねーだろっ。お前、毎晩クラウドを遅くまで占拠してるだろっ。勉強を教えてやるのは構わんが、ちょっと遅くなりすぎだっ!!」
「・・・お前には関係ない。あれはクラウドが「自主的に」通っているのだからな。」
 自信満々のセフィロスだが、勿論嘘である。しかしクラウドに聞いてみたところで絶対に反論しない。いや、できない。
「それでもクラウドがかわいけりゃ、「今日はもうこれくらいにしとこう」ってきりのいいとこで切り上げてやるのがほんとの愛情ってもんだろがっ。」
「そうやってお前が甘やかすからこいつはいつ迄たっても成長しないんだ。」
「なんだとっ。お前なぁ、知ってるか、お前がそーやって四六時中クラウドクラウドって言ってるから妙な噂が立つんだぞっ。」
「どういう噂だ。」
「その・・・お前とクラウドができてるとか、お前と俺とクラウドが三角関係だとか・・」
 図星、である。
「できていたらどうだというのだ。お前だって四六時中女女と騒いでいるだろうがっ。」
「女はいいんだよっ、女はっ。」
「ではなぜクラウドなら駄目なんだ。」
「クラウドが駄目なんじゃなくて、ふつーは男同志はそーいう関係にはならないんだよっ。」
「では一つ聞くが、男を好きになるのと女を好きになるというのではどういう精神構造上の違いがあるのだ。」
「だから知識ばっかりで一般常識のない奴はぁぁぁぁぁっ。なんで男が男を好きになったりするんだよっ。」
「愛した人間が希望の性であるというのは半分の確立でしかなかろうがっ。」
 どんどんずれていく論点と、段々激しくなっていく言い争い。二人の渦中にあるクラウドはますます真赤に小さくなっていく。
 しかし二人は喧嘩を止める気配もない。周囲も止める気配はない。
 こうして、他の兵士間に、「また例の最凶ソルジャーコンビが、子供の教育で夫婦喧嘩、痴話喧嘩」という、無責任だがあたらなからずも遠からずな噂が流れるのであった。


「作者後書き」
あぁ・・・これでは「うるさいセフィロスとやかましいザックス」泣
なんなら18禁も書きますけれどねぇ・・(えありすとてぃふぁとか・・笑)
公共回線にのせるのはやばいので・・(苦笑)
好意的なご感想、同調的な御意見、その他煩悩のリクエストなど、種々お待ちしています。


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