里中亮先生の第3弾

めずらしく(笑)Hではありません。ちょっと切ない片思いヴィンセントのお話です。
もともと絵描き(といってもヘボですが・笑)な私なので、文章の表現力に乏しく同じ言い回しばかり出てきてしまっています(苦笑)



《いつかきっと…》

「お疲れーっ!」
「明日は早いぞ。夜更かししないで早く寝ろよ!」
宿に着いたクラウド一行は戦闘に次ぐ戦闘で疲れ果てていた。
何をするでもなく各々自分に割り当てられた部屋へ直行した。
一人、ヴィンセントを除いて。

へとへとに疲れて立ち寄った町はとても小さくて、宿屋も大人数のパーティには少し小さすぎた。ベッドが1つ足りないことに気づいたのはヴィンセントだけだった。
もともと地下室の棺桶で長い間眠っていた彼は、ベッドの上でなくとも眠れる体質だったので部屋の外で体を横にできそうなところを物色していた。

「ヴィンセント、何してるんだ?そんなところで。」
声をかけてきたのはクラウドだった。
「いや、ベッドが人数分ないようだから…。俺はどこででの眠れるし、一晩くらいなら ここでも平気だと…」
「…ったく。ヴィンセントはいつも気を使いすぎ。俺の部屋でよければ来いよ。ちょっと狭いけど、なんとかなるだろ。まあ、男同士1つのベッドっていうのはちょっといやだけどな。」
照れを隠すようにクラウドは軽い冗談を言った。
部屋に入ってみるとシングルベッドが1つ。
「クラウドは小さいし、俺は細いからなんとかなるか…な。」
「…小さいは余計だ。」
ぷいっと横を向いたクラウドのすねたような顔にヴィンセントは心のなかで「本当にかわいいやつだ」とつぶやいた。
狭いベッドの右端と左端に二人は体を横たえた。
「クラウド、夜中に蹴飛ばすなよ。」
「おまえこそ…。」
疲れきっていたクラウドはすぐに寝息をたてはじめた。
その後まもなくヴィンセントも深い眠りに陥っていった。

「い…や、行かない…で…お願…い…」
クラウドの声でヴィンセントは夜中に目を覚ました。
悪い夢でも見ているのだろうか、クラウドがうなされている。
「クラウド…?」
ヴィンセントは上半身を起こしてクラウドの顔を覗き込んだ。
「行っちゃ…やだ…」
クラウドの頬は涙で濡れている。
「クラウド、クラウド、何か悪い夢でも見ているのか?…おい…。」
クラウドの頬を軽くたたくと、クラウドはうっすらと目を開けた。
「もう、どこにも行かないで…」
そういってクラウドはヴィンセントの首に腕を巻きつけ、抱きついてきた。
「好き…セフィ…抱いて…」
ふいにクラウドの顔が近づいてきてヴィンセントの唇に重なった。

セフィ?セフィロスのことか?なぜあいつの名を?
クラウドに口付けされながらヴィンセントは考えた。
5年前ニブルヘイム魔晄炉調査のときにセフィロスと一緒だったとクラウドから聞いたことを思い出した。
抱いて?どういうことだ。まさかセフィロスはそのときクラウドを…。
クラウドの唇が離れていき、そのまま胸から腹、その下へと移っていった。
勃ち上がりかけているヴィンセントのそれがまさにクラウドの口の中に入ろうとした瞬間、ヴィンセントは叫んだ。
「や…やめ…ろ…クラウド…!」
「…ど…うして?僕のことが嫌いになっちゃったの?」
目に涙をいっぱいに溜めてクラウドがヴィンセントを見上げた。
ヴィンセントはそんなクラウドをとてもかわいくていとしいと感じた。
「いや、嫌いになんかならないよ。そんなことをしなくても、俺はずっとおまえのそばにいるよ。」
「ずーっと、こうして抱きしめていてあげるから、おやすみクラウド…。」
「うん…。」
微笑んだクラウドはヴィンセントの腕の中に潜り込み、間もなく寝息をたて始めた。
「ふっ…まいったな…据膳食わぬはなんとかって言うけど、とてもこんなクラウドを抱くなんてこと、俺にはできないな。」
悲しそうな微笑みを浮かべてヴィンセントもまたベッドの中に横になった。

「…ヴィン…ヴィンセント…ヴィンセント!」
「起きないと置いてくぞ!」
まだベッドの中でまどろんでいるヴィンセントにクラウドが声をかける。
「起きないと…襲っちゃうぞ!」
そう言って毛布を勢いよくはがし、クラウドはヴィンセントの上に馬乗りになった。
「わっ…わかった!起きる!起きるよ!」
身支度を始めたヴィンセントにクラウドが話し掛けてきた。
「なあ、俺さあ、夕べなんか寝言いってなかった?」
「…いや、別に?…なんか夢でも見たのか?疲れてて熟睡してたから気がつかなかったよ。」
「う〜ん、だったらいいんだけど。なんか悲しい夢をみたような…でも、朝起きるととても気持ちよくて、こんな清々しくて幸せな目覚めは久しぶりだったから…。」
そういって少しはにかんだクラウドを見て、ほんの少しだけヴィンセントも幸せな気分になったような気がした。

「ちょっとー、あんたたちー。何してんの?もうみんな仕度できてるんだけど。」
ドアのところでユフィが皮肉たっぷりな顔をして立っていた。
「あーごめん。もうすぐだから、すぐ行くよ。」
そう言ってクラウドはユフィ達のところへ走っていった。
その後ろ姿を見つめながらヴィンセントは考えていた。
いつかクラウドはセフィロスを忘れることができるのだろうか。セフィロスをたおせば忘れられるのだろうか。クラウドが自分の名前を呼んでくれることがあるのだろうか。
そう思ってヴィンセントは心がきゅんと痛んだ。
おしまい。


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