すみません・・レス借り新作です。

投稿者 せのお/レス借り魔人 日時 1997 年 10 月 24 日 08:39:42:

願望。

・ ・個人的には死んでいると思うのですけどね・・彼・・
そんなに人生って甘くないと思うんですけどね・・
それでもこんなもの書いちゃう自分が・・嫌
書きかけは8月末のようでした・・(汗)



「社長・・あんた、本気か?」
「あぁ。・・僕が冗談の使い方も知らない人間だと思っているのかい?」
目の前に立つレノに向かって、ルーファウスは穏やかに笑ってみせた。その背後の窓の外には不気味な魔晄兵器がその姿を現している。
「あんな化けモンを・・」
「やってみなければわからないだろう。」
ルーファウスはくすりと笑った。その表情からは、彼の真意を読み取ることは出来ない。レノはため息を吐き、顔からいつもの人を食ったような笑みを消した。
「あんたは・・恐怖や力を簡単に使いすぎる・・」
「人を支配するもっとも大きな力は、欲望と恐怖さ。親父は欲望で、僕は恐怖で支配する。」
笑みを浮かべながら淡々と語る彼の表情は時々ゆっくりと瞬きをするだけで、精巧に出来た人形を思わせた。
「あんたは変わってしまったんだな・・と・・」
「変わってはいない。もともと神羅は兵器開発会社なんだ。魔晄電力を元に兵器を開発する、ね。何も変わっちゃいない。」
即座に返答が返ってきた。しかし、そこには一つの巧みな論点のすり替えがある。レノはそれに気づいたが、何も言わずにただ静かに肯いた。
「わかった・・俺達は、俺達の道を行く。これでお別れだぞ、と・・」
「あぁ。」
ルーファウスは短く答えた。彼らの道は、所々で交わることはあっても決して同じではない。いつか、こうやって別れる時がくることは互いにわかっていた。ただそれが思っていたよりも早くきた、それだけだった。
「じゃあな。」
「ああ。」
去り際、レノはふとルーファウスのほうを振り返った。電磁ロッドを肩に担ぎ直し、彼は呟いた。
「・・あんたのことが嫌いになったわけじゃないんだぞ、と・・」
「そうか。」
ルーファウスの顔に浮かぶ笑みが濃くなる。それを見届けるように、赤い髪はドアの向こうに消えていった。

「アルテマウェポン・・か・・」
全てが去り、ただ独りになった部屋の中でルーファウスは窓の外を眺めた。雨でも降ろうというのか暗鬱とした空に、シスターレイが黒くひっそりと眠っていた

自分は力をもっている。
自分が支配者である限り、自分は愚民どもを想いのままに操ることが出来る。
しかしその力を行使することは、同時に、彼ら、従順な生き物に対して少なからぬ責を負うことである。
「・・皮肉だな・・」
自分は彼らを支配したつもりで、実は彼らに操られていたのかもしれない。
ルーファウスはシスターレイに向かい、自嘲の笑みを浮かべた。


数日後、ウェポンの放った白い光弾は神羅ビルを襲い、上層部は壊滅的状態と化した。


「なんで・・僕は生きている・・?」
ルーファウスは周囲を見渡した。熱線で焼けただれた部屋のあちこちから薄い白煙が上がっている。
しかし彼の周囲を囲む黒く重いオーク材の机は、じんわりと熱くなりながらも彼の体を守っている。だが、自分は少なくとも机の前にいた。それがどうしてこの惨状の中で無事でいられるのか。ルーファウスは思わず誰に聞かせるともなく疑問を投げかけた。

「相変わらずだぞ、と・・」
その声で、ルーファウスは自分が誰かに抱かれていることに始めて気がついた。声のしたほうに首を向けると、薄いグリーンの鋭い瞳がこちらを見下ろしている。
「・・何故君がここにいる・・?」
「それが命の恩人にいう言葉かな、と?」
ルーファウスを救ったもの。それは数時間前に道を違ったはずのレノだった。

「どうして・・」
「ちょっと忘れ物なんだぞ、と。」
「・・これは・・?」
ルーファウスは自分達の周りを囲む、半透明の壁のようなものを指差したが、途端に慌てたレノに手を掴まれた。
「あー、駄目駄目!もう少し外が冷めてからじゃないと危ないぞ、と。」
「・・いったいなんなんだ・・これは・・」
「逆ピラミッド♪いやー、敵の動きを封じる為に作った奴の逆バージョンなんだけど、中から触ると壊れるんだ。いやー、うまくいってよかったぞ、と♪」
おどけた顔で言うレノを、ルーファウスは呆れた顔で見つめていた。
「・・しかし・・君は・・」
「勘違いするんじゃないぞ、と。俺は新しいご主人サマの命令に従っただけなんだぞ、と。」
「・・新しい主人、か・・」
「そ。」
そう言って、レノはぽんぽんと自分の薄い胸のあたりを叩いた。
「ここにいるんだな、と・・」
ルーファウスの目が最大級に丸くなった。
「んー♪そーいう表情が可愛いんだぞ、と。」
レノはルーファウスの頬に口付けをしようとしたが、ルーファウスは顔を逸らした。
「おや、つれないのね、と・・」
「・・馬鹿だ。君は。」
ルーファウスはぽつりと呟いた。そっぽを向いた顔は頼りなく、焦点の合わない目が辺りをさまよっている。その向こうでまだ赤くくすぶる瓦礫の山が崩れ落ちていった。
「んー、馬鹿かもな。んじゃ、その馬鹿と一緒にこないかな、と?」
「駄目だ。・・僕はここにいなければならない・・僕は支配者なんだ・・」
「くだらないぞ、と。」
伏し目勝ちに言うルーファウスに、レノはあっさりと言いきった。
「な、やるべきことはやったんだろ、と?それともまだまだ他に打つ手があるのかな、と?」
「・・」
ルーファウスは静かに首を横に振った。
「でも・・僕が失踪すれば、ミッドガルの愚民どもは頼るものを全て無くしてしまう。たとえ何も出来なくても、僕が自身のある素振りを見せてさえいれば、彼らは安心できるんだ。」
自分の表情一つで、人は喜びも悲しみもする。ルーファウスはそれを何よりもよく知っていた。
「だから僕は・・ここを離れることは出来ない・・」
「なぁ、社長・・いつまでそうやって自分を殺して、自分を騙して生きていくつもりなんだ?」
「・・わからない・・僕は・・こういう生き方しか出来ない・・でもその結果があれなんだ・・」
生まれながらの帝王の瞳に映る、空の上の絶望の炎塊。人は人知を超えたものに遭遇すると、無意識のうちに救済を求める。その矛先は大体において支配者・聖者と呼びなされるものに向けられていた。
「僕は・・何も出来なかった・・」
「あんたはよくやったんだぞ、と。ずーっと、ずーっとな。だから、もし本当に世界が滅びるなら、今から少しくらい自分のことだけ考えて生きてもいいんじゃないかなと俺は思うぞ、と。人間、時には自分のことだけ考えて生きていくことも大切なんだ・・違うかな、と?」
「無理だ・・そんな」
「そっか、じゃ仕方ないんだぞ、と・・」
レノは肩をすくめると、ルーファウスから手を離した。ロッドでこんこんと内側から叩くと、ピラミッドはあっけなく崩れ、熱気が押し寄せてきた。
「さ、俺はそろそろいくんだぞ、と♪ルードとイリーナにゃ、ちょっと忘れ物といってきてしまったから多分心配してるんだろな・・と。」
ぱんぱんと服のほこりをはたきながら、レノは立ち上がり、まだ下に座っているルーファウスを見下ろした。
「あんたは・・どーする?結局はあんたが決める事なんだぞ、と。だいじょーぶ、あんたは一回死んだんだから、後はリーブさんがきっと何とかうまくやってくれるんだぞ、と。」
埃まみれになった手がルーファウスの目の前に差し伸べられた。細く骨張った、しかし強靭な手。これがおそらく最後通告なのだろう。
ルーファウスは大きく息をつくと、ためらいがちに自分の手を伸ばした。
「さ、みんながまってるんだぞ、と♪」
レノの明るい声が頭上から降ってくる。ルーファウスは肯いた。
「あぁ・・」

レノの手に引かれ、ルーファウスは瓦礫の上に立ち上がった。それは彼が生まれて初めて、自分の意志で歩んだ一歩だった。


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