あつい夜    いつものだけど・・・

投稿者 血吸ねこ 日時 1997 年 10 月 22 日 19:10:50:

いつものです。
でも、今回はちょっと番外編(?)でして・・・
実はシドヴィンではないのですよ・・・(^◇^;


「あら、ヴィンセントさんは?」
 シエラの問いかけに、シドは読みかけの新聞から顔を上げた。
「ああ、また出かけちまったぜ。」
「そうですか。・・・じゃあまたしばらくは、帰らないのかしら?」
「そうだろうな。」
 メテオが消滅してから半年が過ぎていた。ロケット村で新たに行われている太陽熱エネルギーのプロジェクトは、まずまずの滑り出しを見せていた。プロジェクトリーダーの座にシエラを据え、シドは一研究員として、たまに顔を出す。何をしていたかというと、タイニーブロンコの修理であった。
 3人での生活は面白かった。シドがシエラを怒鳴りつけることは、もはやない。シエラは、怒鳴り声が聞こえないのはちょっと寂しいわ、と小声で漏らしてヴィンセントを笑わせた。
 時々はシドとヴィンセントの2人だけで出かけることもある。
 それでも、時たまヴィンセントはふらっと一人で出かけるのだった。それについて、シドもシエラも何も言わない。いつ帰ってきても、暖かく迎える。ヴィンセントにはそれが嬉しかった。
 ヴィンセントが向かうのは、ルクレツィアの所だった。彼女の体内のジェノバ細胞は、本体の消滅とともに徐々に衰えてきたらしい。彼女も、自殺だけは考えなくなったようだ。
 洞窟を出ようとしない彼女は、ヴィンセントの訪れをいつも喜んでくれた。が、一緒に暮らすことにはうなずかなかった。一人の方が気が楽なの、といってほほえまれると、ヴィンセントもあきらめざるを得なかった。

「ふう・・・、社長も無理を言うよな・・・と。」
 ニブルヘイムの山中で、真紅の髪の男がつぶやく。タークスのレノであった。彼は、滝の洞窟を目指していた。リーブは新羅カンパニーの建て直しに懸命だった。なかでも、化学部門の資料等を整理するのに、下手に新たな人間に頼むよりも彼女に頼みたい、と考えたらしい。
「さて、どっちかな・・・と」
 2方向に分かれている道で思案していたとき。
 ばさばさっと翼の音がした。一時期より数は減ったものの、まだモンスターはいるのだ。不意をつかれ、肩口を爪でかすられる。けがはしなかったが、上着が裂けた。いざ反撃、と思ったとき。銃声が響き、モンスターは消滅した。
「だれかな・・・と。」
「・・・タークスか。」
 静かな声。レノは思わず、ぞくりとした。
「その声は・・・大先輩の、ヴィンセントさんかな・・・と。」
「・・・大先輩はやめろ。」
 ヴィンセントが、ふわりとレノの前に降り立つ。
「タークスが、なぜこんな所にいる。」
「んー、・・・滝の洞窟を探してるんだな、と。」
 ヴィンセントの紅い瞳がぎらりと光る。レノは思わず後ずさりしそうになった。
「・・・なぜだ?・・・彼女なら、そっとしておいてやってくれ。」
 静かな中に、優しい調子が混じるのをレノは聞き逃さなかった。
「こちとら、リーブさんの命令なんでね。このまま引き返すわけにもいかないかな・・・と。」
「リーブ・・・?ケットシーか」
「このまま俺が帰っても、また次の奴が派遣されるだろうな・・・と。」
 しばし考え込むヴィンセント。どうしたものかと思案しているらしい。
「・・・私がリーブに直接話をしよう。・・・それでどうだ?」
 今度はレノが考え込む番だった。しばし考え、にやりと笑う。
「んー・・・一晩、ヴィンセントさんの身体、自由にさしてくれるんなら・・・と。」
「・・・・・・・・・よかろう。好きにするがいい」
 少々、拍子抜けしたが、取引は成立した。

 2人は山の中を移動した。いまだにモンスターに遭遇する。雑魚と言っていいほどのものだ。しかし、以外にすばやいものが多く、何度かかすり傷を負うこともあった。
「・・・今夜はここで野宿だな。」
 気がつくと、太陽が地平線の下に隠れたところだった。暗くなってから移動するのはいくらなんでも危険だった。辺りを見回すと、ちょうどいい大きさの洞窟があり、近くには細い流れもある。よく見ると、それほど古くなさそうな焚き火の痕もあった。
「ここ・・・知ってるのかな、と。」
「・・・何度か利用している。」
 どうやら、ヴィンセントの定宿らしい。2人は木の枝を集めて火を起こし、ちびちびと酒を飲んだ。
「さて・・・と。約束、果たしてもらうぞ、と」
「・・・いいだろう」
 ヴィンセントは、マントをはずした。黒ずくめの装いが、その紅い瞳を引き立てている。レノは、ヴィンセントの側で片膝を付き、片手を顎にかけ、口づけた。レノの舌がヴィンセントの唇を舐め、口の中に進入する。その歯を舐め、舌を絡ませる。レノの舌にはめたピアスが、ヴィンセントに微妙な感覚を与える。反応しそうになるのを、無理矢理押さえているのがレノに伝わったらしい。
「いつまで、強情張っていられるかな、と」
 楽しそうに言い放ち、もう一度口づけると、ヴィンセントの服を脱がせていった。
「・・・まて。」
「今更、逃げようなんて、だめだぞ・・・と。」
「・・・聞こえないか?」
 耳を澄ますと、何か大きなものが近づいてくるのが聞こえてきた。
「・・・火を洞窟の奥に移せ。」
「いったい・・・?」
「はやくしろっ!」
 気圧されたレノが言われた通りにして戻ってくると、ヴィンセントはすでに何かに向かって身構えていた。目を凝らすと、大きな影が三つ、見えてきた。
「なんだ、ありゃあ・・・!」
「この山のドラゴンどもだ。餌が減ってきたのか、よく狙われる。」
 呆気にとられるレノを尻目に、ヴィンセントは洞窟を出る。ドラゴンの爪がかすかにその身体をかすめ、血が流れる。レノは飛び出しかけた。と、ヴィンセントがにっ・・・と笑うのが目に入った。
「・・・リミットブレイク・・・カオス!」
 静かな声が響く。唖然とするレノ。ヴィンセントの姿が変化する。
 紅い翼。 捻れた角。 堂々たる体躯。 爛々と光る眼。 鋭い鈎爪。
 その腕の一振りで一匹を倒す。更に残りも易々と葬り去る。そして、死骸を放り投げる。
「すっげぇー・・・!」
 と、変身の解けたヴィンセントが倒れるのが目に入った。
「おい・・・、大丈夫かな、と」
「ああ。・・・久しぶりのリミットブレイクに、体がついていけなかったようだ・・・」
 レノの肩を借り、洞窟に戻る。ヴィンセントが息を整えている間に、火をまた入り口近くに移す。けがの手当を、と思ったが、変身している間に治ってしまったようだ。
「おや・・・これ、なんの痕かな、と」
 レノが面白そうな声で問いかけ、ヴィンセントの右肩の後ろをつつく。
「・・・先程、倒れたときのだろう・・・」
「嘘だな、と。倒れる前からあったぞ、と。・・・キスマーク、誰がつけたのかな、と」
 レノがにやにや笑いを浮かべて問いつめる。心当たりはある。1週間ほど前に、シドと2人で出かけたときにつけられたものだ。かすかな動揺をレノは見逃さなかった。
「ふーん・・・シドかな、と。」
「・・・・・・・・・お前には関係ない・・・」
「そういや、前にツォンさん、言ってたぞ、と。・・・昔、プレジデントの理性が飛んじまったくらいすんげー綺麗な大先輩がいて、それ以来男色に転んじまった、と・・・」
 ヴィンセントがぎろりと睨む。が、それを無視してレノは近づいた。
「でも、確かにそうかもな、と。・・・俺も飛びそうだし、と」
 再びヴィンセントに口づける。先程と違い、荒々しく、むさぼるような口づけ。そのまま、ヴィンセントのマントの上に押し倒す。レノの手がヴィンセントの胸を這い、舌が胸の突起を刺激する。シドとは違う、荒々しい愛撫に、次第にヴィンセントの息が上がる。だが、声を上げまいとして、必死にこらえている。
「まだ強情張って・・・いつまで持つかな、と」
 レノの手がヴィンセント自身を捕らえる。そして、自在に刺激し、愛撫する。
「!・・・」
 ヴィンセントの手が、マントを握りしめる。レノは再度、胸の突起に舌を這わせた。ヴィンセントの体が大きくのけぞる。それでも、必死に唇をかみしめている。
 と、レノがヴィンセントの腰に顔を埋めた。敏感に感じる部分にピアスがあたるように、じっとりと舌を絡ませる。
「ぁ・・・」
 レノがにやりとする。こらえきれなくなったヴィンセントが声を上げたのだ。レノの舌が、更に激しく動く。ヴィンセントが大きく喘ぐ。しばらくすると、またレノの手がヴィンセント自身を愛撫し始め、ヴィンセントが果てるまで、やめなかった。
「さて、と。・・・俺も気持ち良くしてくんないかな、と・・・」
 ヴィンセントは物憂げに身体を起こすと、レノの腰に顔を埋めた。これまでに受けてきたのとは違う、どことなく優しい感触。だが、からみつく舌は今までになく淫靡で、レノをぞくりとさせるほどだった。時折、ちらりとレノの顔を見上げる。そのあまりの艶かしさに、どきりとする。ヴィンセントの舌が、更に敏感なところを刺激する。レノはあっけなく果ててしまった。

「・・・気が済んだか?」
 レノを見上げ、涼やかな顔で尋ねるヴィンセント。
「んー、まだだな、と。一晩の約束だし、と。」
 レノはヴィンセントを後ろから抱き抱え、その首筋に舌を這わせた。
「あっ・・・ぁぁ・・・」
「それに、ヴィンセントさん、いい声してるし、と。」
「なに・・・を・・・!あぅ・・・」
「俺もキスマーク、つけようかな、と」
「う・・・やめ・・・ろ・・・はぅ!・・・」
 先程のヴィンセントの艶かしさがレノの脳裏に焼き付いている。それだけでなく、ヴィンセントのあげる喘ぎ声に、レノは再び昂ぶっていた。


 2人のあつい夜は、まだ続きそうであった。


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