のーちょくレベルは低い。なのにどうして・・

投稿者 せのお 日時 1997 年 10 月 22 日 08:26:57:

・ ・鬼畜シリーズ番外編です。本編はどうしたかって?・・それが書きあがらないから困っているのです(死)瀬尾、相当ストレスが溜まっているようです。はははのは。やってることはただのキスです。
成り行きなどは、詳しくはまた本編で・・(死)



あの男が出ていってからもうどれくらい経ったのだろう。ルーファウスは窓もない部屋の寝乱れたベッドの上で、ただ時が過ぎるのを待っていた。
「う・・」
体が熱を持っていてだるい。体の下になった肩が痛む。寝返りをうとうとして走った痛みに、ルーファウスは呻き声をあげた。
「つ・・」
こらえようとしても、喉の奥から声は漏れる。声を出す度に体中を刺すような痛みが駆け巡り、ルーファウスはシーツを握り締めた

「お目覚めですか・・」
痛みに呼吸も途切れがちなルーファウスの耳に静かな低い声が聞こえた。目を上げると開いたドアの向こうに男がトレイを持って立っていた。
「何の・・用だ・・」
ルーファウスは痛む体を庇いながら、入ってきた男を睨み付けた。
「随分とお苦しみのご様子ですね。だから、強情を張らないほうがいいと私は言ったはずですが・・」
「うるさい!お前の顔なんか見たくもない・・っ!」
叫んだ途端にまた全身に痛みが走る。声をかみ殺すように、ルーファウスは枕に顔を押し付けた。
「・・たしか私は、動かないほうがいいとも言ったはずでしたね。」
ルーファウスの様子を気にも留めず、人事のように呟きながらツォンは真っ直ぐに部屋に入り、サイドボードにトレイを置いた。トレイの上には湯気の立つ食事と水の入ったグラス、そうして白いカプセル剤が置いてあった。
「さて・・包帯はもう少し様子を見てからでないと外せませんが・・見せてみなさい。」
ベッドに座り、咄嗟に身をひこうとしたルーファウスの腕を掴みあげて、ツォンは巻かれている包帯とガーゼを外した。白い肌にはあまりにも不釣り合いな無骨なガーゼを指先でそっと剥がす。その下から現われたもの、それは色鮮やかな蝶だった。
「・・ふむ・・色はもうそろそろ落ち着いてきたようですね。」
試すように細い腕を持ち上げると、青い蛍光燈の光りの下で蝶が舞った。それは、黒く濃い線の間に、原色を埋め込んだ精巧な刺青だった。
「!」
ルーファウスはその肉の落ちた腕をツォンの腕から乱暴にもぎ取り、自分の体に庇った。その様子をツォンは笑みを浮かべながら満足げに眺めている。ルーファウスは蝶と同じ色の瞳でそれを睨み、吐息と共に呪詛の言葉を吐いた。
「人が苦しむのが・・そんなに面白いか・・」
「ええ。あなたはいつも美しい。」
にこりと笑い、首筋に口付けようと近づけてきたツォンの顔を必死で払いのける。
「・・・出て行け!」
「・・お食事を持ってまいりましたが・・」
「いらない!」
「これ以上お痩せになられると形が変わってしまいますよ?」
「僕の知ったこと・・か・・!」
語尾の最後は込み上げてきた痛みにかき消された。それでも何とか呼吸を整えようと肩を上下させるルーファウスに肩をすくめ、ツォンは盆を遠ざけた。
「そうですね。確かにあなたの知ったことではない。・・しかしこれだけは飲んでおいたほうがいいと思いますが。」
そういってツォンが取り上げたのは白いカプセルだった。それは強力な鎮痛剤であり、それさえ飲めば痛みから開放されるはずだった。その小さな物体に、ルーファウスの目がひきつけられる。細い喉がこくりと動き、口が薄く開く。しかしルーファウスはそれから目を背け、再び唇を固くむすんだ。
「嫌だ・・どうせ君のことだからまた何かを企んでいるはずだ・・」
「鋭いですね。そう、飲む為には一つの条件がある。」
「・・君が欲しいのは金か、それとも地位か。僕を犯したいのなら勝手にすればいい・・どうせ僕には君に抵抗するような力はない・・」
「それでは楽しくないでしょう。抜け殻の体を抱いても楽しくはない。私が欲しいのはあなたの心です。あなたが私のものになるというのなら・・」
「誰がお前なんかに!!」
「・・12時間前もそうおっしゃって薬を飲むことを拒まれた。その結果がこの有り様だ。それともまだ我慢なさるおつもりですか?」
ツォンは身じろぎすら出来ずにベッドに横たわるルーファウスを見下ろした。体中を襲う激痛に腕すらも動かすことが出来ない彼の支配下の哀れな生き物。それでも時折耐え切れない痛みがやってくるのだろうか、その下に敷かれたシーツには無数の皺が刻まれていた。
「・・今まで半日間、身動き一つままならなかったのでしょう?」
「うるさ・・い・・!」
ルーファウスが途切れがちに答える間にもその間にも痛みは絶えることなく、額には脂汗が滲んでいる。
「一度だけチャンスをあげましょう。」
ツォンはルーファウスの体を自分の膝の上に抱き上げた。ぐったりとした体の上から包帯やガーゼがはらはらと滑り落ち、辺りに白い花を咲かせる。既に自分で体を支えることすらできないルーファウスの頭を己の胸に凭せ掛けると、ツォンはぱちりと音をさせてカプセルを取り出し、それを口に含んだ。
「さぁ、薬はここにあります。御自分で取ってご覧なさい。」
舌の上に出された白いカプセルを目の前にして、ルーファウスのプライドが揺るぎ始めた。
「早くしないと、溶けてしまいますよ?」
ツォンの言葉が彼を焦らせる。時折、痛みの波が自分の思考すらをも押し流そうとするのをルーファウスは懸命に自分の元に引き止めて置こうと言葉を発する。
「ツ・・ォ・・ン」
「さぁ。言ってご覧なさい。私はあなたのものです、と。」
「いや・・だ・・」
熱があるはずなのにルーファウスの体は冷たく冴え、震える手が虚空をかく。プライドと痛みが彼の体の中で葛藤を繰り返す。しかし、ついにルーファウスは痛みに耐え切れずに、その透き通る精神を屈した。
「あ・・ぁ・・」
ルーファウスはツォンにすがり付くようにして腕を回し、必死にその口を貪った。薄い舌が口腔の中を探り、薬を追い求める。しかしツォンの舌は巧妙にルーファウスからカプセルを遠ざける。そのもどかしさにルーファウスはツォンの肩に爪を立てた。
「お・・ねが・・い・・だから・・」
喉の奥から絞り出された声にどこかねだる様な響きが混じったのを感じ、ルーファウスは唇を噛んだ。鋭い目尻から一滴の涙が零れる。それは単なる痛みのせいか、それとも己が力ずくで他人に従わされるという屈辱からか。涙は彼自身の意志とは関係なく、次から次へと転がり落ちた。
「・・まぁ、合格にしてあげましょうか。」
ツォンは微笑み、ルーファウスの顎を掴んで上を向かせ、柔らかくなりかけたカプセルを滑り込ませた。続いて水を口に含み、そっと流し込む。ルーファウスの喉がひくりと動き、ゆっくりと嚥下するのが見えた。

「薬が効いてくるまでもうしばらく時間がかかります。もっと早く素直になっておけばこんな苦痛を味わうこともなかったでしょうに・・」
ベッドに体を預け、自分の上で震えるルーファウスの目から流れる涙をそっと吸い取りながら、ツォンはやさしく囁いた。その声にルーファウスが目を開け、ツォンを弱く見上げる。ツォンは彼の首筋に金色の髪が汗と涙で肌に張り付いているのを指でかきあげ、耳元に唇を寄せた。
「あなたは私だけを見ていればいいのです・・そう・・私だけを・・」

それは、彼らの先に広がる絶望的な未来への序曲だった。
                                            (完)


・ ・最後に一言。
・・ルーファウス・・一行で屈するんじゃない(笑)
って・・あのまま強情はられたら困るのは瀬尾か・・(笑)


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