帰郷     何作目だっけ?

投稿者 血吸ねこ 日時 1997 年 10 月 19 日 07:53:37:

いつもの、です。


 メテオは消滅した。
 が、ミッドガルはほとんど崩壊した、といえる。クラウド達は新羅カンパニー重役のただ一人の生き残りリーブを助け、何とかミッドガルを再建しようとしていた。

 シエラは、メテオが消滅するのをロケット発射台跡で、一人で見つめていた。
(この星は、救われた・・・)
 安堵感と共に、小さな不安がわき起こる。
(艇長は・・・シドは、帰ってくるかしら?)
 ロケットに積まれたヒュージマテリアを回収するために村に戻ってきたとき、シドの変化に気付いていた。もしかしたら・・・と思う。
(もしかしたら・・・2人とも戻ってこないかもしれない・・・)
 2人−−−シドとヴィンセント。この2人は一緒に戻ってくるか、どちらも戻ってこないかではないかと思う。
 その時から、シエラの待つ日々が新たに始まった。

 ミッドガルの上半分−−−プレート上は、ウェポンの襲来やメテオの余波で壊滅状態だったといえる。リーブは新羅カンパニーの臨時社長として、本社をジュノンに移転することを決めた。それに伴い、新羅カンパニーの関係者はジュノンおよびその周辺に引っ越しを余儀なくされた。
 だが、スラムは−−−バレット達が見てまわり、住民達の意見も聞いた結果、そのままにしておくことにした。プレートさえ落ちなければ大丈夫だから、という理由だった。
 リーブは、新羅カンパニーが移転する前にプレートの点検を行うことを決定した。クラウド達もそれを手伝い、毎日が忙しく過ぎていった。

(今日も帰ってこなかった・・・)
 一人、明かりを消してベッドに入る。ミッドガルの話(というよりは噂)は、ロケット村にも届いている。新羅カンパニー本社移転のこと、スラムのこと、クラウド達の手助けのこと。
 だが、その話の中にはシドやヴィンセントは僅かにしか出てこない。まして、2人がロケット村に帰ってくるかどうかなどわかりはしない。
 確かにシドならば、後かたづけもきっちりとするだろう。だが、その後は。
 帰ってきてほしいと、切に思う。それも、2人そろって帰ってきてほしいと。小さくため息を付くと、シエラは目を閉じた。


 メテオ消滅から3カ月ほどが過ぎた。
 その日も、シエラは3人分のシーツを洗濯し、裏庭に干していた。庭には、あの時に壊れたタイニーブロンコが置いてある。シエラはタイニーブロンコを何とか回収し、細々と修理していたのだ。
(いいお天気ね・・・)
 こんな日は、シドならずとも、大空に飛び出していきたくなる。そんな日だった。
(?・・・誰か、来た・・・?)
 もしやあの2人では・・・とはやる気持ちを抑え、玄関にまわる。残念ながら、郵便配達だったようだ。何通か入っているダイレクトメールの中に、新羅カンパニー本社移転を知らせる葉書を見つける。その葉書を手に取り、どこかにあの2人の消息がないかとじっくりと見る。
 そのため、シエラは村に入ってきた人影に気付かなかった。

 ミッドガルでの作業は全て終わった。新羅カンパニーも移転完了し、プレートの点検も終了した。
仲間達はそれぞれバラバラになり、各自の暮らしていた町や村に戻っていった。クラウドとティファはニブルヘイムに、バレットは北コレルに、ユフィはウータイに、レッドXIIIはコスモキャニオンに、ケットシー(リーブ)は社長としてジュノンに。
 一人、ヴィンセントだけは帰るべき所がなかった。優しげな、しかしどこか羨ましげな眼差しで仲間を見送るヴィンセントに、シドは声をかけた。「一緒に来るか?」と。

「・・・今、けえったぞ。」
 少々照れたようなシドの声に、シエラは振り向いた。信じられない、といった面もちでシドを見つめる。そしてシドの後ろにヴィンセントの姿を認め、シエラはようやく、笑みを浮かべた。
「2人とも、お帰りなさい。」
 あふれる喜びが、声を震わせる。嬉しさに涙があふれる。シエラは2人を抱きしめ、しばし泣きじゃくっていた。

 ヴィンセントは、自分の部屋が用意されていたことに少々面食らったようだった。だが、シドもシエラも当然のことのように構えている。
「だって、ヴィンセントさんとシドは、一緒に帰ってくると思ったから。」
 シエラに正面から告げられ、にっこりと微笑まれるとさすがに反論する気が失せてしまった。そのやりとりを、シドは煙草をふかしながら穏やかに見つめている。
「好きなように過ごして下さいね。・・・ここはあなたの家でもあるんだから。」
 紅い瞳が、当惑したようにシドを見やる。
「・・・そういうこった。」
 シドとシエラの、何も言わなくとも通じあっている様子を、どことなく羨ましく思う。だが、時折シエラが羨ましげに自分たちを見ていることに気付いた。
(・・・同じ、か・・・)
 シエラもヴィンセントも、シドを愛している。だが、それはシドを独占したいと願うものではなく、側にいられれば満足できるものだ。だからこそ、シエラとヴィンセントは、互いをシドに相応しい相手として受け入れられたのかもしれない。
 それにしても、とヴィンセントは思う。もし自分が女性であったなら、こうもすんなりと収まらなかったはずだと思い、かすかに苦笑した。

 その晩、ヴィンセントは気を利かせてか、早めに寝室に引き上げた。シドとシエラはしばし黙ったまま、並んで座っていた。
「・・・やっと・・・、全部終わったぜ。」
 グラスを弄びつつ、シドはぽつりぽつりと話し始めた。クラウド達一行に加わってからの出来事一つ一つを−−−そしてヴィンセントとの関係すらも。シエラはそれを、黙って聞いていた。
 全てを話し終えたとき、すでに夜中をだいぶ過ぎていた。
「・・・そう・・・、色々なことを、してきたんですね。」
 シエラの目が楽しそうに輝いている。シドはそれを、眩しげに見やる。
「・・・妬いたりしねえのか?」
「妬く?どうして?・・・前にも言いましたよ、シド。あなた達2人は、一緒にいるべきだって。」
 呆れたように、しかし笑いながらシエラは言った。シドの目がかすかに潤む。それに気が付かないふりをしてシエラが続ける。
「それに・・・、必ず2人で帰ってきてくれると信じてましたから・・・」
「シエラ・・・!」
 思わずシドはシエラを抱きしめた。突然のことに、どう反応していいか迷ってしまう。が、おずおずと両手をシドの背中にまわすと、更に強く抱きしめられた。シドはシエラを抱き抱え、リビングの明かりを消すと彼女の寝室に向かった。


 一週間後。
「いっけねぇ、忘れてた!」
 リーブからの連絡を受け、慌てるシド。魔胱エネルギーに代わる新たなエネルギーとして、太陽熱を利用することをリーブは考えていた。そのプロジェクトを宇宙開発部の知識を生かして、進めてほしいと言われていたのをすっかり忘れていたのだ。
「・・・おおかた『両手に花』状態で、忘れはったんやろ!」
 ケットシーの口調で言われ、さすがのシドも返す言葉がなく、しどろもどろになる。その様子を、シエラとヴィンセントが笑い転げながら見ていた。


どひ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、すんごいご都合主義的なお話になってしまった・・・
ウィルス入りのメールはご勘弁を!(汗)


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