もずのはやにえ(謎)

投稿者 せのお/いつもどおりにレス欄こない(涙) 日時 1997 年 10 月 18 日 09:45:00:

↓よほどストレスがたまっているのでしょう。昨日の晩、いきなり書きました。ルーファウス7才。エッチ無しです(あたりまえだ。)
一時間書きなおしなし。別タイトル、「もずのはやにえ(謎)」



ミッドガル深夜、ツォンは遅くなってしまった仕事を片づけ、急ぎ足で間接照明の灯る廊下を歩いていた。
昼間は人が行き交うこの廊下も、夜となっては残業のタークスでもなければ通るものもいない。その静けさが夜気と共にツォンの背後から忍び寄ってきた。
「?」
ふと、通り過ぎようとしたドアの一つから、物音が聞こえたような気がした。誰かまだ残っているものがいるのだろうか、それとも神羅に徒なす者か。ツォンは足を止め、ホルダーから静かに銃を抜くとドアを開けた。

「!」
ツォンは息を呑んだ。
そこには無残に切り刻まれた男らしき死体と、その前に佇む幼いルーファウスの姿があった。
「ルーファウス様・・」
「やぁ。」
不必要なほどに白く明るく清潔な光を浴び、ルーファウスはにこりと笑った。小さな手にはアーミーナイフと思しき大振りのナイフを不器用に握っている。足元に転がるのは銀色に輝くオートマチック銃と数発分の薬莢。ルーファウスの顔や髪には赤い血が飛び散っていた。それは凄惨な光景の中でも何故か美しかった。
「こんな時間にどうしたの?」
「・・これは・・」
「殺しちゃった。こいつ嫌いだったんだ。僕にしつこく触ってくるから。馬鹿だね。」
あっさりと言い捨て、男の死体には目もくれずにルーファウスは微笑んだ。天使の笑み。何の曇りもなくためらいもない。そんなルーファウスの瞳に絡め取られるように、ツォンは近づいてくるルーファウスを凝視していた
「不思議だね。あんなに嫌な奴だったのに血はとてもきれい。真っ赤で・・温かい・・」
自分の唇に散った固まりかけた赤い血をぺろりと舐め、ルーファウスはツォンに手を伸ばした。ふっくらとした唇に生々しい艶が加えられる。袖にも、腕にも、そうして小さな手の平までをも血で染めたまま、無意識のうちに姿勢を落としたツォンの首に抱き着く。自分の居場所を見つけたかのように、腕に力がこめられた。
「人を殺すのはとても楽しいんだ。肉を突き刺すとね、いい音がするんだよ。」
くすくすと子供らしい純粋な残酷さで笑いながらルーファウスは囁いた。彼にとっては人を一人殺すのはつんである積み木を崩すのと同じくらい簡単だった。
「僕がにっこり笑うと、みんな何も疑わないでついてきてくれるんだ。そして僕が銃をつきつけて引き金いた時、彼らははじめて僕の餌食になることを知る。その時の彼らの顔!君にも見せてあげたいな。」
ルーファウスは友達に自分の宝物の場所をこっそりと教える子供のように、青ざめるツォンに無邪気に語った。やがてその語尾が徐々に弱くなり、ルーファウスの目の瞬きの感覚が次第に遅くなっていった。
「なんだか疲れた・・眠って・・いい?」
「はい・・」
「おやすみ・・」
ルーファウスはツォンの胸に顔をこすりつけると、むせ返る血の匂いの中で気持ちよそさうにゆっくりと瞳を閉じた。
「・・おやすみ・・なさい・・」
その柔らかい髪を撫でながら、ツォンは自分の腕の中で眠る少年を眺めた。
(私は・・どうすれば・・)
時々胸が深く上下する。ツォンの袖口を握ってははなす仕種は年相応の子供のものだった。だがその心の中には善や悪といった、人が生きていく上で大切なものが一切含まれてはいない。ただ自分の欲望に忠実に生きることしか知らない。それは今まで彼とにってそれらが不必要であったことを示していた。
(この子の将来に広がるもの・・王者としての栄光か・・それとも・・)
破滅、か。
ツォンは少年の体を抱きかかえると、暗いドアの外へ向かって歩き出した。その黒い後姿をは乾きかけた血の跡がどこまでも追いかけていった。


All copyrights are owned by its' authors/companies.