投稿者 たぬねこーほんぽ 日時 1997 年 10 月 15 日 18:54:27:
(ミ^^ミ)やはり切れる・・・・・・
しようがない、変なトコで切れてます、後で自分でつなげるなりなんなりしてください(涙)
度々すまんのぉ
>
「驟雨」2
二人でザックスが持って来た食べ物を食い散らかしてる間にも、ザックスは喋り続けていた。
ザックスの砕けた口調に俺の使いなれない丁寧な言い方はすぐに続かなくなってしまった。
「え?」「でも・・。」「だって!」「本当?」「それで?」「うん。」「わぁ!」
ザックスの話しは面白くて、聞くのに夢中で、喋らなくても楽しくて、俺は笑った。
ザックスは砂糖をまぶした揚げ菓子を嬉しそうに食べる。
指についた砂糖を舐める仕草が子供っぽくてこっそり笑うと、面白そうな瞳と顔いっぱいの笑顔がこちらを向いた。
食べた後のゴミをさっきの袋にぽいぽい放り込む、その間も惜しんで俺達は時間を忘れて話し込んだ。
「今日はセフィロスとどうしたんだ?」
いきなりザックスにセフィロスの事を持ち出されて、俺はそれまでセフィロスの事をすっかり忘れていた自分に気付いた。
「別に何も───。」そう、別に何も無いよ、俺、関係無いもの、セフィロスとは。
ザックスの笑顔に負けないように笑って見せた。
「あいつ休暇になったとたん飛んでくるから、追っかけて来て見れば。」・・・・・・・え?
「セフィロスに嫌われたのか?」?違う!セフィロスは─────冷たくしたのは俺で。
「じゃぁセフィロスを嫌いになったのか?」違う、俺は───でも冷たくしたのは俺で。
「あいつお前の事ばっかり言ってたんだぞ。」─!───
俺の・・・・・・事?
俺はザックスの服を掴んでいた、少し微笑んだ顔を、その蒼の瞳を必死で覗きこんだ。
嘘─本当?─嘘、うそ! ・・・・蒼の瞳は奇麗で明るくてそして──。
セフィロスより暖かい腕が俺の身体に回される。
ザックスは俺を抱きしめた。
それはいつもはセフィロスがしてくれる事で────────────
「なんで泣くんだ?」ザックスの声は優しかった。
「俺は・・・・卑怯だから。」「そうか。」ザックスの声は優しかったんだ。
「ソルジャーになりたい。」「そうか。」「何も出来ない、い、イヤなんだ!」「うん。」
「俺、そ、そばにセフィロスがいると、甘えちまうもの。」「うん。」
「自分に都合のいい事、ばかり、考え、て。」「うん。」「俺なんか嫌い・・・キライだ。」「うん。」
「だけど俺は────。」ダケドオレハ──何を言いたかったのだろう、その後は俺にも解らなかった。
ザックスは俺の言った事を一度も否定しなかった。
違う、とか、そうじゃない、とか言わなかった。
なぜ、とも、どうして、とも。
俺の自分でもわけも解らない途切れ途切れの言葉をずっと聞いててくれた。
ザックスには解るのだろうか?俺が「なぜ」こんな事を言うのかが?
でも俺が解ってもらいたいのはザックスじゃなくて───────────────
ザックスはセフィロスじゃない、けど包んでくれる身体は暖かくて、声は優しくて
でもセフィロスじゃなくて
だけど俺は心地好くて
それでも俺は───────────────
そうか、この子供はセフィロスを好きだから利用したくないんだな。
セフィロスが『英雄』だから、自分が『ただの子供』だから、
何もしてやれないと思って辛くてたまんないんだな。
まぁったく、かーいいの。
クラウド、俺もお前を好きになっちまったみたいだぜ?どうする、お前?二人の最強ソルジャーに好かれちまって。
セフィロスはサイン代わりにモンスターの下手くそな絵を書き付けてあるメモをフロントで受け取った
『「あいつ」の部屋に押し掛けて遊んでる、気が向いたら来い、作戦参謀より。
ps。風呂入ってから来い、濡れネズミのまんまじゃ入れてやらねぇ、厳命。』
(────まったくたいした作戦参謀だ────。)
セフィロスは無表情な顔の口元を、他人には分からないぐらい微かに緩めた。
セフィロス、英雄だから貴方の側にいるのが辛い。
英雄である貴方に憧れた俺の癖に。
髪を伸ばしても、むやみやたらと喧嘩をしても、俺は貴方に届かない。
余りにも俺はちっぽけ過ぎる・・・・・・・・・・・・・・・。
「お前は寂しいと言った。」
そんな事を俺は言っただろうか?弱気を見せるのは嫌だったのに。
人の気を引くのも媚びているようで嫌だ、同情されるのも、子供扱いも・・・・・
その癖彼の手を欲しがっている、なんて我が侭な俺。
何も出来ない癖になんでもして貰いたがっている俺。
こちらから追うのが惨めで辛くて、そしらぬ振りで追いかけて来てくれる事を求めていた俺。
「俺も寂しかったから解る。」
嘘だ!あんな相棒が居るくせに!なんでも解りあえる相手が。
ニセの『トモダチ』なんかじゃない、本当の友達が。
俺は友達さえいない、本当に何も持ってないつまらない子供なんだ。
「眠ったのか・・・・・・・。」
音も無く滑り込んで来たセフィロスの低い声に、ザックスも小声で答えた。
「お前があんまり待たせるからだ。」
雨は止んだが空はまだ厚い雲に覆われ、明かりを消した部屋は薄暗い。
ひそひそと、二人の声が囁き交わす。
「? それはなんだ?」
セフィロスがクラウドの胸ポケットに紙切れを忍ばせたのを、ザックスは見咎めた。
「別に。」
なんでも無い事のようにセフィロスはさり気なく答えると、しかし強引に話題を変える。
「楽しそうだったな。」
尋ねたって答えてくれやしないだろう、これ以上聞き出そうとしても無駄だ。
ザックスは軽く肩を竦めて自分に振られた話題に応じた。
「お子様には食べ物で懐柔に限る!」
「それしか知らない癖に。」
「それに引っ掛かったのは誰だ。」
「もう一度同じ手間をかけさせてやろうか?」
「遠慮しとくわ、でもなんで入って来なかったんだ?」外にずっと突っ立ったままで、俺達の話しは聞こえてただろうに。
「・・今日はまともに口を聞いてくれなかったからな、他人行儀な口調で、精一杯我を張っているのが俺にさえ解った。」
「こいつが俺を見た時のがっかりした顔、見せたかったぜ。今にも泣き出しそうでさ?」
「・・・・・話しが旨い奴に任せようと思ったんだがな。」
「出るか。」
「ああ。」
どうやってだかセフィロスはカギを外から器用に掛けた。
(悪党!)同じ事が出来る癖にザックスはわざと聞こえるように小声で罵った。
宿舎から誰にも見られないように離れるなり、セフィロスは尋ねる。
「どう思った?」クラウドの事だ。
「とことんぶきっちょ、まるで昔のお前みたい。」
「お前もそう思うのか。」
「自覚あるんなら、最後までしっかり構ってやれよ。」
セフィロスは答えずに曖昧に頷いた。
「今だってお前さんは不器用だろ?慌てて来てみりゃやっぱり振られかけてるんじゃないか。」
「後から器用な奴がすぐ来てくれると思っていたからな、違ったか?」
「んもー、期待してるならもっと感謝してくれよ!・・・んで、あの子、どうする気なんだ?」
「別にどうも。」
ザックスはコインをほうりこんだ自販機から缶コーヒーを取り出そうとしていた所だった。
缶を握り潰しそうになる。
「ど、どうもって!?・・・あんだけこっそり構っておいてか?おい!」
「おおっぴらに構えばあいつの迷惑になるだけだ、あいつの為にはこのまま離れた方が良いのかも、とも思う。」
「可哀想じゃねぇか!お前の事好きでたまらなくて、泣いたりしてるのに。」
「泣いてたのか?」
「泣いてた。」
ザックスはそれこそ力強くきっぱりと言い切って見せる。思いっきり責める目で。
「何があった?泣かせるなんてさ、お前らしくも無いの。」缶の蓋をぷしゅっと開ける。
セフィロスはコーヒーの缶を傾けるザックスを前に話しだした。
「・・・俺の顔を見るなり背を向けた、最初は拗ねているのかと思った、何か気に入らない事を俺がしたのかと。」
「次は俺に傘を押し付けて逃げ出した、嫌われたかと思ったが、後を追ってみたら喧嘩・・と言うよりは
一方的にやられてる所へ行き当たって、怪我をしてたし、雨でずぶ濡れだったので取り敢えず宿へ連れて来た。」
「震えているのに、寒いと言いながら着替えようともしないし、もしや恐がられているのかと思って尋ねて見れば違うと言うし。」
「この間から様子がずっと変だったんだが、思い当たる事が無くて。」
「途方に暮れている所にお前が来たんだ。」
「じゃ、本当にタイミング良かったんだ。」ザックスは(はぁ、成るほど)というため息を吐いた。
鈍い。どうしてくれよう、この男。
おまけにクラウドも途方も無く鈍くて純粋で・・・・・・(なんだ、結局似た者同士じゃんか。)ぐーっとコーヒーを開ける。
(純粋と言う字は鈍いに似てるけど。)妙な納得をしてしまう。
「お前あいつをどういうふうに思ってる?『弟』?『友達』?まさか『恋人』とか?言わねーよな、いくらなんでも。」
「最後のは却下しておく、「いくらなんでも」だ。」
ザックスは缶をごみ箱にぶち込むと肩を竦めた。
「で、本当の所?」
「わからない。」
セフィロスは平然とこんな答えを返す。
ザックスが唸り声を上げた。
「・・・・またそれか。」
「そう言うな、お前の時だってなんと形容していいかすら、俺には解らなかったんだ。」
「別に愛とか恋とか形容なんてしなくていい気持ちだってあるぜ。」
「?」
「『寂しい』って、一言で済むのさ、そいつが居なけりゃ寂しいってね。」
(成るほど。)セフィロスは了解の印にゆっくり頷いた。
「で、今の俺への認識は?」ちったぁ期待するぞという顔でザックスは尋ねる。
「悪友。」
(どうせそんなこったろうよ!!)即答にザックスの顔が渋くなる。
「・・他には?」『いい奴だ』ぐらい言ってくれてもバチは当たらないと思う。
「類を見ない程騒がしい同居人。」
「・・・・・・俺、今日のお前を気の毒だと思うの、止めたくなってきた。」上目使いで睨む。
うっすらと笑っていたセフィロスの顔が、何事か考え込む顔に変わってゆく。
「もうじき、ここの研修勤務も終わってクラウドはミッドガルへと戻ってくる。」
「戻って来たらどうすんだ?まさか本当に何もせずにほっぽっとく積もりじゃないんだろ?」
ザックスの目が可哀想だと責めている。
それには答えずに、セフィロスは明るい声で嬉しそうにザックスに問いかける。
「知っていたか?あれは俺の事を寂しくないのかと聞いたぞ。」嬉しそうに。
「何故と聞き返したら寂しそうだと答えた。」
「へ・・・・・・・・・・ぇ。」ザックスは一瞬絶句してしまった。
こいつが無表情に見える顔の下で、喜んだり寂しがってるのを気付くまで、俺だって相当かかったのに!
「俺はこんな子供にまで見透かされる程寂しい顔なぞ見せたのかと一瞬思った。」
「?」(そういや妙に素直なの、今日のこいつ。)
「丁度あいつのぐらいの頃の自分の事を考えていた。誰も側に寄っても来ないし、詰まらなくて寂しかった事を。」
「・・・。」
「そんなに寂しそうに見えるなら、お前が話し相手をしてくれるかと聞いたら、本当に相手をしてくれたな。」
「故郷や母親、憧れていた相手、何故そこから飛び出て来たのかも。」ふっと瞳が半分閉じられた。
「それを聞いていたらあいつは本当は寂しいんだとわかった、寂しいから俺に話しかけたんだと。」
「だからそう言ってやったら今度は怒って俺を怒鳴りつけた。」セフィロスは愉快そうに笑った。
ザックスは額に手を当てて苦笑した。笑いでもしないと、どういう顔をしていいか分からなくて。
「凄ぇな!そいつは!軍の御偉方が聞いたら喜ぶぞぉ、いや、だぁれも信じないかもな。」
「そっか、寂しかったのかぁ・・・・・・。」(やっぱり似たモン同士だ。)
ザックスは口では別の言葉を呟いた。
「じゃ、やっぱし可哀想じゃんか、ほっといたら。」
セフィロスは徒然に今日の事を思い出していた。
腕の中で泣くクラウド、自分を見詰めて震えていたクラウド、涙の跡を頬に残したまま、眠るクラウドの事を。
(あれは素直に泣く心を持っている、俺に無かった心を。)
いつ気付くのだろう?俺だとわかるだろうか?ポケットに入れたメモには『帰っておいで』とだけ書いておいた。
「・・・・可哀想だと思うなら、手助けしてくれるか?」
「やっぱしそう来るかぁ〜!!・・・・いいけど、高く付くぞ。」
「蜜蜂の館までは持たないぞ、ボトル一本に負けておけ。」
「いきなり値切るな!」二人は親しい者にだけわかる笑顔で笑い交わした。
目が覚めるとザックスは居なくて、俺は元の通り寂しくて、
誰にもそんな事言えなくて───今までにも誰にも───
・・・・・・いや、俺は確かに寂しいと言ったんだ。
自分の寂しさを隠すつもりで『セフィロスは寂しくないのか』と、気遣うふりなんかで。
あの奇麗な目に俺の気持ちを見透かされてるようで、ごまかそうとしたんだ。
「そうか、お前は寂しかったんだな。」
「そんな事言って無い!!!」自分の激しい言葉に失敗したと思った。
「!・・・・・ごめん・・・なさい・・・。」英雄セフィロスにこんな事を言うなんて!
「何故謝る?」
「だって・・・・・・。」ふわりと降りて来た彼の手は優しかった。
「なぜ?」(なぜこんな事してくれるんだ?)
俺は彼に疑問ばかり投げ付けていた。
何も持たない俺がセフィロスに好きになってもらえる、セフィロスとずっと仲良くして貰えるなんて、信じられなくて。
何を言われても、何をしてもらっても、何があっても信じない、人を信じられない俺。
意味無くつれない事ばかりをくり返すしかない俺。
側に居たくない、いつかは嫌われる。
それがが恐くて近づいていけない。
俺はいつもこうだ・・・・・・・・・・・。
意味無くつれない事ばかりを。
自分が子供だなんて事はイヤって程知ってる、
けど俺はそれじゃいやだ!嫌なんだ・・・・・・・。
セフィロス、貴方が英雄でなけりゃいいのに。
ただの子供の俺が側にいてもおかしくない、ただの「セフィロス」なら。
寂しい、側に居たい、でも側にいると───俺は嫌でもなぜセフィロスが英雄なんだろうとか考えちまう。
ここに来なきゃ良かった。
遠くから憧れてりゃ良かった。
優しくしてくれるなんて思わなかったんだ、
俺だけに、こっそり優しくしてくれるなんて!
──この頃俺は考える、俺の隣にセフィロスが居て、俺達は二人で旅をするんだ。
英雄じゃないセフィロスが、只の子供の俺の側に居てくれる。セフィロスは俺の側で、俺はセフィロスの側で、笑っている。
そんな事出来っこないのはわかっている、でも────
そうなれたらいいのに、──本当に、
そうなれたらいいのに。
(セフィロス)・・俺、セフィロスと一緒に旅をしたい。
ただ、二人で旅をしたい。
たぬねここ