スターってつらいのね(4)

投稿者 あぐり 日時 1997 年 10 月 15 日 02:17:12:

 厄日はまだまだ続いていたようです。
 食あたりで、一日苦しみました。今はもう平気ですが(はらへった・・・)。
 



 目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋・・・・というわけでもなかった。ここで目覚めたのは、たしか2度目である。
(ま、またやっちまったのか)
 シドは一瞬ヒヤリとしたが・・・まあいいや、と開き直ることにした。
 ほんとのこと言うと、別にあいつ、ジョンならいいや、という気持ちも少しだけだがあった。
「・・・おはようございます」
 ジョンが、コーヒーのにおいをさせながら入ってきた。
「ジョン・・・お前、また」
「誤解しないで下さい。はい」
 とシドにカップを手渡して、
「・・・ぼく、夕べはなにもしてないですよ」
「・・・マジかよ」
「ほんとは、あなたが前後不覚なのをいいことに、この前みたいに抱いてしまおうかとも思いました。でも、やめておいたんです」
「・・・」
「あなたには、力で押したら、嫌われるだけですから」
 ジョンは、シドの空いている手を取って、貴婦人に騎士がするように接吻した。
「ぼくが本気だってこと、あなたに・・・知ってほしかったから」
「ジョン・・・けどなあ」
 シドは、ついついぐらつきそうになる自分を戒めながら・・・
「俺には、ヴィンセントがいるんだぜ」
「今でもまだあのひとのこと、好きですか」
「・・・嫌いになれたら、な・・・と最近思うよ」
 シドはかぶりを振った。
「・・・けどだめだ、やっぱり。ヴィンセントでなけりゃ。お前のことも、いい奴だとは思うけど・・・一生ずっと、となると・・・」
「正直ですね。ぼくは、あなたのそんなところが・・・」
「やめろよ、おだてにゃのらねえから」
 シドは顔をしかめて、舌が焼けるような熱いコーヒーをすすった。
 ジョンは微笑んで・・・
「ヴァレンタイン氏、どう思いますかね・・・自分の誕生日、誰よりそばにいてほしかった貴方が、ぼくと夜を過ごしてたなんて知ったら」
「・・・あいつはそんなことで怒るような男じゃねえよ」
「・・・」
「ほんとにいい奴なんだから・・・あいつは。昔はとにかく、今はな・・・」


 寂しいバースデーを一人で過ごしたヴィンセントだが・・・存外、傷ついてはいなかった。
 ひとりっきりのバースデーなんて、過ごし慣れていたし・・・それにシドは、必ず帰ってきてくれると信じていたからだ。
 一時の怒りでカッとなったとしても、それが長続きするような男ではない。
「おはよう」
 だから、翌朝出勤したときも、案外すっきりした顔だったので・・・部下たちは拍子抜けした。
「・・・ん、どうした、レノ?私の顔に何かついているか」
「あ、いや別にっと・・・」
「おかしなやつだ」
 ヴィンセントはデスクに着いて、新聞を広げた。
 イリーナがお茶を入れて運んできた。
「・・・ありがとう、イリーナ」
「・・・それとあと、今日のスケジュール・・・ですけども」
「・・・」
「・・・えーと、十時から、クイズ番組の収録。そのあと雑誌の取材で・・・」
「・・・本来の仕事は?」
「はい?」
「タークス本来の仕事は、ないのか・・・」
「ええと、誘拐2件、破壊工作1件・・・これはあたしと先輩たちがやっつけときます」
 ヴィンセントはこめかみを押さえた。
「それから、あの・・・」
「まだ、何か?」
 イリーナはもじもじした。
「・・・親戚と友だちに頼まれちゃって・・・あの・・・ヴィンセントさんのサイン、もらってこいって」


 夕刻近く、くたくたになって帰社したヴィンセントは、玄関先で、思いもかけぬ人物と出くわした。
「・・・シド!」
「あ、ヴィンセント・・・」
「・・・どうしたんだシド、ゆうべはどこに泊まった?」
 シドは一瞬、ばつの悪そうな顔をしたが・・・
「あ、し、知り合いんとこにな」
 これは別にウソではない。ジョンだってりっぱな「知り合い」だ。
「今夜からは、ホテルに泊まるよ」
「そうか・・・」
「今夜はもう帰るのか?」
「いや・・・実は、雑誌の対談があって」
「じゃ、あとで電話するわ。またな」
 シドは足早に行ってしまった。何だか一緒にいるのも剣呑といった調子のあんばいである。ヴィンセントは寂しくなった。そんなに世間体がこわいのか・・・。
 まあしかたあるまい。天涯孤独の自分と違い、シドには親兄弟がいるのだから・・・。
「きゃーっ、ヴィンセントよ!」
 追っかけギャルが、どっとかけって来た。
 ヴィンセントはあわてて社屋に駆け込みながら・・・いつかこのきちがい騒ぎが終わったら・・・誰にどう文句を言ってやろうと思った・・・。




 ヴィン、すげぇ人気・・・まあ、無理ないですね。わしだって追っかけしちゃうかも・・・。
 ここまででも、読んでくだすったあなたに感謝☆


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