前夜     いつもの続き・・・

投稿者 血吸ねこ 日時 1997 年 10 月 14 日 09:59:59:

いつもの続きです。
この後まだ、しばらく続きますのでもう少々お付き合い下さいませ・・・
(次で最後、でないのは確かです・・・(^◇^;


「何のために戦うのか、それを確かめてきてほしい。」
 大空洞突入を前に、クラウドが一行に告げる。クラウドとティファはハイウィンドの側で小さなキャンプを張った。他のメンバーは、それぞれの故郷に向かう。
 しかし、ヴィンセントはどこにも行かなかった。今更故郷になど顔は出せなかったし、ルクレツィアの元にも行く気が起きなかった。そのため、すぐにこっそりとハイウィンドに舞い戻ってきた。

(いよいよ・・・対決するのか・・・)
 複雑な思いで、隠し部屋に篭る。
 セフィロス−−−激しく憎悪した宝条と、深く愛したルクレツィアとの子。
 どちらか片方だけとのつながりならば、これほど考えることもなかっただろう。しかし、すでに宝条を倒し、更にルクレツィアが生きているとなると。
(私は・・・平静でいられるのだろうか・・・)
 クラウドやティファのように、直接セフィロスに会ったこともない。だからこそ、セフィロスと対峙するとき、平静でいられなくなることを恐れてもいる。一抹の不安を抱え、今にも地平線の彼方に沈みきろうとしている夕陽を眺める。
(・・・酒でも、持ってくるべきだったか・・・)
 かすかに苦笑を浮かべる。それでも動く気にはならなかった。

「・・・なんでぃ、あんたもいたのかよ」
 いきなり隠し部屋の扉が開き、よく知った声がした。すでに日は沈み、夕焼けが消えようとしている。ぱっと振り向くと、いつものごとく、酒瓶をかついだシドが立っていた。
「あんたこそ・・・ロケット村に・・・」
「へん、こいつでちゃんと帰ってこれねえと意味がねぇだろ?」
「・・・整備してたのか?」
「ったりめぇよ!・・・帰ってこれなきゃ、あいつを倒してもしょうがねぇ。」
 煙草をくわえ、床に腰を下ろす。それを少し当惑した瞳で見やる。
「でも、シエラさんに・・・」
「けっ。」
 一瞬、ぎろりと睨みつけ、すぐに優しい表情を浮かべる。
「俺ぁ、あいつに『全部終わったら、ゆっくり話す』って言ってある。」
 シエラの顔を思い描くのか、ふっと遠くを見る目つきになる。
「まだ終わっちゃいねえだろ?」
「・・・そうだな・・・」
「・・・終わっちゃいねえのに顔出そうもんなら、あいつになーに言われっか・・・」
 グラスを取り出し、酒をつぐ。それをヴィンセントに渡しながら、逆に問い返す。
「そういうあんたは、いかねぇのか?」
「・・・私は・・・会うわけにはいかない・・・」
 かすかに苦悩の色を浮かべ、グラスを見つめる。
「会えば・・・逆に対決できなくなりそうで、な・・・」
「・・・そうか・・・」
 気が付けば、夕陽の残照もすっかり消え、暗くなっている。かすかにクラウド達のたき火が揺らめくのが見える。2人は暗闇の中、静かに酒を酌み交わした。

 暗い中に、煙草の火のみが浮かんでいる。ヴィンセントはそれをぼんやりと眺めた。
(・・・この戦いが終わったら・・・私はシドと共にいられるだろうか・・・)
 ふっと、考え込む。シドには帰るべき場所があり、シドを待つ女性もいる。
 しかし、自分には。
 帰るべき場所、自分を待つ女性。どちらも確実にあるとは言えない。
(・・・また、眠るか・・・)
「何考えてやがんだ。」
 気が付くと、目の前にシドの顔があった。
「・・・あいつを倒した後のことか。」
 図星を指され、ぎくりとする。暗闇の中でシドが呆れた顔をするのが感じられる。
「へん、今考えることじゃねぇな。・・・今は、あいつを倒すことだけ考えりゃいい。」
 すっとシドの顔が近づき、唇を重ねる。
「あとは、あいつを倒してからだ。」
 そのまま抱きしめられ、押し倒される。唇を重ねたまま、シドの手がヴィンセントの身体をまさぐる。明日の戦いへの緊張と、闇の中ということ、そして声を上げられないことからヴィンセントは常よりも激しく昂ぶっていった。
「はぅ・・・」
 シドの舌が首筋を這い、耳朶を舐る。そうしながらヴィンセントの服を脱がせていく。すでにヴィンセントの息が荒い。再び唇を重ねると、ヴィンセントがシドのシャツのボタンをはずしていった。シドの的確な愛撫に、ヴィンセントが悶える。その手が、舌が身体中を這い、愛撫する。ヴィンセントは唇をかみしめ、声を上げまいとした。が、時折押さえきれない喘ぎが漏れる。
「ぁ・・・ぁぅっ・・・」
 ゆっくりとシドが押し入ると、ヴィンセントは小さく、甘い吐息を漏らした。そして、静かに絶頂へと登り詰める。
 そのころになって、遅い月の光が窓から差し込んできた。

 2人はしばらく、抱き合ったまま横になっていた。ヴィンセントは目を閉じ、眠っているかのように見えた。
(・・・あいつを倒した後、か・・・)
 ヴィンセントに劣らぬ程、シドも悩んでいた、といえる。
(・・・やめだやめだ!・・・今はあいつを倒すことだけ、考えねぇとな・・・)
 ヴィンセントに告げた言葉は、シド自身への言葉ともいえた。この先、ヴィンセントと共に過ごすのか、シエラの元に戻るのか。−−−双方と共に過ごしたいと願うのは、あまりにも虫が良すぎるかもしれないが。
 シドは軽く頭を振ってそれらの考えを押しやると、ヴィンセントを起こし、ハイウィンド内のベッドへと戻っていった。


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