スター誕生(2)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 10 月 12 日 22:17:26:

 今日ははっきり言って厄日でした。
 うちの駐車場からクルマ出そうとして、お隣のクルマにこすっちゃった・・・。
 ま、ほんのちょっと傷ついただけなのと、お詫びに行ったら気持ち良く許して下さったので助かりましたが。
 でもって焼き肉食べに行ったら、店員がおばかさんで、たいへん不愉快な目に合うし。
 焼き肉はとってもおいしかったのですがね。コムタンもあっさりしていてたいへんよかった。
 というわけで、お肉とニンニクパワーで、続き、参ります!




 ヴィンセントは、唖然とした。
 翌日のことである。
 出社したら、宣伝部長に呼ばれて、じきじきに「昨日の会議で決まったこと」を通達された。しかも、もうスケジュールまで決まってしまっているという・・・。
 まるっきり事後承諾である。ヴィンセントの意向、完全無視もいいところだ。
 しかもそのスケジュールの超ハードなこと。
「何です、これは・・・午後からさっそく雑誌の取材、ワイドショーの取材・・・」
「・・・ポスター、カレンダーの撮影もあるし、写真集も企画中だ」
「・・・」
「今日は取材だけだが、いずれはコメンテーターとして出演してもらう。報道番組では“ニュースステーション”“筑紫哲也のニュース23”、バラエティ系では“思いっきりテレビ”・・・欽ちゃんの仮装大会の審査員の予定もあるぞ」
「・・・」
「むろんクイズ番組にもゲスト出演してもらうし、グルメ系では、“料理の鉄人”のゲスト審査員、“チューボーですよ”でなす田楽を作成してもらう予定だし・・・」
「テレビには、出たくありません」
「テレビはいやだ!何と言うことを言うのかね」
「私の仕事の性質上、あまり素顔が表に出るのはどうかと存じますが・・・」
「・・・ならば、君をモデルというかイメージキャラクターにして、ドラマを作るかね。そういう案も出ているのだよ」
「・・・」
「まず・・・刑事もので、“タークスにほえろ”“あぶないタークス”“はぐれタークス純情編”・・・子ども番組では、“タークス戦隊”・・・これでオモチャを売りまくる。神羅のヒーロー、ヴィンセント・ヴァレンタインの名は、子どもたちにまで広まることだろう」
「・・・冗談はやめていただきたい」
 ヴィンセントは、ついにキレた。
 と言っても、別に怒鳴りも立ち上がりもするわけではない。はた目から見ればただちょっと眉をひそめただけなのだが。
「これでは、仕事をする時間がなくなります」
「仕事・・・?」
「私はタークスの責任者です。責任者が本業をほっぽらかして、マスコミで浮かれているようでは、部下にしめしがつきますまい」
 宣伝部長が何か言おうとするのを制して、
「あんた、いっぺん、タークス主任やってごらんになることですな。うちの部下たちがどれだけ扱いにくいか・・・」
 宣伝部長はポンとひざを打った。
「・・・それだ!」
「え?」
「君にその体験を生かして、本を書いてもらおう。題して“ヴィンセントのリーダー論〜勝てるチームを作るために”!」
 ヴィンセントはもう何も言わずに、深い深いため息をついた・・・。


「・・・で、結局リーダー、テレビ局に引っ張られてったんだな、と」
 ・・・その夜、ところは、ミッドガル市街のこじゃたナイトクラブである。
 ブルーの明かりの下、大きな水槽の中に、熱帯魚があやしく白い腹をきらめかせる下で、酒を飲んでいるのは・・・タークス三人組と、なんと、あのジョン・バトルブリッジ中尉ではないか。
「来週あたりから、大々的に売り出すらしい・・・」
「・・・なんかあたしガッカリ。ヴィンセントさんて、そういうチャラけたの、嫌いな人だと思ってたのに・・・」
「とか言って・・・写真集、売り出されたら」
「そりゃもう、予約しますとも!」
 ルードが嘆息した。とか言いつつ、彼も本音では「こっそり予約しにいこう」と思っているに違いなかった。・・・彼にはとても複雑ななりゆきである。
 レノはせせら笑った。
「俺も正直、がっかりだな、と・・・タークスは闇にあってこそ輝く部署。ツォンさんは、それを誇りにしていたが・・・」
 それを言われると他の二人も返すことばがない。まったく同感なのである。
 イリーナはため息をついた。
 ジョンはにこにこして、
「ま、人気が出たとしてもいっときですよ。そんなに心配することはないでしょう」
「・・・」
「ヴァレンタイン氏は、こう言ってはなんですが、キャラクターがタレント向きじゃないですよ。いっときはカッコいいから売れるでしょうが、じきに飽きられますって(←まるでマリノスの川口のようダ・・・)」
「確かに芸はないけど・・・ヴィンセントさん、カラオケとかダメだし・・・でも、そうかなあ・・・そんなこと言ったらセフィロスだって、別に芸があったわけじゃないですよ」
 イリーナが疑わしげに言った。
「それは、セフィロスの時代は、戦争とかあったから・・・今はこの平和な時代ですからね」
「ううん・・・」
 何となく不得要領な三人を言いくるめたジョンは、
「僕としては、ほんとは、彼がスターになることは大歓迎なんですがね・・・」
 とポツリと言った。
 三人は、いっせいにジョンを見た。
「・・・まだあきらめてないのかな、と。あの飛空艇のおとっつぁん・・・」
「・・・忘れられるわけ、ないですよ」
 一度でも抱いてしまったら、と言うのをジョンはのみこんだ。
 レノもルードも、シド・・・ヤッちまったことはあるが・・・確かにおいしい体ではあったが、まあ、夢に見るほど忘れられない、というわけではない。経験の差というものであろう。
 だが経験の少ないジョンには、確かに、魂の吹っ飛ぶような体験ではあった。あの体を、そして魂を、自分ひとりのものにしたいと思いつめるのも無理はない。
「もし、ヴァレンタイン氏がスターになって・・・それでシド艇長の心が彼から離れてくれれば・・・と、ぼくはいっそ思いますよ・・・」


 翌日の昼すぎである。シドがオフィスで十年一日のようなデスクワークを続けていたら、ユフィがトレイを抱えて入ってきた。
「お待たせ!出前、来たよ〜」
「ん、じゃ、茶あ入れてくれ。いっしょに食おう」
「もうもう、おなかぺっこぺこだよ!社食に行くヒマもないなんてサ」
 二人は書類を片づけ、お茶を入れて、たぬきそばをすすり始めた。
 ユフィが部屋の片隅の小さなテレビのスイッチを入れた。
 昼過ぎのワイドショーが、あいも変わらずタレントの離婚だの葬式だの婚約だのを報道している。
「・・・あーあ、また離婚だってよ。この二人はうまくいくと思ってたのに・・・」
「そうかね?俺ははなっから別れると思ってたけどよ」
 やくたいもない話をしていたら・・・場面が変わって・・・
 シドは、すすりかけていたお茶を口から吹き出した。
 ユフィが目をまるくした。
 そこは、見覚えのある神羅本社ビル・・・そしてうつっていたのは、他ならぬシドの愛人ヴィンセント・ヴァレンタインの制服姿であったのだ・・・。




 えーと、ここでひとつ募集事項。
 「もしヴィンセントが電波少年に出るとしたら、どういうネタがいいか?」・・・を、ぜひぜひみなさまに考えていただきたいのです。
 かつて村山元首相のまゆ毛を切り、君島兄弟の両方にスタッフジャンパーのデザインを依頼したあの番組。松村松本の二人に、ヴィンセントにどういうアボなし突撃をしてほしいか・・・いろいろ考えたケド、なかなかいいのが思い浮かびません。
 ネタは、メールでお願いします。
 くくくく・・・。
 ついに本格的に他力本願女になってしまいました・・・。おこらないでね、皆様。

 ここまででも、読んでくだすった貴女に感謝☆


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