ミッドガル・ヒーロー新作=(1)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 10 月 12 日 01:21:13:

 実はちょっといろいろ、気がかり、あるんですが・・・。ま、インターネットでは憂さを忘れて元気で行こう。
 というわけで、ミッドガル・ヒーローズ新作・・・でございます。




 突然だが、シドは、面白くなかった。
 今日の会議の宿題が「新しい神羅のイメージづくりのために」というテーマだった。それでシドはむろん、ロケットをばんばん飛ばしましょう、という内容のことを、彼にしては論理的で控えめな論調で説いたのだが・・・「それはお金がとってもとってもかかるから、それはそれとして、また別の機会に」という流れになってしまった。
 それだけならまだいいのだ。
「・・・ここはひとつ、イメージキャラクターが必要ですな」
 とかいう意見が出て来て、何だか話がそっちへ流れてしまった。
「そうですな。ハイウインド大佐もかつてそうであられたが・・・神羅には、いつの時代もスターがいました。セフィロス・・・うれはよかったですな〜」
 「セフィロス」と言ったとたんに・・・メテオを召喚してみんなをたいへん苦しめた敵だと言うのに・・・並み居る幹部社員たち・・・いっせいに、うっとりトロンとした目になって・・・
「美人でしたなあ〜」
「いやいや、あれはかっこよかった。セフィロスのおかげでどれだけ神羅のイメージが上がったことか・・・」
 な、何なんだ一体、という感じで、会議は一気におやじくさく盛り上がった。
「・・・もとい!」
 真っ先に我に返ったのが、リーブ臨時社長(と、いうか・・・何だかこのままずっと社長に居座りそうな雰囲気ではあったが)である。
「確かに、セフィロス亡き後、新しい広告塔・・・と言うのがいませんな。それは事実です」
「バトルブリッジ中尉はどうなのですかな。彼は、若くて、けっこうハンサムですが」
「いやいや・・・こう言っては何だが、あれなら、ハイウインド大佐の若いころのほうがずっとイケますな」
「彼は、女子どもにはモテそうですが、男性にまではアピールしませんからな」
 と言ったのは、古顔の幹部社員である。シドは聞いていて鳥肌が立った。て、ことは・・・自分は、男性ファンにまでアピールしていたのであろうか。
 若き日のシドの写真を××ペットにしている男たち・・・ああ、考えたくない。
 シドが目を閉じておぞけを振り払っていると、
「アピールと言ったら何たってセフィロスでしょう。バトルブリッジ中尉も悪くはないですが、何分にもあのセフィロスの後がまでは・・・気の毒というものですがな」
「しかし・・・いませんかな、これだけ社員がいて・・・セフィロスに匹敵するようなキャラクターは」
 と、ぽん!とひざを打った者がいる。
「・・・いますいます!超美形で超腕利きの社員!」
「え?」
 みんなが目を輝かす。シドはいやな予感がした。
「・・・タークスの、ヴァレンタイン主任ですわ」
「おお!」
「確かに・・・あれは盲点です!」
「美形で腕は立つし・・・あれなら女子どもにも、男にも強烈にアピールするし」
「大丈夫ですかな?あんまりキレイすぎて、却って男には反発、食らいませんかな?・・・むしろバトルブリッジ中尉のような、純朴げな若者のほうがいいんじゃあ・・・」
 という、ごく常識的な意見も出たが・・・
「いや、そこをうまく情報操作するのが、腕の見せどころですがな」
「そうですとも!・・・そうとなったら、さっそく宣伝部を全面的に動かして・・・彼がヒーローになれば、今まで、何かと暗黒面ばかり強調されがちだったタークスのイメージも変わりますでしょう。ひいてはそれが、神羅のイメージアップにもつながるというわけで」
「賛成!」
 と、いうわけで・・・
 すべての事情を知るリーブは、気の毒そうにシドを見たが・・・、満場一致(シドを除いて)で、次なるイメージアップ作戦の広告塔として、ヴィンセントが決定してしまったのであった・・・・。


「・・・大丈夫だよシド。私はそんなものに利用されたりはしない」
 シドの軍服にかいがいしくブラシをかけてタンスにしまいこみながら、ヴィンセントはほほ笑んだ。
 ここはシドのアパート・・・と、いうか、実は二人の愛の巣・・・というほうが正しい。
 先月から、二人は独身用アパートを出て、もうちょっと広いこのマンションに引っ越して来ていたのであった。それは、言うなればシドの敗北宣言である。
 表向きは、仲良しの二人が共同生活をしているのだということにはなっていたが、わかる人には二人の関係はもはやバレバレであった。
「第一、タークスは影の部署だし・・・その主任が人前に出て脚光を浴びるようでは、もうタークスの意味をなさないよ」
「けどなあ・・・お偉方連中、こぞって乗り気だったぜ」
 ソファに身を沈めながら、シドは缶ビールのプルトップをぷしゅっと開けた。
 ヴィンセントはいとしげに、そんな彼の夫・・・というか妻・・・というのか・・・を見つめて・・・、
「シドがいやがることなど、私は何もしない」
「・・・そりゃウソだろ」
 シドは上目づかいでちろっとヴィンセントを見た。
「ゆうべだって・・・」
「ベッドの中では別さ・・・第一あんたは、ほんとはイヤがってなどいないのだから」
 シドは頬を赤くした。あわてて、話題を変えようとしたが・・・
「・・・な?イヤじゃあないだろう?」
 時、すでに遅し・・・ヴィンセントにしなだれかかられて・・・
「あ・・・ヴィンセント」
 それだけでもう目がうるうるしてしまう・・・体も心も、完全にヴィンセントの奴隷に仕込まれてしまった、シドであった・・・。
「・・・いま誘ったのは、シド・・・あんただ」
「あ・・・」


「・・・始まった始まった、と」
 ・・・懲りていないのはヴィンシドだけではない。
 レノルード・・・こいつらはもっと懲りていない。二人の新居には、しっかりと、盗聴器・・・しかけられていたのであった。
 もちろんそれはちょくちょくバレて、その度にヴィンセントにお目玉を食らうのだが、もはやそれすらも楽しみで快感となってしまっている、いけない二人組であった。
「・・・リーダーも変わったと思うが・・・おとっつぁんも大した進歩だな・・・」
 ルードが頬を赤らめるほどのアツアツぶりと言うか・・・激しいんである。
「すっかりもう、女王様の奴隷モードというか・・・い、いや」
「・・・うらやましいのかな、と」
「・・・俺も一度、レノにこんなふうに言われてみたい」
「お生憎だな、と・・・俺はこんなこと言わない、と。言わすのは好きだけど」
 レノは含み笑いを浮かべながら、ルードの純情げな横顔を見つめた。
 ばん!とドアが開いたのは、その時である。
「・・・ンもう!また盗聴ですか、先輩たち」
 イリーナのふくれっつらが入ってきた。
 レノは舌打ちしたが、盗聴はやめようとしない。
 スピーカーからは・・・何ともなまめかしい、シドのあえぎ声とヴィンセントのささやき声が、最大ボリュームで流れてくる。
 イリーナはつかつか歩み寄ってきて、パチン!とスイッチを切った。
「・・・廊下の向こうにまで聞こえますよ。ンもう・・・あたし、苦情言われちゃったんですから。タークスは一体、残業時間に何やってんだって」
 レノルードは、顔を見合わせて苦笑した。
 その時・・・予告もなしに、ぬっと入ってきた人影があった。
「楽しそうだね、諸君・・・」
「・・・あんたは?」
 三人は笑いをひっこめて、突然の闖入者を見つめた。どこかで見た顔ではある・・・。
「・・・そうか、ロケット計画の・・・バトルブリッジ中尉」
「よかったら・・・僕も、お仲間に加えてもらえないかな?」




 まだ懲りてないのか、タークス・・・そしてジョンよ。
 一体どうなってしまうのでしょう。とほほほ・・・。
 こんなのでも・・・読んでくだすった貴女には、よろこびのキッス・・・☆


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