ファイル発掘してやっと手直しが


投稿者 こんなところでレス借りてすみません瀬尾。 日時 1997 年 10 月 09 日 10:15:05:

すみません。意味のない美辞麗文連ねただけのごみ小説です。自分のストレスを人様に押し付けているよーなものですが・・・・うぅ・・本気でスランプだし・・(涙)愚痴るだけ愚痴ったらまた気が晴れて書き始めるのでしょうが・・
ちなみに・・プロパティ見てみたところ、書き始めたのは6月のようです・・(汗)時間をかけりゃいいってものではないらしい。途中でわけわかんなくなったので、いい加減送ります。



暗い洞窟アジトの中では凄惨な戦いが繰り広げられていた。
鳴り響くのは人の悲鳴と、叫びと、反乱分子の制圧という名目を借りた、神羅の世界支配への序曲。
この混沌の中で二つの光が、閃光となって駆け巡った。


「嫌な任務・・・だな・・・・・・」
目の前に横たわる無残な肉の塊を見て、ザックスは呟いた。
つい先ほどまで生きて、呼吸して、動いていたものが今はただの有機化合物でしかなくなった。
なるべくなら、殺したくはなかった。彼自身がこの生物達に個人的な恨みがあるというのではない。しかし、ソルジャーとして神羅に籍を置く限り、上からの指示に逆らうことはできなかった。

「・・・・俺・・・やっぱソルジャーむいてないんかもな・・・・」
任務だから。
その一言で片づけられない自分が情けなかった。しかし、魔晄の力を借りて人ならぬ力を得た今、ザックスのいる場所はここにしかなかった。神羅に属していればそれは大いなる戦力として使用することもできる。だが、その常人ではない力をもし自由に使うようなことがあれば、一人で完全に制御できる自信はない。
そうなれば俺はただの怪物でしかなくなってしまう。
そんな自分を彼は恐れていた。
そうさ、お前はもう、怪物なんだよ・・
眼前の血肉の塊が彼のほうを向いて嘲笑ったような気がして。ザックスは思わず目を背けた。
こんな時、あいつはどう思っているんだろう・・
血に濡れた巨剣を重く肩に担ぎ直しながら、ザックスは相棒を振り返った。
腰まで届く銀色の髪。白い肌に一滴の返り血を浴びることもなく、空気の流れがそこだけで留まっているかのように男はただ静かに立っていた。しかし足元にはやはり無駄な太刀なく切り刻まれた死体が赤く染まっていた。
「・・・・・・・・・・セフィロス・・・」
奇麗だと思った。その姿を。深い湖の底でひっそりと午睡んでいるようなその姿を。辺りでは生き残った神羅兵が歓声を上げている。しかし彼はそんな喧騒に巻き込まれることなく、ただ静かに何かに耳を澄ませていた。
「セフィロス・・・?」
「・・・・・・・・あの弾薬箱に・・何かがいる・・・・」
指差されたのは無造作に積み重ねられた、人の身長ほどもある箱だった。耳を澄ませば、その中から小動物の泣くような声がかすかに聞こえる。ザックスはその棺桶のような箱を開けてみた。

「おい・・」
その中にはふっくらと赤い頬をした赤ん坊が粗末な布に大切にくるまれていた。
ザックスがそっと抱き上げると赤ん坊は泣き止み、琥珀色の目でザックスをじっと見詰めた。やがてザックスの姿を見て甲高い声を上げて笑い始める。
「こいつはきっと、反乱軍の中の誰かの子供だ・・親が、怪我をしない様にこんなとこに入れたんだな・・」
そんな赤ん坊を壊れぬようにそっと抱き抱え、ザックスは呟いた。ふっくらした赤子の体から立ち上る甘い匂いがザックスの乾いた心に染み渡る。
「なるほど・・」
その様子を見ていたセフィロスは静かに肯いた。かすかに動いた薄い唇からは地の底から響いてくる風のように、低く艶のある呟きが漏れた。しかしその響きが消えるまでに、鋭い輝きがザックスの腕をかすめた。

「…?!」
銀色の輝きに見えたもの、それはセフィロスの放った一筋の太刀だった。その冷たい切先は正確に赤ん坊を狙い、ザックスの胸の中でもぞもぞと動いていた小さな生き物は温かい血を吹き出して、鳴き声も上げずに息絶えた。
「セ・・フィロス・・?」
「任務だ。」
何一つのためらいも無くセフィロスは言い捨てた。銀色の愛刀についた血を軽く振る様にして落とし、赤ん坊を抱いたまま硬直したザックスの前から立ち去ろうとした。それを遮るように、ザックスの声が彼の背に叩き付けられた。
「ちょっと待て!!」
「何だ・・」
「あんた・・自分のした事わかってんのか!!」
ザックスは紺青の瞳に怒りを宿しながらセフィロスの前に立ちはだかった。手の中の血まみれの赤ん坊はすでにぐったりと目や口を開いている。その様子を不快そうに見つめ、セフィロスは激昂するザックスに冷ややかな声で答えた。
「・・任務は、反乱軍は残らず始末しろ・・だったはずだ。」
「あんた・・!!」
ザックスは自分のちょうど目の前にあるセフィロスの胸座を掴み、激しく揺さぶった。
「だからってこんな赤ん坊まで殺して何になるってんだよ?!この子が何かしでかしたってのか?!あんた、何考えてんだ?!」
「私は・・ソルジャーだ。上の命令を遂行する。それだけだ。」
無感動に言葉を紡ぎ出し、セフィロスは未だ落ち着かぬ硝煙の向こうに消えていった。その時にちらりと向けられた朝霧色の目には感情はなく、ザックスは両手を血色に染めながらただその後ろ姿を呆然と見つめているしかなかった。


その夜。ザックスは一人眠れぬ想いで天井を見つめていた。ここは兵士宿舎の自室。窓からは月光が差し込み、明るい陰が白い壁に反射して無機質な天井に水底のような模様を描き出している。

あれから反乱軍の死体は集められ、どこかへ運ばれていった。彼らはまもなく新開発の生物兵器によって跡形も残さずに処理されるのだろう。
その人工開発された強力なバクテリアは動物の肉も骨もほぼ一月で完全な無機物に分解してしまう。後には何も残らない。
人知れぬ山奥にうち捨てられ、無残な死体は青い月光を浴びながら徐々に星に戻っていく。
そうさ・・あの子も。
彼は奪われた幼い生命の抜け殻を、その親らしき死体と一緒にして葬ってくれるように処理班の兵士に託したのだ。子供を残して死んでいった親の事を思うと、せめて魂だけでも親元に帰って欲しかった。それが彼の願いだった。
・・・わかっているさ・・人間は死んだらおしまいなんだってことくらい・・
ザックスは胸に重い苦しさを感じ、寝返りを打った。魂とか、輪廻とか、田舎に住む彼の年取った両親は、幼い彼にそう言い聞かせていたものだった。だから、彼はあの赤ん坊があの世で両親と再会を果たしていると思いたかった。しかしそれは気休めでしかなかった。
どんな境遇でも生きているほうが幸せなんだよ・・絶対に・・
やり切れぬ思いを内に秘めたまま、やがて彼は目を閉じて浅い眠りに落ちていった。


「こんちわ。俺、今度あんたと組むことになったザックスってんだ、よろしくな。」
それは、彼がセフィロスと初めて会った時の事だった。銀色の髪を腰のあたりまで伸ばしたその男は、少し意外そうな顔をして彼のほうを見た。
「私は・・セフィロス・・」
意外に、冷たく低い声が返ってきた。まったく感情というものが込められていない声。それにザックスは少し戸惑いを覚え、意図的に話題を逸らそうとしたのを覚えている。
「ふーん・・あんた、年幾つだ?」
「・・26。」
「そっか・・俺よか年上だ。でも、奇麗だな・・英雄っていうより、女神様みたいだ。」
「それは誉め言葉か?」
「きまってんだろ。言われたことないのか?」
「ない。」
「んーなに美人なのにつまんねぇ人生送ってんだな、あんた。・・もしかして人と愛したり愛されたりってことも、ないのか?」
「不快な好意を寄せてくる人間はいた。だが、人を愛したことなど・・ない。」
「そっか。んじゃ、目一杯俺が愛してやるよ♪人間ってのは、人に愛されてなきゃ生きていけないってのが俺のおふくろの持論でさ。」
「……」
「なんだよ、その嫌そーな目は!」
おどけながら明るく、屈託無く笑う。紺青色の瞳を持つ青年は、にっこりと笑いながらマメだらけの大きく厚い手を差し出した。それは不思議と不快、ではなかった。自分にはないものをもつ青年。セフィロスはそれに、いまだかつてない不思議な感覚を覚えた。


・・夢?
一人、池の辺で暗い水面を見つめていたセフィロスはふと我に返った。漆黒の闇に染まる森の中で、梟の鳴く声だけが聞こえている。夜明けにはまだ程遠い。
その、英雄と称えられ、また恐れられて戦場を駆ける日常と日常の間のつかの間の安息。
セフィロスは大きく息を吐くと、夜露に濡れて匂いを放つ草の上に再び身を横たえた。
それにしても・・妙な夢を見たものだ・・
どこか懐かしい夢だった。いつかどこかで見たような夢。失われていたはずの記憶の断片が不意に甦ったような、ほんの短い夢だったのに、何故か温かかった。そう、まるで誰かと共有でもしていたように。
おかしな話だ・・
湿った、青い匂いを肺一杯に吸い込みながらセフィロスは目を閉じた。耳を澄ませば、体の下の土を通して星の鼓動が聞こえてくる。このほんの一時だけが彼が人間という、わずらわしいものから開放されるのに許される時間だった。
そうして彼が再び自分の世界に戻ろうとした時、ざわざわと近くの茂みが動いた。
「何者だ!」

「セフィロス・・か?」
身構えたセフィロスの前に現れたのはザックスだった。

「ザックス・・」
「・・寝てたんだけどな。なんかやな夢見ちまって。目が冴えて眠れなくなっちまった。それで涼みにきたってわけ。」
ザックスは不機嫌に頭を掻いた。寝起きのせいか、頭が痛い。
「ま、ちょうどいいか・・セフィロス、あんたにゃ聞きたい事があった。ここじゃ邪魔物はこないから都合がいいや。」
「何だ?」
「昼間のあれ。あんときはあのままにしちまったけどなんか気分悪いしな。いいように寄っちゃ、あんたでも容赦はしない。」
「昼間・・?」
「とぼけんなよ!あんな赤ん坊を殺しといて!」
ザックスの口調が荒くなった。先ほどの頭痛がますますひどくなっている。痛みはともすれば自分の理性を奪い去ってしまおうとする。彼は必死で耐えながらセフィロスに詰め寄った。
「赤ん坊になんの罪があるってんだ!」
「・・そういう指令だ。」
セフィロスはこともなげに答えた。それがザックスの怒りを助長する。
「指令ならなんでもするのか?!」
「・・それがソルジャーだ。」
「あんた、本当に人間か?!あんたにゃ感情なんてないのかよ!」
ザックスはセフィロスにつかみ掛かった。体勢を崩したセフィロスは草の上に倒れ込み、冷たい夜露が飛び散る。その上に馬乗りになったザックスに、セフィロスは冷たい視線を浴びせ掛けた。
「私には感情は不必要だ・・多すぎる感情は人の判断力を誤らせる・・・」
静かに胸をえぐるようなその言葉は的確にザックスを貫いた。ザックスは冷え切った自分の心ととは裏腹に、自分の頭にかっと血が上るのがわかった。
「そうかい。あんたはそんなもんもつほど馬鹿じゃないってか。ならこういうことをされても何も思わねえんだなっ!!」

黒い皮の衣類を力任せに剥ぎ取り、透き通った肌を月光の元にさらけ出させていく。乱れる長い髪を肘で押さえつけ、身動きを封じられたセフィロスの唇に噛み付くようにそれを奪った。それは首筋へと流れていき、そこをきつく噛み付ける。
「っ・・」
弾力のある、「肉」の感触が伝わってきて、ザックスは思わず身をひいた。その心地よい弾力に流され、このままでは本気でセフィロスの首を食いちぎってしまそうだった。改めて見てみると自分の噛んだ辺り一帯が濃い桃色に染まっている。ザックスは、セフィロスが許しを請うて泣き喚くところが見たかった。いや、怒りながら彼に飛び掛かってくるのでもよかった。そのまま殺されても、彼は本望だったかもしれない。
なんでもよかった。彼が断片的にでも感情を見せてくれさえすれば自分の恐怖は解消されるのだと思い、ただがむしゃらにセフィロスの体を貪った。
しかしふと見上げたセフィロスの貌はいつも通りの冷たく整う人形じみたものだった。

普段のセフィロスは、全くと言っていいほど笑いも怒りもしなかった。皆が楽しく浮かれている時でも、常にただ一人少し離れたところで傍観者というのが、彼の定位置だった。
同時に、冷酷無情な鬼神といわれて戦場を駆け巡る時ですら、セフィロスの顔には感情というものが存在しなかった。躊躇もなく、しかし殺人の快楽に浸ることもなく、ただ命じられるままに向かってくるものを倒していく。
それはどことなく自分の力を持て余しているような違和感を覚えさせた。
「泣け!それが嫌なら抵抗してみろよ!!」

感情を抱かないという事実に対する恐怖がザックスを残酷にしていた。彼は、恐かった。ひどく恐かった。それは心の底までくらい尽くされてしまうような冷たい恐怖。その恐怖を破壊するかのように、ザックスはセフィロスを壊したかった。自分を脅かすものを壊して、破壊し尽くしてしまいたかった。

だから彼は、セフィロスを襲った。恐怖の対象を破壊する事によって、彼は己の恐怖心をも破壊しようとしていたのかもしれなかった。

ザックスが攻撃を加える度に、セフィロスの髪が銀色の波となって草原をうねる。乱暴な、愛撫とも呼べない責めがセフィロスに無残な傷を残していく。
貪るように含んだセフィロス自身を歯を立てると、セフィロスの体がひくりと跳ね上がった。
それを押さえつけ、無理やりに膝を割らせるとザックスは慣らす事も無しにセフィロスの体内に侵入した。狭く、きつい粘膜が彼を受け入れきれずに軋んだ音をたてる。しかし体の悲鳴とは裏腹に、セフィロスは密かに眉をひそめただけだった。
それがまるでザックスを嘲笑っているかのような感じがして、ザックスはうめいた。
「畜生・・ちくしょう・・」
胸に渦巻く怒りのままに、ザックスはその体を支配した。

「・・」
セフィロスの中に放った後、冷静に戻ったザックスには空しい後味の悪さだけが残った。未だにセフィロスの体をその腕の中に抱きしめながらも、その心を垣間見てやることすら彼には出来なかったのだ。
彼を嘲笑うようにどこかから夜烏の鳴き声が聞こえてくる。冷たい風が、彼らの上を通りすぎた。

「・・もう、気が済んだか・・」
最初にザックスの耳に飛び込んできたのは、いつもと変わらぬ感情の無い声。怒りや恥辱に震える事もなく、淡々と。その様子にザックスは完全に打ちのめされた。
「セフィロス・・!」
「用が無ければ私はもう立ち去る・・」
「おい!」
セフィロスは身を起こそうとした。その腕をザックスが慌てて掴んだ。
「まてよ、セフィロス!あんた・・こんなことされて何も思わないのか?」
「・・言っただろう・・私には・・感情、というものがないようだ・・だから、なんとも思わない・・」

セフィロスの言葉に、ザックスの胸の絶望が深くなる。くやしくて、くやしくて・・その想いがいつしか彼に涙を流させていた。
涙は溢れ出し、頬を伝い、顎に添って流れ落ちていく。それが月の光を反射させて、きらりと光りながら草の上に落ちた。

「こんちくしょう!!だったら俺はなんだったんだよぉっ!!」
拳を握り締め、ザックスは泣いた。心の中の満たされない思いが込み上げ、彼の口から鳴咽となって流れ出る。セフィロスはそれを不思議そうに見ていた。
「・・泣くくらいなら・・カナシイ、のなら・・何故、お前はこんな事をしたのだ・・?」
「あんたが憎いからだ!」
「・・私が、憎い・・?」
「あぁ、憎いよ!殺してやりたいほどな!!」
「だったら殺せばいい。」
「・・それができたらこんなに悩まねーよっ!」
「どうしてだ・・お前に出来ぬはずはないだろう・・今の私は無防備だ・・」
セフィロスの白い喉元は、まるで裂いてくれと言わんばかりに差し出されていた。そこに、先ほど自分がつけた赤い歯形がくっきりと浮かんでいる。ザックスは頭に再び血が上るのを感じ、それに手をかけた。
「どうせ、あんたにゃ人を愛するなんて気持ち、わかんねーんだろな!」
激昂するままに、指先に力を込めてそのまま縊り殺してしまおうかとも思った。セフィロスの首は意外なほど細く、ザックスの大きな手には余るほどだった。
しかし、彼の思惑とは反対に手からは徐々に力が抜け、やがて首から滑り落ちた。
「なのに俺は・・そんなあんたに惚れちまってる・・ちくしょう・・愛してる・・愛してるんだよ・・」
銀色の髪ごと、セフィロスの体をかき抱きながらザックスは苦悶した。密かに抱いていた想いのはずが、口に出すことで大きな力を持ち始め、彼を呪縛していく。
愛している・・愛している・・
異次元に迷い込んだ旅人のように、或いは闇夜に見る暗い悪夢のように、言霊は彼に付きまとう。それが遠くなり、近くなり、払おうとすればするほどに分裂して彼を捕らえようとする。
俺は・・おかしい・・何故・・こんな・・
そう、こんな冷酷な男をどうして自分は愛してしまったのか。どうして今ごろそれに気づいてしまったのか。憎しみを抱けば抱くほどそれは強まっていき、また愛すれば愛するほど憎しみは濃くなり彼をおいつめる。
嫌悪が、酷い吐き気となって彼を襲う。
助けてくれ・・誰か・・
自分の体が逆しまに落ちていくような奇妙な感覚に抗うように、ザックスはその腕に力を込めた。

「・・愛とは、なんなのだ?愛する、とは、どういうものなのだ・・?私にはわからない・・」
ふいに、低く涼やかな呟きが聞こえ、彼をそっと現実に引き上げた。
暗い世界から救い出されたザックスが顔を上げると、そこには驚くほどに透明な瞳が彼を見つめていた。生まれたままの赤ん坊のように、何も疑うことのない無垢な魂。その、底の無いほど澄んだ朝霧色の目が、真っ直ぐに彼を見つめていた。
「あんた・・」
「・・私は・・愛、という言葉を知らない・・」
「なんだって・・?」
「愛とは・・なんなのだ・・」
この時ザックスは気がついた。セフィロスは嘘を言っているのでも、強がっているのでもない。本当に愛するということを知らないのだということに。

「アイ」・・それはセフィロスにとって、辞書の中でのみ使用される単語の一つでしかなかった。

セフィロスは、愛を知らなかった。親子の愛も、恋人の愛も。彼はずっとただ一人であり、ずっと孤独だった。
後にも先にも彼はつながりを持たず、ただそれだけの存在だった。

「私は・・愛、したことも・・愛、された、こともない・・だから・・解らない・・」
ザックスの目をしっかりと見つめながらセフィロスは続けた。まるでいまし方心が生まれたかのように、その単語を口の中で何度も繰り返している。その冷たい体を再びそっと抱きしめながら、ザックスは呟いた。
「・・なら、俺が教えてやるよ、セフィロス・・」
いずれ殺されてもいい、決して受け入れてくれなくてもいい。でも今は凍り付いたこの心を、自分の体温で少しずつ温めてやりたかった。

西の空に少しずつ白い光が射し始め、辺りを柔らかな白い霧が覆い始めた。
水辺に咲く一輪の小さな花にのっていた水滴が一つ、丸い雫となって滑り落ちた。

 


(完)

あーおわったおわった。



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